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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

航空防衛作戦部隊論(第三一回):航空防衛力、航空防衛戦第一段階の統合防空作戦

2016-02-22 23:01:48 | 防衛・安全保障
■航空防衛戦第一段階
 専守防衛を国是とする我が国は有事の際、第一撃を受動的に対応し、爾後の航空防衛戦闘に臨まねばなりません、臨時分屯基地への分散はまさにその具体的施策として提示しました。

 NIFC-CA、海軍統合防空火器管制能力が航空自衛隊のE-2D導入と共に整備され第一線部隊へも自衛隊統合データリンク能力を強化する形で付与されることとなります。戦闘機だけ前進したとしても適切なデータリンクが無ければ、緊急発進さえもできませんが、NIFC-CAの能力整備は、イージス艦や護衛艦と早期警戒機情報を包括化し統合管理する事が可能となるでしょう。

 護衛艦との連携を繰り返し強調する背景には、通信ネットワークをシステムとしてモジュール化したものが護衛艦である為で、勿論最新鋭の一桁護衛隊、護衛隊群の所属艦でなくとも、二桁護衛隊、自衛艦隊直轄艦でも通信機能が十分確保されているならばその任務に対応可能です。勿論、臨時分屯基地へ通信隊分遣隊を派遣する必要性はありますが、作戦運用において現代戦を展開するのに通信は不可欠です。

 まず緊急発進をネットワーク化し複数の臨時分屯基地飛行中隊を管制する事が出来、更に巡航ミサイル攻撃などに対しては、護衛艦からの僚艦防空能力の支援により防空を展開する。もちろん、通信端末を合わせて展開させる手法が必要でして、これは可搬式コンテナと可搬式アンテナ装置により、第一線通信網を構築する必要がありますが、これまでよりも例えば輸送ヘリコプター一機分の輸送力で展開可能となる装備の機能が広くなるということ。

 臨時分屯基地を展開させる状況は緒戦ですので、まず分遣防空チームを展開させる状況を想定しますと、展開手段に用いる空輸手段は救難ヘリコプターによる空輸支援でしょう。分遣防空チームの機材は1個分遣班を携帯地対空誘導弾2セットと機関銃1丁として、携帯地対空誘導弾射手4名と機関銃射手及び弾薬手2名に射撃指揮官1名の計7名、救難ヘリコプターは15名を空輸可能なUH-60J系列で機上救難員の区画がありますが、防空装備コンテナと要員7名、なんとか1機に収容できるでしょう。

 もちろん、臨時分屯基地へはコマンドー攻撃などが想定されますし、又臨時分屯基地も航空攻撃の標的となります、地方空港は有事の際に優先攻撃目標となるのに合わせ、もう一つ、地方から疎開する非戦闘員の輸送拠点ともなり得ますので、必要な防衛措置をとす必要、また、周辺地域へ航空攻撃の付随被害が生じる場合に備え、陸上自衛隊との作戦協定に基づく展開も必要です。

 戦闘機の整備機材ですが、可搬式の器具として戦闘機を整備する上で必要な機材は、どの航空団で聞きましても、例えば軽トラックの荷台に搭載する事が可能な規模には収まらない、とのこと。戦闘機にはJAS-39のように元々整備機材を最小限に抑えて分散運用を念頭とした機種やMiG-29のように前線運用を第一として最低稼動率を最高稼動率以上に重視た機体は存在します。

 これはMiG-29が多少不具合があっても離陸し航空戦闘に対応するソ連空軍と防空軍の運用区分に合致した機種として設計されたものです、しかしF-15は設計時点でこのような配慮よりも装甲戦闘力を重視している事から、そうはいきません。そこで、一例としてC-130H輸送機に搭載可能というコンテナ容積と器材総量を念頭に2機から8機のF-15戦闘機が任務飛行を行う上でどの程度展開できるかの戦闘支援能力を数値化し、共有できるようすべきです。

 その上で展開する航空部隊がどの程度の航空作戦を展開可能な体制に維持されているかを統合防空任務司令部は常時把握できる状態とし、分散運用の対象となっている部隊が孤立しない状況を構築し、滑走路は離れているがデータリンクにより常時相互支援を受け得る体制下に維持する運用基盤構築が必要でしょう。統合防空作戦展開は、航空自衛隊の主管任務であると同時に陸海空自衛隊の協同を以て、通信と基地防空面で統合戦闘力を発揮すべき、という視点です。

 このように、臨時分屯基地へ有事の際一時航空団隷下の飛行隊を分散運用する事で、航空優勢を喪失する状態だけは避けられるでしょう、ただし、臨時分屯基地は如何なる場合でも戦闘を継続するという意思の表れであると共に防衛戦闘の一形態に過ぎません。長期的に展開する場合は航空消耗戦に追いやられ、消耗戦を勝ち抜く具体的施策を提示しなければ、最終的に磨り潰されてしまうでしょう。

 航空自衛隊の任務は航空優勢確保を以て、憲法が定めた国民の権利と国家の主権を維持することにあります、これは防衛戦闘を軸とした航空撃滅戦に勝ち抜く必要があり、この為に、臨時分屯基地への分散運用は重要な緒戦での奇襲を受動的に耐え抜き、航空防衛力基盤の再構築までの第一段階であるとの認識が必要です。ここで、航空自衛隊の航空団は、その総数を縮小してでも隷下戦闘機配備数を増勢し、一個当たりの継戦能力の強化を示しました、即ち、第二段階には分散運用以外の集中運用というものも同時に想定しなければなりません。

北大路機関:はるな くらま
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