ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『ブリグズビー・ベア』

2021-06-09 23:23:20 | 外国映画







 
日本では2018年に公開された、'17年製作のデイヴ・マッカリー監督によるアメリカ映画。原案&脚本&主演のカイル・ムーニー、共同脚本のケヴィン・コステロ、そしてマッカリー監督は中学時代からの自主映画仲間で、本作にはその実体験が反映されてるみたいです。

ある日、郊外の森で暮らす年老いた夫婦(マーク・ハミル&ジェーン・アダムス)が警察に逮捕されます。子宝に恵まれなかった二人は幼い子供をつい出来心で誘拐し、外界と隔離して25歳になるまで大切に育てて来たのでした。

保護されたその青年=ジェームズ(カイル・ムーニー)は実の両親と妹が暮らす家に引き取られるんだけど、なにせ物心つく前から特殊な環境にいたもんで馴染めません。

そんなジェームズ唯一の心の支えは、幼い頃からずっと観続けて来た子供向けSFドラマ『ブリグズビー・ベア』の何百巻にも及ぶビデオなんだけど、実はそれも誘拐した夫婦が外界からの情報を遮断するため、こつこつと自主製作して来たニセのTV番組であることが判り、ショックを受けます。

ところが! その独自の感性で手作りされたビデオが、妹のオタク気質な仲間たちをトリコにし、彼らによってネット配信された『ブリグズビー・ベア』は世間でも大人気を集めちゃう。

そこでジェームズは、誘拐夫婦の逮捕により未完のままになった『ブリグズビー・ベア』の完結編となる映画を創る決意をし、自分で脚本を書き、ネットで資金を募り、妹の仲間たちと一緒に撮影を始めるのでした。

だけどジェームズに普通の生活を送って欲しい実の両親は、25歳にもなって子供向けドラマの撮影に夢中になってる彼が不安でなりません。そりゃそうですよね w

で、無許可で爆破シーンを撮って警察沙汰を起こすに至り、ジェームズは精神病院送りにされちゃう。

そんなジェームズを救ったのは、最初は彼を毛嫌いしてた妹のオーブリー(ライアン・シンプキンズ)。映画創りを通して兄と友情を育んだ彼女に、生き生きと撮影に励むジェームズの姿を捉えたメイキングビデオを見せられ、両親も映画創りに全面協力することを決意。

誘拐事件の担当刑事(グレッグ・キニア)も役者として参加しw、彼のお陰で無罪放免となったジェームズは劇場版『ブリグズビー・ベア』をついに完成させ、満員の観客から拍手喝采を浴びるのでした。



粗筋だけ書くと他愛ないストーリーなんだけど、私は号泣しましたw

主人公ジェームズの生い立ち、その設定自体は特殊だけど、多数派の人たちと何かが違う、馴染みたくても馴染めない疎外感は、多くの人が抱えてる普遍的なもんだと思います。

私自身がまさにそういうタイプで、特に中学2年の時はクラスの誰とも親しくなれず、地獄みたいな1年を過ごしたもんです。

そんな私を救い、支えてくれたのがTVドラマの『太陽にほえろ!』であり、それを真似たラジオドラマを自分で創ることでした。それが自主映画創りへと繋がり、多くのスタッフを束ねて「社長」とか「隊長」とか呼ばれるようになり、一生出来ないと思ってたカノジョまで出来ちゃった。

そうして仲間を集める方法も、言葉を並べるより自分が創った映画を見せる方がよっぽど効果的でした。それがどうしょうもない駄作じゃダメだけど、私の作品は良く出来てましたからw

私にはリーダーシップのかけらも無いのに、みんな私の言うことはよく聞いてくれました。個性バラバラで我の強いヤツばかりなのに、撮影の時だけは一致団結してました。社会人になって仕事はあまり出来なくても、創った映画を同僚に見せたら一目置かれるようにもなりました。

映画創りには、そういう力が確かにあるんですよね! 本当に大変な作業だけど、だからこそ楽しいし、やり遂げた時の充実感がとても大きい。そして不思議と人の心を動かす魔力。

たぶん、本作を創ったトリオも私と同じように「もし映画創りに出逢わなかったら、とっくに死んでるか犯罪者になってた」人たちだろうと思います。映画への感謝の気持ちがひしひし伝わって来ます。

マーク・ハミル扮する誘拐犯=テッドに面会するため、ジェームズが刑務所を訪れる場面があります。懺悔や謝罪を求めるのかと思いきや、ジェームズは劇場版『ブリグズビー・ベア』の脚本を手渡し、録音マイクを向けるんですよね。なぜなら、テレビ版『ブリグズビー・ベア』のナレーションと悪役の声はずっとテッドが吹き込んでたから!w

で、テッドが本当に嬉しそうに、水を得た魚みたいにナレーションを読み始める。彼にとってもドラマ創りは生き甲斐だったんでしょう。私はもう、泣けて泣けてw

昨年どハマりしたアニメ『映像研には手を出すな!』と同じで、これは創作に夢中になった経験のある人以外には、それほど響かない作品なのかも知れません。創作に救われ、これまで生かせてもらえた実感があればこその感動なんだと思います。

だから誰彼かまわずオススメするのは控えますが、創作に夢中になった人や携わった人(現在進行形の人より過去形の人)には集中的にオススメしたいです。ほんと必見です!



PS.『ロミオ&ジュリエット』や『ターミネーター3』等で我々世代にはお馴染みだった、クレア・デインズさんもカウンセラー役で出演されてます。好きですw


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