◆前日名護市嘉津宇岳遭難事案UH-60JA災害派遣
8月5日1600時頃、沖縄本島北部の米海兵隊キャンプハンセンにおいて訓練中の米空軍HH-60救難ヘリコプターが墜落する事故がありました。ただ、報道と対応に少々違和感を感じましたので、本日はこの話題を。
HH-60は炎上、地上施設や民有地に被害はありませんでしたが、乗員1名死亡、3名が負傷しました。HH-60とは救難ヘリコプターで、航続距離933km、12名の輸送能力を有するもの。米空軍はHH-60Gを105機運用しており、空軍に64機、州兵航空隊に18機、予備役部隊へ23機が運用されています。
HH-60は在日米軍ではどう使われているのでしょうか。嘉手納基地へ9機が配備されており、自衛用に機関銃等を複数搭載、MC-130等と共に戦闘救難任務を含めた救難任務に対応するほか、海兵隊や特殊戦部隊の空輸や災害時の物資輸送などにも対応します。原型は米陸軍のUH-60で、我が国でも陸海空自衛隊が運用中の機体と同じ。
米空軍のHH-60は航空自衛隊のUH-60救難ヘリコプターと同様の運用が為されますが、HH-60は武装しており、これは米空軍では航空打撃戦などへの戦闘機展開を行うため、例えば米軍の展開していない内陸部などへの任務の際に撃墜されるなどした際には、敵部隊の脅威を排除しつつ搭乗員を救助する戦闘救難任務を想定しているためのものです。
何故海兵隊施設で墜落したのでしょうか。今回の墜落はキャンプハンセンの106ゲート付近の森林に墜落したもので、キャンプハンセンには飛行場施設はありませんがヘリコプターの発着を行うヘリパットがあります。海兵隊施設での空軍ヘリ訓練ですが、救難ヘリは夜間低空匍匐飛行や精密航法能力があり、過去には紛争地の在外公館救出へ海兵隊部隊を輸送した実績もあります。
それではHH-60は危険な航空機なのでしょうか。詳しくは後述しますけれども、HH-60の墜落原因は現在調査中ですと前置きしたうえで、もともとHH-60は安全性を重視した航空機である半面、航空救難という航空機の安全性を度外視した訓練、というのも航空機が墜落するような気象条件下で墜落航空機救出へ向かう航空機であるため、なのですが、運用が為されるため、どうしても飛行条件は過酷となりがちです。
なお、今回の墜落事案を重く受け止めた米軍は、海兵隊の旧式化した普天間基地のCH-46中型輸送ヘリコプターの代替へMV-22可動翼機を岩国基地へ陸揚げし、試験飛行の後、順次普天間基地へ回送する計画を一時棚上げすると共に、日本政府の要請を受け、事故を起こしたHH-60救難ヘリコプターの飛行中止を決定しました。飛行停止はHH-60だけのもようで、UH-60には適用されておらず、よって自衛隊の救難ヘリコプターなどにも影響はありません。
ただ、当方は個人的見解として少々政治的配慮を行い過ぎているのではないか、と考えます。この種の事故に際し常に検証の疑問符の対象にあげられるのは安全性です。この視点でHH-60ですが、安全性を重視し広く採用されています、日本でも、その原型機であるUH-60は陸上自衛隊の多用途ヘリコプターや海上自衛隊と航空自衛隊の救難ヘリコプターとして運用され、航空自衛隊はUH-60改を新救難ヘリコプターとして開発を開始しました。
このほか派生型のSH-60J/K哨戒ヘリコプターは海上自衛隊の主力回転翼哨戒機として運用されています。また米海軍も同様に運用し、陸軍もキャンプ座間へ配備しているほか、世界中で広く運用されており、例えば日本周辺では韓国軍や中華民国軍、天安門事件以前に輸入した機体を高山部輸送用に中国人民解放軍も運用しています。運用に際しても安全性という議論はありませんでした。
特に航空自衛隊の航空救難団には32機が装備されていますが、乗員の信頼は高く、東日本大震災では航空救難団の主力として活躍し、実に孤立地域から9000名以上の被災者を救出する任務を果たしました。本機はヴェトナム戦争におけるUH-1の脆弱性から防御力と生存性を重視した設計であり、エンジンは双発、仮に片方が故障し停止しても墜落には至りません。
この機体は危険ではない、という具体例として、今回のHH-60墜落事故に際し、沖縄県の仲井間知事は不快感を表明しましたが、仲井間知事は8月3日夜に沖縄県名護市嘉津宇岳における登山遭難事案に際し、消防での対応が困難と判断し、陸上自衛隊へ災害派遣を要請、那覇駐屯地の第15旅団はUH-60JA多用途ヘリコプターを災害派遣させ、救出している事例からも危険ではないという事が端的に理解できるでしょう。
今回の事故は米軍機と自衛隊機が同型であるうえで、米軍機が危険というならば、米軍に換えて自衛隊の米軍任務を代行できるような大兵力を、策源地攻撃や台湾救援を含め行え、という事かと言えばそうでもない。事故が派生する旧型機が問題なのかと問われれば新型機への置き換えへ反対する。それでは現用機で事故が発生しても維持するべきなのかと言えばそうでもない。さりとて、中国軍が来るのは、困るというはなし。
幾つもの主張が絡まってしまっています。本来はMV-22の反対の背景は事故率の高さではあるのですが、それならばHH-60の事故をその主張に利用する方策は間違っているのではないか、こう考えずにはいられません。もっとも、MV-22操縦席に可視レーザーを照射し飛行を妨害する事案や、着陸経路に風船多数を妨害に投じるなど、墜落事故が起きないのならば起こそうと思っているとしか受け取れない行動も為されておりこのあたりは全く理解できないのですが。
他方で、現実問題としてですが今回の墜落事案を受け、沖縄ではこの事故をMV-22沖縄配備反対運動への利用を早速はじめています。違和感で大きなものでは、MV-22反対運動と連動させることに矛盾があるのでは、というあたりです。実のところ、在沖米軍の航空機で顕著に旧式化しているのはMV-22への置き換えを待つCH-46のほうで、特に海兵隊の運用するCH-47Eは古い。
1970年代に生産終了した機体を近代化改修したものに延命改修を施し運用しているものですから、早めに置き換えなければ老朽化で事故の危険が増します。安全性を問うならば、さっさと旧式機を新型機へ、という話にはなると思うのは当方だけではないでしょう。
このほか、HH-60も将来的に空軍のCV-22へ置き換える構想があり、MV-22配備反対という声はそのまま、旧式化が著しいCH-46Eを維持し、今回墜落したHH-60の方を維持し続けろ、という主張ともなってしまい、どうしても矛盾を感じるのですが、これは手段の目的化という状況に陥ってはいないでしょうか。
確かに墜落事故は忌避すべきものではありますが、航空救難という体制は旅客機や船舶を含め遭難という危険性がある限り維持されていなければなりません。また、住宅街から2kmもの近さに墜落、もっとも北大路駅から叡電線と同じくらい遠いのですが、自分の頭上に降ってきては、と危惧することも理解できなくはないのですが。
ただ、それならば那覇空港の旅客機にも同様の危険があり、脅迫状と郵便制度、交通事故と自動車などきりがありません、政治的に利用されているのだから、と仕方ないのかもしれませんが、単に米軍基地反対を叫ぶ口実に供するのではなく、航空救難という重責への訓練へ殉じた搭乗員の冥福を祈る方が先ではないか、そう思いました次第です。
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
左翼に配慮する必要はない。
科学的に分析すべきだし、日本政府の反応もいきすだ。
まずは米兵に哀悼の意を表すところから始めなければいけないはずですね。
低空飛行して、墜落した。
1名の犠牲者が出たことは残念だが、沖縄の
反日左翼には、抗議するネタを提供したことになる。
陸自の作戦ヘリの双発化を急いでいただきたいね。
UH-1Jの後継機、OH-1のTS-1エンジンにヒンジレスハブローターつけて、テールローターは従来のものか?ダグテッドにするか、静音化効果と価格で比較して、開発して欲しいですね。
『自分達の主張は正しく、その行動は正当化されるべきものであり、反対する連中は完全悪だから何をしても問題ない』と思い込んでいる連中のやる事ですからね
常人に理解できないのは当然でしょう
>>単に米軍基地反対を叫ぶ口実に供するのではなく、航空救難という重責への訓練へ殉じた搭乗員の冥福を祈る方が先ではないか、そう思いました次第です。
基地反対している連中は、今回の事故に喜んでいますから、そんな事を望んでも無駄でしょう
基地反対派特有の、自分達を支持しない人間は人に非ずという、傲慢さがよく見えますよ
そもそもの間違いの始まりは普天間のような市街地の中の軍用飛行場があることだ。
大体元は学校があり役場があり人が住んでいた所を終戦間際に一方的に轢き潰して滑走路にして、それが60年以上もそのままになっているなんていうこと自体が異常というものだ。
空襲あとの焼け野原や津波の被災地で建物が無くなったからといって土地を勝手に滑走路にするなんて考えられないことだ。それが沖縄でだけはまかり通っている。
沖縄県が打ち出している要求は「嘉手納より南の米軍施設の返還」という実に現実的な内容。
何か台湾で事変が勃発して米兵が飛来したところで、台湾島に飛来するのは1時間少しでも、島内で作戦目標を探して何時間、何日さまよう羽目になるのだろう。
内地には尖閣防衛でオスプレイを持ち出して絶海の無人島に歩兵を置き去りにするなどと頓珍漢な話をするバカまでいるが(敵と戦う前に遭難だな、良くて兵糧攻めで餓死)
沖縄県民が一番日本の安全保障環境を冷静に把握できているだろう。
基本的に当方と同じ考えのようですが、一部誤解があるようなので。
>HH60のような機種でも墜落事故は起きる
いいかえれば、那覇空港に発着するボーイング737でも事故は起きます、中型旅客機では最も墜落件数が多い航空機です、何故ならば世界で最も広く多数が使われている機体ですからね、機種は関係ありません
>終戦間際に一方的に轢き潰して滑走路にして、
いえ、普天間飛行場は沖縄戦と本土決戦に備えた前線飛行場です、つまり戦闘中にどんどん増加する航空部隊需要に対応する飛行場が起源ですので、阪神大震災と王子公園自衛隊拠点を連想すると分かりやすいかもしれません
>沖縄県が打ち出している要求は「嘉手納より南の米軍施設の返還」という実に現実的な内容。
同感です、嘉手納以北のキャンプシュワブへの移設は急がねばなりません、普天間跡地利用計画を見ますと、リゾートホテル化など宜野湾市により提示されています
>台湾で事変が勃発して米兵が飛来したところで
米軍の任務は在留米人の救出が第一です、集合地点が国務省在外米国民保護計画により指定されるため、そこに展開します、集合地点へ米軍が何時間も迷うことはあり得ません
>尖閣防衛でオスプレイを持ち出して
同感です、MV-22はCH-47の輸送力は半分で取得費用は二倍、それならば第15旅団にMV-22換算6機分の航空機を増勢すれば、地対空誘導弾、中距離多目的誘導弾を中心に独立した戦闘が可能な部隊を展開可能です、自衛隊には特殊作戦群支援用など例外的な状況を除きMV-22の必要性は高くはありません