ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『花筐/HANAGATAMI』

2021-05-17 20:00:09 | 日本映画






 
2017年に公開された大林宣彦監督による日本映画です。原作は檀一雄さんの純文学『花筐』。

この次に大林さんが撮られる遺作『海辺の映画館/キネマの玉手箱』('20) とセットで予約したレンタルDVDが届いてから、1ヶ月近く経ってようやく観るに至りました。

自分が体調を崩してしまったこと、それをキッカケに部屋を大整理したこと、レビューしたい作品が他にあったこと等、鑑賞が遅くなっちゃった理由は色々あるんだけど、かねてから敬愛申し上げて来た大林宣彦さん最期の2作品(しかも両方3時間近い長尺!)とあって、じっくり腰を据えて見る覚悟が必要だった、っていうのが何より大きいです。

なにせ、この『花筐』は大林さんが「余命3ヶ月」の宣告を受けてから撮られた作品。不謹慎ながら、私は完成にこぎ着けることすら危ういと思ってたのに、こんなにパワフルな大作に仕上がったばかりか、更にもう1本撮られることになろうとは!

だから、これまで以上に魂のこもった2作品なのは間違いなく、そりゃ相当な覚悟を決めなきゃ向き合えません。

……いや、それは綺麗事かな? もっと自分の本音を探っていけば、詰まるところ「小難しそうだから」っていう理由が一番かも? 反戦映画であることは知ってたし、そもそも大林監督の作品は面白いけど難解なんですw

案の定、この『花筐』もよく解らんまま観終えちゃいました。やっぱり凄い! 面白い! けど、解らない!w けど、だからこそ凄くて面白い!っていうのが私にとっての大林映画です。



舞台は1941年、太平洋戦争勃発前夜の佐賀県唐津市で、これから徴兵されるであろう若者たち(窪塚俊介、満島真之介、長塚圭史、柄本時生)と、彼らと深く関わる女の子たち(矢作穂香、山崎紘菜、門脇麦)の儚い青春と、それを見守る女性(常盤貴子)の哀しみが描かれてます。……っていう要約すら正確なのかどうか分かりませんw

なにしろ「今回、大林さんは誰を脱がせたんだろう?」っていうのが一番の興味で観てるような私ですw

案の定、矢作穂香(旧芸名=未来穂香)さんと常盤貴子さんが当たり前のように脱いでくれました。いや、それ以上に満島真之介くんが脱ぎまくってますw 満島くんと窪塚俊介くんが全裸で馬を二人乗りし、激走するシーンは色んな意味でクラクラしましたw(キンタマ痛い! ぜったい痛い!)

だけどそのシーンも含め、当たり前ながら全てのシーンにちゃんと意味があるんですよね。私が解らないって書いてるのはストーリーの事じゃなくて、その1つ1つの意味です。

満島くんと窪塚くんだけじゃなく、窪塚くんと長塚くん、矢作さんと常盤さん、山崎さんと門脇さん等、同性愛の匂いもプンプンしてて実に楽しいんだけど、なぜそれを匂わせるのかっていう意味が解らないw



だから鑑賞するには覚悟が必要なワケです。私が昭和の刑事ドラマやハリウッドのアクション映画を好んで観るのは、創り手の意図がある程度まで読めるから、っていうのも大きい。元から好きで、そういうのばっか観て来たから読めるんだろうけど。

かつて自分で映画を創ってた頃は、難解だったり苦手なジャンルだったりする作品もいっぱい観なければ!っていう使命感で色々観たし、確かにそれで視野は広がったと思うけど、正直しんどかった。そのままムリして観続けてたら映画が嫌いになっちゃったかも知れません。

同じ「解らない」でも、作者が最初から説明を放棄してるとか、実は大した意味も無いのにわざと難解にしてるとか、そういうのはやっぱつまんない。

大林さんの場合は全ての描写にちゃんと意味があるし、むしろそれを観客に伝える為に色々やり過ぎるからかえって難解になってるw、ような気がします。

とにかく情報量がハンパなく多い! 映像のあちこちにヒントが隠されてるし、セリフ量も多くて登場人物は『シン・ゴジラ』並みにずっと喋ってるし、BGMも鳴りっぱなし。だからいつも圧倒されちゃう。で、解らないw

けど、決して我々観客が「置いてけぼり」にされるような難解さじゃないんですよね。凄い熱量でずっと語りかけてくれるから、1つ1つの意味は解らなくても言いたいことは何となく伝わってくる。

今回の『花筐』では、学校の授業をサボりがちだった満島くんと長塚くんが、徴兵を前に自ら命を絶っちゃいます。大きな権力と、その理不尽に対する怒りが込められてるんだと思います。解んないけどw

よく解らなくても、一方通行だったりマスターベーションだったりする映画とは全然違う。だから面白いって事なんだけど、この文章もよく解んないものになって来ましたw

とにかく凄い情報量だけど、何でもかんでも台詞やナレーションで説明し、我々から読解力や感性を奪っちゃう昨今のテレビドラマともまた全然違う。大林監督が提示されてるのは全てヒントであって解答じゃないんです。だからこそ面白い。

すでにオッサンの窪塚くんや長塚さんが10代の若者を演じる違和感にすら、ちゃんと意味があるんですよね。監督のインタビュー記事によると、戦争を知らない世代が戦中を生きる人物を演じるぎこちなさを、あえて強調するためのキャスティングなんだそうです。なんでそうしたいのかはやっぱ解んないけどw

背景が合成丸出しなのも勿論わざとだし、唐突に画面が反転したりするのも全て計算ずく。だけどあざとく感じない。それが大林さんなんだってことを我々はよく知ってるから。

意味があるからこそ、今まで脱がなかった女優さんも潔く脱げちゃう。意味が解らなくても、ちゃんと意味がある事だけは判るから。

だから、理屈で理解できないものに抵抗がある役者は、たぶん大林映画には出たがらない。大林組と呼ばれる常連の役者さんは、きっと感性の人たちなんだと思います。



とにかく、ほかの誰にも真似できない、唯一無二の世界観。そんな映画を創れる、創らせてもらえる監督がこの世知辛い国に存在した奇跡。大林映画の魅力はそこに尽きると私は思います。

しかし、それにしてもまったく、なんというパワフルな映画! 当時80歳のご老人、それも余命3ヶ月を宣告されたお人が創った作品とは、とても信じられない! 凡庸な感想しか書けなくてすみませんm(__)m

セクシーショットは矢作穂香さんと山崎紘菜さんです。


 


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