25年程前 今は廃業してありませんが、大垣の愛晃堂画廊で水村先生のデッサンを購入しました。
この絵が私のコレクターとしての原点となったのですが、思いがけなくしばらくして1枚の葉書が届きました。
何とも不思議に美しい字で 購入の御礼がしたためられていました。
その文字一字一字が心に沁み入るのです。
書家の文字と違って画家の文字は何と味があるのでしょうか。
この文字が手でなく、口で書かれたことに心締め付けられます。
先生の著書の中にこんな文章があります。
感電事故で両腕をなくされた水村少年が学校に復帰したころのことです。
ミミズの字
・・・前略
小学校に復帰して、最初に必要に迫られたのは文字を描くことだった。口で書くよりしょうがないので、鉛筆をくわえて書いてみるが、ノートにはミミズがはっている。
ノートをとるのは絵ほど好きではなかったから、正直言って落ち込んだこともある。
「字なんて書けなくったってもいいや」と開き直ってみることもしばしばあった。
そんな僕を最初に励ましてくれたのは、小学校の高学年の三年間を教えてくれた先生だった。
先生は、ノートに這ったミミズのような筆の跡を文字として読んでくれた。それがうれしくて、うれしくてたまらなかった。
「先生が読んでくれるから、少しでも字に見えるように書きたい。」真剣にそう思った。
・・・中略
あるとき、教室で版画を彫ったことがある。足の指で彫刻刀を動かして、ガスタンクのある風景を彫った。自分でもなかなかよくできた、と出来に満足した。
それを見た先生は、とても驚いて、クラスの仲間に見せ、拍手をさせた。そして墨田区展に出品してくれて、入選となったのだ。
今から思うと拙い作品だが、先生は「やればこれだけできるんだ。」と僕を認め、何かに挑んでいこうとする勇気を祝福してくれたような気がする。
もし、先生の励ましがなかったら、僕はミミズの字のまま、諦めていたかもしれない。
・・・了
先生の字はとても味があるのですが、その一字一字には先生の不屈の人生が垣間見えると同時にたくさんの人の愛情がこもっているのではないかと思うのです。
そして絵と同時にその文字に鑑賞者である私たちは励まされてしまうのです。
水仙
慈姑 F0 油彩
水村喜一郎展 会期は3/17~3/26(会期中無休)ですが 展示が終わりましたので明日からでもご覧になれます。
ただし、ご来廊の折には 画廊春 までお電話いただけますとありがたいです。
作品のご予約も承ります。
大垣市藤江町4-14 画廊春 代表 田渡達久
Tel : 0584-78-0043
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