北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】韓国軽攻撃ヘリコプター計画とインドネシア国産戦車ハリマウ中戦車,フランスルクレルクXLR

2023-03-27 20:00:21 | インポート
■週報:世界の防衛,最新11論点
 今回は陸軍関連11の話題です。

 韓国陸軍はAH-64E戦闘ヘリコプターと国産軽攻撃ヘリコプターのハイローミックス計画を発表しました。南北軍事境界線を隔てて北朝鮮軍と対峙する韓国軍は北朝鮮が数十隻を装備するエアクッション揚陸艇による離島地域への攻撃を警戒しており、AH-64E戦闘ヘリコプターを導入しましたが、充分な数を揃えるには取得費用の高さが大きな課題でした。

 2023年から2028年の期間、韓国軍はAH-64Eアパッチガーディアンを追加調達する計画を進めており、このために取得費用として3兆3000億ウォンの予算を計上しています。しかし、これをもてしても韓国が導入したAH-64Eは36機であり、旧式化したAH-1対戦車ヘリコプターやMD-500軽攻撃ヘリコプターを置き換えられず、今回の決定となりました。

 インドネシア陸軍は初の国産戦車ハリマウ中戦車を2022年内に受領する方針を発表しました。ハリマウはトルコの技術協力を受け開発している中戦車で、MMWT現代型中規模戦車計画として開発が進められていたもの。初期の車両をトルコのFNSS社が製造支援し、本格的な量産はインドネシアのPTピンダットが担当、ハリマウとは虎を意味する。

 ハリマウの形状は正面からは中砲を搭載した自走榴弾砲のようにみえるもので、主砲はコッカリル社が開発したC3-105自動砲塔を採用、これは自動装填装置と火器管制装置を一体化した電動砲塔です。車体は自走榴弾砲にみえるのはトルコの水陸両用装甲車の技術を応用したためで、エンジンにキャタピラー社製711hpディーゼルエンジンを積む設計です。

 防御力は基本装甲がNATO防弾規格レベル4となっていて200m以内からの14.5mm重機関銃弾に耐えるとともにモジュラー装甲を採用しており、増加装甲の装着により正面装甲は25mm機関砲弾に耐えるとされています。インドネシア軍はドイツから中古のレオパルオ2A4戦車を装備していますが、近年インドネシア国内防衛産業強化政策を進めています。

 日本政府は自衛隊の装備の中で装甲車両と対戦車ミサイルの中古装備を輸出する方向で検討している、日本経済新聞が報道しました。自衛隊の装備に余剰がどの程度あるかについては疑問符がつきますが、79式対舟艇対戦車誘導弾や73式装甲車については老朽化とともに退役が進んでいます、装甲車ではないが74式戦車なども退役が進むところです。

 陸上自衛隊の装甲車や弾薬は基本的に不足しており、余剰装備を供与できる状態ではありません、しかし、73式装甲車でも使い方によっては用途はあるため、高い解体費用を捻出してさらに防衛予算を逼迫させるよりは、友好国への供与という選択肢を考えているのでしょう。もっとも、既に解体を進めているMLRSであれば各国から引く手数多でしょう。

 韓国軍はKAI韓国航空宇宙産業社が開発したLAH軽攻撃ヘリコプターの導入を決定しました。これはAH-64Eアパッチガーディアンとのハイローミックス運用を念頭としたもので、エアバスEC-155ヘリコプターを原型としてライセンス生産しエアバスの協力を受け2015年より開発をおこなっていたLCH/LAHヘリコプターの攻撃型を用いる計画という。

 LAH軽攻撃ヘリコプターは一見してEC-155ですが、20mm機関砲ターレットを機首に搭載し側面のスタブウィングに対戦車ミサイルを搭載可能、試作機がカナダのイエローナイフ飛行場にて試験中です。今回の決定で5兆7500ウォン規模の契約となり、2024年にも韓国陸軍へ納入が開始されるのですが、海兵隊は別の機体を導入する計画を進めています。

 ヴェトナム人民軍はZSU-23シルカ自走高射機関砲の近代化改修型を発表しました。これは旧ソ連に供与され多数を長期にわたり運用してきましたZSU-23について、主武装を従来の23mm機関砲四連装としたまま、ヴェトナムが独自設計した電子光学照準装置とロシアから供給されたイグラ携帯地対空ミサイル発射装置を追加したものとなっています。

 ZSU-23は23mm機関砲の射程に大きく制約されていました、その背景には大きな車体が航空機から発見されやすいものの機関砲の射程が2500mしかなく高度1500m以上の目標へは打つ手なしの状況でした。イグラは連装発射機2基の4発を搭載、これにより交戦距離は5500mとおおはばに延伸し高度3000mまでの航空機に対して戦闘が可能となります。

 ギリシャ陸軍はアパッチガーディアン戦闘ヘリコプター搭載用のスパイクNLOSミサイルを導入します。ギリシャ陸軍ではスパイクNLOSについてヘリコプター搭載用とともに海軍の特殊作戦用舟艇への搭載や空軍航空機への搭載も見込まれているとのことで、非公式にその導入費用は4億ドルにのぼるものであるとギリシャ国内地方紙が報じています。

 スパイクNLOSはイスラエルのラファエルアドバンスドディフェンスシステムズ社が開発した長射程の対戦車ミサイルであり、初期型は光ファイヴァー誘導方式、現在量産されているものはTV電波誘導方式を採用し射程は25kmに達しています。ラファエル社では射程を実に50kmにまで延伸した第六世代型スパイクNLOSを開発試験中と発表しています。

 フランス陸軍はルクレルク主力戦車のルクレルクXLRへの近代化改修型配備計画を発表しました。フランス陸軍は冷戦時代に開発された多種多様な車両の刷新を進めるスコーピオン計画を推進中であり、この計画には現在装備されている222両のルクレルク戦車のうち、2025年までに122両をシステムに適合化改良し当面維持する方針が盛り込まれました。

 EMBTとしてフランスは将来戦車開発も進められていて、ルクレルクXLRはパワーパックなどについては既存のルクレルクとおなじものを搭載しますが、防御力は相応に強化され、車体部分と砲塔部分に追加のモジュール装甲を装着、これは30mmから50mmの装甲厚となっています、ルクレルクにはモジュール式の複合装甲が基本型として装備されています。

 ルクレルクXLRはデータリンク能力向上も含み、また改修は赤外線ステルスの分野にも及ぶとのことで、搭載するエンジンにハイパーバーシステムを追加し赤外線放射を抑制するとともに視覚に入りやすい白煙や黒煙を抑制する効果があるとのこと。そしてギャリックス80mm発煙弾発射装置が14発搭載され、いざというときに車体を迅速に煙覆します。

 インドネシアのPTピンダット社はトルコFNSS-ZAHA-MAV水陸両用装甲車試験をインドネシア国内で実施しました。MAVとはマリンアサルトヴィーグルの略称であり、インドネシア海兵隊では旧式化したフランス製AMX-10P装甲車の後継として水陸両用装甲車を模索しており、ZAHA-MAVは潜在的な候補車両の一つを考えられています。

 ZAHA-MAVはインドネシア軍にかつて200両も多数が装備されていたAAV-7やソ連製BTR-50など水陸両用装甲車がありましたが、現在大幅な定数割れとなっていまして、一時はロシアからBT-3F水陸両用装甲車79両を導入する計画だったものの、ロシア軍ウクライナ侵攻により棚上げとなっています。FNSS社はこの点で協力を申し出ています。

 アメリカ陸軍はFLRAA将来長距離強襲航空機としてベル社のV-280ヴァロー可動翼航空機を選定しました。FLRAA計画とは現在のUH-60ブラックホーク多用途ヘリコプターの後継機を選定するもので、従来のヘリコプターよりも高度な巡航速度と航続距離が要求、これにより計画に参加する候補機は複合ヘリコプターなど新技術を採用しました。

 V-280ヴァローはアメリカ海兵隊などに採用されているMV-22オスプレイと共通する可動翼航空機構造を採用しています、一方でMV-22は海軍強襲揚陸艦搭載を念頭に可動翼そのものを折りたたみ構造とする非常に難しい設計を強いられ、技術的に難航しましたがこの点でV-280は輸送機への搭載条件を大幅に緩和し構造を単純化することに成功している。

 可動翼航空機は優れた巡航速度と主翼による大きな航続距離を獲得していますが、他方で空気抵抗の少なさが急減速に対応しないことからヘリコプターのような超低空の匍匐飛行能力を有していません。ただ巡航速度は実に520km/hに達し航続距離は3900km、戦闘行動半径も930kmから1480kmに達し、試作機は2017年に初飛行し試験されてきました。

 ポーランド政府はM-1A2戦車に関する37億5000万ドルの有償供与認可をアメリカ国務省から受けました。ポーランド軍ではロシア軍脅威の増大を受け、レオパルド2の不足と旧式のソ連製T-72戦車を迅速に置き換えるべく韓国からK-2戦車のライセンス生産契約を結ぶとともに、世界最強戦車と考えるアメリカ製M-1A2戦車の導入計画を進めています。

 M-1A2戦車は2022年8月にポーランド国内のビエドルスコに戦車教育センターを開設していますが、今回戦車輸出が正式に許可され、戦車116両と戦車回収車12両、戦車橋8両とM-577指揮車6両おおびJLTV統合戦術車両26両、M-829弾60000発とM-865APFSDS弾50000発、M-830HEAT弾100000発、M-1147榴弾など130000発が含まれています。

 韓国陸軍はCH-47輸送ヘリコプター18機を15億ドルで取得する計画についてアメリカ国務省からのたいがい有償軍事供与認可をうけました。韓国陸軍では現在第2航空旅団の第301ヘリコプター大隊と第302ヘリコプター大隊で運用しているCH-47D輸送ヘリコプターの老朽化へ、新型のCH-47F輸送ヘリコプターへの置き換え計画を進めているところ。

 15億ドルの契約にはヘリコプター18機とともにヘリコプター用エンジンとしてT55-GA-714Aエンジン42基とCMWSミサイル警報システム22基、AN/APR-39レーダー警戒システムとRT-1987通信装置やAN/APX-123A敵味方識別装置など一式を含んだものとしています。この計画は2022年1月に韓国国防省で決定され、調整を進めてきました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« プーチン大統領-ベラルーシ国... | トップ | 【京都発幕間旅情】榛名さん... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

インポート」カテゴリの最新記事