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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

米軍アフガン撤収-七月四日独立記念日に併せ進む,活かされなかったヴェトナム戦争の戦訓

2021-07-04 20:00:15 | 国際・政治
■米軍,中国睨み太平洋へ転進
 アフガニスタン対テロ任務、日本は護衛艦を派遣し海上阻止行動給油支援を行ったものが主体でしたが、地上部隊派遣は長期間に及びました。

 七月四日はアメリカ独立記念日、この独立記念日にあわせるかのようにアメリカ軍のアフガニスタンからの撤退が加速しています、9.11同時多発テロを契機として実施されたアフガニスタン派遣は、9.11同時多発テロ首謀者とテロ組織に聖域を与えていたとしてアメリカ軍が有志連合とともに派遣、日本も艦隊をアラビア海の海上阻止任務へ派遣しました。

 アフガニスタンは一時全土から武装勢力を放逐したかにみえましたが、オバマ政権時代に模索されたアフガニスタン撤退、トランプ政権が公約として提示しつつ治安悪化で実現しなかった撤退がバイデン政権において遂に実現する形で、アメリカ軍にとりもっともながい戦争といわれたアフガン派遣が終了するのですが、現地は混乱に見舞われています。

 ヴェトナム戦争の二つの悪夢、アメリカはアフガニスタンで再現しているようにみえます。それは任務完了前の急な撤退により現地政府を見殺しとする状態、また決定的な打撃を避け策源地攻撃を避ける不明確な戦争目的により戦争が長期化、手を伸ばせば沈静化できる見通しがありつつ、政治的にこれを避け事態を長期化させたという、教訓が在った筈です。

 バイデン政権がアフガニスタン撤退を急ぐのは、アメリカの軍事的リソースを太平洋正面、特に中国、その軍事活動域の拡大と看過できない海洋自由原則への海洋閉塞という挑戦、また周辺諸国への軍事的影響と武力攻撃さえ実施し拡張し、自由主義はもとより自由貿易にさえ影響を及ぼしていることへ、軍事リソースを対中国へ集約するねらいがあるという。

 しかし、アフガニスタンで再見したヴェトナム戦争二つの悪夢は、このまま問題認識をアメリカが同盟国や友好国と共有できないかぎり、アジア太平洋地域においても三度目の悪夢として再現しかねません。そしてアメリカを日本は信用してよいのか、独自の強力な防衛力を持たなければならないのではないか、という認識にも繋がりかねないと思うのです。

 南ヴェトナム軍の見殺し。アメリカはヴェトナム化としまして、ヴェトナム戦争は南ヴェトナム政府に行わせるとして軍事力を強化させたという建前のもとに撤退しました。もちろん空軍力ではアメリカ軍とは比較にならないほど強力で、必要ならば沖縄からB-52戦略爆撃機をF-4ファントムの護衛下で絨毯爆撃する、こんな芸当が南ヴェトナムには無理だ。

 瓦解、南ヴェトナム軍ではアメリカ軍撤退を知り亡命者が相次ぎ、アメリカが大量に供与したUH-1やCH-47ヘリコプターはジャングル戦で不可欠のヘリボーン作戦ではなく、洋上のアメリカ軍艦艇までの軍人と家族、政府高官と親類縁者の脱出手段に用いられ、片道で亡命者を運んだ後、高価なヘリコプターは米軍艦艇の甲板上から海洋に投棄されました。

 アフガニスタンではMD-500ヘリコプターなどアフガニスタン空軍がアメリカ軍の支援で再建されていますが、アメリカ軍とともに展開している民間軍事会社の整備員に事実上整備が任されており、年単位の定期整備はアフガニスタンでは行えません、パイロットはアフガニスタン軍が担いますが、運用という視点で一年後の稼働率は不安が大きいといえる。

 軍人の国外脱出が増えているとともに、もう一つ、アメリカ軍は現地業者や通訳を、国外に一部を脱出させる計画はあるも、多くを見捨てる構図となります。山間部に退避した武装勢力タリバーンは現在、米撤退時期が示されたことで兵力温存を経て攻勢にでており、サッカーさえ禁止したタリバーンが米軍支援の業者従業員をそのままにしない可能性が。

 見捨てられる恐怖、南ヴェトナムにつづいてアフガニスタンでも見捨てたという不思議な実績があります、これからアメリカはアジア太平洋地域で中国と向き合うというバイデン大統領の指針ですが、果たして、台湾や韓国、オーストラリアや東南アジアの友好国や同盟国は、安心してアメリカと価値観を共有できるのでしょうか、勿論これは日本も含めて。

 武装勢力を一掃しアフガニスタンへ民主政府を樹立する。アフガニスタンではこの曖昧模糊とした軍事行動を行いましたが、これはヴェトナム戦争においての不明確な戦争目的、南ヴェトナム政府を支援する、という曖昧な目的から長期化した構図と重なります。南ヴェトナム政府を支援するという目的は、住宅火災を消火せず建て増しで対処する構図です。

 ヴェトナム戦争では南ヴェトナムを支援するという目的ではなく、最初からヴェトナム国内の敵対勢力を一掃すると明確化していれば、素早く機甲師団をハノイに侵攻させればアメリカはあそこまで長期化しなかったのかもしれませんが、南ヴェトナム政府を崩壊させないという目的であったため、策源地を叩くことが出来ず、ヴェトナムを撤退しています。

 アフガニスタンの場合は、武装勢力タリバーンは隣国パキスタンとの国境地域に転進し、アメリカ軍はパキスタン政府との外交関係を重視する結果、この地域での軍事行動を表だって行わず、結果的にアメリカの友好国であるパキスタンの態度を硬化させ、現在は中国との関係を重視するようになりました。当然ですが曖昧な軍事目的では確たる成果は無い。

 アメリカはアフガニスタンを見捨てることとなりますが、現状ではタリバーンの回帰は既定路線となっているように受け取れ、実際支配地域の拡大などがその状況を顕在化させています。これは同時にアメリカのの巨大な軍事力の撤退による空白を意味しますので、不安定化要素を生み、イラクからの米軍撤退後のISIL跳梁跋扈のような状況もあり得る。

 ホワイトハウスは、撤退は八月末を目処とするとの発表を7月2日に行いました。一方、アフガニスタン最大の米軍拠点であるバグラム空軍基地からの撤収完了が同日発表され、思いの外に撤収は進んでいます。ただ、繰り返すように、アフガニスタンを見捨てた構図に他ならず、軍事行動を行う際には相応の責任と矜持が必要だ、と思わずにはられません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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