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新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『ジウ/警視庁特殊犯捜査係』#02―2

2018-11-11 18:25:08 | 多部未華子









 
立てこもり犯=岡村(深水元基)が「4月の黒星」と呼ばれる未解決の男児誘拐事件と関わってた事が判明し、彼を逮捕した立役者=伊崎基子(黒木メイサ)の処分は見直される事になりました。

SIT交渉班を仕切る前島主任(阿南敦子)は、心身共に傷ついて療養中の門倉美咲(多部未華子)をケアするよう、基子に依頼するのですが……

「たかが下着姿撮られた位で傷つくも何も無いでしょう。交渉に失敗した事を悔やむんだったら解りますけど」

「おいっ、そんな言い方無いだろう!?」

美咲の事になるとやたらムキになる「チクビ刑事」こと園田巡査部長(小柳 友)が怒鳴りますが、半開きの口に威厳はありません。

なぜ、基子は人に対してこれほど冷血に振る舞うのか? 本作をレビューするにあたって「理由は忘れました」じゃさすがにアレなんでw、彼女が過去のトラウマを吐露する第4話をわざわざ観直しました。

高校時代、柔道部にいた基子は、外部コーチの青年と恋に落ちるんだけど、その青年が実は既婚者で、妊娠中の妻とチョメチョメ出来ない欲求不満を基子で処理してただけ、という事実を知ってしまう。

そして柔道の取り組み中、基子は締め技で彼を死なせてしまう。それはたぶん事故なんだけど、自分は平気で人を殺せる悪魔なんだと思い込むことで、基子は愛する人を死なせてしまったショックから逃避してるワケです。

だから、この第2話で岡村の生命を救ってしまった自分自身に失望したワケですね。自分は冷血な悪魔でないといけないのに!って事で……

なんだか解ったような解んないような、屈折しすぎて共感しようがない心理ゆえ、すっかり私の記憶から抜け落ちてましたw とにかく、根っこの部分が人一倍弱いからこそ「愛」を否定し、極端に尖った生き方をしてる人なんです。

さて、そんな基子が警備部部長の太田警視監(石丸謙二郎)と特殊急襲部隊=「SAT」第一小隊長の小野警部補(光石 研)から直々に辞令を受けます。

基子の並外れた戦闘能力を高く評価し、なんとSAT初の女性隊員として迎えようと言うのです。非情とも言える冷静な判断力や、家族との繋がりが希薄な事も、命懸けの特殊部隊にはうってつけってワケです。

「SATでやってみる気はあるかね?」

「よろしくお願いします」

一方、美咲は所轄への左遷という名目で柿の木坂署への異動が決まり、殺人犯三係の東主任(北村有起哉)の下で働く事になりました。SITの麻井係長(伊武雅刀)が美咲に「やってもらいたい仕事」と言ってたのは、岡村が関わってるらしい「4月の黒星」の真相究明だったのです。

柿の木坂署の東主任と言えば、かつて会議で出会って以来、なぜか美咲が異性として意識しちゃってる人だったりします。演じてるのは北村有起哉さん。ホントに、なぜなんでしょうか?w

美咲は実家の門倉豆腐店に立ち寄ると、お母ちゃん(松本じゅん)に部署の異動を報告します。ただし、いつものごとく心配させないよう「少年係だよ」と嘘をついて。

この後の美咲とお父ちゃん(不破万作)の会話が良かったですね。新しい部署に慣れるまで「当分、帰って来れないかも知れないの」って言う美咲に、普段ぶっきらぼうなお父ちゃんが言うんです。

「お前、もしも……」

「なに?」

「もしも、ここに帰るんだったらよ、ホラあれだ、リホームっての、してやるよ」

「…………」

「隣の兄ちゃんの部屋の壁ぶち抜いてな、広くしてやるよ。……狭かったもんな」

「ありがと。でも私、ずっとこのままがいいよ。……ずっとこのまま……」

「…………」

ふと不安そうな顔をするお父ちゃんは、美咲が危険な任務に就いてる事を薄々分かってるのかも知れません。

「カンヌぅ~!」

翌日、SITの刑事部屋でお別れの挨拶をする美咲に、チクビ刑事が泣き真似をしながらハグしようとしますが、同僚たちに全力で阻止されます。本当にどうしょうもない腐れ乳首野郎です。

藤田巡査部長(姜 暢雄)は、立てこもり事件で岡村の人質にされた江藤久子が、あのとき美咲は犯人に何もされなかったと証言してくれた事を伝えます。そして、美咲への感謝の言葉も。

「あの刑事さんが強く手を握ってくれたから、気持ちが落ち着いたって。頑張ろうと思えたって」

美咲の眼からまた涙が零れます。カンヌ(=嘘泣きの名人)ってあだ名がホント邪魔ですよねw 美咲は、純粋に情に厚くて涙もろい人なんです。

相手がそんな美咲だからこそ、藤田は今まで誰にも言えなかった真実を告白します。

「俺はな、門倉……俺はお前に、謝らなければならない事がある」

「はい?」

「あの時、岡村が『いるじゃねえか』って怒鳴ったのは、俺が岡村に見つかったからなんだ」

「……え?」

かねてから基子に対して強いライバル心を抱いてた藤田は、あのとき街灯の光で自分の影が映ってることに気づかないまま、つい前に出てしまった。

「俺のせいだ。俺が手柄を立てようと焦ったばっかりに、お前が斬られて……」

「待って下さい、藤田さん」

「この通りだ、許してくれ!」

「やめて下さい、藤田さんのせいじゃないんです。私が、ちゃんと交渉出来てれば一番良かったワケだし、だから、謝るなんて……」

どこまでも謙虚で優しすぎる、ドM刑事の美咲です。藤田は思わず、そんなドMな美咲の肩をつかんで詰め寄ります。

「すまん、門倉っ!」

「い、痛いですっ、藤田さん」

岡村に斬りつけられ、縫ったばかりの傷口を思い切り掴まれるというSMプレイに、思わず美咲は身をよじらせます。

「はっ、すまん!」

「どさくさに紛れて何やってんのよ!」

「す、すみません!」

「なんだ藤田、今日は10年分ぐらい謝ってんな」

「すみません!」

前島&川俣(モロ師岡)両主任からツッコまれ、大真面目にコントさながらのリアクションをする藤田に、チクビ刑事らが口を開けて笑います。

そんな様子を扉の向こうで聞いていた基子は、ふと寂しげな顔をして立ち去ります。彼女も一応、別れの挨拶をするつもりだったのかも知れません。

そして警視庁の建物を背に歩く基子を、花束を抱えた美咲が無邪気に追いかけて来ます。

「伊崎さん! 良かった、もう会えないかと思ってた」

どんだけ基子に冷たくあしらわれても、こうして笑顔で話し掛ける美咲って、やっぱドMですよねw 冷たくされるのがキモチイイとしか思えません。

「伊崎さんも異動になったんだって?」

「まぁね」

「どこに異動になったの?」

「私の行き先なんか別にどこだっていいでしょ」

「寮を出ちゃうの?」

「出ないよ」

「良かった。じゃあ、また一緒にご飯食べられるね」

「……あのさぁ」

「ん?」

基子は立ち止まって、美咲と向き合います。

「あんた西脇部長に睨まれて所轄に飛ばされたんだろ? そんなヘラヘラすんのよしなよ」

「……私って、そんなにヘラヘラしてるかな?」

「それから、江藤久子のお見舞いに行こうとしてるんだったら、迷惑だからやめた方がいい」

「あ、違うの。この花はね、二係で……」

基子は心底ウンザリした様子で、また歩き出します。その気持ち、よ~く解りますw 多少ムリをして人間嫌いを貫いてる基子にしてみれば、誰とも壁を作らない美咲の「愛されキャラ」ほど目障りなもんは無いでしょう。

「江藤さんはもう元気にしてるみたいだし、見舞いには行かないよう係長からも言われてるから」

「泣いたみたいだねぇ、送別会で。感動の涙?」

「……うん、ちょっとね。泣いちゃった」

「人前で泣いて見せるってさぁ、私なんかにすりゃ恥ずべき行為なんだけど」

「……それは」

「それって、負け犬根性ってヤツがあんたのカラダに染み着いてるからじゃないの? 警察はね、負けちゃ駄目なんだよ。世間にも、犯罪者にも、自分にも……」

「……伊崎さん。私ね、警察が勝つとか負けるとか、そういう風にあまり考えたこと無いの。ホシを自白させれば、警察が勝ちって事になるのかも知れないけど、じゃあそれでホシが負けた事になるかって言うと、そうじゃないと思うし……」

「言ってる意味が解らないんだけど」

「ホシはホシなりに苦しんで、罪を告白して認めるワケでしょ? それってさぁ、1つの困難を乗り越える作業なんじゃないかって、わたし思うんだよね」

「困難を乗り越える? ホシが?」

「泣いちゃうよ、時には。ホシが犯罪に至るまでのいきさつとか聞いたりしたらさ。罪を犯す理由って、必ずあるものだし。だから……人前で泣くのは格好悪い事かも知れないけど、恥ずべき行為ではないと思う。それでホシと心の交流が出来るなら、私は涙を堪えないよ」

「心、ですか」

どれだけ否定され、傷つけられても自分の信念を曲げず、前を向いて一直線に生きてる美咲って、多部ちゃんがインタビューで言ってた通り「究極に強い女性」なのかも知れません。

それに対して基子は、過去のトラウマから逃げる為に自分自身を否定する、究極に弱い女。だからこそ肉体を鍛えて相手を攻撃し、本当の自分を必死に隠そうとする。

「あんたさぁ、警察官辞めてシスターにでもなれば?」

「…………」

捨て台詞を吐いて独り立ち去る基子と、黙ってその後ろ姿を見送る美咲。自分の生き方を全面的に否定されたにも関わらず、美咲の表情には一点の翳りも見えません。

肉体的な強さじゃ基子に適わないけど、精神的にはずっと美咲の方が強いって事を、多部ちゃんは完璧に理解して演じてるのだと思います。

さて、このあと第3話から美咲と基子はそれぞれ違う職場で働き、例の「4月の黒星」から連なる誘拐&猟奇殺人事件の真相を追い、やがて「ジウ」と呼ばれる恐るべき殺人鬼(笑)と対決する事になります。

美咲は直属の上司となった東主任に片想いし、基子はSATの同僚=雨宮(城田 優)とセフレ関係になって、少しだけ女の子らしさを取り戻すんだけど、その雨宮もジウに惨殺され……という展開になって行きます。

謎めいた存在だったジウの正体が、明らかになればなるほどツッコミ所が増えて行く困ったドラマだけどw、やっぱ女の子が主役なだけに、それぞれの恋愛模様が良いスパイスになってたような気がします。北村さんも城田さんも実に良い味を出されてました。

もちろん、エモーショナルな部分を一手に引き受けた多部ちゃんの名演と、殺気のこもったアクション&セクシーなベッドシーンで身体を張ってくれたメイサの熱演も、本当に素晴らしかった!

それら全てを、肝心のジウが台無しにしちゃうんですよねぇ…… 演じたL君は今、韓国で何やってんでしょうか? 全然興味無いけどw
 

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