ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『踊る大捜査線』1997

2019-04-08 00:00:05 | 刑事ドラマ HISTORY









 
1997年冬シーズンに全11話が放映された、フジテレビ系列・火曜夜9時枠の連続ドラマ。

お台場にある湾岸警察署・刑事課強行犯係の新任刑事=青島俊作(織田裕二)の活躍と成長を縦軸にしながら、警察組織の業務形態や実情をリアルに、そしてコミカルに描いた、刑事ドラマというより「警察ドラマ」のパイオニア的作品です。

スタート時のレギュラーキャストは他に、青島と対立しながら友情を育んでいく本庁捜査一課の管理官=室井慎次に柳葉敏郎、湾岸署刑事課盗犯係刑事=恩田すみれに深津絵里、強行犯係の若きエリート=真下正義にユースケ・サンタマリア、定年間近のベテラン=和久巡査長にいかりや長介、魚住係長に佐戸井けん太、袴田課長に小野武彦、秋山副署長に斉藤 暁、神田署長に北村総一朗、そして事件関係者から湾岸署交通課婦警になり、やがて真下と結婚することになる第2ヒロイン=柏木雪乃に水野美紀。

さらにスペシャルドラマや劇場版シリーズで筧 利夫、内田有紀、真矢みき、寺島 進、小泉孝太郎、伊藤淳史、小栗 旬といった新メンバーが加わっていきます。

TVシリーズはそれほど高視聴率でなかったにも関わらず、その斬新さと面白さがクチコミや再放送で世間に広まり、絶妙なタイミングで公開された劇場版の大ヒット(『相棒』もそうでした)により、『太陽にほえろ!』を凌駕しかねないほどメジャーなタイトルになりました。

2012年まで劇場版が4本、TVスペシャルが3本のほか、脇キャラを主役にしたスピンオフの劇場版が2本、TVスペシャルが3本、更に短編ドラマや携帯配信ドラマなど、もはや把握しきれない程の副産物も生まれました。

ですが、私が本当に「素晴らしい」と思ってるのは、最初のTVシリーズ全11話のみです。劇場版はどれも残念な出来だと思うし、今じゃ可愛さ余って憎さ100倍で、最も嫌いな刑事物になっちゃいました。

その「素晴らしい」TVシリーズでさえ、今あらためて観直したら嫌悪感を覚えるかも知れません。だから再放送はあえて観ないようにしてます。

私がなぜ、最初のTVシリーズに胸躍り、もしかしたら『太陽にほえろ!』を超える番組になるかも……とまで思ったのか? なのになぜ、映画化されて以降は虫酸が走るほど嫌いになっちゃったのか?

その答えは、脚本の君塚良一さんが書かれた『テレビ大捜査線』というエッセイ本を読んで明確になりました。『踊る大捜査線』というドラマがどんな過程を経て生まれたのか? そこに全ての答えがあったんですね。

まず、最初から決まってたのは織田裕二が主演であること。織田さんは直前までラブストーリーの連ドラに主演しており、次は全く違った内容のドラマをやりたがってた。そして君塚さんもプロデューサーの亀山千広さんも、いつか刑事物にチャレンジしたいと思ってた。

そんなワケで君塚さんは、かつて視聴者として夢中になった『太陽にほえろ!』の脚本集を引っ張り出して、徹底的に研究されたんだそうです。

その結果『太陽~』が当時としては画期的な実験作であった事、そして現在ある刑事ドラマは全て『太陽~』のバリエーションでしかない事に気づくワケです。

それを嬉しそうに報告する君塚さんに対して、亀山Pは冷めた顔をして「じゃあ、それを全部、禁じ手にしちゃいましょう」と言ってのけた。

誰も見た事がない「新しい刑事ドラマ」を生み出すには『太陽~』がやらなかった事をやるしか無い。その辺りの嗅覚と判断力は、さすが名うてのヒットメーカーと言えましょう。

そこで君塚さんが自らに課したタブーは「刑事をニックネームで呼ぶ」「聞き込みシーンを音楽に乗せて見せる」「刑事と犯人の心情がリンクする」「刑事がよく走る」「刑事が殉職する」ほか、銃撃戦やカーチェイス、主役の刑事が犯人を逮捕する事すら禁じ手にしちゃった。(大事件となると捜査もさせてもらえず、本庁のパシリをやらされる所轄の現実)

と同時に、伊丹十三監督の映画『マルサの女』みたいに、それまで描かれて来なかった組織の内部、捜査現場の裏側を、ドキュメンタリーのようにリアルに、そしてハウツー物の楽しみを乗せながらエンターテイメントにしていく手法を思いつかれたそうです。

この時点で既に、私が『踊る大捜査線』を大好きになる理由と、大嫌いになる理由が、両方ハッキリと示されてます。要するに、君塚さんと亀山Pの温度差ですよね。

君塚さんには『太陽にほえろ!』が大好きだったという下地があり、大いにリスペクトした上で、それをタブーにするというチャレンジをされたワケです。

一方の亀山Pには『太陽~』への思い入れなど毛頭無くて、とにかく番組を当てる事しか頭に無い。それはまあ、プロデューサーとして当然の姿勢なんだろうと思います。

だけど、少なくともTVシリーズを立ち上げる時点では、両者が「全く新しい刑事ドラマを創る」っていうクリエイティブな志を共有されてた事が、君塚さんのエッセイからは伝わって来ます。何しろお互い「これはカルトになるね」「視聴率は取れないよね」って、そんな会話まで交わしてたんだそうです。だからTVシリーズは面白かったんですよ!

実際、私も初めてTVシリーズを観た時は、久々に衝撃を受けたもんです。最初の2回は見逃したんだけど、評判を聞いて観た第3話の冒頭、発見された死体の位置(ほんの数メートル)を巡って、他署の刑事たちと縄張り争いするシーン。

実はずっと以前に『太陽~』の後番組『ジャングル』でも似たような場面があったんだけど、その時には感じなかった新鮮さと面白さを『踊る~』には感じて、一気に引き込まれた記憶があります。

そこんところが、君塚さんの仰る「エンターテイメントにしていく手法」による効能だったのかも知れません。リアル志向は『ジャングル』も『踊る大捜査線』も一緒なのに、後者は見せ方が斬新でユニークだったんだろうと思います。

それと、これは『ジャングル』の記事にも書きましたけど、正統な続編である『ジャングル』よりも、他局の新世代スタッフたちが創った番組『踊る大捜査線』の方が、基本スピリットは『太陽にほえろ!』に近いんですよね。

『ジャングル』を創ったのは15年間も『太陽~』に携わって来たチームですから、また刑事物をやるなら根本から違うものをやりたかった筈です。対して『踊る大捜査線』チームは『太陽~』を観て育った世代ですから、アプローチは真逆でも根本的には『太陽~』に憧れ、自分たちの『太陽~』を創りたかったに違いありません。少なくとも君塚さんはそうでしょう。

だから、私がハマらないワケが無いんです。基本スピリットは『太陽にほえろ!』と同じなのに、全く新しい手法による刑事ドラマ。『太陽~』が終了して以来ずっと求めてた作品が、ついに現れたんだから。

ところが!『踊る大捜査線』は変わってしまった。劇場版1作目を観た時に、私は「何かが違う」って感じながらも、具体的に何が変わったのか答えを出せませんでした。

さらに劇場版2作目を観て、その戸惑いは怒りに変わって行ったんです。もう明らかに「つまんない」ものになってるのに、なんと日本映画史上ナンバー1の大ヒットを記録しちゃったもんだから、私の怒りは世の中全体にまで向くようになり、いつの間にか「破滅です」が口癖になっちゃったw

いったい『踊る大捜査線』の何が変わってしまったのか? その答えが、君塚さんのエッセイに記されてたんですよね。私はホント、目からウロコが落ちました。

事件は、TVシリーズがいよいよ最終回に向けて盛り上がろうとしてる時に、それこそ会議室で起こったんです。

「最終回の視聴率が20%を超えたら、映画化の許可が下りる」

亀山Pのこの言葉が、全てを変えてしまった。いや、亀山Pの中じゃ最初から何も変わってないのかも知れないけど、番組の方向性はここで180度変わってしまったんです。

君塚さんが最初に「禁じ手」とした筈の、『太陽にほえろ!』最大の武器とも言える「レギュラー刑事の殉職」っていうカードを、視聴率20%以上を稼ぐ為に、ここで使ってしまったワケです。それを今は後悔してるって、君塚さんは正直に書かれてました。

カルト扱いされてもいいから、全く新しい刑事ドラマを創ろう!っていうクリエイティブな心意気が、亀山Pの持ち込んだ「映画化」という甘い蜜によって、脆くも崩れ落ちたワケです。

ユースケ・サンタマリア扮する若手キャリアの真下刑事が凶弾に倒れ、その犯人検挙に燃える主人公=青島刑事たちが、この番組で初めて拳銃を手にするシーンには正直、私も燃えましたw ていうかメチャクチャ嬉しかったです。

だって、それはまさに『太陽にほえろ!』そのものなんだから。だけど今にして思えば、それこそ『踊る~』が『踊る~』でなくなっちゃった瞬間なんですよね。

結局真下は死ななかったんだけど、劇場版1作目では青島の殉職を匂わせ、2作目ではヒロイン=恩田刑事(深津絵里)の殉職を匂わせ、完結編でまたもや青島の殉職を匂わせるというw、もうそこにはクリエイティブな志しはカケラも残ってません。プライドも無く、ただひたすら商売あるのみ!

殉職うんぬんは置いといても、恐らく君塚さんが『踊る大捜査線』でやりたかった事、生み出したかった事は、最初のTVシリーズで全部やり尽くしたんだろうと思います。だから劇場版以降はもう「出がらし」であり「同じことの繰り返し」にしかなってない。

そんなワケで、素晴らしいのは最初のTVシリーズだけなんです。TVシリーズは脚本のみならず、キャスティングも音楽も素晴らしかった。深津絵里さんも水野美紀さんも大好きですw

織田裕二さんも良かったですよ。最高の当たり役である事に変わりはないと思います。ユースケさんも良かった。いかりや長介さんと柳葉敏郎さんの芝居は、ちょっとクサかったw

もう1つ『踊る大捜査線』が斬新だったのは、警察組織の縦割り社会を一般企業以上にサラリーマン的と捉え、湾岸警察署という場所をごく普通の会社みたいに描いたこと。

そして警察上層部を、アニメの『エヴァンゲリオン』みたいにダークかつ無機質な連中として描いたのもユニークで、これ以降の番組はこぞって真似しましたよね。

『踊る大捜査線』が同じ話を繰り返すループ状態になった事で、青島刑事の成長ドラマはフリーズしてしまい、組織内部のゴタゴタばかり描くようになったのも、刑事ドラマ全体の流れを変えてしまった気がします。

つまり『太陽にほえろ!』が築いた本当の意味での「刑事ドラマ」ってジャンルを、いよいよ絶滅させちゃったのも『踊る大捜査線』だった。『踊る~』以降の刑事ドラマは、刑事(人間)ではなく警察(組織)が主役の「職業ドラマ」。

しばらくそのブームが続くんだけど、『相棒』がヒットして以降の刑事ドラマは「捜査」「謎解き」が主役になっていきます。それって『太陽にほえろ!』がテレビ界に登場する以前の形なんですよね。

つまり原点は「捜査(事件)ドラマ」で、『太陽~』以降が「刑事(人間)ドラマ」、『踊る~』以降が「警察(職業)ドラマ」で、『相棒』から再び「捜査(事件)ドラマ」に戻ってる。

時代は巡りますから、この次はまた「刑事(人間)ドラマ」の時代が再来するのかも知れません。現に『隠蔽捜査』や『BORDER』みたいに、事件よりも主人公のキャラクター(葛藤と成長)描写に力を入れた作品も出て来ましたからね。

もしかすると、そろそろ『太陽にほえろ!』や『踊る大捜査線』並みの起爆剤になる刑事ドラマが、また現れる時期なのかも知れません。現れて欲しいです。現れてくれないと、ほんとヤバいですよ、このジャンルは。
 
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『太陽にほえろ!』#095

2019-04-07 12:00:05 | 刑事ドラマ'70年代









 
☆第95話『愛のシルクロード』

(1974.5.10.OA/脚本=長野 洋/監督=木下 亮)

チンピラの刺殺死体が発見され、すぐに大学生の伊藤(山西道広)が容疑者として浮かびます。

ジーパン(松田優作)とシンコ(関根恵子)は、伊藤のガールフレンド=弥生(杉田景子)に話を聞きに行くんだけど、彼とは1年前に別れたから何も知らない、と素っ気ない塩対応。

そんな弥生を見て、伊藤が殺人を犯したことを既に彼女は知ってると直感するシンコ。女のカンは侮れないと見たボス(石原裕次郎)は、弥生の張り込みをゴリさん(竜 雷太)とジーパンに(爪切りしながらw)指示します。

かくして弥生の日常生活を見守ることになったジーパンは、清楚で誠実な彼女の人柄に惹かれて行きます。ところが、密かに伊藤と連絡を交わしてた弥生に、あろうことか拳銃を盗まれてしまう!

……容疑者の恋人、あるいは自身が容疑者である女性に新米刑事が惚れちゃう話と、拳銃を奪われちゃう話という、定番メニュー2つを合体させたようなストーリー。

タイトルにある「シルクロード」は、犯人の伊藤がいつか行きたいと夢見てた場所で、その為に貯めた資金をチンピラ2人に奪われたもんで逆上し、1人を刺殺し、残るもう1人を射殺すべく、弥生にジーパンの拳銃を盗ませたワケです。

弥生を演じたのは、優作さんと同じ文学座出身の杉田景子さん。TBSの昼ドラ『愛子』で主演デビューを果たし、その次の仕事が『太陽』本エピソードへのゲスト出演。’81年に早くも引退されてるので、数少ない出演作の1つです。

個人的な感想を言えば、優作さんの相手役としては物足りなさを感じます。ジーパンがああいう地味な女性に惹かれちゃうのは、ドラマ上のキャラクターとしては有りだけど、松田優作の相手役となると、やっぱり桃井かおりさんレベルの存在感が無いと釣り合いません。

その点、決して派手じゃないシンコ=関根恵子(現・高橋惠子)さんがジーパンとお似合いのカップルに見えるのは、いま思えば凄い事かも知れません。やっぱりスターのオーラってやつがあるんでしょうね。

今回、一週間も張り込みを続けるジーパンの食生活を気遣うシンコや、弥生に惹かれてる彼の様子に嫉妬するシンコの姿も描かれ、いよいよ「恋愛フラグ」なるものが立ち始めてます。話数は既に95話。ジーパンの殉職が第111話ですから、この辺りから最終章がスタートしたワケです。

優作さんもデビューから1年近く経って余裕が出て来たのか、例えば今回も「ああ、知ってる知ってる。シルク道路ね」みたいなw、優作さんらしいアドリブがちょこちょこ見られるようになってます。

山さん、長さん、ゴリさん、殿下らのキャラクターや、BGMの使い方にも違和感が無く、みんなが知ってる『太陽にほえろ!』の形が、いよいよ完成した時期とも言えましょう。
 
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『太陽にほえろ!』#094

2019-04-07 00:00:07 | 刑事ドラマ'70年代









 
☆第94話『裏切り』(1974.5.3.OA/脚本=鎌田敏夫/監督=木下 亮)

中光産業の売上金=二億五千万を横領し、往生際悪く逃げ回った挙げ句に神奈川県で逮捕された女=高村八重(横山リエ)を、ゴリさん(竜 雷太)と殿下(小野寺 昭)が引き取り、東京へと護送します。

「女なんてのはな、殿下。可愛い顔してても、なに考えてるか分かりゃしないよ」

お人好しなゴリさんらしくない台詞ですが、実はゴリさん、交際してた見合い相手に二股をかけられてた事実を知り、極度の女性不信に陥ってるのでした。

一生を左右する結婚相手を選ぶんだから天秤にかけるのは当たり前、とはお茶汲み久美ちゃん(青木英美)の弁。言われてみれば一理あるものの、純情一直線の若きゴリさんには通用しません。

そして護送される八重がまた、自由奔放かつしたたかな女で、ゴリさんをからかい、殿下に甘え、あの手この手で逃走を図る厄介者。ゴリさんの女性不信に拍車をかけます。

そんな彼らに、若い新婚カップルが声をかけて来ます。周囲の反対を押し切って結婚した2人で、誰にも祝ってもらえないから、せめて見知らぬゴリさん達に祝福して欲しい、一緒に弁当を食べて欲しいと懇願する。

殿下は冷静に固辞するんだけど、同情したゴリさんと八重は弁当を口にし、新宿駅に着いた直後に倒れちゃう。弁当にサルモネラ菌が盛られてたのでした。

ニセ新婚カップルを送り込んだのは、八重の恋人で恐喝の常習犯=下田(山口嘉三)。八重に売上金を横領させた挙げ句に暗殺しようとしたワケです。

なんとか一命を取り留めたゴリさんと八重。迂闊に他人を信じた自分を激しく責めるゴリさんとは対照的に、下田が自分を殺そうとするなんて有り得ないと言い張る八重。

「どこまで馬鹿なんだ、お前は」

「馬鹿だっていいじゃないか。惚れた男ぐらい信じなきゃ、生きてたってしょうがないよ」

結局、病院から脱走して下田に会いに行った八重は、他殺死体となって発見されます。下田を逮捕に向かう道中、ゴリさんは殿下にこう呟きました。

「あの女は、下田に殺されるのを覚悟で会いに行ったんだ。惚れた男を信じたかったんだよ」

八重とゴリさんは、実は似た者どうしだったのかも知れません。別のエピソードで「騙されるのがそんなに悔しい事なのか? そんなに恥ずかしい事なのか?」なんて言ってたのは誰あろう、ゴリさん自身なのです。

もちろん、下田は怒りのゴリパンチを100発ほど浴び、めでたく廃人となりますw

「ゴリ。少しは女の見方、変わったか?」

ボス(石原裕次郎)の言葉に頷くでもなく、なんだか切ない笑顔を見せるゴリさんなのでした。

本エピソードは『太陽にほえろ!』が初めて視聴率30%台を記録した作品として、ファンにはよく知られてます。これと言ったトピックは無いんだけど、ゴリさんのキャラクターや番組の基本スピリットがよく分かる『太陽』らしいエピソードではあります。

また、八重を演じる横山リエさん(当時27歳)が奔放なキャラにピッタリで、とても魅力的でした。

1969年、大島 渚監督の映画『新宿泥棒日記』で主演デビューし、『銭ゲバ』や『天使の恍惚』『女囚701号 さそり』など多数の映画、刑事物や時代劇を中心にテレビドラマでもご活躍された女優さんです。
 
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『太陽にほえろ!』#079

2019-04-06 12:00:08 | 刑事ドラマ'70年代









 
『太陽にほえろ!』屈指の名作と言われ、殿下(小野寺 昭)の代表作とも位置づけされるこのエピソードが、匿名の一般ピープルによる投稿プロットを原作にしてるってのは、ちょっと皮肉な話かも知れません。

「こんなエピソードが観たい!」っていうファンならではの発想は、創り手側にはなかなか出来ないものかも知れません。第452話『山さんがボスを撃つ!?』も然り。

また、本作は第70話『さよならはいわないで』で初登場した殿下の恋人=悠木麻江(有吉ひとみ)2度目の登場エピソードでもあります。

プロットを書かれた投稿者さんは、殿下に恋人がいることを執筆時はまだ知らなかった筈で、ゆえに麻江は全く本筋には絡んでません。でも、だからこそ強く印象に残るんですよね。

今回、殿下はとんでもなく酷い目に遭うんだけど、一般人の麻江には全く何も出来ないワケです。ただひたすら気を揉むだけで、そばにいてあげる事すら出来ない。恋人として、それ以上にツラいことは無いでしょう。

また、同僚の立場から殿下の身を案じるシンコ(関根恵子)もいて、さらに小学生時代から殿下を慕う女性まで登場しちゃうという、殿下のハーレム人生を描いたエピソードでもありますw


☆第79話『鶴が飛んだ日』

(1974.1.18.OA/脚本=長野 洋/監督=竹林 進)

殿下が行きつけの喫茶店で目眩を起こし、店のママ=紀子(北島マヤ)に介抱され、紹介された医者(中井啓輔)の手当てを受けます。

そして勧められるまま通院するも体調は改善せず、ついに幻覚症状が出て来て、殿下は戦慄します。そう、医者から毎日打たれてた注射は麻薬だった!

七曲署がGメンと合同捜査でマークしてた麻薬組織が、刑事を密告者にして捜査情報を聞き出すべく、中毒者の紀子を使って殿下を罠にハメたワケです。

監禁され、さらに麻薬を打たれ続ける殿下を、藤堂チームが必死の捜査で居場所をつかみ、救出します。が、時すでに遅し……

禁断症状に襲われ、注射器に手を伸ばす殿下に、山さん(露口 茂)が例によって背後から、クールに言い放ちます。

「苦しいか? 打てばラクになる。だが、その後はまた地獄だぞ」

「……分かってます! しかし……しかし僕はもう駄目なんです! この体はもう、クスリ無しでは生きて行けないんです!」

殿下を罠にハメた紀子は、実は小学生時代の同級生だった。遠足の時に殿下から貰った小石を、今も大事に持ってる紀子。

たぶん紀子は、殿下がすぐ仲間になってくれるものと思ってた。だけど必死に抵抗する殿下を見て、過ちに気づいた紀子は彼を逃がそうとし、組織に殺されてしまう。

「土壇場で彼女は命を張って、お前を救おうとしたんだ。その気持ちを無駄にしてもいいのか!?」

山さんの言葉で我に返った殿下は、禁断症状が治まるまで自分を監禁して欲しいと志願します。それを聞いた山さんは手錠を取り出し、殿下と自分を鎖で繋ぐのでした。

「俺も付き合ってやる。長い夜になるだろうからな」

あのソフト&クールな貴公子=殿下が、絶叫し、髪を振り乱し、眼を剥いてヨダレを垂らしながら大暴れする姿には、ファンならずとも衝撃を受けずにいられません。

本当に物凄い迫力で、このエピソードで麻薬の恐ろしさを思い知った視聴者も少なくないでしょう。

そして手首から血を流し、痛みに耐えながら必死に殿下を押さえる山さん。その血はメイクではなく、本当に撮影で流した血なんだそうです。

「殿下! 苦しいのはお前だけじゃないんだぞ! ボスも、みんなも、そして麻江さんも! 同じように苦しんでるんだ!! 殿下、頑張れ! 頑張るんだっ!!」

2人の壮絶な姿を見てるだけで涙が出るんだけど、殿下の絶叫を部屋の外でじっと聴いてる、麻江の表情を見たらもう、涙腺爆発ですw

たぶんプロットには存在しない、本来なら必要なかった筈の麻江の存在が、このエピソードにより深い感動をもたらしてる。

その代わり、本来ヒロインだった筈の幼なじみ=紀子の印象が薄くなっちゃったのも事実。恐らく女性であろう投稿者さんは、殿下と紀子のメロドラマをメインに想定されてたんじゃないでしょうか?(紀子に自分自身を投影されてたのかも?)

それが番組側の事情で、麻江にウェイトが置かれちゃった。普通なら話のバランスが崩れちゃうところが結果オーライで、より素晴らしいエピソードに仕上がった……てないきさつがあったんじゃないかと推察します。

麻江は3度目の登場エピソード(第87話)で惜しくも事故死しちゃいますが、演じた有吉ひとみさん(当時26歳)は第488話へのゲスト出演を経て、第521話『ボギー刑事登場!』からボギー(世良公則)の姉=春日部正子として、再びセミレギュラー入りされる事になります。

日テレの青春シリーズ『でっかい青春』の生徒役でデビュー後、主に’70年代のドラマで幅広くご活躍された有吉さん。清楚かつ明朗なキャラクターは、実に『太陽』向きの女優さんだと思います。
 
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『太陽にほえろ!』#073

2019-04-06 00:05:09 | 刑事ドラマ'70年代









 
☆第73話『真夜中に愛の歌を』

(1973.12.7.OA/脚本=小川 英&中野顕彰/監督=竹林 進)

深夜ラジオの人気DJ=M.M.こと牧恵美子(森みつる)の番組に、リスナーからの脅迫めいたリクエスト電話が入り、たまたま放送を聴いてたゴリさん(竜 雷太)が捜査を始めます。

やがて、電話の主はミュージシャン志望の若者=植村(堀内正美)である事が判明。M.M.が作詞し、大物作曲家=マイケル中江(渥美国泰)が作曲したとされる大ヒット曲は、実は植村が創った曲だった!

メジャーデビューという餌に釣られ、植村はマイケルのゴーストライターとして利用されていた。それを告発しようにも証拠が無く、せめてもの抵抗がラジオの生放送への脅迫電話だったワケです。

そして翌日、マイケル中江が鈍器で殴られ、重傷を負います。犯人は、M.M.の付き人=洋子(中田喜子)。植村に想いを寄せる洋子は、盗作の証拠となる楽譜を盗もうとしてマイケルに発見され、揉み合った末に弾みで殴ってしまったのでした。

洋子に罪を犯させてしまった自責の念から、いよいよ自暴自棄になった植村は、マイケルの共犯者であるM.M.の生命を狙うのですが……

「騙される事がどうして恥ずかしいんだ? どうして人を殺さなきゃいけないほど悔しい事なんだ!?」

植村に同情しながらも……いや、だからこそ、ゴリさんは必死の想いで犯行を阻止します。

「人を信じる事は若者の特権だ。俺はそう思ってる。俺は……俺みたいなお人好しは、そう信じなきゃ生きて来れなかったんだ!」

人を騙すくらいなら、騙される方がずっといい……『太陽にほえろ!』が一貫して説いて来た人生訓だけど、卑劣な詐欺事件が後を絶たない現在では、綺麗事にしか聞こえないかも知れません。

それでも、『太陽』はじめ昭和のドラマを観て育った私は、騙すよりも騙される側の人間でありたいと今も思ってます。金はビタ一文やらないけどw

当時流行りつつあった深夜ラジオ放送に盗作問題を絡ませ、芸能界の泥沼に嵌まった若い男女の悲恋を描いた本エピソードは、主役のゴリさんが傍観者に過ぎない点から見ても異色作と言えましょう。

洋子を演じた中田喜子さん(当時20歳)がとにかく可愛くて、萌えますw NHK『連想ゲーム』の紅組キャプテンや朝ドラ『春よ、来い』の主役、長寿ドラマ『渡る世間は鬼ばかり』の文子役などで知られる女優さんです。

『太陽』では後に殿下(小野寺昭)の妹=島 京子としてセミレギュラー出演、第194話『兄妹』では再び堀内正美さんと共演される事になります。

その『兄妹』における堀内さんの役どころは、京子に片想いした挙げ句にバスジャックまでやらかしちゃうストーカー。第417話『ボスの誕生日』ではスニーカー(山下真司)を恨んで直子(友 直子)を拉致するストーカー、第690話『私が七曲署の藤堂だ』ではボス(石原裕次郎)に付きまとうストーカーとw、屈折した逆ギレ男の役がやたら多い堀内さん。ナイスミドルになられた現在でも、朝ドラ『純と愛』等で屈折した逆ギレお父さんを見事に演じておられますw
 
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