ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『ドS刑事』2015

2019-10-18 00:00:09 | 刑事ドラマ HISTORY









 
2015年の春シーズン、日本テレビ系列の土曜夜9時「土曜ドラマ」枠で全11話が放映されたコメディータッチの刑事ドラマ。七尾与史さんの人気小説『ドS刑事』シリーズを実写ドラマ化した作品です。

川崎青空警察署の刑事一課強行犯捜査係に勤める、犯罪者をいたぶりたくて警察官になったドS刑事=黒井マヤ巡査部長に、我らが多部未華子。

交番勤めからマヤにスカウトされ、下僕となってコキ使われる相棒刑事=代官山に大倉忠義。そして課長に吉田 羊、係長に勝村政信、同僚刑事に伊武雅刀、中村靖日、八乙女 光が扮するほか、石井正則、ミッツ・マングローブ、瀬戸さおり、岸本加世子etc…といったキャスト陣が脇を固めてます。

日テレの土曜ドラマと言えば多部ちゃん主演の傑作コメディ『デカワンコ』を送り出した放映枠であり、メインディレクターも同じ中島悟さんと来れば、そりゃ大いに期待しちゃいます。

相棒刑事役が『ヤスコとケンジ』『GM/踊れドクター』で多部ちゃんの足を大いに引っ張った大倉忠義くん(タベリストの間では大根役者の乳首野郎と呼ばれてますが、私はそんな風に思ったことは一度もありません)である点に一抹の不安はあったものの、あの『デカワンコ』スタッフが多部ちゃんとタッグを組んで面白くならない筈がない!って、私はすっかりタカをくくって放映日を心待ちにしてました。ところが……

初回は、『デカワンコ』から4年経ってすっかりオトナの女になった、多部ちゃんの新たな魅力が引き出されてることに私は満足し、面白いドラマを観た錯覚に陥ってましたw 先入観とは恐ろしいもんで、面白いに違いないって思い込んで観ると何でも面白く感じてしまう!

それが第2話、第3話と観ていく内に、本当の姿が見えてくるワケです。恋の魔法が解けた時と同じで、そうなっちゃうともう欠点しか眼につかないw

まず第1の問題点は、黒井マヤのキャラクターが「ドS刑事」と呼ばれるほどサディスティックじゃなかったこと。原作にある「遺体マニア」っていう設定が削除されてるのが象徴的で、ファミリー層向けの放映枠ゆえ教育上よろしくなさそうな「毒」がすっかり抜かれちゃった。

コメディに毒は不可欠だし、コキ使われる代官山刑事が痛々しくなるくらいの「怖さ」が無ければ、マヤが単にビジュアルだけ女王様風の「コスプレ刑事」にしか見えず、これじゃさすがの多部ちゃんも力を発揮できません。

第2の問題点は、メインの脚本家さんにコメディーセンスが乏しかったこと。

取って付けたようなギャグ、芸人さんのお笑い番組を参考にしたようなギャグばかりが目につき、ストーリーやキャラクターとうまく噛み合ってない。クドカンさんが『あまちゃん』で流行らせた方言「じぇじぇじぇ!」を臆面もなく使っちゃうセンスには本気で辟易しました。

人には向き不向きがあり、特にコメディは持って生まれたセンスが無ければ絶対にうまくいきません。多部ちゃんの演技&中島さんの演出をもってしても、笑えない脚本を笑えるように見せるのは至難の技です。

第3の問題点は事前に危惧したとおり、多部ちゃんの相棒役を務める大倉忠義くんの大根演技。彼にはコメディというものが全く解ってない、とタベリストたちが口を揃えて言ってますから、きっとそうなんだろうと私も思います。(だからと言って乳首呼ばわりは可哀想です)

第4の問題は、そもそも原作がそれほど面白いとは思えないこと。わざわざ買って読んでみたんだけど、最初の数ページで私はリタイアしちゃいました。

これよりは面白くなるであろうオリジナルの企画が山ほどある筈なのに、売れてる原作にしかGoサインを出さないテレビ局やスポンサー、そしてこんな小説が売れてしまう世の中にも、私は破滅を感じずにはいられません。破滅です。

とまぁ、問題点ばかり挙げつらいましたけど、じゃあこれは観る価値のない番組なのかと言えば、決してそんな事はありません。

暴力でも説得でもなく、言葉責めで容疑者を絶望させて落とす、黒井マヤの捜査スキルは新鮮に感じます。最初の内はw

そして笑えない脚本をなんとか笑えるようにすべく、現場で四苦八苦するスタッフ&キャストたちの奮闘が見えて来るし(本当は見えちゃいけないんだけどw)、それより何より、こんな凡庸なストーリーと下手くそな相棒役をあてがわれても、なんとか鑑賞に耐える作品に底上げしてみせる、女優・多部未華子さんのプロフェッショナルさ! 失敗作だからこそ、その凄さと有難みをあらためて実感できるワケです。

まじめな話、その不出来さをこうして笑い話として書けるのは、ひとえに多部ちゃんのお陰。タベリストであろうがなかろうが関係なく、主役が多部ちゃんでなかったら怒りばかりが先行し、レビューする気にもなれなかっただろうと思います。

そういう意味ではファンにとって必見作の1つ、と言えるかも知れません。ファンでない方には『デカワンコ』を観てファンになることをオススメしますw
 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『天使と悪魔/未解決事件匿... | トップ | 『ドS刑事』#01~#05 »

コメントを投稿