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アボリジニの天文学

2020-12-11 | 日記

アボリジニの天文学の話を聞いた。南半球では銀河系の中心付近が頭上に在って「天の川」に ”暗黒ガス” が大きく見え、アボリジニたちはそこに「エミューの形」の姿を見ていたそうだ。その星空の「エミュー」が天上でどのような姿勢(立ったり、横たわったり)で見えるかによって、彼らは貴重なタンパク源であったエミューの生態を知り、子孫に伝えて残していったのだという。

 また、彼らが数百キロを移動する「長い旅行」に出るとき、オーストラリアの平らな平原に目印の地点(水場や特徴的な岩)を決め、それらの位置関係を夜空の星が連なる線に置き換えて覚え・伝承していたらしい。確かに高い山や峰が見えない大平原では目印となる物が無く、地上の岩や泉を目印に決めたとしてもそれを見つけるには、互いの位置関係を記した地図が居る。その地図を夜空の星を結ぶ「星座のようなものとして」覚えて子孫に語り伝えれば、旅の途中に星を見上げて自分がどの地点「すなわち星の位置」に居るのか、次の地点まではどの方向にどれくらい行けば良いのかを確かめることができる、というわけだ。

 随分前にオーストラリア・ケアンズに行った時の事を思い出す。アボリジニの楽器デジュリジュの音や、その楽器に書かれた図案にまつわる言い伝え・アボリジニの神話が懐かしい。彼らはそのようにして多くの絵を描き、それを神話として伝承していくことで多くの知恵・知識を子孫に伝えて行ったのだろう。

 国際的ミーティングの間に街の郊外での会食が開かれ、少し飲み食いした後で庭に出て星を見上げてみた。南十字星というものをしっかりと目に残しておきたかったからだ。同じように普段見れない南半球の星を見ようと出て来た女性や子供に、自分に分かる範囲で星座を説明してあげた。一旦確認した後で、もう少し時間が経って見た方が良い形に見えると考えてテーブルに戻り、30分から1時間くらいして再び庭で星を見上げた。期待して見上げたものの、自分の想像とは全く異なる星の配置に「おかしい、ちょうどこの辺りに星座が来ているはずなのに・・・」と、まるで別の星にでも来たような戸惑いを感じた。が、しばらく考えて自分の大間違いに気付く、「ここは南半球、星空は日本で見上げていた時と逆に動くのだ」と。

 日本で星空を見上げると天の不動点(天の北極)を中心にして右(東)から左(西)へと動く。南半球の星空では天の不動点が天の南極となり、星はそれを中心に左(東)から右(西)へと動く。自分が日本での癖に従って予想した一時間後の星は、それとは真逆の方向に同じだけ動いていたというわけだ。見上げる空が逆に動くという、自分としては摩訶不思議な世界に迷い込んだような気分だった。考えてみれば太陽だって北側に上っていたはずなのだが、ケアンズの緯度が低くてあまり気付かないままだった。もし太陽の位置を見て行動していたら、おそらく東と西を完全に間違えて街で迷子になったに違いない。アボリジニと星の話を聞いていたら、オーストラリアの星空をもう一度見に行きたくなった。

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