「垂」という歌でまず浮かんだのは
きっと血のように栞を垂らしてるあなたに貸したままのあの本
兵庫ユカ (「七月の心臓」より)
でした。
ユカさんの代表作ともいえる1首。
きっと血のように栞を垂らしてるあなたに貸したままのあの本
兵庫ユカ (「七月の心臓」より)
でした。
ユカさんの代表作ともいえる1首。
垂直に立つかなしみをかなしんでかなしみのなか垂直に立つ 飯田篤史 うわー。 飯田さんー、これは参りましたー。(まるで私信のように) 「垂直に立つかなしみ」を知っています。 それでも「かなしみのなか垂直に立つ」のですね。 それは性のようなものかもしれません。 かなしいね。 かなしいけれど、真っ直ぐで、凛としているね。 どうしようもないけれど、 どうしようもないような自分で在り続けること。 私は、垂直なものをすごく憎んでいます。 なぜなら、自分の中に途方もない垂直さが埋まっているからです。 ごめんなさい。ありがとう。(と言いたい。) |
ぐうすかのすかとかあたしに垂れているものとかきみはすごくすてきよ 西宮えり 思わず、うふふ。と口元がゆるんでしまいそうな作品。 とても近しい人への油断しきった歌で、でも、でれでれしているというより、ぱっと飛び込む真っ白な光のような作品。 「ぐうすかのすか」もそうだし 「あたしに垂れているもの」もそうだし、 「きみはすごくすてきよ」と言ってしまえるのもそうですね。 無防備に幸福な作品。すごくすてき。 |
これ以上だれをゆるすの 垂直にふる五月雨にまで責められる 田丸まひる こころのせめぎあい。 たぶん、ゆるされたいのは、わたしじしん。 垂直な五月雨は、容赦なくふる。 |
夢のない日暮れの道を垂直に震わせる海鳴り 飢えている 瀧口康嗣 「飢えている」にどきっとして、日常がその言葉で埋まりそうになりました。 「夢のない日暮れの道」 その乾いた道を、垂直に震わせる海鳴り。 まるで、その海鳴りが「飢えている」ことに気づかせてしまうかのように、日暮れの道を、作中主体を震わせる。 結句まで来て、最初の「夢のない日暮れの道」と呼応してゆき、胸が締め付けられる思いがします。 気づかねば良かった感情に、気づいてしまったようで。 |