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気ままな推理帳

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天満村寺尾九兵衛(30)寺尾ツタは義甥と寛延年間に坂之内池からの水路を完成させた

2025-04-06 08:51:31 | 趣味歴史推論
 坂之内池自体は寛文7年(1667)に築造された。1)しかしこの時点では、水は天満村には流れてこない。水は樋を通って、元の東谷川として阿島に流れていた。それから80余年経った寛延年間(1748~1751)に第六代寺尾九兵衛宗清の妻ツタが村人を指揮して、隧道(ずいどう トンネル)を掘り、天満村(上天満村・下天満村)への水路を完成させた。

1. 池の概要は以下のとおりである。2)
 池の周囲 約4km、面積約6ヘクタール →写1   堰堤の長さ88m、上幅5m、高さ12.5m
 山腹の岩盤を掘り抜いたトンネル水路 長さ 45m 幅0.7m 高さ1.5m →写2

2. 筆者は、ツタの工事の記録を探したが、見つからなかった。西條誌にも記載はなかった。
 池の畔にある昭和5年(1930)建立の坂之内溜池改修記念碑は、昭和4~5年に行われた改修工事のものである。→写3
老朽で漏水がひどくなった木樋に代えて、コンクリート巻口径1尺2寸(36cm)の土管伏樋(ふせどい)を設置した。築造の由来については「坂之内溜池は寛延年間の築造に係り爾来殆ど200年天満村唯一の灌漑水源を為し来たりしを---」としか触れられていない。
 池の畔には他に小さな3石碑がある。→写4
 ① お地蔵さん 左側「三界萬霊」、右側には年月日が陰刻されているようだが、読めない。→写5
 ② 自然石 「坂之内----」の他は読めない。→写6
 ③ お不動さん 「村内安全」年月日はわからない。→7
正確な工事の開始・完成年月はわからないが、ここでは寛延元年(1748)開始、寛延3年(1750)完成と推測して話を進める。

3. ツタを中心にして時系列で見ると以下のようになる。3) 従来の文献の話と大きく異なる。
 ツタの夫宗清は、別子粗銅が天満村を通っていた時の六代当主であり、正徳2年(1712)に没した。七代当主は、宗清の弟貞清(ツタの義弟)が継いで、享保9年(1724)に没した。八代当主は、宗清・ツタの息子である庸清(つねきよ)が継いだが、元文4年(1739)に43歳で没した。庸清の後を、貞清の息子貞之進英清(ツタの義甥)が20歳で九代当主を継いだ。この九代当主貞之進英清が28歳の時、寛延元年(1748)に坂之内池の工事が始まった。この時ツタは71歳であった。工事が寛延3年(1750)完成した後、ツタは寛延4年(1751)年2月16日に没した。享年74。


4. ツタの活躍は、明治以降に書かれた文に次のように記されている。4)5)6)
 ①ツタは白馬に跨がり陣頭指揮をとった。
 ②天満村への水路を作る際に、夜山肌にたくさんの松明(たいまつ))を連ねてそれを遠望して適当な勾配を決めた。

5. 夫宗清と計画し約束した工事を、自分の息子庸清が当主の時にしたかったが、かなわず、息子は43歳で没してしまった。村のためにも自分が生きている間に天満村に水を引こうと強い意志をもって義甥の当主貞之進英清と図り村人を先導して寛延年間に工事を成し遂げたのである。71歳という高齢で白馬に跨がって現場に行き、体力・知力・気力の限りを尽くしたツタに感謝するしかない。
 「宇摩地方の天災」の年表によれば、元禄~享保の間に7回の干ばつが起きている。7)元禄12年(1699)、享保3年(1718)、享保4年(1719)、享保9年(1724)、享保10年(1725)、享保17年(1732)である。天満村でも同じような天候であったと思われるので、凶作に苦しんだことであろう。享保には間に合わなかったが、寛延の坂之内池完成で天満村は潤ったに違いない。

まとめ
六代当主寺尾九兵衛宗清の妻ツタは、夫亡き後、義甥の九代当主貞之進英清と、寛延年間(1748~1751)に坂之内池から、隧道を掘り天満村(上天満村・下天満村)への水路を完成させた。


注 引用文献
1. 本ブログ「天満村寺尾九兵衛(9) 坂之内池自体は寛文7年に築造された」
2. web.「近世以前の土木・産業遺産」>愛媛県>四国中央市>坂之内の隧道
3. 本ブログ「天満村寺尾九兵衛(26) 宗清と貞之進英清の間に二代の当主がいた」
4. 「天神・天満学問の里巡り」7番、10番、12番、94番(天満公民館 令和3年 2021)
5. 土居町誌「坂之内池を築いた寺尾つた女」p831(1984) web. 国会図書館デジタルコレクション
6. ふるさと宇摩の人々「寺尾ツタ」p76(四国中央市教育委員会 2011)
7. 伊予三島市史p368(1984)web. 国会図書館デジタルコレクション

写1 坂之内池


写2 坂之内の隧道(注2の画像(「ブログ四国の古道・里山を歩く」提供)を転載させて頂きました)


写3 坂之内溜池改修記念碑


写4 池の畔の3石碑


写5 お地蔵さん「三界萬霊」年月日は読めない


写6 自然石「坂之内----」


写7 お不動さん「村内安全」





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