ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『デカワンコ』2011

2019-07-17 00:00:04 | 刑事ドラマ HISTORY








 
2011年1月、例年通り新作ドラマが一斉にスタートする中、ひときわ異彩を放つタイトルが私の眼に飛び込んで来ました。それが土曜の夜9時に日本テレビ系列で全10話が放映された刑事ドラマ『デカワンコ』です。('11年春に1時間スペシャル、'12年正月に2時間スペシャルも放映されました)

タイトルだけじゃありません。主役の女刑事がなんと、ロリータファッションに身を包んでいる!? その上、警察犬並みの嗅覚を持っている!? そんな変人キャラを、朝ドラ女優の多部未華子が演じている!?

その時、私はまだ多部ちゃんの事をほとんど知りませんでした。積水ハウスのCMや朝ドラ『つばさ』の番宣でお見かけしたのと、WOWOWのスペシャルドラマ『対岸の彼女』を途中から観た程度。

だから『デカワンコ』という新番組は、きっと失敗するだろうと思ってました。若手俳優がこういう奇をてらったようなキャラクターを演じると、照れが感じられたり表現力が追いつかなかったりで、寒~い空気が充満しちゃう場合が多いからです。

まして多部ちゃんに対しては「真面目そう」「育ちが良さそう」といったイメージを私は抱いてましたから、刑事のくせにロリータファッションなんていう、ふざけた行動は似合わない=ミスキャストだろうと思ったワケです。

だけど放送が開始される前に私は、この番組で『太陽にほえろ!』のテーマ音楽が使われる事を知ってしまったのでした。『太陽にほえろ!』は私の人生を変えたと言っても過言じゃない、かけがえのない作品なんですね。

だから1970年代に創られた『太陽~』のテーマ音楽が、一体どんな形で2011年の新作ドラマ(しかも、かなりはっちゃけたコメディ)に使用されるのか、見て確かめずにはいられなかったんです。

そして第1話を観て、私は驚きました。大袈裟じゃなく、私にとってそれは10年に1度あるか無いかの大きな衝撃でした。

まず、覆面パトカーで箱乗りする新米刑事・花森一子 (通称ワンコ)=多部ちゃんの、風を受けて全開丸出しになった、だだっ広いオデコ!

そして、まさに警察犬のごとく、殺人現場に残った犯人の匂いをクンクン嗅ぐ多部ちゃんの、鼻の穴を思いっきり広げたヘンな顔!(なのに可愛い!)

そんな多部ちゃんを見ても、私は「ああ、綺麗な顔した女優さんが無理して笑いを取ろうとして、なんと痛々しい……」とは全く思わないで、ごく自然に花森一子というキャラクターを受け入れてました。それこそが驚きなんです。

照れが感じられないとか、そんなレベルはとっくに通り越して、画面に映ってるのは花森一子という奇想天外な人物そのもの。そこに「タレント多部未華子」の存在は皆無なんです。

つまり彼女は、完璧に花森一子という変人刑事になり切ってる……と言うよりキャラクターを自分のものにしちゃってる。演じてる感じが全くしないワケです。

20歳そこそこの若手俳優が主演するコメディドラマを、こんなに安心して観ていられるなんて事が、これまであっただろうか? 本当に、久々に味わった衝撃でした。

さらに第1話のクライマックス。尊敬する先輩ベテラン刑事に手錠を掛けないといけなくなった一子が、思わず涙を流してしまう場面。

それがドラマである事を忘れて、私はもらい泣きしちゃいました。ロリータファッションに身を包んだ、現実には到底あり得ない筈の女刑事が、1人の人間として確かに存在し、視聴者の心を動かしてる。それがどれほど凄い事か!

私はすっかり、女優・多部未華子の虜になってしまいました。新作ドラマや映画は勿論、過去の出演作も片っ端から観て、わざわざ田舎から上京して主演舞台まで観に行くほど女優さんにハマったのは、後にも先にも多部ちゃんだけです。

そしてまた『デカワンコ』自体が、刑事ドラマの枠を打ち破りながらも刑事ドラマへのリスペクトに溢れた作品であり、アグレッシブでチャーミングでとても面白かった。

だから観れば観るほど私はハマったし、視聴率がシーズンのトップに輝くほどの人気番組となり、多部ちゃんを一気にメジャー第一線の女優へと押し上げる事にもなりました。

『デカワンコ』が如何にバカバカしくもアグレッシブなドラマであったかを、ドイツ生まれの警察犬・ミハイルの存在が象徴していたように思います。

警察犬が一子にライバル心を燃やす描写もさる事ながら、擬人化がエスカレートした挙げ句にドイツ人のイケメン俳優がミハイルを演じちゃう演出には、コメディ好きの私でさえ呆気に取られましたw

原作マンガにもあった描写とは言え、実写でそれをやると安っぽいお笑いコントに陥りかねません。そんな思い切った博打が打てたのも、多部未華子というしっかりした土台があるからこそ、だったんじゃないでしょうか。

多部ちゃんだけじゃなく、彼女を囲む共演陣にも芸達者な俳優さんが揃ってました。事件らしい事件が起こらず、刑事達が慰安旅行でじゃれ合ってる様子だけで1時間を消費してしまった伝説の最終回はw、キャスト陣の絶妙なアンサンブル無くしては成立しなかった筈です。

そんな警視庁刑事部捜査一課第八強行犯捜査殺人捜査第13係のメンバーは、ボス(升 毅)を筆頭にガラさん(佐野史郎)、シゲさん(沢村一樹)、コマさん(吹越 満)、ヤナさん(大倉孝二)、チャンコ(石塚英彦)、キリ(手越祐也)、デューク(水上剣星)。

そして警視総監に伊東四朗、鑑識課の警察犬係に田口トモロヲ、一子の親友である交通課婦警に渡辺直美といったレギュラー陣に加え、毎回のゲスト俳優も実力派の人達がキャスティングされてました。

森本梢子さんの原作マンガも傑作だけど、それをテレビ向けにアレンジした伴一彦さんの脚本も素晴らしく、『太陽にほえろ!』を軽妙かつオシャレにアレンジした小西康陽さんのサウンドトラックも最高に楽しくて、存分にドラマを盛り上げてくれました。

もちろん、これだけのキャスト&スタッフを揃えた制作陣と、素材の良さを十二分に活かしてまとめ上げた演出陣の手腕も素晴らしい!

だけどこのブログで特筆したいのは、やっぱり根底に垣間見える『太陽にほえろ!』へのリスペクトです。テーマ音楽は言うまでもなく、刑事達につけられたニックネームも実に『太陽~』的なんですよね。

特に花森一子 (いちこ) の「一」と、警察犬並みに鼻が利くという特技をかけて「ワンコ」と呼んじゃうセンスは、マカロニやテキサスに通ずるものがあるんじゃないかと私は思います。劇中でも、多部ちゃんの口から何度となく「こんな時『太陽にほえろ!』の刑事達は…」みたいな台詞が飛び出してました。

それに加えて、刑事達がよく走ってくれました。説明するまでもなく、刑事がやたら全力疾走するのは『太陽にほえろ!』の名物とも言うべき描写の一つです。

ただし、ワンコはチョー鈍足だし、チャンコさんは体重過多ですぐ足を挫いちゃう等w『デカワンコ』ならではのアレンジもあり、それがまた実に楽しいんですよね。

高そうな服を着た美男美女がただ突っ立って謎解きばっかしてるような、躍動感のカケラも無い安上がりな刑事ドラマばかり粗製濫造されてる昨今において、ロケを多用し、身体を張ったアクションをしっかり見せてくれる『デカワンコ』は稀有な存在です。

そういう部分においても『太陽にほえろ!』の遺伝子をしっかり受け継いだ『デカワンコ』に、私がハマらないワケがありません。それで今度は多部ちゃんマニアになっちゃったワケで、つくづく私の人生は『太陽~』に翻弄されっ放しです。

それはともかく、今の時代ならではのキャラクターとギャグセンスに彩られながら、古き良き時代の刑事ドラマを彷彿させる躍動感と熱いスピリット。

百聞は一見にしかず。未見の方は是非、騙されたと思って一度『デカワンコ』を観て頂きたいです。
 

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2 コメント

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Unknown (gonbe5515)
2019-07-17 13:52:01
「百聞は一見にしかず」がこれほどぴったりくるドラマはないでしょう。

多部未華子さんはもちろん、周りを固める俳優さんたちみんなが魅力的。キャスティングの勝利ともいえます。

もうあれから8年も経つんですねえ。・・・ということは私たちのご縁も・・。

今後とも末永くよろしくお願いいたします
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Unknown (harrison2018)
2019-07-17 22:35:30
あれから8年……あの震災から8年でもあるんですね。

あっという間でしたが、当時中学生だった子が今は成人。その間に私は結婚と離婚を経験w 元号も変わったし、ほんと色々ありました。

いよいよ三十路を迎えたワンコ刑事は、今でもあのスタイルを続けているんでしょうか? 見たいような見たくないようなw でも多部ちゃんが演じるならやっぱり可愛いでしょうね。
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