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北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

多用途飛行艇に関する補足的な視座【1】カリフォルニア山林火災被害額は1350億ドルから1500億ドル

2025-03-13 07:00:48 | 防災・災害派遣
■3.11の季節
 3.11の季節ですしそして、神護寺や三千院と鞍馬寺に貴船神社と最近探訪しました場所が場所でしたので山林火災に関する視座をちょっと大きく考えすぎたのかもしれませんが。

 多用途飛行艇に関する補足的な視座について。消防飛行艇の話題が国会でも取り上げられ、また北大路機関の話題でも反応が寄せられまして、昨今中々こうした展開が有りませんでしたので幸いでした、そこで本日は補足的な話題として。山林火災の脅威度を考えさせられたのは、過疎化と少子高齢化という、過去にない課題が加わった為です。

 過疎化は山間部の山林火災を初動で発見できない蓋然性の高まり、少子化は消防団構成員の減少により山林火災即応能力が低下し小規模火災の大規模火災化を食い止められない、つまり“山林火災の従来における年間被害規模”という前提を根本から変える分水嶺が出ているという、東日本大震災前に津波被害を喧伝し冷遇されたような構図と重なります。

 飛行艇は予算が大きく、山林火災対策としては過度である、この言い分は、大規模山林火災が今後増える可能性という条件を無視したものであり、変な話、過去十年間の津波被害から津波対策予算を決める措置を、東日本大震災から14年を経て東日本大震災規模の災害を度外視し警戒を緩めるような構図と、今後の山林火災大規模化の懸念を重ねたものです。

 カリフォルニア山林火災、今回の大船渡山林火災と比較する事は比較の対象として難しい事は理解しているのですが、大都市近郊の高級住宅街まで延焼した事により被害金額はJPモルガンのアナリスト概算で500億ドル、7兆9000億円規模という試算が。1350億ドルから1500億ドル、21兆円から23兆円の被害に達したという気象関連企業の試算もある。

 もっとも、私的な依怙贔屓論が無いのかと云われれば、無いわけではないのだが。西国三十三宇札所巡礼、いや京都市内では神護寺や三千院と鞍馬寺に鹿苑寺、このところ散策している文化財が山と森林に隣接しているという事情もあります、かりに文化財から10km先で小火があり、初期消火に失敗した場合というものを認識してしまったわけですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
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東日本大震災発災14年【4】震災後の停滞した空気感ー震災後の世界しか知らぬ世代の増加

2025-03-11 20:22:48 | 防災・災害派遣
■停滞した空気感
 震災の話題を今夜も。

 本日は東日本大震災発災から14年目となりました鎮魂の一日です。緊急地震速報が鳴り響きましたのは揺れが到達する二分か三分ほど前だったでしょうか、ちょうど民主党菅内閣の外国人献金問題が国会で扱われており、わたしもNHKにチャンネルを合わせつつ仕事、イタリア関連の翻訳を行っていたところでしたが、地震が発生しました。

 イタリア関連、今日考えると韓国関連の翻訳と情報整理を行っていましたので、14年経っても変わらない事は変わらない事なのだとしょうしょう自嘲するとともに、14年前のいま時分は、NHK緊急報道にて、陸上自衛隊が撮影しました気仙沼市の津波火災映像を見ていたように記憶します。考えると、いまの中学二年生は震災の年に生まれたのか、という。

 東日本大震災、この影響は恐らくCOVID-19新型コロナウィルス感染症や、リーマンショックよりも影響は大きかったか、バブル崩壊と1973年オイルショックと比較するような、日本の転換点ともいえるものですし、なによりも、福島第一原子力発電所事故を契機に、日本の経済的成長というものの在り方、将来像を根本から変えてしまったものでした。

 震災後の日本、自粛機運や同調圧力、不謹慎という寛容度の低下をはじめ、日本の文化と価値観は変化してしまったように思います。勿論、その背景は理解するのですが、多様性というものから生まれる価値や技術や発想というものは大きいものですから、この、息苦しさの共有、というものは、この世界しか知らない中学生たちの世代がある、という。

 電力不足の心配について、震災から数年間は、この冬は電力自粛要請はない、というような経済産業省の発表がありまして、いまでは夏季の電力ピーク時の電力使用制限要請という形で残っており、産業の主要な部分を製造業に依存している我が国としては、その根幹を折られている構図に他なりません、結果、我慢の強要が14年間続いている。

 復興、テレビ報道では被災地の今、というような話題で復興の様子などが紹介されていますが、日本全体の停滞感は払しょくできていません、明るい成長を描けるのであれば、言われる通りの景気循環が可能であれば、先ず少子高齢化の問題はここまで深刻ではありませんし、地方過疎化の問題についても、この停滞感と無関係ではあり得ないのです。

 少子高齢化、この問題は震災前から言われ続けていたことですが、日本の少子化に一定程度対策が成り立ったのは、バブル景気時代のことでした。復興税を筆頭に負担というものの顕在化があり、これが成長に制約を加えている実情があります。いうなれば、復興の目指すところは地方過疎化や少子化問題をある程度解決することによってしか実感できない。

 十四年目の震災、もちろん、厳しい現実として世界は成長に向けて動いており、此処で停滞するという事は、厳しいマラソンの最中に一人だけ休憩時間を確保しているという構図に似ているのかもしれません。ただ、打つ手は少ない。大規模な公共投資も原資は無く、しかしその結果、緊縮は人々の経済活動も縮小させ、結果少子化という結論に繋がる。

 空気感、日本ではこの言葉で説明されることが多いのですが、このまま、震災後の停滞という空気感以外知らない世代が増えてゆくことは、国家の将来像を明るく分かち合えない世代が徐々に増えてゆく事に他なりません、この空気感の停滞にどう、立ち向かうかという段階から、次の段階、復旧が終わった後の復興に着手する段階なのかもしれません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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東日本大震災発災14年【3】広域避難の反省-復旧と復興の循環と段階的発展を阻害

2025-03-11 07:00:08 | 防災・災害派遣
■3.11
本日3月11日は東日本大震災発災の日です。

震災と復興、失敗を認めるべきである能登半島地震の広域避難について。本日は東日本大震災発災の日ですので、あえて示すならば福島第一原発帰還困難区域の復興という問題を示すのかもしれませんが、復旧と復興を繋げる難しさについて、能登半島地震の対処が事実上失敗ではなかったのかという視座を考えてみましょう。

能登半島地震では広範囲の交通インフラが破壊されたため、広域避難という、地域ごと全部退避する方式が採用されました、能登半島から金沢へ、というような方式です。2004年新潟中越地震における山古志村、土砂ダム決壊の懸念から広域避難が行われたり、三宅島火山災害を背景とした全島避難、今世紀にあっても広域避難の実例はあるのですが。

広域避難、この問題点は、家屋などを復旧させて地域復興に段階を進めるための人材を根こそぎ移動してしまう、ということでして、もちろん交通インフラが無ければ住民の生活を支える事からできなくなるという部分は理解するのですけれども、それならば被災地に空輸その他で復旧物資を注ぎ込み、人員を移動させないという選択肢もあってしかるべき。

リスボン地震、1755年の歴史地震を実例に出しますと、当時のポルトガル政府は市街地の外に労働力を逃がさないようにして復旧人員を確保しています。ここまでいうのは極論となるのですけれど、一旦住民が被災地から移動してしまい、その間に大量の行政による労働力が供給されたとしても、住民はその労働力を自宅の復旧に充てる為の恩恵に預かれません、それが広域避難、住民が居なくなるという事の弊害なのです。

少子高齢化と地方過疎化、これだけでも次の大規模震災からの復興を難しくするわけですが、そこに広域避難という、復旧しなければならない状況で肝心の住民を被災地から遠ざける方法をとるのではなく、建機の空輸、辺野古代替施設建設でも実施した方法、そして物資空中搬送を行う事で、まず、復興の前に復旧を迅速化させる必要が、あるのです。

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東日本大震災発災14年【2】歴史に与えた巨大地震の影響と次の巨大災害はかならずやってくる現実

2025-03-10 20:14:53 | 防災・災害派遣
■明日発災14年
多少の時間と共に考えるいとまができてきたところでしょうか。

明日で東日本大震災から14年となります。東日本大震災は、死者数が多いこと共に我が国のエネルギー政策の根本を、福島第一原子力発電所事故により変容を強いられ、一方でわが国は製造業を主体とした、欧米などで進む金融工学主体の経済ではなく、パテントに依拠するものの結局のところ製造業と関連するサービス業に主軸を置いています。

東日本大震災の影響というものを認識しますと、結果的に工業力に必須である電力供給に大きな不確定要素を突き付けられる、第三次オイルショックと表現されるのではないかと危惧するような、原子力から化石燃料と新興電力である再生可能エネルギーへの旧転換を強いられ、結果的に製造業の深刻な流失を生むこととなっています。ほかにも。

円高放置、これは大規模地震が発生したために国内企業が外国資産を円に切替えることで一時的に発生したものを、当時の政権が放置した事で、国内製造コストが電力費用増大を背景に上昇する中で震災が生んだ円高が結果的に輸出を阻害する要素として企業を覆い、成長が実感できない状態が更に延長することとなりました。

関東大震災と東日本大震災、比較を安易に行うべきではないのでしょうけれども、忘れてはならないのは1923年関東大震災の経済的復興の過程で日本は、国内政治の不安定化と復興予算が生んだ偏りの経済とともに、復興目処の付いた1929年世界恐慌が重なり、国内世論が権威主義的、ではないにしても外に向けられることとなったのは歴史が示す。

震災が戦争を生むという安易な発想はわたしにはありませんが、日本という国家が製造業とこれに裏打ちされたサービス業により成り立っていたという基盤の部分に冷水が浴びせかけられたことは事実というよりも現実です。もっとも、今の時代はこれを軟着陸させる手法は幾つもあるのですけれども、問題は次があるということです。

大陸外延弧状列島、太平洋に浮く日本列島は常に海洋プレートと大陸プレートの影響を受けるため、次の震災は来ない、という楽観論を持つには地球平面説とか天動説を証明するほど難しいことです、実際問題、地震の原因となるプレートとマントルの流れが無ければ、日本列島というものは存在しえなかった故、付き合っていくほかないという。

次がある。東日本大震災とともにわすれてならないのは、東北地方太平洋沖地震と類似した巨大地震を引き起こすプレートというものは、南海トラフに千島プレート、幾つも存在しているという事です。そして直下型地震を考えると、過去地震が発生して崩れやすくなった場所を水が流れて河川が成立する為、活断層の近くに都市部が形成されている。

東北地方太平洋沖地震という一礼を示しましたが、経済的な政治的な、いや、文化的な影響も大きなものが在りましたが、日本という国家と国民は、かなり無理をしていますが乗り越えられる可能性を示しました、が、次の自身というもの、この影響を初動72時間以上の先まで考えて対策が行われているかと問われますと、不確定要素が多い。

3.11,日本の歴史を大きく影響させたものです。もちろん、危機管理、安全保障、考えたくない物事を考えるという必要性を広く認識させることとなったのは、次の試練を考えるならば、ある種感慨深いところではありますが、次に備える、このことが直接の被災を免れることとなった多くの人々にとり、できる鎮魂ではないかと、思うのですね。


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東日本大震災発災14年【1】次の巨大災害を考えた場合は自助ではなく公助の強力なイニシアチヴが必要

2025-03-10 07:00:41 | 防災・災害派遣
■発災14年
 明日で東日本大震災から14年となります。

 防災は自助を起点に自治体を中心とした共助と更に国を中心とした公助により構成される、これは例えば地域火災や水防などには当てはまる事なのかもしれませんが、東日本大震災規模の国家災害、我が国の場合は懸念されるのは南海トラフ地震、千島海溝地震、首都直下型地震、この当たりには自助では限界があると言わざるを得ません。

 能登半島地震では側方流動という、耐震構造を住宅がどのように確保していようとも地形毎横に地すべりのように流動してしまう状況では、自助で成り立つものは何もありません、また、津波災害についても、安易に沿岸部に住居を設けるなという助言があったとしても、遡上高が44mにも達した東日本大震災を思い出しますと、限界がある。

 防災政策には、イニチアチヴを政治が主導しなければ、これは強権的であるという批判がある事は呑みこんだうえで、個人や地域単位では限界があるということです。我が国では責任を分散させる傾向が、なにしろ応仁の乱がそれで起きたほど根深い水準で定着しており、他国は兎も角自国の場合に強権的な指導者を忌避する傾向が有ります。

 東日本大震災規模の災害、しかし忘れてはならないのは、歴史地震を視た場合にあの規模の国難というべき災厄は定期的に我が国を襲っています。そうした上で防災を個人や自治体単位で準備する事はとても大切ですが、防災基盤を根こそぎ奪い去る巨大災害には、やはりある程度の強権が無ければ、見捨てられる人々が地域単位で生じてしまう。

 国家緊急大権という憲法改正が必要となる水準の事態は当然予想できるのですが、これとて、他国は兎も角字奥の指導者に強権を求めず、しかし敢えて他国の強権の事例を挙げて得られる果実という偶像を政治的不満に反映させようとし、これを掬う擬態がポピュリズムを生むという展開があります。次の災害を考える際、留意すべき事項でしょう。

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岩手県大船渡市三陸町山林火災-消防飛行艇を改めて検討すべき【4】ボーイング747-400型旅客機という選択肢

2025-03-06 07:00:46 | 防災・災害派遣
■飛行艇以外の選択肢
 US-2を強調して参りましたが今回は他にも有力な方法がある事を一つ挙げてみました。

 消防飛行艇、山林火災において一定以上延焼した山林火災では雨天を待つほかないという現状に危機感を覚えまして、多用途飛行艇の用途の一つに空中消火能力という点を加味して、整備すべきという視座を示しました。飛行艇の利点は海上などの水源があれば20秒間の滑走で消火用水を補充できるという利点があり、時間当たりの投射能力が大きいゆえ。

 飛行艇以外、もちろん飛行艇以上に消火剤を搭載できるものはあります、その最たる例が旅客機を転用した消防航空機だ。航空自衛隊ではまもなくC-1輸送機が完全退役となりますが、このC-1輸送機を年間飛行時間を極限させ耐用年数を戦術輸送機以外の区分とした上で消防航空機として転用する選択肢はある、消火剤搭載能力はCH-47程度なのですが。

 ボーイング747-400型旅客機、消防航空機として決定版といえるのは、この機体を改造したスーパータンカー消防機でしょう、消火剤を実に74tも搭載できまして、これは飛行艇の4機分に迫る搭載能力です、74tの消火剤散布能力は物凄く、対地高度240mの低空飛行を行いながら散布した場合、5km近くの距離を消火可能という。

 スーパータンカーの消火能力は幅46mから全長4800m、このスーパータンカーが2機程度配備されていたならば、大船渡の山林火災は延焼を食い止められたかもしれません。もっとも、その運用には大型機発着が可能な2500m級滑走路をもつ飛行場と地上支援施設が必要ですので、現場に整備拠点を移すのではなく、基地から直接飛ぶ必要がでる。

 政府専用機を解体せずそのまま消防機に転用していれば、と今更後悔しても遅いのですが、胴体内部は消火剤用区画となるもの。もっとも、純粋な消防機となるため、所掌は総務省が外部委託することとなるのでしょうか。予算面などで難しさはあるのでしょうが、山林火災の要因に地方過疎化と少子高齢化がある以上、航空消防の充実は必要な施策です。

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岩手県大船渡市三陸町山林火災-消防飛行艇を改めて検討すべき【3】多用途飛行艇としての消防能力

2025-03-04 07:00:18 | 防災・災害派遣
■多用途飛行艇
 消防飛行艇は不要でも多用途飛行艇ならばどうか。

 1個航空隊分のUS-2飛行艇を消防航空機として運用し、P-1哨戒機1機を空中管制支援に充てて火災現場と海上や水上を反復し何度も空中消火を継続したならば、6時間で数百tの放水を行い、大規模な山林火災でも延焼を食い止め、翌日には鎮火に追い込むことは出来ないだろうか。

 US-2飛行艇の消防用航空機への転用、この試案で毎回反論として筆頭となるのは、総務省が調達し海上自衛隊が運用する場合でも、費用の問題とともに運用負担の問題です。ただ、ここで忘れられているのは消防飛行艇という単機能運用を前提とした場合の論点ではないかということ。

 消防飛行艇は不要でも多用途飛行艇ならばどうか。US-2のUは多用途という意味であり、救難飛行艇という用途はその多機能性の一端を示したものでしかありません、消防任務も救難任務もUS-2の”U”が示す多用途性の一環であると考えれば、不要論に対して一定の反論となり得ます。

 多用途飛行艇として、考えますとUS-2の性能は高いものがあります。航続距離は4700kmですが、ここに空中給油受油装置を追加するならばキャビン部分は与圧されていますのでかなり長距離を飛行させられますし、旅客機型で38名、V-107輸送ヘリコプターの1.9倍という機内容積がある。

 US-2を消防用のほかに輸送力や発着性能から考えた場合は、空中給油機能の追加により邦人救出においては飛行場の無い地域への展開能力が用途として挙げられますし、逆に給油装置を追加することで航空自衛隊UH-60J救難ヘリコプターへの給油機として機能させることも可能でしょう。

 飛行艇をどういかすかは運用者次第といえます。特殊作戦部隊の空輸や、複合高速艇を主翼下に搭載しての強襲支援と水陸機動作戦支援、こうした多用途性能の一環として消防能力を付与するのであれば、一個航空隊程度を増勢した場合でも消防用として無駄にはならないように、考えるのです。

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岩手県大船渡市三陸町山林火災-消防飛行艇を改めて検討すべき【2】大規模山林火災条件-地方人口減少と少子高齢化

2025-03-03 07:00:39 | 防災・災害派遣
■大規模火災
 現状の火災は自然鎮火を待つのではなくE-767を飛ばして自衛隊筆頭に官庁から自治体まで大量のヘリコプターを空中管制してでも総力戦で鎮火させるべきですが。

 US-2飛行艇の消防航空機転用の必要性、これはUS-2飛行艇が生産維持困難となるその都度に提案される方法論で、毎回、維持費と取得費用の問題で現実的ではない、という結論に帰結しています。ただ、林野火災と震災に伴う火災など大規模火災の脅威が顕在化するたびに、脅威と対処能力の費用対価が推し量られるのもまた事実なのですが。

 ハワイ州やカリフォルニア州の大規模山林火災、山林火災は世界を見ても複数ありますが、日本の山林火災との違いは人的被害の有無や民間家屋被害という理解がありました、が、今回の大船渡市三陸町山林火災はこの条件を超えた極めて懸念すべき山林火災であるという理解が必要ではないのか、それは単に最初の一回ではないのか、という理解とともに。

 大規模山林火災の要因は、気候変動という一言だけで説明すべきではありません。要因の際たるものは、少子高齢化による初期消防の担い手である消防団員の過疎地域での即応能力低下による小規模火災の大規模山林火災への拡大、人口減少による限界集落拡大により山林火災初動消火能力空白地域の拡大、この二つが根本からの原因といえるのではないか。

 少子高齢化と人口減少地方過疎化、この二つの条件を解決している地域では今回の様な山林火災は生じえないといえます、この二つは地域消防即応能力に繋がります、ただ、現代の日本ではこうした問題を解決している地域はごく限られ、そうした中で日本の国土は七割が山林、という現実がありますので、大規模山林火災はどこでも起こり得るといえます。

 US-2飛行艇の消火能力、この一点を金科玉条とせずとも他に選択肢はあるのかもしれませんが、固定翼航空機の即応能力と大型航空機の大量放水能力を兼ね備えるものは、まあ、中古のボーイング737旅客機などを多数調達して消防機に改造するアメリカ方式、自衛隊以外に都道府県単位でCH-47規模のヘリコプターを40機程度整備するなどあり得るが。

 大規模山林火災が起きやすい条件が揃っている中で、2000年代初頭のような視座のもとでUS-2飛行艇の消防飛行艇転用を、費用対効果などで考えていますと、札幌市や仙台市と横浜市や静岡市と浜松市や名古屋市に京都市と大阪市に神戸市と岡山市に広島市や福岡市と熊本市、政令指定都市でさえも市域は森林地帯に接していることを思い出すべきでしょう。

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岩手県大船渡市三陸町山林火災-消防飛行艇を改めて検討すべき【1】US-2,毎時毎時75tの水散布が可能

2025-02-28 07:00:10 | 防災・災害派遣
■消防飛行艇!
 消防飛行艇の話題を出しますと又かと思われるかもしれませんが山林火災では通常の消防車が入れない地域で延焼を食い止めることの難しさがあります。

 消防飛行艇を改めて検討すべきと考える。岩手県大船渡市の山林火災は、アメリカのカリフォルニア州での山林火災やハワイ州での山林火災において発生した事案のように、山間部の集落に到達し、死者が出ている他、多数の民家が延焼する状況となっています。日本の林野火災で複数の住宅が被害に見舞われる事例は稀有でしたが、それが実際に起きた。

 林野火災の問題点は、この二十年間で少子高齢化に伴う過疎化が大きく進展し、消防団の人員不足による初期消火の難しさ、また山間部特有の航空機以外での火災延焼地域への接近の難しさ、広範囲に同時に延焼する今回の事例を視た場合に痛感する消防水源確保の難しさが挙げられます。もっとも消防水源確保の難しさは1995年に神戸でも指摘された。

 US-2飛行艇、別の機種で例えばボンバルディアCL-415飛行艇のような機種でもいいのですが、消防飛行艇の利点は湖や海を消防水源と出来る事にあり、飛行艇が発着できる湖が限られる事から、海での発着能力が高いUS-2は、速度と航続距離の面からも、一旦任務飛行を開始した後には火災現場から15km以内に海が有れば毎時5回は散布が可能です。

 CL-415で6.1t、US-2を消防飛行艇とした場合で15tの放水が可能です。CH-47輸送ヘリのバンビバケットで最大8tの散布が可能ですが、バンビバケットは空気抵抗が大きく消防水源が火災現場近くにない場合は4tから6.5tに制限されるという。そしてくみ上げですがUS-2は海上を滑走しつつ20秒で給水が可能、補給時間が極めて短い。

 毎時75tの放水を行えると仮定して、1個航空隊6機の可動を維持することができるならば、これが現在のUS-2の状況をみると簡単ではないのだけれども稼働率低下は分母となる機体の少なさが起因している訳で、毎時450tの放水が可能、モリタ水1-A水槽付消防車が2tの水を搭載できますので、消防車225台分の水を第一線に散布可能です。

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岩手県大船渡市山林火災が大規模延焼ー26日2200時の時点ですでに民家84軒が被害

2025-02-27 07:00:49 | 防災・災害派遣
■自衛隊災害派遣
 消防飛行艇のような広範囲から空中消防能力を集中できる体制が必要だ、山間部の山林火災はちょうど大原の話題を紹介しましたのでこういう状況はちょっと恐ろしいものです。

 岩手県大船渡市の山林火災が大規模な延焼を続けています。26日2200時の時点ですでに民家84軒が焼けており、大船渡市によれば消防が徹夜で消火作業を実施しているとのこと。山林火災が此処まで民家を延焼させた事例は日本では例が少なく、しかし糸魚川大火のようにいったん火が付いた火災が大規模に延焼する事例は過去いくつか。

 大船渡市と三陸町の広範囲に避難指示が出されており、いっぽうで既に84軒が焼けているものの、人的な被害については警察が確認中であるとしています。この火災について、岩手県に加え、宮城県と山形県の消防による緊急消防援助隊が編成されており、既に現地での消火活動にあたっており、しかし大船渡市は被害全容はつかめていないとしている。

 岩手県は今回の火災について災害救助法の適用を決定し、避難所設営に県と国が費用を負担するなど避難の支援を強化しれいます。また岩手県は自衛隊へ災害派遣要請を行い、これを受け陸上自衛隊は岩手駐屯地より県庁と大船渡市役所へのリエゾン派遣として車両8両と隊員31名を派遣したほか、ヘリコプターによるしょうあ活動の準備を進めている。

 東北方面航空隊の駐屯する仙台市の霞目駐屯地ではヘリコプターを複数待機させているとのこと。陸上自衛隊のヘリコプターは予算不足から東日本大震災の任務時と比較しかなりの機数が削減されており、現在漸く予算が拡充した為に2030年まえには一定数が回復されると期待されています、ただ東北方面航空隊も削減されている事は現実です。

 大船渡市や三陸町は2011年東日本大震災において沿岸部が津波被害により壊滅的な状況となっており、漸く復興したところではありますが、ここで内陸部に火災が発生し少なくない民家が焼けている事に心が痛みます。林野火災が受託地に延焼する事例はアメリカなどで増加傾向にありますが、こうした広範囲の火災対策を今後検討すべきでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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