先日、塩沼大阿闍梨にお会いした。
私は、仏教の世界について知らない。
昨年亡くなられた酒井大阿闍梨の本は何冊か読み、興味を抱いていた。
酒井師は、比叡山千日回峰行を二度満行して大阿闍梨になられた方である。
当時、酒井大阿闍梨の満行の様子をTV放送で見ていた小学生がいた。
その姿に感動して、将来自分も阿闍梨になると心に決めた少年が塩沼大阿闍梨である。
当初は、酒井師がいる比叡山で修行する予定であったが、大峰山の千日回峯行の方が厳しいということを知り、大峯山を修行の場に選んだという。
この時は、まだ19歳の少年だ。
その覚悟は凄まじい。
何せ1300年の歴史で、大峯山の千日回峯行を満行した人は塩沼大阿闍梨で2人目だ。
オリンピックで例えれば、金メダルを10個も20個も取っているような超人レベルの方である。
このような修行をした方のイメージは怖いお坊さんのように思うが、お会いすると全く異なる。
優しい笑顔で、素敵な心の持ち主である。
さらに、修行僧として、難しい勉強をしているはずだが、難解な言葉は一切ない。
世間には往々にして専門用語や難しい言葉を使い、自分の権威を保とうとする人がいる。
しかし、大阿闍梨は全く違う。
仏教の修行で学んだ難しいことを、一般庶民でもわかる優しい言葉に置き換えて話してくれる。
大阿闍梨のお話の中に、「山の行より里の行」と言う言葉がある。
厳しい山で修行することも大切であるが、日常生活の中でいかに生きるか、という課題。
当たり前のことであるが、当たり前のことに気づいてそれを実行することの大切さ。
一般の凡人は、後悔する日々を送っている。
今日の仕事でミスをしてしまったとか、
家族に厳しい言葉を言ってしまったとか、
後悔して、反省する日々、これが普通の人ではないだろうか。
塩沼大阿闍梨のすごいところは、後悔しないこと。
そのためには、日々全力を尽くすこと。
相撲の星取りであれば、8勝7敗で勝ち越しであるが、
千日回峯行の修行では、1000勝0敗でならなければならない。
いい加減な気持ちで修行しても、表面的には見えないが、人様に対して自信を持ってお話をすることが出来ないという。
1000日間、全力を尽くして修行してきたこと。
この自信が、大阿闍梨の一つひとつの言葉ににじみ出ている。
今のお姿は、もう一歩上の段階にいる。
山の修行を終えたが、もっと大切なことは、日常生活をどのように生きるかであるということ。
日々の生活において、千日回峯行以上に全力を尽くすことが大切である、ということを言っていた。
日々全力を尽くしているから、反省することはあるが、後悔することはないと断言している。
そのためのヒントが、塩沼師が最近出版された本「人生で一番大切な三つのことば」にある。
三つの言葉とは、「ありがとう」「すみません」「はい」
誰もが知っている大切な言葉である。
この三つの言葉は、「感謝」であり「反省」であり「思いやり」である。
日々全力を尽くし、感謝し、反省し、思いやりのある行いをすること。
これを行うことで、誰もが幸せな人生を送ることが出来るという。
この本には、人生を上手に生きていくためのヒントが満載である。
人生の指南書として、一読する価値がある本である。