■輸送艦おおすみ災害派遣へ転進
輸送艦おおすみ、第15即応機動連隊はこの訓練を途中で切り上げ西日本豪雨災害派遣へ急行したと、先日知りました。
輸送艦おおすみ、LCACが発進し海岸線へ16式機動戦闘車や96式装輪装甲車に軽装甲機動車が揚陸する。LCACは世界中の90%もの海岸線に上陸できるといい、これは従来の揚陸艇や上陸用舟艇が踏破できぬ地形をそのまま突破、防波堤などが無ければ更に進める。
従来の上陸用舟艇では海岸地形、特に遠浅の海岸や珊瑚礁を乗り越えて上陸することが出来なかったために技術的には大きな進歩といえました。LCAC取得費用は一隻90億円といい、破格の費用を要するものですが、この能力の一端が示されたのは東日本大震災でした。
当時の横須賀地方総監、東日本大震災統合任務部隊海上部隊総司令官もLCACと艦載ヘリコプターがなければ災害派遣の任務達成度が全く違っていただろう、と回顧しています。ただ、静岡県沼津は防波堤と防風林が広がり、軟弱地形で車両を展開させねばなりません。
今沢訓練場での今回の揚陸訓練ですが、しかし、海岸線の地形の難しさを痛感させられた形で、実際に迅速な揚陸作業を展開するならば、少なくともLCACの揚陸地点へ金属マットを敷き詰める必要があります。これは自衛隊ならば、実は難しいことではありません。
おおすみ型輸送艦はCH-47輸送ヘリコプターの発着が可能ですので、金属マットと小型ドーザーを吊下空輸し、LCAC揚陸に先立ち海岸線での作業を完了してしまえばよいのです。CH-47輸送ヘリコプターを陸上自衛隊だけで55機、航空自衛隊も20機保有しています。
CH-47輸送ヘリコプター、CH-53やロシアのMi-26と並ぶ重輸送ヘリコプター、詰め込めば1982年のフォークランド紛争で200名乗れる。世界有数の空輸能力、大型ヘリコプターを20機以上保有している軍隊は世界中でも希有です、この空輸能力を活かさない手はない。
CH-47は非常に理想的な装備でして、アメリカ陸軍は欧州での訓練は勿論、お隣韓国での米韓合同軍事演習でも渡河に際し浮橋を数機のCH-47で同時輸送し河川上に数個、距離にして100m分に近い距離を一挙に展開させています。非常に素早い展開という印象でした。
重架橋も橋節ごとに分割したならば十分空輸できる、もちろん河川は流れがありますので流失しないよう動力船の先行展開は必要ですが、トラックで一節一節を連結するよりは非常に迅速に行っている印象でした。軽量な鉄板マットならば100m分でもそれ程重くない。
野戦装備の多くはCH-47での輸送が可能です、自衛隊も93式近距離地対空誘導弾や120mm重迫撃砲を空輸していますが、例えば揚陸資材の空輸展開も検討するべきだったのかな、と。揚陸任務とは空中機動により海岸堡と接近経路を確保します、それに併せて。
75式装甲ドーザ、第15即応機動連隊には75式装甲ドーザが施設小隊に配備されていますので、今回の訓練に展開させたらば海浜の砂地でも自由に行動できたかもしれません。水陸機動団も西部方面普通科連隊時代にカリフォルニア州での訓練で75式を参加させました。
BV-206、海岸線での運用を考えるならば陸上自衛隊はこの種の車両を大量に取得すべきと考えます。BV-206,スウェーデン製の全地形車両ですが、やはりこの種の用途に必要ではないか、海上も低速で進めますし70パーミルの上り坂や湖沼地帯をそのまま踏破可能という。
軽量ですのでCH-47での空輸も可能、対空レーダ装置や重迫撃砲に携帯地対空誘導弾などを一式搭載し機動できますし、弾薬など戦闘関連機材の輸送にも可能です。イギリス海兵隊やオランダ海兵隊も採用、フランス軍では山岳旅団の連隊に少数が分散配備されている。
全地形車両、BV-206でなくともフィンランドやシンガポール、近年ではロシアも開発していますが、水陸両用で山間部も踏破、両用作戦から山岳戦に災害派遣まで、普通科連隊や即応機動連隊に施設作業小隊単位で4両程度分散配置する必要があるように思えました。
今回の訓練は16式機動戦闘車を初めて揚陸したもので、第一歩、その上で一見した率直な感想として沿岸部を自由に行動できる車両をもう少し重視しなければならないのかな、と痛感しました。勿論、タイヤ空気圧を下げ接地面積を増大させる選択肢はあるでしょう。
揚陸作戦の先にある上陸作戦では空中機動作戦と連携し両用作戦を遂行するのですから、ひゅうが型護衛艦、いずも型護衛艦の支援を受け大規模な空中機動による海岸堡確保を連接し行う事でしょう。これを徹底すると訓練は大規模になってしまいますが、仕方がない。
揚陸は先行する水陸機動団の上陸に続いて行うため、調整次第で上陸支援を受けられるという点も忘れてはなりません。しかし、全国へ展開する即応機動連隊は揚陸能力を絶対に構築しなければなりません。75式装甲ドーザの参加を含め、即応機動連隊の沿岸部における機動力を高めるよう、訓練運用から装備体系まで、次の段階を期待しています。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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輸送艦おおすみ、第15即応機動連隊はこの訓練を途中で切り上げ西日本豪雨災害派遣へ急行したと、先日知りました。
輸送艦おおすみ、LCACが発進し海岸線へ16式機動戦闘車や96式装輪装甲車に軽装甲機動車が揚陸する。LCACは世界中の90%もの海岸線に上陸できるといい、これは従来の揚陸艇や上陸用舟艇が踏破できぬ地形をそのまま突破、防波堤などが無ければ更に進める。
従来の上陸用舟艇では海岸地形、特に遠浅の海岸や珊瑚礁を乗り越えて上陸することが出来なかったために技術的には大きな進歩といえました。LCAC取得費用は一隻90億円といい、破格の費用を要するものですが、この能力の一端が示されたのは東日本大震災でした。
当時の横須賀地方総監、東日本大震災統合任務部隊海上部隊総司令官もLCACと艦載ヘリコプターがなければ災害派遣の任務達成度が全く違っていただろう、と回顧しています。ただ、静岡県沼津は防波堤と防風林が広がり、軟弱地形で車両を展開させねばなりません。
今沢訓練場での今回の揚陸訓練ですが、しかし、海岸線の地形の難しさを痛感させられた形で、実際に迅速な揚陸作業を展開するならば、少なくともLCACの揚陸地点へ金属マットを敷き詰める必要があります。これは自衛隊ならば、実は難しいことではありません。
おおすみ型輸送艦はCH-47輸送ヘリコプターの発着が可能ですので、金属マットと小型ドーザーを吊下空輸し、LCAC揚陸に先立ち海岸線での作業を完了してしまえばよいのです。CH-47輸送ヘリコプターを陸上自衛隊だけで55機、航空自衛隊も20機保有しています。
CH-47輸送ヘリコプター、CH-53やロシアのMi-26と並ぶ重輸送ヘリコプター、詰め込めば1982年のフォークランド紛争で200名乗れる。世界有数の空輸能力、大型ヘリコプターを20機以上保有している軍隊は世界中でも希有です、この空輸能力を活かさない手はない。
CH-47は非常に理想的な装備でして、アメリカ陸軍は欧州での訓練は勿論、お隣韓国での米韓合同軍事演習でも渡河に際し浮橋を数機のCH-47で同時輸送し河川上に数個、距離にして100m分に近い距離を一挙に展開させています。非常に素早い展開という印象でした。
重架橋も橋節ごとに分割したならば十分空輸できる、もちろん河川は流れがありますので流失しないよう動力船の先行展開は必要ですが、トラックで一節一節を連結するよりは非常に迅速に行っている印象でした。軽量な鉄板マットならば100m分でもそれ程重くない。
野戦装備の多くはCH-47での輸送が可能です、自衛隊も93式近距離地対空誘導弾や120mm重迫撃砲を空輸していますが、例えば揚陸資材の空輸展開も検討するべきだったのかな、と。揚陸任務とは空中機動により海岸堡と接近経路を確保します、それに併せて。
75式装甲ドーザ、第15即応機動連隊には75式装甲ドーザが施設小隊に配備されていますので、今回の訓練に展開させたらば海浜の砂地でも自由に行動できたかもしれません。水陸機動団も西部方面普通科連隊時代にカリフォルニア州での訓練で75式を参加させました。
BV-206、海岸線での運用を考えるならば陸上自衛隊はこの種の車両を大量に取得すべきと考えます。BV-206,スウェーデン製の全地形車両ですが、やはりこの種の用途に必要ではないか、海上も低速で進めますし70パーミルの上り坂や湖沼地帯をそのまま踏破可能という。
軽量ですのでCH-47での空輸も可能、対空レーダ装置や重迫撃砲に携帯地対空誘導弾などを一式搭載し機動できますし、弾薬など戦闘関連機材の輸送にも可能です。イギリス海兵隊やオランダ海兵隊も採用、フランス軍では山岳旅団の連隊に少数が分散配備されている。
全地形車両、BV-206でなくともフィンランドやシンガポール、近年ではロシアも開発していますが、水陸両用で山間部も踏破、両用作戦から山岳戦に災害派遣まで、普通科連隊や即応機動連隊に施設作業小隊単位で4両程度分散配置する必要があるように思えました。
今回の訓練は16式機動戦闘車を初めて揚陸したもので、第一歩、その上で一見した率直な感想として沿岸部を自由に行動できる車両をもう少し重視しなければならないのかな、と痛感しました。勿論、タイヤ空気圧を下げ接地面積を増大させる選択肢はあるでしょう。
揚陸作戦の先にある上陸作戦では空中機動作戦と連携し両用作戦を遂行するのですから、ひゅうが型護衛艦、いずも型護衛艦の支援を受け大規模な空中機動による海岸堡確保を連接し行う事でしょう。これを徹底すると訓練は大規模になってしまいますが、仕方がない。
揚陸は先行する水陸機動団の上陸に続いて行うため、調整次第で上陸支援を受けられるという点も忘れてはなりません。しかし、全国へ展開する即応機動連隊は揚陸能力を絶対に構築しなければなりません。75式装甲ドーザの参加を含め、即応機動連隊の沿岸部における機動力を高めるよう、訓練運用から装備体系まで、次の段階を期待しています。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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