ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『流浪の月』

2023-04-04 12:22:07 | 多部未華子

凪良ゆう著作のベストセラー小説を映画化した、李相日 監督&脚本による2022年の劇場公開作品。

予告篇から重苦しさが充満してるもんで、これまで敬遠して来たけど今回、覚悟を決めて(レンタルDVDで)観ました。

まず、多部未華子さんの出番が大変少ないことに驚きましたw 重要な役どころではあるけど、2時間半に及ぶ上映時間を考えるとホント少ない。

しかも私は、最初の登場シーンで迂闊にも、その人物=谷あゆみが多部ちゃんであることに気づきませんでした。それだけ普段とは全然違うオーラを発してたワケで、そこはさすが!としか言いようありません。



交際してるにも関わらず、キスすら求めて来ないカレシ=佐伯(松坂桃李)に痺れを切らし、自分から仕掛けていくってな芝居も、男女逆転の『大奥』を除けば過去のキャリアには無かったかと思います。そこがファンとしては新鮮で、1つの見どころ。

佐伯がなぜ、あゆみとチョメチョメしたがらないかと言えば、彼は実は少女にしか興味が持てない所謂ロリコンだから。

本筋は、佐伯が大学生のときに公園で出逢った、当時10歳の少女=更紗との純愛(?)なんですよね。少女時代を白鳥玉季さん、成人した現在を広瀬すずさんが演じてます。



義理の兄による性的虐待がトラウマで家に帰れなくなった更紗を、佐伯は自分のアパートに連れ帰り、2ヶ月間を共に「楽しく」暮す。けど、やっぱり警察沙汰になっちゃう。

佐伯は性的欲求をぐっと堪え、更紗にいっさい手を出さなかったのに、世間から「ロリコン誘拐犯」と認知され、更紗も「かわいそうな被害者」というレッテルを貼られて、大人になっても息苦しい日々を送る羽目になる。



その息苦しさに耐えられず、更紗が佐伯のもとに帰った為に、世間は更なる偏見と誹謗中傷という名の「虐待」を加え、2人をどんどん追い詰めていく。

想像以上に暗く、重苦しい作品で、私は観るのが大変キツかったです。



ただ、長さは感じませんでした。それはしっかり感情移入させられた証拠で、キャスト全員の演技も素晴らしく、作品としてのクオリティーは抜群に高いと思います。

が、好きかどうかと問われたら、いや〜キツいです💦って答えるしかありません。

ストーリーは100%理解できるけど、こんな重苦しい話をわざわざ映画化する創り手たちの気持ちがサッパリ解んない、って思いながら観てました。そういう意味じゃ前回レビューした『シン・エヴァンゲリオン』と真逆ですよね。



たぶん、現在の日本っていう国の息苦しさ、同調圧力(=異物排除)の残酷さと恐ろしさを具体的に示すことがテーマじゃないかと思うけど、示したところで世の中は1ミリも変わんないだろうし、同調圧力をかけてる側はそれが自分たちの姿だとは気づきもしない事でしょう。自分が100%正義だと信じ込み、それを疑おうともしない連中なんだから。

だったら、少数派であることの楽しさや尊さをポジティブに描いた方がよっぽど意義があると思うけど、そういう作品はけっこう沢山創られて来たのに、世間はやっぱり1ミリも変わってない。出る杭を叩くっていう快楽、生き甲斐を失いたくないから気づかないフリをしてる。

だからこそ、ヤツらにその醜さをありのまま見せてやる!っていう、別角度からのアプローチを試みた作品なのかも?って、いま書いてて思いました。無駄なのは百も承知だけど、ここで諦めちゃ終わりだろ?っていう、表現者たちの責任感。

だとすれば、根っこのスピリットは『シン・エヴァンゲリオン』と同じと言えるかも? 少なくとも、毒にも薬にもならん作品を創るよりはよっぽど意義がある。



けれど、とっくに世間を諦め切ってる私みたいな輩は、広瀬すずさんの濡れ場にこそ観る価値を見出すワケです。脱がなかったのは大いなる失態で猛省を促すけど、とにかくキャスト陣の才能と努力が際立つ作品であるのは間違いありません。


 


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