ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『スイートプールサイド』

2021-03-17 00:00:03 | 日本映画










2014年に公開された、松居大悟 監督・脚本による松竹配給の日本映画。原作は押見修造さんの連載コミックです。

押見さんといえば『漂流ネットカフェ』や『惡の華』あたりの作品が有名かと思いますが、私は連載デビュー作の『アバンギャルド夢子』('03) を読んでファンになりました。

『アバンギャルド夢子』の内容は、チンコを見たくて見たくてしょうがない女子高生の夢子が、クラスメイトのおたく少年をヌード絵画のモデルにすることで存分にチンコを観察し、弄ぶという映画化不可能なものw

そんなちょっと歪んだ性の話に私は強く惹かれるし、それを単なるエロで終わらせず、思春期に誰もが抱えるコンプレックスや葛藤といったテーマを、良い意味でくだらない味付けで(だけど大真面目に)描いた作風も実に私好み。

『スイートプールサイド』の原作は『~夢子』の翌年に週刊ヤングマガジンで連載されたものだけど、私はまだ読んでません。ファンなのにうっかりしてましたw

ストーリーは、チンコになかなか毛が生えず、クラスメイトたちから「ツルツルくん」と呼ばれて悩んでる男子中学生の太田(須賀健太)が、毛深くて悩んでる水泳部の美少女=後藤(刈谷友衣子)から「(不器用すぎて自分で剃れないから)わたしの毛を剃って」と頼まれちゃうという、実に押見さんらしい内容w

もちろん、彼女が剃って欲しいのは見える部分の毛、つまり産毛なんだけど、「じゃあ、いくよ」とか「そんなに見ないで」とか言うやり取りは明らかに「初体験」のメタファ―。産毛の次は腋毛、そしてその次は……さてどうなるか?ってなお話だけど、これはあくまで一般映画、青春映画なのでチョメチョメな事にはなりません。

『~夢子』もそうだったけど、ヒロインは相手を異性として見てないんですよね。夢子はただチンコが見たいだけだし、後藤はただ上手に毛を剃って欲しいだけ。相手が全然タイプじゃないから「ヌードを描かせて」とか「わたしの毛を剃って」とか言えちゃうワケです。

だけど男子の側は、女子と2人だけの秘密を共有するうち、どんどん勘違いしちゃう。後藤には他に好きな男がいるもんで、太田の想いは完全に空回り。クライマックスはちょっとした狂気の沙汰になっていく展開も本作は『~夢子』とよく似てます。

で、結局なんだったんだろう?って、解ったような解んないような感じで終わるのもよく似てる。

青春って、そういうもんですよね。昨年からレビューしてきた昭和の青春ドラマ『あさひが丘の大統領』も、結論を示さないまま終わる回が多かったです。

人生の初心者に結論など出せっこない。まして恋愛に関しては。歳を重ねてしまった私の場合、悪い意味で境地に達しつつあるんだけどw、それを語ったところで若い人らには何も響かない事でしょう。

青春とはカオス。微エロを通して押見修造さんと松居監督は、それをリアルに描いておられると私は思います。素晴らしい!

で、その難しいモチーフを見事に体現して見せた、須賀健太くんと刈谷友衣子さん、さらに荒井萌さん、仲野太賀くんら若い俳優さんたちはもっと素晴らしい!

特に、全裸ヌードを披露する(させられる)ばかりか、剃って集めた後藤の毛を夜な夜な食べたりしちゃう変態ぶりを見せてくれた、主役の須賀健太くんにはマジ脱毛、いや脱帽です。(どうスか、おやじギャグの切れ味は?w)

刈谷友衣子さんの腋毛はホンモノかどうか判らない(たぶんホンモノに付け毛を足したんでしょう)けど、思春期まっただ中の彼女には勇気が要ることだったはず。お2人とも出演を引き受けた時点で天晴れです!

あと、太田に想いを寄せ、2人の秘密を探ってカオスに導いていくクラスメイト=坂下を演じた荒井萌さんもまた好印象。以前ここでレビューした『富江/アンリミテッド』('11) で富江(仲村みう)と闘うヒロインを演じた女優さんで、現在は「あらい美生」の芸名で活躍されてます。


 

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする