ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『三つ首塔』1956

2024-03-16 21:21:57 | 探偵・青春・アクションドラマ

先日、いにしえの時代劇スター・片岡千恵蔵さんが金田一耕助を演じられた1950年代の映画『獄門島(総集編)』と『三つ首塔』がCATV「東映チャンネル」で放映されました。

普通ならメジャータイトルの『獄門島』をレビューするところだけど、殿下(小野寺 昭)と山さん(露口 茂)の再共演が見られたテレビ版『三つ首塔』(’88) を最近レビューしたばかりなので、比較したくてこっち(’56年公開の東映作品)を選びました。

最大の違いは言うまでもなく、アメリカかぶれかよ!?と言いたくなる金田一探偵のスーツスタイル。



おまけに助手として白木静子(高千穂ひづる)という美女を連れ回し、恋愛関係まで匂わせてる!

これの一体どこが金田一耕助やねん!?って我々世代は思うけど、金田一が原作通りにモサモサ頭の袴姿で登場する映像作品は、石坂浩二さん主演の角川映画『犬神家の一族』(’76) が最初なんですよね。

1947年公開の『三本指の男』を起点とする金田一シリーズは、そもそも時代劇スターだった片岡千恵蔵さんのイメージチェンジを目的に創られたもので、それが人気を博して足かけ10年、全6作(この『三つ首塔』が最終作)が公開され、やはり最近レビューした高倉健さんの『悪魔の手毬唄』(’61) 等にもこういうアメリカンな作風が引き継がれたのでした。



そんなワケで、まずはキャストの比較から。


殿下バージョンで松原千明さんが演じたヒロイン=宮本乙弥に扮するは、ファミリーで出演されてた歯磨き粉(ライオン社のホワイト&ホワイト)のCMもお懐かしい、中原ひとみさん。


山さんが演じた乙弥の叔父=上杉教授役は、宇佐美淳さん。殿下バージョンではこのキャラが真犯人(たぶん原作通り)だったけど、本作では別キャラに変更されてます。


大門くぅ〜ん!の庄司永建さんが演じた弁護士役は、角川映画の金田一シリーズにもよく出られてた小沢栄太郎さん(当時のクレジットは小沢栄)。


角野卓造さんが演じた等々力警部役には、佐々木孝丸さん。


そして古尾谷雅人さんが演じたレイプ魔=自称“堀井敬三”こと高頭俊作役はなんと、のちに『太陽にほえろ!』で七曲署の2代目署長となる、南原宏治さん(当時のクレジットは南原伸二)。めっちゃ二枚目!


殿下バージョンの(つまり原作に近い)高頭俊作は、いきなり途方もない額の遺産相続人に指名されて命を狙われる乙弥を護りたい一心で、正体を隠しつつ彼女と会うたびにレイプしてたけど(なぜ!?)、千恵蔵バージョンの俊作はただニヒルを気取るだけで(それでも“なぜ?”だけど)ハレンチなことは一切してくれず、つまんないですw

そこは中原ひとみさんの……いや、たぶんBIGスター・片岡千恵蔵さんのイメージに忖度しての処置かも知れません。

あの頃のスター俳優はとにかく公明正大、清廉潔白、質実剛健、ひたすら立派でカッコいいヒーローを嫌でも演じなきゃいけなかった。だからこそのスーツ姿なんでしょう。

なにせ千恵蔵バージョンの金田一耕助は夜の繁華街で悪人たちと大立ち回り(もちろん一方的に圧勝)を繰り広げ……



おまけに美女を横に乗せてのカーチェイス!



そして当たり前のように銃撃戦!(もちろんピストルは常時携帯)



極めつけはクライマックスの謎解きシーン。なんと“三つ首塔”の神主にわざわざ変装し、一瞬でスーツスタイルに早変わり!



イメチェンの為に創ってる映画の筈なのに、ここに来て急に時代劇の“お裁き”口調。これの一体どこが金田一耕助やねんっ!? だけど、面白い!w

ファンサービスなのかご当人のワガママなのか知る由もないけど、この1シーンで片岡千恵蔵さんを好きになっちゃいました。



そうして颯爽と事件を解決させ、車掌さんの「切符拝見」も懐かしい汽車でモダンシティへと還っていく金田一耕助。

なんだかんだで結婚することになった乙弥&俊作のイチャイチャ姿を眺めながら、助手の静子さんとこんな会話を交わすのでした。



「白木くん、いい景色だねえ」

「うふふ、本当に。いい景色ですわね」

つまりこの2人もいずれは……っていう暗喩なんでしょう。これの一体どこが金田一!?って、文句言っても仕方ありません。このシリーズは横溝正史原作のミステリー映画じゃなく、あくまで片岡千恵蔵さんのアイドル映画なんだから。

そう割り切って観れば見どころ満載!

まずは、和洋中が入り混じったあの時代ならではのファッション。まるで『ブレードランナー』みたい!



’70〜’80年代の刑事ドラマでも活躍される稲葉義男さんもなにげに出演されてます。



そしてあの時代ならではの風俗。

見たことないデザインのラジオ。




COLTなのかS&Wなのか判然としないリボルバー。



レトロカーの数々。



個人的に“青春時代”を想起させる、8ミリフィルムのカメラと映写機。

一見地味だけど脱いだら凄そうな、高千穂ひづるさんのおっぱいも!


というワケで今回の締めは、高千穂ひづるさんと中原ひとみさんのブロマイド。現在の若手女優さんたちには無い“気品”を感じます。


 


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2 コメント

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Unknown (Kawakami(偽者))
2024-03-17 18:04:53
Wikipediaにもあるんですが
金田一耕助のぼさぼさアタマってのは
明智小五郎のオリジナルのスタイルのようで
それが開化アパートに住んだりして
背広着て、拳銃をぶっぱなしようになっちゃうんですが
映画の金田一耕助像はその逆を行っているのが面白ですね
Unknown (harrison2018)
2024-03-18 02:53:36
明智小五郎と言えば天知茂さんのイメージが染みついてるので、オリジナルがボサボサ頭だったとは驚きです。テレビ版は刑事物ブームの波に乗る形でああなったのかも知れませんね。

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