花夢

うたうつぶやく

028:おたくうた

2006年11月21日 | 題詠2006感想
また走ります。

お!もう「おたく」まで来た!
なぜか「おたく」のお題はひとつの目安のようでした。私のなかで。
パタパタと立つ旗のようで、とりあえずあそこを目指せ!というような。
目立つお題だからでしょうか。


昼のあいだ星座おたくの少年は動物園で息をしていた
aruka

その頃のおたくというのは、寡黙で、でもひっそりと心をあっためている少年でした。
自分の夢中になれる場所はごくごく狭い夜だけで、
そうではない昼の間はただ息をするだけで、体をこわばらせじっとしているのでした。
それでも、少年は自分の輝く場所をしっていて、だから息をしていられたのでした。

忘れられない1首です。
おたくって、本来こういう少年であったはず。
ちっぽけで愛しいおたく。

今は広くて浅い情報が膨大に溢れすぎていて、こういう愛しいおたくは絶滅寸前ではないのでしょうか・・・悲しいことに。



おおたくさんの楔形文字散りまどひさけてくだけて発芽するかも
謎彦

ブログのほうに飛んで、ふふふふふっと口元がゆるみました。
ほんとうに、「おおたくさんの楔形文字散りまどひさけてくだけて発芽するかも」でした。
楔形文字から、思わぬ広がりを見せつけられた気分です。

それにしても、「散りまどひさけてくだけて発芽するかも」という言い回しはステキ!
見たままを形容したというより、心の広がりからうまれる非常に豊かな形容であるので、ただただ感嘆してしまいます。

謎彦さんの題詠はとても面白いです。
必ずなんらかの画像と並んで詠まれているんのですが・・・・いったいどこから・・・・と思われるような、幅広い方面から画像を持ってこられています。すごい・・・。
レトロなものや、えぇ!?これに注目!?というものから、日常で見かけなさそうな不思議なものから・・・。
これはきっと、謎彦さん独自の着眼点と、博識のなせる業なのでしょう。
しかも、題詠で詠まれた短歌と画像が可笑しな接点で繋がっていて。思わず笑ってしまう。面白すぎる!

あらためて100首。
通して読んで見てみたらかなり頬が緩みまくりでした。



鈍色のフォークふるえば(だい、じょう、ぶ)おたおたくずれ落ちるオニオン
田丸まひる

(だい、じょう、ぶ)とおたおたくずれるオニオンが妙なインパクトで残ってしまいます。絶妙なふるえかた。

個人的にはオニオンスープが浮かんでます。しかも丸ごと1個入ってるやつ。
だって、おたおたくずれ落ちるようなオニオンは、丸ごとを煮込んでとろけんばかりのオニオンに決まってます!
うーん。でもフォークなのかぁ。スプーンではなく。
難しいなぁ。(食べるのが)

まるごと煮込んだオニオンは、とろっとしていて、ぽたぽたと溶けそうで、
(だい、じょう、ぶ)って、おたおたくずれたんだな、って思うのです。
そのおたおたっぷりが浮かぶ。いとしい。
きっとそのオニオン。甘いんだろうなぁ。



<振り返り>
実は、「おたく」にトラウマがあるのは自分自身なのでした。
高校の頃、おたくの悪口を複式呼吸で叫んでいました。(なにそれ)