北大路機関

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新防衛大綱とF-35B&EA-18G【12】EA-18Gグラウラー,無人機と長距離対空ミサイルを対処

2018-03-29 20:05:02 | 防衛・安全保障
■何故いまEA-18Gグラウラーか
 EA-18Gグラウラー,今までの自衛隊装備体系に無い新装備であるとこれまでに強調しましたが、これが何故いま必要になったのか、その理由は端的に言えば今までにない脅威へ対処するため。

 電子攻撃機導入の背景には、S-500地対空ミサイルに代表される大陸外苑から日本本土を射程とする地対空ミサイルの脅威、日本本土へ脅威を及ぼす核弾頭搭載弾道ミサイル基地への策源地攻撃能力の必要性、島嶼部防衛等限定侵攻に際しての通信システム妨害という専守防衛上の要求等が考えられますが、もう一つ、無人機対策という喫緊課題もあります。

 EA-18G電子攻撃機であれば、我が国防空識別圏から領空侵犯の可能性がある無人偵察機に対し、進路変更や、場合によっては誘導も可能となるでしょう。電子頭脳で飛行する無人偵察機に対し、要撃機を飛行させ、中国語やロシア語の無線で呼びかけても反応は期待できませんが、無人機へ電子攻撃機の電子の声で呼びかける、構図としてはこういったもの。

 無人偵察機、特に今後大きくなる課題は高高度滞空型無人機による南西諸島方面への領空侵犯事案です。具体的には従来の対領空侵犯措置任務での要撃機緊急発進では、無人機への通信は勿論、誰何に応答する可能性も低く、技術的自由や政治的主張と共に領空侵犯を常態化される可能性があります。また滞空型無人機が長時間滞空した場合、要撃が難しい。

 滞空型無人機としてはアメリカ空軍が運用するRQ-4無人偵察機、その海軍型のMQ-4無人偵察機などが36時間もの滞空時間を有する代表的な機種ですが、中国は現在、機体規模や形状が非常によく似た、この中で重要なのは滞空時間がどの程度であるのかが未知数という点ですが、同様の運用を期した滞空型無人偵察機開発を兵器見本市にて発表している。

 南西諸島等へ長時間領空侵犯事案が発生した場合、仮に進出時間から滞空時間が24時間とした場合、南西諸島の那覇基地や南九州から24時間連続し、特定空域での監視活動を継続する事は非常に困難で、同様の滞空型無人機が複数機同時飛来した場合には、対抗措置として我が国も滞空型無人機を当該機発進基地偵察に充てるか、無人機撃墜かを迫られます。

 中国は実際、過去には無人偵察機を南西諸島周辺海域において運用し、南西諸島への領海侵犯事案へ発展の危惧があった時期もありました。しかし、アメリカ海軍が厚木航空基地より嘉手納基地へEA-18G電子攻撃機の前方展開と訓練を開始するのとほぼ同時期に、無人偵察機の出現頻度が著しく低下しています。これは電子攻撃機のポテンシャルのひとつ。

 勿論、滞空型無人機に完全AI人工知能による自己判断能力が付与され、慣性航法能力と地形照合装置を強化し、電子妨害やGPS等による電子標定能力を一切必要とせず、通信が途絶し電子妨害を受け誘導された場合でも航空機接近を自己判断で回避、任務飛行と往復飛行をAIのみで自律飛行できる、究極の無人機が完成した場合はEA-18Gでは対処が難しい。

 ただし、これは極論というもので、ここまで性能が向上した場合、有人戦闘機か無人戦闘機という、現在最新の第五世代戦闘機は勿論、第六世代戦闘機以降の技術、恐らく第七世代戦闘機の時代に入らなければ実現しない技術水準でしょう。従って、それまでの間、無人偵察機による南西諸島等への接近へ対応する、EA-18Gのような航空機は必要といえる。

 グレーゾーン事態として、滞空型無人機による異常飛行の頻繁化も考えられます。例えば滞空型無人機は滞空時間が24時間を超える機種については低速でも南西諸島のみならず本州太平洋岸での滞空が可能です。防空識別圏内を飛行された場合、打つ手なしでは飛行情報区の航空安全確保もままならず、問題が顕在化する前に施策を講ずる必要があるのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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4 コメント

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Unknown (電子科)
2018-03-29 20:12:48
F35の調達に重点化して、電子戦闘機はEA6をアメリカから中古で調達した方が安上がりではないか
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Unknown (軍事オタク)
2018-03-30 09:43:51
EA-18Gグラウラーは元々必要だったが、
攻撃的だとし、制空戦闘機偏重主義のいびつな
兵器体系になっていたのが原因かと。
これも平和ボケ憲法と左翼とマスゴミの責任も大きいでしょう。
オーストラリアでさえ配備するのだから、日本が20機位保有しても何もおかしくはないでしょう。
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Unknown (流線形)
2018-04-01 22:11:02
クウェートが22機のF型,6機のE型を合計USD275.9billion(100円/USD換算で、98.5億円/機)で発注しましたね。
これで、F18の生産ラインも当分維持される事が確定しましたね。
米国は、Block3:110機を2018年度予算で承認してますが、契約が成立している訳ではないし、
F35をF16並の価格に抑える計画も本腰を入れて取り組むようですから、
Block3を110機も本当に調達するのかは分からない状況なのかなあ。
まあ、クウェートのおかげで、2025年頃迄はラインが維持される可能性が広がる事になったので、日本が電子戦型の導入を検討する時間が確保されました。
スイスもRegacy F18を更新する計画を進めているので、こちらも目を離せません。
Defence Newsによると、スイスは、エリア88に出てくるような山岳航空基地を持ってるそうな、本当かどうかは分かりませんが。
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Unknown (流線形)
2018-04-03 19:19:33
スペルミスですね。申し訳ありません。
Regacy:X
Legacy:◯
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