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北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

北海道知床半島沖で観光船行方不明!KAZU-Ⅰ乗員乗客26名乗船のまま沈没か-荒天で難航する捜索救難活動

2022-04-24 20:00:16 | 防災・災害派遣
■臨時情報-知床沖遭難事故
 北海道の知床観光船KAZU-Ⅰが4月23日、遭難しました。これは旅客船の事故では令和時代に入って最大の船舶遭難事故となる懸念があります。なんとか生存者を期待したい。

 KAZU-Ⅰは排水量19tの観光船であり定員は30名、乗員乗客26名が乗船していました。小型船である為にAIS船舶位置表示装置はなく救助は難航している。事故は23日、知床半島周遊観光船KAZU-Ⅰが1000時に知床半島のウトロ港を出航しました、当初予定では40km先の知床岬まで航行し往復するという三時間の航路でした。しかし、ここに事故が発生しました。

 カシュニの滝、1313時にKAZU-Ⅰより運航会社に対し“沈みかけている”という無線連絡を発しました。そしてその五分後に当る1318時、ウトロ港から25kmほど先のカシュニの滝付近をにおいて、“船首が浸水”“エンジンが使えない”という通信と救助要請が出されました。そして1400時頃、“船体が30度傾斜している”との無線連絡があったとのこと。

 船体が30度傾斜している、これが最後の通信となりました。もともとは往復80kmの航路を1300時までに往復する行程だったとのことですが。海上保安庁と警察、そして北海道知事からの要請を受け航空自衛隊が出動しましたが、日没までに遭難位置を確認できず、24日の日曜日に入り10名が心肺停止で救助、死亡が確認されました。現在も生存者はなし。

 知床岬、要救助者が心肺停止で発見されたのは遭難信号が発せられたカシュニの滝から、更に14km離れた知床岬付近で発見されたとのこと。国土交通省によれば23日1300時頃の現場は、風が北西の風16.4mと強く、波浪は2mから3m、海水温は2度から3度となっています。生存者を祈りたいものですが、海水温が3度では30分ほどで低体温症になる。

 何が在ったのか。原因究明が待たれますが、KAZU-ⅠはFRP製船体であり、気になる情報として2021年に漂流物との衝突により負傷者が出る事故、そして座礁事故を起こしているという情報、また、他の事業者からの目撃情報として船首付近の2m程度の位置に15cmほどの亀裂が在った、という証言です。すると、FRP製船体特有の問題が思い浮かぶのです。

 FRP製船体は、亀裂が入りますと補修テープを貼る程度の応急措置以外は亀裂が広がる難点があります、鋼製船体のように破損個所を溶接して塞ぐ事が出来ませんし、木造船体の様に浮力もありません。例えば海上自衛隊も掃海艇を木造船体から最近のFRP船体に切替える際に、このFRPの特性が触雷時のダメージコントロールへ影響が懸念されていました。

 原因究明はもとより、船体の沈没位置さえ不明である中で拙速ではありますが、あくまで推測として、高い波浪とともに船体に圧力が加わり、亀裂部分が更に大きくなり大量の浸水が在ったのではないか、事故船舶の規模の船体規模では隔壁は進水を想定していないでしょうし、乗員は船長と甲板員のみ、機関部浸水が始れば航行不能となるのは当然です。

 救命胴衣と救助浮器など設置されているのは過去に撮影された写真でも確認できるのですが、低温の海域では救助浮器は溺れないよう掴まる程度のものです、低体温症は免れません、救命艇や自動膨張筏は設置するには小型すぎる船舶ですし、単行で北海道近海にて沈没した場合の安全策には無理があり、唯一の救命手段は一刻も早く水を出て採暖すること。

 救助は何故時間がかかるのか。先ず、知床半島全体は国立公園に指定されており、人口希薄な地域となっています。そしてKAZU-Ⅰは出航しましたが、他の事業者は悪天候の予報から運休となっており、波浪の高さから漁船などの出漁も見合わせ、つまり沈没した周辺海域に僚船や漁船などは存在せず、遭難位置が確認できない状態があったといえましょう。

 海上保安庁の救助も、近傍の100km圏内に羅臼海上保安署と網走海上保安署はあります、羅臼には巡視船てしお、巡視艇かわぎり。網走には巡視船ゆうばり、が配属されています。他方、海上自衛隊は北海道には札幌に近い余市基地のミサイル艇かはるか離れた函館基地の掃海艇、航空自衛隊は千歳救難隊があるのみ、遭難が陸上ならば第5旅団がいましたが。

 しかし、何故出航したのかという点が。乗客としては、特に救命艇のない小型観光船では救命胴衣だけでは一時間以内に他の船舶に救助される状況でもなければ、乗客には自ら安全を確保する方法が思い浮かびません、代金を支払った後で船体の傷を発見してものらないという選択肢は、社会通念上難しいのではないか、まさか、沈まないかとは聞けません。

 第一管区海上保安部と北海道警及び自衛隊とともに漁協や別の観光会社も協力して捜索救助を進めていますが、いまのところ26名の乗客乗員の内10名が救助され死亡が確認され、生存者が確認されていません。今日、国土交通省は運航会社へ特別監査をおこなったとのことですが、再発防止よりも、なんとか一人でも陸上に上がり採暖で生存していないか、願うばかりです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
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3.16宮城福島沖地震-福島第一原発福島第二原発,"最後の責任者は誰か"十一年前からの課題

2022-03-19 07:00:08 | 防災・災害派遣
■検証:3.16東北地震
 ノーモアヒロシマノーモアフクシマと云うは容易い。本来は2011年に解決すべき命題が時機を逸して放置されたまま改めて認識された、そんな出来事がありました。

 3月16日の深夜に発生した福島宮城県沖地震、久しぶりに緊急地震速報が発令とともに直後に大将都道府県が次々拡大するという恐怖を感じるとともに、原子力発電所が、結局は大事にはいたら無かったのですが、福島第一原子力発電所の使用済み核燃料プール冷却や炉心圧力の異常という報道が、いやな予感を感じ続けたあの2011年を思い出させました。

 福島第二原発では使用済核燃料の循環装置が一時的に機能不随となるなど、一応同程度の地震に対しては十分な対策は為されているはずなのですが、東日本大震災の教訓が活かされたとは中々言い難い状況となっています。そして何よりも現在の日本原子力発電体制において、東日本大震災にて不明確であった、最後の責任者、が不明確のままとなっている。

 最後の責任者とは。これは原子力行政以前の問題として、所掌する私企業の施設として原子力発電所があるのですから、行政は国有でない以上例えば強権発動を行えば、原子力事故を安定化させよ、政治主導の行政命令を発令する事は制度上可能です、ただ、ここで企業が撤退した場合、強権発動としても無理矢理施設から脱出する要員に罰則はありません。

 原発事故という、確たる前例があるにもかかわらず、福島第一原発事故以上の例えば短時間での許容被曝量限度を上回る状況において、所掌事業者が大量被ばくにより作業不能となった場合、最後に責任を持つのは誰であるのか、その為に必要な専門部隊や核事故での放射性物質降下地域での、憲法上の限界を超えた、作業を行う集団はどうあるべきか、と。

 電力会社と協力企業一つとっても、例えばM-113のようなNBC環境下で活動できる車両は聞く限りではありません、除染設備も施設型のものはありますが、広域除染や原発施設内の放射性物質降下環境での障害除去に関する専門機材もありません。そしてNBC防護能力ある輸送車も無い為に万一の際に周辺住民を退避させる手段もまた、無いままなのです。

 原子力発電所は今なお日本国内に多数が維持されており、そして日本のエネルギー安全保障からは欠く事が出来ない存在となっています。しかし、それだけに万一の事態、いや11年前の事故を上回る事態が発生した際の責任所在が制度として確立されていないまま、惰性の様に原子力発電を行う事もまた無責任と云わざるを得ません、原発維持の努力が薄い。

 昨夜の地震には原子力関連の被害情報がNHKなどにより流されると共に、結果的に大きな被害は生じていない訳ですけれども、悪い予感と厳しい記憶の再来を痛感したものでした。当地は距離はありますが、敦賀原発はじめ若狭湾原発密集地域において万一の状況となった場合には影響が及ぶ地域にいます故、どうしてもこの問題を深く考えてしまうのですね。

 最後の責任者はどうあるべきなのか、この本来は2011年の東日本大震災を受けて早い時期に結論を出すべき重要論点を、放置したまま、11年目の巨大地震を突き付けられた構図、そろそろ原発事故を、起こさないのではなく、最悪の状況が起きた場合の準備、ダメージコントロールという視点で準備する機会が昨夜の地震であったのではないかとも考えます。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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3.16宮城福島沖地震-震度六強&マグニチュード7.4の衝撃と課題再認識する新幹線と原発

2022-03-18 07:01:29 | 防災・災害派遣
■臨時情報ー東北地震
 福島県沖で発生した16日2336時の地震には改めて驚かされました。

 宮城県沖地震、この地域では常に周期的に発生している巨大地震です。今回の地震合直接宮城県沖地震の想定震源域に当てはまるものではないといされ、今回の地震は死者3名と負傷者200名以上、少なくない被害が生じているのですが、次の地震を懸念するところです。こういうのも、今回の地震は、双子の地震で姉妹の地震という特性があるためです。

 双子の地震、2334時の地震が一回目に在り震度五弱となっていまして、2336時に今回のマグニチュード7.4の地震、震度六強の地震がほぼ重なる震源域で発生しており、長時間の揺れとなたのかもしれません。双子の地震といえるものですが、同じ震源域ではこの近傍にて2021年2月13日にマグニチュード7.3の地震が発生しているとのこと。つまり昨年だ。

 姉妹の地震、双子の地震というのは二分違いの双子の地震とともに2021年の地震とともに姉妹の地震といえるのかもしれません。プレート内部にて発生した今回の地震、想定宮城家の記事芯の震源は今回の地震と2021年の地震と比較して更にやや北方が想定され、ここではプレート境界の浅震源が想定される事からより大きな揺れを観測する懸念があります。

 想定宮城県沖地震、この懸念は次第に2021年と2022年に発生した地震が想定宮城沖地震震源域に震源が近づいている為ですが、この宮城県沖地震として記録される有名なものは1978年6月14日に発生したマグニチュード7.4の地震で、ブロック塀倒壊の危険性が認識された災害であるとともに、死者28名と負傷者1325名、微弱ですが津波も観測された。

 3.11東日本大震災から11年目となりますが、想定宮城県沖地震の震源はもう少し陸に近く、仙台市という大都市が危険に曝されるという。防災計画は今後も緊張感を以て維持しなければなりませんが、今回の地震では、新幹線と原子力発電所、過去の地震において相応の対策が為されたであろう重要インフラについてもまだ余地があることを突き付けています。

 新幹線と原子力発電所、日本の安全神話には限界が来ているのではないかという危惧があります。JR東日本の市川副社長は、新幹線脱線について陳謝すると共に、脱線そのものを防ぐのはかなり難しいと見解を示しました。東海道新幹線は新幹線0系の時代に、ある程度は脱線事故を想定していたともいわれますが、現在の車両は地震前に停止する前提です。

 テラスシステムやユレダスシステムという、初期微動を検知し本震到達前に停止するという新幹線安全技術は、気象庁の緊急地震速報システムへと応用されています。ただ、テラスシステムは1974年の大規模地震対策特別措置法を念頭とした、想定東海地震への対応するシステムであり、直下型地震に対して震源が近く間に合わない可能性が指摘されました。

 東北新幹線は、しかし今回、震源が海上であり直下型ではない逆断層型地震となっていますがユレダスシステムが対応出来ない点、そして17両編成の16両が脱線するというものとなり、これもは那須塩原と盛岡駅が新幹線脱線のまま、今月中の復旧は難しいとのこと。高速道路は東北自動車道と常磐自動車道も一部不通ですがこちらは本日明日復旧見込み。

 原子力発電所は運転中の原子炉については被害はありません、しかし2011年東日本大震災により損傷した福島第一原発では、燃料デブリの置かれた一号炉格納容器圧力が地震後、圧力低下が在るとのことで、放射線データやダストモニターなどの数字に廃城がなく、放射線について漏洩は確認されていませんが、東京電力は圧力低下原因究明を続けています。

 深夜の地震でしたが、福島県では港湾施設のクレーンが折損崩壊、相馬市では歩道橋橋脚部分の折損、宮城県仙台市では仙台城の史跡一部が崩壊し、白石市内ではコンサートホールの天井崩落、また首都圏での通電火災など地震による被害は皆無ではありませんでした。仮に日中時間帯であれば被害が拡大した可能性もあり、僥倖と云うべきなのでしょうか。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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宮城県沖マグニチュード7.3地震-最大震度六強を観測,宮城県と福島県に津波注意報発令中

2022-03-17 02:01:29 | 防災・災害派遣
■宮城県沖地震想定地域
 16日2336時に緊急地震速報が発令されました。この規模の地震ですと陸海空自衛隊が航空機による情報収集を行う規模です。

 2336時、東北地方宮城県沖においてマグニチュード7.3の地震が発生し、宮城県と福島県沿岸部に津波注意報が発令されています。宮城県などで震度六強を観測している。小鹿半島沖60kmで震源の深さは60kmの逆断層型地震で、最大震度は宮城県登米市や蔵王町、福島県相馬市と南相馬市などで六強を観測しています。今後数日は余震も注意が必要だ。

 津波注意報は2349時に発令、防災上の留意事項として気象庁は津波が発生しているおそれがあり、海岸線や海の中で活動する事は危険であり潮流も早い状況が続いており、注意報が解除されるまで海岸にちか付かないよう注意するとともに、家屋倒壊や土砂災害、今後の降雨などにも注意し危険な場所に近寄らないよう、身を守る行動を呼びかけています。

 津波は0029時に石巻で0.2mの津波が観測されていると気象庁は発表し、潮位上昇中、気象庁は最大1mの津波を予報、注意報を発令しています。震度1以上の余震が発生し、また、今回の地震が発生する一分前に最大震度五弱の地震が観測されているといい、前駆地震の可能性もあります。なお、気象庁は今回の地震に際し緊急地震速報を発令しました。

 福島第一原発五号機のタービン建屋において火災警報装置が作動したとして消防へ通報した、0100時時点で使用済み燃料プールなどは情報を確認しているが、モニタリングポストの放射線情報に異常はないとのこと。福島第二原発では使用済み核燃料プールの冷却装置が停止しているが、原子力規制庁によれば冷却水の量から時間的な余裕があるとのこと。

 東京電力によれば、火災報知機は火災では無かったと確認されています。また三号炉の冷却装置について水位が低下したためバルブを閉める作業を実施した結果水位の低下は止まったが、冷却ポンプを動かす事が出来ない状態となっており東京電力は復旧作業を開始するとしています。福島第一原発第二原発は全ての原子炉が停止中ですが、冷却は必要です。

 停電に関して、0130時現在86万戸の停電が発生していて、新橋駅前などで停電がある。東京電力は、停電に関しては現在復旧へ情報を収集中としています。なお、東京電力は0140時時点の発表として停電は65万戸となっていますので、地域ごとに復旧が進んでいることがわかります。栃木群馬静岡での停電は解消したと発表されました。今後一時間が目安だ。

 新幹線脱線の情報があります、JR東日本によれば東北新幹線下りの新幹線やまびこ223号が脱線しているとしていて、この列車には96名が乗車していましたが負傷者などは出ていないということ。この地震に伴う緊急地震速報により、首都圏と東北地方の広い範囲で列車が緊急停止し、これにより一部は運転再開するも、ダイヤに大きな乱れがあるようです。

 宮城県沖では2011年に東日本大震災を引き起こした東北地方太平洋沖地震が発生していますが、これとは別に周期的にマグニチュード7クラスの宮城県沖地震が発生している事から警戒が呼びかけられていました。また、この地方では2021年2月13日でも東北地方では同じ太平洋プレート上にて震度6の地震が観測されています。今後も情報を見守りましょう。

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トンガ大規模噴火,輸送艦おおすみ被災地沖に到着!8000km先への国際緊急援助隊派遣と課題

2022-02-10 20:00:23 | 防災・災害派遣
■自衛隊輸送機空輸支援も続く
 8000km先への国際緊急援助隊派遣は平成初期にはなかなか考えられなかった困難さがありましたが、2020年代では充分可能となっています。

 1月15日に南太平洋トンガ王国のフンガトンガフアパイ火山にて発生した大規模火山噴火は、火山活動こそ幸いにして持続しませんでしたが、火山性津波と火山灰降灰により甚大な被害が発生し、オーストラリア、ニュージーランドと共に我が国も自衛隊輸送機部隊による国際緊急援助隊を派遣し、災害派遣任務を本格化させていますが、大きな動きが。

 トンガ大規模噴火災害国際緊急援助隊の輸送艦おおすみ日本時間2月8日夕刻までに現地へ到着したとのこと。これにより先行し任務を継続しているC-130H輸送機とC-2輸送機部隊と共により大きな輸送力を以て支援を開始する事が可能となります。航空機の運用に影響を及ぼす火山灰ついて、火山灰降灰は既に落ち着いており、飛行には問題ないもよう。

 おおすみ艦上では、現在搭載しているCH-47輸送ヘリコプターの防錆梱包を解除している最中といい、間もなく海上部隊の災害派遣が本格化します。おおすみ、時間が掛かりましたが日本から実に8000kmの長距離回航を成功させたこととなり、災害派遣ではタイペックス防護服を着用し現地へCOVID-19感染拡大を招かないよう配慮するといいます。

 おおすみ艦上にはCH-47輸送ヘリコプターが搭載されているとともに、LCACエアクッション揚陸艇も搭載、島嶼部国家であるトンガには一カ所に遊弋しつつ航空機と揚陸艇により支援が可能となります。ただ、噴火から三週間以上を経ており、今回搭載している火山灰洗浄用の高圧放水洗浄装置などの需要よりも、復旧から復興にシフトしている状況とも。

 防衛省はオーストラリアのキャンベラに設置されたICC国際調整センターへも連絡幹部を派遣しており、また空輸支援部隊として派遣されているC-130輸送機とC-2輸送機もアンバレー空軍基地を拠点に活動を継続していると発表されており、7日には派遣部隊の藤井1佐をオーストラリア空軍のチャペル准将が表敬訪問、日豪両軍の連携を確認しました。

 今後の任務として、トンガ政府は最大15mの津波が襲来したものの瓦礫等は少なく犠牲者は3名となっており、それ以上に課題は人口の2.4%にあたる2400名が津波により家屋流失などの被害に見舞われており、寧ろ日本としては仮設住宅等の資材供与が求められるのかもしれません。そして難しいのは、8000kmという距離を隔てての展開能力というもの。

 自衛隊の国際緊急援助隊派遣は、トンガ政府の要請を受け準備を本格化させたものの、例えば火山噴火の情報などが充分得られず、例えば航空機の発着は可能な程度の火山灰状況であるのか、実際の死者数やインフラ被害等の全容はつかめず、情報を待てば派遣が遅れ、拙速すぎれば8000kmを航行した先での現地需要との不適合という隔靴掻痒がありました。

 しかし、幾つかの自衛隊即応性に関する課題が表面化した事も否めません。例えば、今回はヘリコプター派遣を木更津の第1ヘリコプター団機材を派遣したものの、派遣された輸送艦母港は呉基地、支援車輛の移動などで千葉県と広島県の地理的な距離が派遣を数日単位で遅延させており、ヘリコプターを今後も海外派遣する場合の教訓といえるでしょう。

 輸送ヘリコプターを海上自衛隊は独自採用する計画で、UH-60を輸送ヘリコプターに転用する計画です。しかし、吊下げ空輸方式で輸送能力は非常に限られており、例えば呉基地から近傍、山口県は岩国航空基地の海上自衛隊MCH-101掃海輸送ヘリコプターを必要に応じ即座に輸送艦に搭載できる体制などを構築する必要も検討されて然るべきでしょう。

 8000km先への派遣というものは自衛隊と日本国憲法に基づく専守防衛の運用からは想定外、こう指摘される方もいるのでしょうが、現実を見れば、アフガニスタン邦人救出や中東で想定されるホルムズ海峡危機、現在進行中のウクライナ危機が拡大した杯の東欧邦人救出など、自衛隊は世界のグローバル化と共に邦人保護の任務にも対応せねばなりません。

 輸送機については、C-130H輸送機、次いでC-2輸送機が派遣されています。しかし、長大な航続距離を有するC-2輸送機、飛行隊定数が8機とC-130H飛行隊の半分しかなく、そして全国の基地と補給処を結ぶ業務輸送と兼務している為、8機の内の海外派遣即応機が少なく、例えばC-2輸送機の機数をC-1輸送機並に増やすか、別の選択肢が必要と考えます。

 業務輸送を別の航空機に転換させ、C-2輸送機の一定数を海外派遣任務即応に専従させる事が理想なのですが、1970年代から運用し続けているC-1輸送機をこれ以上延命する事は不可能で、例えばオーストラリア空軍は輸送力の大きなC-17輸送機を海外派遣専従とし、国内輸送はC-27輸送機に任せています。もう一機種増やすかC-2を増やすか、選択肢です。

 オーストラリア空軍はC-17輸送機、C-130輸送機、C-27輸送機を併用しています。ただ、三機種混成運用は一機種が緊急点検などで飛行出来ない場合に冗長性を残す反面、整備補給体系や教育訓練体系の複雑化により良い事ばかりではありません。C-2を海外派遣用、C-130を業務輸送用に転換する事も考えられますが、そのC-130も老朽化は進んでいます。

 C-130については海上自衛隊もC-130Rを運用していますが、YS-11ほど使い勝手は良くない、こういう指摘が
ありました。純然たる戦術輸送機なのですが、やはり米軍用途廃止機を再生するには稼働率の無理なども在ったのでしょうか。こう考えますと、業務輸送については実任務と分け、陸海空の共同運用部隊新設も視野に考えるべきなのかもしれません。

 輸送艦について。やはり時間が掛かり過ぎた、という認識か、8000km先まで艦艇による派遣という限界があったのか。ニュージーランド海軍のように要請を待たないプッシュ型支援として、要請が無ければ引き返すという運用を考えられたのかもしれませんが、保護国としての国際関係の歴史がありましたトンガとニュージーランドでは事情が違うのです。

 プレゼンスオペレーション。輸送艦に充分な余裕があれば、平時から国際緊急援助隊任務に必要な最小限の車両と様々な物資を洋上の防災倉庫として搭載し、プレゼンス発揮の為に遊弋させておく選択肢はあるのかもしれません。しかし、おおすみ型輸送艦は3隻、一般公開の際に気付かされることですが、艦内容積は通常任務を考えれば余裕はそれ程ではない。

 もがみ型護衛艦。ただ上記輸送艦不足については、新型護衛艦もがみ型が解決の糸口となるのかもしれません。FFM多機能護衛艦として設計された護衛艦で、多目的区画に一定程度の物資を搭載可能です。もちろん常時搭載には限界がありますが、例えば追加要員をUS-2飛行艇により洋上の艦上へ増強するかたちで、初動部隊として展開させる事は充分可能だ。

 もがみ型の強みは建造計画が22隻あり既に毎年2隻の6隻が建造中という点です。そして所属は輸送艦おおすみ型と同じ掃海隊群が予定されており、海外派遣の初動にも対応できるでしょう。今回のトンガ派遣、8000kmの距離を考えれば成功とはいえるのですが、今後世界において自衛隊に求められる任務を考えれば、考えるべき点も多いのかもしれません。

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自衛隊トンガ救援隊派遣,輸送艦おおすみ出航準備とC-2輸送機追加派遣-先発C-130豪州到着

2022-01-22 14:11:44 | 防災・災害派遣
■おおすみ出航準備すすむ
 本日は予定を変更してエンストロム社倒産とTH-480の話題を掲載予定でしたが再度変更し、大きな動きが在りましたトンガ救援隊の情報をお伝えしましょう。

 おおすみ出航。海上自衛隊はフンガトンガフアパイ火山噴火による火山性津波と火山灰被害に見舞われたトンガ救援へ、航空自衛隊のC-130輸送機、そして追加投入が決定されたC-2輸送機とともに、海上自衛隊の輸送艦おおすみ派遣を決定し、呉基地にて出航を準備中です。海上自衛隊では輸送艦は3隻のみとなっており、22日中に出航させたい構え。

 CH-47J/JA輸送ヘリコプター、今回輸送艦おおすみ甲板には陸上自衛隊のCH-47J/JA輸送ヘリコプター2機を搭載し、現地での空輸支援に充てる方針です。CH-47J/JA輸送ヘリコプターは、おおすみ母港呉基地隣県の美保分屯地に中部方面航空隊第三飛行隊が装備しており、また木更津駐屯地や高遊原分屯地、草摩が原駐屯地や那覇駐屯地に展開しています。

 トンガは170の島嶼部より成る人口10万の島嶼部国家で、おおすみ型輸送艦に搭載するLCACやCH-47輸送ヘリコプターは島嶼部間の物資輸送などにも寄与することでしょう。一方、現地では懸念されていたCOVID-19の市中感染が報告され始めており、厳格な国境封鎖により回避、今回の支援も非接触により進めていた中の新しい懸念材料となりました。

 C-130輸送機は小牧基地を出発し日本時間21日1700時、20時間を経てオーストラリアのアンブリー空軍基地に到着しました、アンブリー基地ではオーストラリア空軍の支援車輛により機内支援物資確認、オーストラリア空軍との調整を実施しているとのこと。これに先立ちオーストラリアのキャンベル国防軍司令官と山崎統幕長が電話会談を行いました。

 山崎統幕長と艦ベル国防軍司令官との電話会談は自衛隊のトンガ飛行に際してのオーストラリア軍支援の要請で、これにより後続部隊の支援も受けられるという。過去の自衛隊派遣を見ますと、1994年モザンビーク派遣では実に五日間の長期間を経て空輸しており、これはC-130H輸送機の航続距離の短さ所以といえるのですが、今回は短縮されるもよう。

 22日中にもC-130輸送機は現地へ到着する見通しですが、派遣は20日、現地で不足が報告されている飲料水など輸送していますが、オーストラリア軍は満載排水量27800tのキャンベラ級強襲揚陸艦を派遣、ニュージーランド海軍は哨戒艦ウェリントンが物資を搭載し現地へ到着、補給艦アオテアロアも準備中であり、後者は海水濾過装置を搭載しています。

 おおすみ艦内には救援物資のほか、高圧洗浄機と医療支援機材、現地での末端輸送に必要な輸送車両やリヤカーといった供与品を搭載しています。海上輸送は時間がかかる、オーストラリアの強襲揚陸艦アデレードもブリスベーンを出航後、現地までは5日間を見込んでいるとのこと。やはり、迅速な救援には空輸が要諦となりますが、ここに新しい知らせ。

 C-2輸送機、防衛省は21日夜にトンガ救援隊への増強部隊として、美保基地のC-2輸送機2機の追加投入を決定しました、22日中にも進発するとのこと。C-2輸送機は4tを搭載した場合で10000kmの飛行が可能、最大36tを搭載可能です。本来は初動で投入が望ましかったのですが、C-2を運用する第403飛行隊は輸送機が8機しかなく、これが響いたのか。

 C-2輸送機は巡航速度をボーイング777など旅客機と同程度として国際航空航路を利用できる利点があります。一方で、小牧基地の第401飛行隊は16機を装備しローテーションにより海外派遣など緊急時に備えていますが、C-2は当初12機で編成する飛行隊を8機に縮小し、いわば予算節約が肝心な際に役立てないという結果に繋がったのかもしれません。

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トンガ大規模噴火,VEI火山爆発指数ではピナトゥボ1991年噴火を下回り"火山の冬"は回避か

2022-01-19 20:22:23 | 防災・災害派遣
■フンガトンガフンガハアパイ山
 巨大噴火に見舞われたトンガについてニュージーランド空軍のP-3哨戒機が無事を確認しオーストラリアは救援へキャンベラ級強襲揚陸艦派遣を大車輪で準備中です。

 ピナトゥボ火山を下回る、火山爆発指数では1991年に噴火したフィリピンピナトゥボ火山噴火を下回るとともに、1980年のセントヘレンズ火山噴火や欧州の航空航路を混乱させた2010年のアイスランドにおけるエイヤフイヤトラヨークトル火山とも同程度かそれ以下の可能性もあるという。これは必然的に世界の気象への影響も極めて限定的となる訳です。

 トンガ国内では首都の火山灰堆積などにより飲料水の汚染が続き、また空港に航空機が発着できない為に降灰の除去が必要となりますが、降り積もった火山灰は10センチ程度、もちろんトンガの一部の島には更に大きな火山灰被害が生じている、火山性津波も15mであったなど、大変な状況ではありますが、火山の冬や全国民退避の必要はなく復興可能です。

 フンガトンガフンガハアパイ火山の山体崩壊。火山爆発指数がVEI7に及ばないのは勿論、VEI6以下かVEI5程度に留まる可能性があるのは、山体崩壊に至った最初の大規模噴火を最後に現地では大規模な火山活動が続かず、17日にAFP通信が再度の大噴火を報じましたが誤報であったと訂正されています、要するに噴火が持続しなかった為、噴出量も少ない。

 山体崩壊に至った背景として、水蒸気爆発と隆起した海底火山という二つの特性が挙げられます、これは地下のマグマ溜まりに海水が触れたという、内陸部の火山では発生しにくい構造があります。ピナトゥボ火山噴火などは山頂の火山湖に蓄積した雨水が火山性地震により生じた亀裂に浸透し水蒸気爆発を誘発しましたが、その噴火まで三カ月を要した。

 前駆噴火、15日の既にトンガ当局などから発表されている大規模噴火前日の火山噴火がありますが、これにより標高149mに達していた火山は大部分が吹き飛んだと衛星写真により判明しています、そして前駆噴火により亀裂が生じた、この際にマグニチュード6規模の地震も発生していますので、ここでマグマ溜まりへ一挙に海水が浸透したと考えられる。

 水蒸気爆発、日本へ津波を到達させたブラストはこの水蒸気爆発により生じたものですが、火山湖に溜まる雨水などとは総量が違います、前駆地震により生じた亀裂に海水が浸透した事で一挙に全部弾けてしまった、これば強烈なブラストの正体です。そしてこの噴火が持続していたならば、火山爆発指数は増大したのでしょうが、七時間ほどで終息に転じた。

 VEI火山爆発指数は火山からの噴出物により算出されます、これには火山灰も火砕流も岩屑雪崩も含まれるのですが、フンガトンガフンガハアパイ火山は海底火山ですが海底に在るカルデラとは距離を隔てた外輪山の一つでしかありません、例えば、すると海面上に出ていましたフンガトンガフンガハアパイ火山の標高149mは伏見稲荷大社の稲荷山より低い。

 火山爆発指数とは火山性排出物の総量で計算される、0.001立方キロメートル以下ではVEI1であり0.01立方キロメートル以下ならばVEI2,そして0.1立方キロメートル以下だとVEI3,更に1キロ立方メートルを超えるとVEI4で、VEI7となると100立方キロメートルの排出物となります。富士山が根こそぎ噴火の規模ではなく、伏見の稲荷山より低い山だ。

 岩屑雪崩、山体崩壊により生じた岩屑雪崩の総量もVEI算定の火山性堆積物には加算するのですが、上記の通り山そのものが小さく、そして火山活動が持続しなかった訳ですので、火山灰もメートル単位で積み重なる状況は避けられています。今後は日本を含めた世界からの支援で、どのようにトンガが火山灰の被害から復興するかという点が重要でしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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1.17阪神淡路大震災ー兵庫県南部地震から27年,災害文化-震災記憶伝承と次の災害への備え

2022-01-17 20:07:28 | 防災・災害派遣
■南洋噴火,また崩れた安全神話
 トンガのフンガトンガフンガハアパイ火山噴火に伴う津波、実際には高潮の真逆に近い事象でしたが気象庁の津波予測は確実という一つの安全神話が崩れました。

 本日は兵庫県南部地震、阪神淡路大震災27年目の慰霊の日です。27年目ともなりますと、自衛隊の装備で阪神大震災災害派遣へ派遣された装備は既に退役しているものが大半、とわだ型補給艦、あさぎり型護衛艦や一部のトラックなどでしょうか、多用途ヘリコプターの大半と観測ヘリコプターは代替わり、改めて27年という期間を長く感じるものですね。

 RF-4偵察機全廃から間もなく二年、後継のRQ-4配備はまだ開始されず、いま災害が起きたならば、一昔は現実でも映画でも巨大災害と云えば偵察機という描写、いまはやはり戦闘機であるF-15から目視で偵察するのか、映像伝送器を積んだUH-1Jヘリコプターの離陸を延々待つのか、報道映像が入るのをNHKを視聴して待つのか、少々不安になります。

 朝早かったものですから驚いた、驚いたというのはあの日偶然朝早く目覚めまして、少し好きな読書でも愉しめそうだとしていたところに、こう、地鳴りとともに揺れ始める、いや建物が揺れる軋みとともに揺れを実感し、不気味なのは徐々に揺れも音も大きくなり、このまま大きくなり続けるのか、建物が倒れるのか、恐怖した数秒は数分に感じるほど。

 神戸があんなことになっているとは夢にも思わず、テレビを急いで点けましたが情報などなく、報道では大阪か奈良が震源の様な印象を受けつつ、神戸からの情報が無い事は神戸に何も無かったからだろうと誤解させるような、現実には被害を伝える手段が何も無かった訳ですが、そしてどうやら被害が神戸に集中、甚大と分かるのはもう少し後の事でした。

 震災の記憶が、と語られるところではありますが神戸市を散策しますと不思議な空き地や街路一角の画一的な建築物群と、復興を思い出させる風景は実のところ多い事に気付かされます。しかし福井地震や伊勢湾台風、風化してしまった巨大災害も数多い事も事実です。ただ、災害の際にどのように行動するか、発災直後は瞬間の数秒が生命を左右するという。

 災害文化、巨大地震に際しては誰一人として冷静ではいられないが前部の人々が一斉に理性を失う数秒間の間に多くの決定的な事が起こり災厄は増大へ向かう、戦前まではこれを回避する為の文化が在ったものだと、災害文化と云う表現をかのSF大家小松左京氏は“日本沈没”の東京大震災においてこう表現しています。震災の記憶、こう伝承されて欲しい。

 災害に直面した際に知識では無く反射的に何を行えば生命が助かるのかという仕草、防災技術が一定以上進みますと危機感というものは技術により危機を回避できるであろう、という認識に置き換わるのかもしれません。例えば、震災では日本の耐震技術は、京阪神では摩耶水害を念頭に屋根が頑丈で重心が高い家屋が多い中、盤石だと信じられていました。

 安全神話というものは正常性バイアス、自分は大丈夫だろうからパニックに陥らないよう落ち着こう、こうした認識にも置き換えられるようですが、例えば2011年の3.11東日本大震災までは日本の原発は炉心溶融のような大事故を起こさないという安全神話、いや昨日未明までは日本の津波警報システムは確実という、安全神話が在ったのもまた事実です。

 トンガの火山噴火に際して、規格外の巨大噴火であるである事は衛星写真により判明していましたが、津波は無いという気象庁の発表はほぼ全国民が鵜呑みにしています、北大路機関も含めて。しかし実際に津波といいますか潮位変化が顕著な規模で観測され、気象庁は後追いのように津波観測後に警報が発令された。津波予測は確実という安全神話が、また崩れた。

 フンガトンガフンガハアパイ火山噴火に伴う津波もっとも、津波と云うよりは火山爆発ブラストによる気圧変化が海面に圧力を加えて巨大な波のように津波のような被害を及ぼす、火山性高潮というべき新しい災害が世界で初めて観測されたのですから、厳密には津波ではないという点で津波予測の安全神話というようにみるのは、却って違うようですけれども。

 考えたくはない事にも正面から向き合う必要がある、これを危機管理という。そして考えたくない事に向き合うには、何が起こり得るのかを調べるところから始めなければなりません。日常生活やビジネスと健康では意外と定着している事のようにも思いますが、災害に際しては、これはCOVID-19のような非日常を含めて、及び腰であるようにも思える。

 防災も考えすぎますと“中二病”といいますか、SFチックになり現実味がない、起こりうることを地学や歴史から学んだとしても精々思考体操で終わる事が多く、生きている間に、“世界規模の致命的感染症大流行”や“巨大津波の遡上高さ数十メートル”や“巨大噴火による国家危機”などは起きない、考え過ぎ、と受け流し、危機が玄関に来るまで続く。

 世界規模の致命的感染症大流行は二年前の習志野空挺降下始めでは開門待ちの冗談で語っていましたし、巨大津波の遡上高さ数十メートルなんてものも2011年3月11日までは隕石が落ちる映画の話と思っていましたし、巨大噴火による国家危機というものも南洋の人々は一昨日まで中々可能性はあっても現実に生活に取り入れる事は無茶だったでしょう。

 防災も個人防災には限度がある。阪神大震災はこの視点をもう一つ突き付けられた事例でもありました。個人防災の限界はそのもう少し後、間もなく11年を迎える3.11東日本大震災においても突き付けられるのですが、沿岸部の戸建て住宅は最高度の強度を誇ったとしても津波には、トーチカのように半地下でコンクリート耐爆風構造でなければ無力です。

 社会全体で、これは自衛隊による道路啓開や架橋と輸送支援、消防の機能強化、自治体の平時手続簡略化など有事危機管理体制への転換迅速化、情報収集基盤の強化、防災インフラ整備、必要な施策というものは個人では限界と云いますか現実的ではなく、社会全体で取り組まねばなりません、しかしそれは、“お上”の政治であってはならないようにも思う。

 関心を持つ事を恐れない、知る事に壁を造らない、提案する事に躊躇しない。災害文化というものを示しましたが、巨大な災害、規格外の災害というものを正面から受け止める事は難しいことではあります、ところがその上で考える習慣や知る習慣というものを身につけるというか意識するという事は、実のところ次の災害に備える上で要諦の一つと考えるのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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南太平洋トンガ大規模噴火,宇宙から観測-フンガトンガフンガハアパイ火山が地球規模の影響

2022-01-16 20:11:10 | 防災・災害派遣
■トンガ噴火,極めて異例大規模
 大学入学共通テストが完了しましたが、その最中に発生した噴火は将来の共通テストに出題される歴史的な規模となるのかもしれません。

 南太平洋のトンガ王国、フンガ・トンガ フンガ・ハアパイ火山において極めて顕著な大規模噴火が発生しました。現地とは通信がつながりにくい状況ですが、ニュージーランド政府によれば首都ヌクアロファ西部に深刻な津波被害等があるとしています。火山はヌクアロファの西方65km、しかし噴火規模は現地への人道支援や長期視野が必要といえます。

 火山噴火は地球上で毎日発生しています、エトナ火山やキラウエア火山は数日間隔で噴火を引き起こしています、しかし噴煙に含まれる火山灰や溶岩などの火山噴出物は少ない火山爆発指数VEI-0のものが大半です。一ヶ月に数回、地球上では2000年の有珠山噴火に匹敵するVEI-2の中規模噴火が発生しています。ただ、VEIにはVEI-8まで区分がある。

 ピナトゥボ火山噴火、過去百年間で地球最大の火山噴火は1991年のフィリピンピナトゥボ火山の噴火で、これはVEI-6の巨大噴火であったのですが、この噴火は在比米軍撤退に繋がり、現在の東アジア軍事バランスの変化による緊張の要因となっていますが、トンガの噴火は、情報が少ない中で断言は難しいのですが、ピナトゥボよりも大規模ではないか。

 トンガ大規模噴火、津波注意報は本日1400時に全て解除されました。昨日1310時頃発生した大規模噴火は本日0015時に岩手県沿岸と鹿児島県島嶼部に津波警報、太平洋岸の広い地域に津波注意報発令、津波は鹿児島県トカラ列島で120cmの岩手県久慈港で110cmの津波を観測しました。僥倖だったのは日本では引き潮の時間帯と重なり被害を抑えた点です。

 外務省はトンガ在留邦人の安全確認を続けていますが、トンガ在留邦人にいまのところ被害はないとしています。しかし、トンガ全土では電話やインターネットがつながりにくい状況が続いています、外務省と在トンガ日本大使館との連絡は一応不通とはなっていないようですが、いったい日本から8000km、南太平洋のトンガでは何が起こったのでしょうか。

 トンガの音信不通、この状況に危機感を覚えたニュージーランド政府は空軍の輸送機をトンガに派遣しましたが途中で引き返しています。ただ、トンガでは海底通信ケーブルが一本しかなく、これが切断したか全土停電となり通信インフラが麻痺している状況で、火砕流などによりトンガが全滅したという訳ではない様です。そう、火山噴火は上限が無い。

 津波がトンガにおいて観測されたのは噴火から20分後の日本時間1330時、高さは80cmとなっていました、当初日本では潮位変化はあっても大きなものではないと気象庁が判断していましたが2000時頃、小笠原諸島などで潮位上昇を観測し、また2300時頃には潮位変化が顕著な高さとなったため、津波を観測してからの津波警報注意報発令となりました。

 津波は地震による津波ではない、これは気象庁の発表です。火山性地震による津波は過去、サントリーニ島での噴火での古代の記録から雲仙普賢岳の江戸時代における山体崩壊による津波などの事例はあり、海底地形の崩落による津波は発生し得るもの、地震と火山による山体崩壊とは計測の特性が異なります。しかし、今回の津波は山体崩壊とも違うもよう。

 フンガ・トンガ フンガ・ハアパイ火山。今回の噴火は山体崩壊も発生していますが、それよりも噴火に伴うブラスト、空振が地球規模の気圧変化を引き起こし津波を生じさせたのではないかとの暫定的な分析もあるようです。ブラストは核爆発などでも発生しますが、火山噴火は火山爆発指数6で100メガトン水爆を上回るエネルギーを秒単位で発します。

 ひまわり。日本の気象衛星は今回、フンガ・トンガ フンガ・ハアパイ火山噴火の様子を宇宙空間から撮影に成功していますが、噴火とともに火山灰が直径300kmに広がり、これは東京彦根間の直線距離に相当します。また気象衛星の写真には宇宙空間から観測できる規模のブラストが雲を放射線状に変化させるようすが記録され、日本でも気圧変化が生じた。

 2hpa程度の気圧変化、日本では昨夜2000時頃に2hpaの気圧変化が発生しています、この2hpaと云う気圧変化は1m平方に20kgの圧力が加わる事で、これは太平洋に面していない北米大陸東方の大西洋に面したカリブ海でも潮位変化を生じさせています。地球規模の気圧変化による海面の瞬間的上昇、これは極めて特異な災害といえるのかもしれません。

 大規模噴火。しかし地球規模の気圧変化を起こす規模の噴火です、いったい何が起こったのでしょうか。フンガ・トンガ フンガ・ハアパイ火山は標高149mの火山です、そしてこの火山は2009年3月16日の規定火山噴火により誕生した新島で、元々は36の海底火山が並ぶ火山帯、噴火の四日後にマグニチュード7.6の火山性地震を引き起こしています。

 フンガ・トンガ フンガ・ハアパイは2014年を最後に大規模噴火を起こしておらず、2022年1月11日に安全宣言がトンガ政府により発表されています、しかしわずか数日後の1月14日、フンガ・トンガ フンガ・ハアパイ火山は大規模な噴火を開始、この噴火により標高149mの火山は山体崩壊を引き起こし、中央部が吹き飛んでいます。これだけでも大噴火だ。

 最大規模の噴火は、火山のメカニズムとして地中のマグマ溜まりが地上に吹き出す事で発生します、マグマ溜まりは地球深部のマントルから上昇する過程で生じるのですが、可能性として14日の山体崩壊によりマグマ溜まりまで亀裂が生じ海水が浸透、マグマ溜まりと海水が接触した事で大規模な水蒸気爆発がマグマ溜まりを一挙に放出させたのでは、と。

 山体崩壊は火山により山そのものが吹き飛ぶ現象で、島原大変肥後迷惑という言葉がありますが、日本でも1792年に雲仙普賢岳が噴火により崩壊、山の一部が有明海に崩落し佐賀に津波被害を起こしたほか、1888年に会津磐梯山が大噴火により吹き飛び甚大な被害を引き起こしています。最近では1980年のアメリカセントヘレンズ火山噴火でも発生している。

 破局噴火。これは火山用語ではなく九州巨大火山噴火を描いたSF小説“死都日本”において造語された表現ですが、火山爆発指数VEI-7の“super-colossal”やVEI-8“mega-colossal”という表現に日本火山学会が説明するに適した表現として用い始めている用語です、今回の噴火は火山灰が上空に直径300kmに渡り広がった点で、少なくともVEI-5に相当します。

 トゥポウ6世トンガ国王は高台へ避難、トンガ本土との情報が途絶している為に詳しい情報は不明です。この種の噴火は情報が無い中で大規模に見えるものの、予測できる被害は直径300kmにまで広がった火山灰の雲がそのまま降灰を引き起こし火山灰による被害を及ぼす点でしょう、導電性のある火山灰は電線網をスパークさせ大規模な停電を引き起こす。

 火山灰はアルカリ性で、また水を含むと固まります。これを火山性アスファルトといいますが、農業に大打撃を与えますし海上に降った火山灰はサンゴ礁などの生育を阻害、また航空機にもエンジンに入れば熱で溶解し排気部で冷やされ凝固する為に封鎖し航空機を墜落させるほか、目に見えないエアロゾルでも同様の事が発生する為、暫くは飛べません。

 ピナトゥボ火山噴火と同程度であれば、大変な火山被害であったという水準なのですが、ASO-4阿蘇山カルデラ噴火や鬼界カルデラのアカホヤ噴火、桜島の姶良カルデラ噴火のようなVEI-7規模の噴火で在った場合。もちろん65km先の首都ヌクアロファへ被害が限定的である事を考えれば、VEI-7は考え過ぎなのですが、火山噴火の被害は長期化し得る。

 VEI-7の噴火となりますと、成層圏まで舞い上がった火山性エアロゾルが太陽熱を反射し地球規模の寒冷化を引き起こします。いや、実はVEI-6でもアイスランドのラキ火山1783年噴火は日本の飢饉など北半球に寒冷化を引き起こしていますが。大袈裟と思われるでしょうが、宇宙空間から記録された噴火は、VEI-4の福徳岡ノ場よりも大きいように見えます。

 ただ、情報が少なすぎる、という点が不確定要素です。現在判明している情報は、津波が発生した際に国王が高台に避難しておりトンガ政府は無事である、また現地からは火山灰が空を覆い夜のようになる映像は出ていますが、噴火に関する映像は気象衛星や地球観測衛星が記録したものだけ。火山性地震もアメリカUSGS発表でマグニチュード5.8という。

 被害の全容というよりも現地政府の情報が噴火から30時間を経ても途絶したまま、今後順次判明してゆくのでしょう。しかし、2300km離れたニュージーランドのオークランドへも噴火の爆発音が聞こえた、これは2000km先のモスクワに届いたという1961年のソ連が行った史上最大の核実験AN-602核爆弾の50メガトン爆発よりも遠距離に届いた訳で、尋常ではない噴火です。

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【津波警報】トンガ大規模火山噴火,気象庁:日本の太平洋岸に津波警報及び津波注意報0015時に発令

2022-01-16 00:41:48 | 防災・災害派遣
■トンガ大規模火山噴火津波
 気象庁は本日0015時、南太平洋トンガ王国での大規模火山噴火に伴う火山性津波により鹿児島県島嶼部に津波警報、また太平洋岸の広い地域に津波注意報を発令しました。

 日本時間1月16日1310時頃、南太平洋トンガ王国のフンガトンガフンガハアパイ火山が極めて特異な大規模噴火を引き起こしました。フンガトンガフンガハアパイ火山は2009年に海底火山が大規模噴火により隆起し誕生した新島で、標高は147mとなっていますが、噴火により直径200km以上の火山灰が周辺を覆う大規模噴火で、津波も引き起こしました。

 気象庁は本日0015時、津波警報及び津波注意報を発令しています。津波警報は鹿児島県奄美大島及びトカラ列島に発令、津波注意報は本州太平洋岸全域、四国太平洋岸全域、九州太平洋岸全域、南西諸島全域、北海道太平洋岸全域、小笠原諸島全域へ発令されており、これまで鹿児島県島嶼部では実測値で1.2mの津波が観測、また各地で潮位が上昇中です。

 気象庁は当初日本への津波被害は多少の潮位変化に留まるとしていましたが、日本本土において実際の津波検知を始めた事を受け、津波警報発令に切替えました。遠く離れたトンガでの噴火を契機とした津波災害ではありますが、通常の地震に伴う津波と異なるメカニズムである為、気象庁は津波警報が津波を観測の後に発表するという後手に回っています。

 フンガトンガフンガハアパイ火山は、トンガ王国やフィジーなどで80cmや60cmの津波を観測していますが、日本では90cm以上の津波を観測した地域は多く、また潮位が上昇中の地域もあります。一方で遠地津波では1960年チリ津波のように周期の長い津波となる傾向がありましたが、今回観測された津波は周期の小さな、大波に近い特性が観測されている。

 津波は既に安息されていますので急いで避難を開始してください。3mの津波が見込まれる、気象庁は津波を最大3mと想定しています。奄美大島小湊で昨夜2355時に1.2mの津波を観測していますので、続いて津波が襲来します。夜遅い時間帯ではありますが、沿岸部にお住まいの方は海に近づかず、努めて高台や高い建物に避難するよう急いでください。

北大路機関防災情報
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