安岡師は、昭和の代表する思想家の一人である。
名前は、以前から知っていたが、師の本を読む機会はなかった。
今回、論語を読むにしたがって、師の名前に触れることが多く、偉大さが見えてきた。
そこで、「運命を創る」という人間学講話という本を購入した。
「明治・大正・昭和三代の盛衰」という章の中で、「思考の三原則」ということを書かれている。
その1 目先にとらわれないで、できるだけ長い目で観察すること
その2 一面にとらわれずにできるだけ多面的に、できるならば全面的にも考察すること
その3 枝葉末節にとらわれないで、できるだけ根本的に観察すること
逆に言えば、ものごとを目先の結果だけにとらわれたり、ある一面だけ見てものごとを判断したり、根本的なことを考えずに、枝葉末節にこだわったりすると、結論が反対になることもある、といっている。
特に時局の問題などは特にそうなるので、できるだけ長い目で、できるだけ多面的に、できれば全面的かつ根本的にみなければ、決して正しい考察は成り立たない、と言っている。
企業経営など、特に「思考の三原則」が当てはまる。
目先の利益だけ追及している会社は、外部環境の変化に流されており、その浮き沈みは激しい。
赤字になる原因も様々な要因が重なっている。
その絡まった糸を、一本一本手で丁寧にほぐしていく必要がある。
これをいい加減すると、また糸は絡み、赤字となる。
糸が絡む根本原因を突き止めないで、表面的な処理だけをやっている企業は、自分の力で利益を生み出すことができない。
逆に言えば、外部の環境変化は、当たり前であるから、その環境変化に柔軟に対応し、さらに独自の努力で利益を生み出す仕組みを作ることである。
どのような仕組みを創れば、利益が出るか、根本的に考える必要がある。
自社になければ、成功事例を研究すれば、解決のヒントが見えてくる。
概念化や科学的知識体系などを、バカにする経営者が多々いる。
そのような人は、「何事も経験である」といい、一般化された理論を否定する。
しかし、「一般化された理論」とは、成功事例の共通点を集めたものであり、概念化したものである。でるから「一般化された理論」をどのように自社に加工して当てはめるかということである。このプロセスを行うことで、「活きた理論」となる。
このプロセスの精度を上げることで、企業の未来が見えてくる。
やはり、安岡師が言われるように、できるだけ長い目で、枝葉末節にとらわれずに多面にモノをみて、根本的に思考することが重要である、ということがわかる。