花夢

うたうつぶやく

027:嘘のうた

2006年11月05日 | 題詠2006感想

パステルの淡さでなぞる嘘なのにやさしくなんかなれない夜更け
暮夜 宴

こころがうまく消化できていない様子の夜更け。

この「なぞる」というのは、
相手の嘘を、パステルの淡さでなぞっているのでしょうか。
輪郭もぼかしてしまって。
嘘の存在はわかっているけれど、それをくっきりさせないまま。

けれど「やさしくなんかなれない」と言ってしまうのは、
そこに嘘があることを知ってしまっているからでしょう。

嘘をどこまでもぼかすことまではできても、
それをなかったことにして、やさしくなどはできない。
むしろ、なかったことにできないがために、
パステルほどの淡さで「なぞる」のかも知れないですね。嘘を。

やさしさと、嘘の関係について考えてしまいました。
なんのために嘘をつき、
なんのためにやさしくなるのだろうか、と。



ひとつだけ嘘を許して見送れば 雨の匂いを連れてくる風
青野ことり

こちらは、嘘を許すひとの作品。
「嘘を許して見送れば」とすらりと言えるのが大人です。
ひとつだけ、ですけど。

この作品は、下の句で
「雨の匂いを連れてくる風 」
と繋がるんですね。

ふわっと湿った、雨の匂いを連れてくる風に吹かれる。
その雨の湿気が、まるで流れなかった涙のようにも思えてしまう。

嘘を許したところで幸せになれるということでもなく、
ただただやるせない思い。
湿り気を帯びた雨の匂いを含む風に吹かれ、立ちすくむ。
雨が来たら、泣くかもしれない。



玉葱の皮むき作業するように剥がしても嘘剥がしても嘘
きじとら猫

「剥がしても嘘剥がしても嘘」が頭にこびりつく作品です。
どんどん剥がして剥がしてゆくけれど、見えゆくのは嘘ばかり。
嘘ばかりでどんどん必死になる。本当はどこ?
・・・・途方もない。

玉葱の皮むきに例えられているけれど、涙も一緒に流れるのでしょうね。



ジャンクフード@シブヤの嘘つきな味に飼い馴らされている日々
まほし

ジャンクフード@シブヤ!!カッコイイ!

「嘘つきな味」なんて言いながら、ヤミツキな感じがするのはシブヤの魅力なのでしょうか。
ジャンクフードって、体に良くはないんだろうけど、食べだしたらやめられない味を含んでる。
しかもそんなジャンクフード@シブヤに「飼い馴らされている」と言う。

ジャンクフード@シブヤを歩く彼女は、はっきり感じているのでしょう。
シブヤがジャンクフードであることも、その嘘つきな味にも、自分達が飼い馴らされていることも。
わかっているけれど、だからと言って、そこから抜け出してなにがあるのか。
オトナはなんにも教えてくれない。