ハナママゴンの雑記帳

ひとり上手で面倒臭がりで出不精だけれど旅行は好きな兼業主婦が、書きたいことを気ままに書かせていただいております。

ジェームズ・バルジャーくん殺害事件 ③ [取り調べ]

2013-03-20 22:40:06 | 事件

10歳の殺人容疑者ふたりは、別々の警察署で取り調べを受け、その様子は録音された。

二人ともお互いに相手を責め、自分は相手がジェームズに乱暴するのを止めようとした、自分はほんの少ししか暴力をふるっていない、と主張した。

 

ロバート・トンプソンは二人の捜査官によって尋問を受けた。母親のアン・トンプソンとロバートの法的代理人が同席していた。ジョンより体が大きく、素行不良で悪名高い兄たちを持ち、自分自身も既に何度かトラブルを起こしたことがある彼は、ジョンとの関係においてはジョンをリードする立場にあると思われた。のらくらと質問をかわす術にたけたロバートは、尋問が始まった瞬間から真実と嘘の間を行き来した。自分の劣勢を感じると涙の出ないすすり泣きをし、プレッシャーがなくなるとけろりとした。防犯カメラに捕えられた映像ではジョンがジェームズと手をつないでいたため、「ジョンがあの子を誘い出したんだ。僕は先を歩いていたから全然知らなかった」と、ジョンが単独でジェームズを連れ出したと主張した。線路では、ジョンがジェームズにペンキを投げつけたあと自分はすぐにその場を立ち去ったので、そのあと何が起きたのか知らない、と当初ロバートは言った。

                                    

遺体発見現場では数個の単三乾電池も発見されていて、確証はないが、それらはジェームズの直腸に押し込まれた可能性があった。乾電池を万引きしたか訊かれると、ロバートは顔を真赤にして否定したが、乾電池と聞いてひどく当惑したことは明らかだった。尋問は続き、アンはすすり泣く息子に、「楽になるから、本当のことを話すよう」促した。ロバートは、ジョンが「狂ったようにあの子にレンガを投げつけ、あの子を大きな鉄の棒で殴った」と言った。あの子は目を開いたまま、横になって動かなくなった。ジョンは持っていた乾電池をあの子の顔に投げつけた。その間中、やめるよう叫びながら、ロバートはジョンをジェームズから引き離そうとした。・・・

捜査員に「なぜジョンはそんなことをしたんだろう?」と訊かれ、ロバートはわからないと答えた。「僕はつねっただけだ。」捜査員が「きみもジェームズを殴ったと思うよ。」と言うと、ロバートは答えた。「それはただの『思う』でしょ。」尋問の間ずっと、ロバートはジョンの罪が自分より軽くなることを心配した。「ジョンと僕とどっちの方が悪いか、先生に聞いてみてよ。ジョンだって言うから。」また自分には幼い弟ベンがいるから、「僕があの子を殺すわけがないよ。小さい子を殺したいなら、弟を殺せばいいんだから。」

乾電池に質問が戻ると、ロバートはふたたび冷静さを失った。誰がジェームズの下半身を裸にしたのか訊かれると、「僕は変質者じゃない」と興奮し、それ以上の質問に答えるのを拒否した。しかし捜査員はさらに一歩踏み込んだ。「ジョンは、きみがジェームズに何をしたって言うだろうね?」取り乱したロバートは言った。「僕があの子のパンツを脱がせてあの子の大事なところをもて遊んだって言うだろう。」尋問の終わり近くにロバートは、ジェームズの頭部をレンガや石で隠そうとしたのはジョンだった、自分は出血を止めようとレンガを1個置いただけだと言った。

 

ロバート・トンプソンが稀にしか冷静さを失わなかったのに比べ、ジョン・ヴェナブルズは尋問が始まると同時にヒステリックになった。捜査員を怖れ、威圧感を感じているようだった。苦悩のあまり口がきけなくなり、尋問を中断せねばならないこともたびたびあった。ジョンは嘘はあまりつかなかったが、かといって進んで真実を話すこともなかった。ジョンははじめ、ショッピング・センターには行かなかったと言った。捜査員が「ロバートは行ったことを認めた」と言うと、ようやく自分も行ったことを認めた。「僕は子供を連れ出すどころか、子供に触りもしなかった」と主張したが、捜査員が「ロバートはジェームズを連れ出したのはきみだと言っている」と言うと、取り乱し、むきになって否定した。

ジョンによると、悪いのはロバートだった。ワルで友達がいなかったロバートは、女の子と遊ぶしかなかった。転校してきたジョンは、最初はロバートを避けていたが、同情して友達になってやった。ロバートと万引きなどの「悪いことをするのはエキサイティングだった」。ジョンは、他の『良い』友達とはしないようなことを、ロバートとした。

                                    

ジェームズの拉致は自分のアイディアだったが、殺害はロバートのアイディアだったとジョンは言った。運河にたどり着いたとき、ロバートはジェームズを水中に突き落とすつもりだった。しかしジェームズは、水に近づこうとしなかった。そこでロバートはジェームズをさかさまに持ち上げ、頭から落として最初の怪我を負わせた。ジェームズは「マミー、マミー」と泣き続けた。こわくなった二人はその場から逃げ出したが、自分たちにもわからない理由で、また戻った。

尋問に同席していた両親、特に母親のスーザンの存在がジョンを困惑させていた。尋問に協力的ではなかったものの、捜査員たちは、ジョンは告白したがっている、告白して胸のつかえを吐き出したがっている―――というかすかな印象をもった。捜査員は取調室の外でスーザンに、「何が起こったのであろうと愛している」と言って彼を安心させるよう頼んだ。昼食を食べていたとき、スーザン・ヴェナブルズは息子をきつく抱きしめて言った。「大好きよ、ジョン。お願いだから、どんなことであろうと、本当のことを言ってちょうだい。」ジョンは泣き出し、その口から言葉がほとばしった。「僕があの子を殺したんだ。」次に捜査員たちを見つめ、彼は言った。「あの子のママに、僕がごめんなさいと言ったと伝えてくれる?」

捜査員に必要だったのは、この告白だった。ジョンは殺害を認めた。でもなぜ“We”でなく“I”と言ったんだろう?ロバートだって暴行に加わっていたはずだ。しかし、どの程度まで・・・?

ジョンによると、線路でジェームズに青ペンキを浴びせたのはロバートだった。レンガを投げつけ彼を鉄棒で殴ったのもロバートで、自分は小さいレンガや石をいくつか投げつけただけだ。襲撃により何度も悲鳴を上げて倒れつつも、ジェームズはそのたび立ち上がった。ロバートは大笑いしながら、ジェームズへの暴行を続けた。ジョンは一度、ロバートを止めようとした。ロバートが鉄の棒でジェームズを殴ったら、ジェームズはうつぶせに倒れて動かなくなった。自分はあの子を傷つけたくなかったから、小さいものしか使わなかったし、わざと狙いを外した。あの子の靴を脱がせるのを手伝ったが、あの子の下半身を裸にしたのはロバートだ。自分もあの子を蹴ったり殴ったりもしたけど、本当に軽くしかしなかった。ロバートはあの子の下半身を10回くらい蹴ったし、顔も蹴った。

乾電池に関する質問が始まると、ジョンはヒステリックに泣き出した。「ロバートが乾電池を使って何をしたかなんて知らないよ。」ロバートがジェームズの下半身に何か他のことをしたか尋ねられると、ジョンは取り乱し、隣に座っていた父親のニールを拳で叩き出した。

 

二人は2月20日(土)に起訴され、11月に裁判が始まるまで勾留されることになった。

≪敬称略≫

≪ につづく ≫

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2 コメント

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絶句。 (チビまま)
2013-03-22 21:17:05
この事件、全く知りませんでした。
読んでいるうちに、気持ち悪くなってくるくらい、ひどい残酷さです。
こんな小さな無抵抗の子に・・・
言葉がみつかりません。
犯人は10歳ということで、もちろん酷いことをしたとはいえまだほんの子供。やはり彼らを育てた環境、親や周りの影響が一番の原因だと思います。
何がよくて何がいけないのか、それを教えられない親は親失格。
こんな残酷なことを覚えるなんて、よっぽど何か家庭であったのでしょうね。
よくあるイギリスの荒れた家庭が目に浮かびますが・・・

もう二度とこんなことが起きないように、社会が変わらないといけませんね。
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本当に・・・ (ハナママゴン)
2013-03-23 07:14:57
・・・衝撃的な事件でした。
普通、10歳にもなっていれば、善悪の区別はつきますよね。誰かをぶてば、相手は痛い思いをするなんてことは、5歳児だって知っています。
この二人にはきっと、愛情を注ぎ、同時にきちんとしつけや指導をしてくれる親がいなかったんだろうな、と当時思いました。事件からちょうど20年を迎えたため、ブログ記事にすることで自分もいろいろ学べるかも、と思った次第です。

ジェームズくんが感じた不安、恐怖、苦痛・・・ そしてご遺族の悲しみや怒りを思うと、言葉もありません。
子供への虐待を疑ったときと同様、何かがおかしいと感じたら、介入したり、通報したりすることが大事ですね。
もし何もなかったら、それはそれでよし。もし何かが起こっていたのなら、介入や通報は重大な結果を未然に防げることになるのですから。
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