ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『カツベン!』

2021-03-24 12:00:03 | 日本映画






 
2019年に公開された、周防正行 監督・片島章三 脚本による東映配給の日本映画。

私が城定秀夫さんと同じくらい敬愛申し上げてる周防監督の最新作だけど、巷から評判が聞こえて来ないし、タベリストgonbeさんがブログに書かれた感想からもイマイチ感がひしひしと感じられ、イマイチなんだろうなあ~と思いながら観てみたらやっぱりイマイチでしたw

およそ100年前、映画がまだ「活動写真」と呼ばれてた時代の関西地方。無声映画の上映時にナレーションを生披露するカツベン=活動弁士に憧れる貧乏青年の成長を、当時の喜劇映画よろしくスラップスティック調に描いた純然たるコメディー。

gonbeさんと私にはチャップリンの映画(つまりあの時代のサイレント喜劇)が大好きっていう共通点があり、題材との相性はバッチリな筈なのに、このイマイチ感はどこから来るのか?

登場する男のキャラがみんな横柄なのは「そういう時代だったから」と理解はするものの、それにしたって皆そろって魅力が無さすぎる。

それ以上に私が気になったのは、ギャグのキレの悪さ。同じ周防監督の作品でも『シコふんじゃった。』や『Shall we ダンス?』にはキレがあったと私は思う。だからファンになったんです。

果たしてこのキレの悪さが、100年前の映画(の演出)を模倣してるからなのか、あるいは周防監督の感性が老いてしまったからなのか?

たとえ100年前の映画でも、チャップリンやキートンの笑いには多分、いま観てもキレがある。その点で日本の無声喜劇はどうだったのか、ほとんど観たこと無いから分からないけれど……

ってことはつまり、周防監督の演出にキレが無くなったということなのか? 振り返れば前作『舞妓はレディ』の時も、現代の映画とは思えないキレの悪さを何となく感じたけど、それは意図的に古き良き時代の日本映画を再現してるから、と私は好意的に解釈しました。

今回はもっと古い時代の演出を、それこそハッキリ意図的に再現してるんだから、キャラクターが皆ステレオタイプなのも当然かも知れない。けど、それにしたってギャグのキレが…….特にタンスの引き出しを使ったドタバタなんて、ドリフのコントなら爆笑必至だろうに……

そもそも主役の成田凌くんが二枚目すぎる、っていうのも大きな足枷になってる気がします。ドタバタ喜劇は滑稽さがあって初めて笑えるんだから。

ヒロインの黒島結菜さん(祝・朝ドラ主演決定!)は弾けた演技で笑わせてくれそうなのに、逆におとなしい役で勿体なかった気がします。それも時代背景を考えると仕方ないんでしょうけど。

関西弁の竹野内豊、永瀬正敏、高良健吾、成河(ヨカナーンよ!乳首よ!)、小日向文世、井上真央、酒井美紀、山本耕史、池松壮亮、そしてお馴染みの竹中直人&渡辺えりコンビに田口浩正、徳井優etc…と、そうそうたる顔ぶれなのに、演じるキャラに魅力が無いから活かされない。

本編の内容よりも、劇中で上映される無声映画、それもよく知られた古典名作のキャストがなにげに上白石萌音ちゃんだったり城田優くんだったりシャーロット・ケイト・フォックスさんだったりするのが面白くて、創ってる人たちもそこを一番楽しんでるように感じちゃうのは如何なもんでしょう?w

たぶん、ギャグにキレが無いと感じるのは「毒」が足りないから。『Shall we ダンス?』あたりまでは充分あったのに、草刈民代さんと結婚されてからどうも……ってな見方は意地悪に過ぎないかも知れないけど(私、草刈民代さんがイマイチ苦手で……)。

結婚し、守るべき家庭が出来て、影響力が桁外れに強そうな奥さんがいて……となると創る作品の内容も確実に変わって行きます。かく言う私の文章のキレも確実に鈍ってるしw 乳首よ!

だけどしかし、やっぱり意図的に古典を再現してるがゆえのキレの悪さだと、私は思いたい。次ですよね。この次の作品でそこがハッキリ見えて来るんだろうと思います。

コメント (2)
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