ごとりん・るーむ映画ぶろぐ

 現在584本の映画のあくまで個人的な感想をアップさせていただいています。ラブコメ、ホラー、歴史映画が好きです【^_^】

裁かる々ジャンヌ(カール・テオドール・ドライヤー監督)

2008-01-08 | Weblog
ストーリー;百年戦争でイングランド軍に占領されたオルレアンを奪回し、シャルル7世の戴冠式を成功させたジャンヌ・ダルク。その後1430年にブルゴーニュ軍によって捕らえられイングランド軍に引き渡され、ルーアンの城に閉じ込められる。映画では異端審問裁判の様子が描かれ、即日に死刑となり火あぶりにされた1431 年5月30日の様子を1時間20分で描写。
出演;ルネ・ファルコネッティ、ウジェーヌ・シルバン、アントナン・アルトー
コメント;1928年作品の作品。サイレントだがこの映画のタイトルはもはや古典に属する部類だし今見ても名作だということに異論を唱える人は少ないだろう。デンマーク生まれのカール・テホ・ドライヤーはこの作品の他にも「吸血鬼」といった名作を撮影しているが、工業的にはあまり観客が入らずその後ジャーナリスト舞い戻る運命をたどる。人物のクローズアップが連続するのと意識的か無意識にかは判別できないがカメラが人物の頭だけをとらえたり、斜めにかしいだりする。最初は違和感があるのだが、その画面構成がだんだん恐怖を呼び起こし、ラスト間際にうなだれて黒い影にしかみえないジャンヌ・ダルクの横顔がとてつもなく怖い。最初の1時間はラストの20分のための演出の仕掛けといってもいいのかもしれない。オモチャの「冠」や短めの髪、十字架のモチーフといった細かな映像がそのあと連続して出没する「火あぶり」という映像をかなり効果的に演出。15世紀の物語がDVDでここまで再現されていいのか、1928年時点でのヘアー・メイクや衣装の粗末さといった問題点などを払拭する演出で、お金や予算とは無縁に映像が成立して映画が進行するのだという妙な感慨を覚えていくうちに映画が終了する。
白黒映画というとやはり最初は見慣れないし、どうしてもハリウッドの最近の映画では「つかみ」というのが映画の始まりから 10分ぐらいまで続くのになれてしまっているため、映画の光とか影とかに興味がもてない自分がいる。ただそれを我慢してみていくと、その映像の中に引き込まれて気がついたら映画は終了している。数百万のフィルムが現像されて世界中で鑑賞され、そして70年をすぎた後もDVDで鑑賞したくなる映画というのはかなり希少。で、この映画はそうした人類の歴史とともに親しまれてきた映像の集積で、今後も親しまれるであろう映画。理由はやはりこの映画をみるとよくわかる。映画学校などでも音楽も衣装もろくにそろわない時代の映画がなぜこれだけ怖いのかといった教材に使われるだろう。感性の問題といってしまえばもちろんそうだが、それだけではおそらくすまない。たとえば「エイリアン3」で、主人公は「処刑惑星」のマグマの中にエイリアンとともに「溶けていく」のだが、その主人公リプリーの頭は坊主頭であたかも殉教者のよう。どう考えても「エイリアン3」のリプリーはラストで70年前のジャンヌ・ダルクを継承していたとしか思えない。
字幕の内容も非常に形式的な問答だが教会組織の力が非常に強かった15世紀に異端者審問にかけられている状況で、さらにその状況下で自分の信念を貫くのには非常に困難な状況があっただろう。白い煙と炎が画面全体に広がり天に舞い上がる。そして苦痛にゆがむジャンヌ・ダルクとめらめらと燃えて灰となって消えていく「紙」がまた怖い。そして主役のルネ・ファルコネッティがラスト間際でその美しさを白黒画面に展開させ、「聖女」の表情で画面から表情を消していく様子。何度見ても美しく神々しいとしか表現できない。リュック・ベッソンも「ジャンヌ・ダルク」という映画を撮影しているが、やはりこの映画と比較してみると、カール・テオドール・ドライヤーの凄さがさらによくわかる。

フライトプラン(ロベルト・シュヴェンケ監督)

2008-01-08 | Weblog
ストーリー;ベルリン。夫が不審な転落死の後、その棺とともにニューヨークの旅路につく彼女は、飛行機設計会社のエンジニアだった。6歳の娘とともに飛行機に搭乗して眠りにつくが、目覚めてみると娘の姿が機内から消えていた…。
出演 ;ジョディ・フォスター、ショーン・ビーン 、ピーター・サースガード
コメント;非常に疲れた映画だった。SFでないかぎり、探していない場所に「娘」は存在しているはずで、その謎解きが面白いのかと思いきや、すでに「ネタ」は最初から大きなヒントとして与えられてしまう。となると、残るのは、「なぜ?」そのような事件が発生したか、ということだが…これも…非常に疲れる「動機付け」。新型飛行機という設定が面白いのに別に旧型でも同じストーリーが成立するはずで、後はひたすら大騒ぎが繰り広げられる。途中で眠りそうになったがそれでも映画を見続けたのはジョディ・フォスターの「一種の演技のため」ということになるだろうか。何かに取り付かれたような演技はハリウッドでは珍しくないが、冷静な役どころが多かっただけに、珍しい演技かもしれない。これもまた非常に疲れる演技の一種ではあるのだけれど、むしろ淡々としているショーン・ビーンがなぜこの映画の出演に応じたのかが不明…。

ターミナル(スティーブン・スピルバーグ監督)

2008-01-08 | Weblog
ストーリー;東欧の小国がクーデターで転覆。その間にたまたまニューヨークに降り立った一人の男性は、自動的にパスポートの有効性が失われ、新しい政府とアメリカ合衆国が協定を結ぶまで故郷に戻ることも出来ず、かといって入国ビザもおりない状態になる。行政の教えをかたくなに守る次期エアポート局長は法の精神にのっとってこの事態を収拾しようとするが、次第にそれは男と男の意地のはりあいになり…。
出演;トム・ハンクス、キャサリン・セタ・ジョーンズ、スタンリー・ツュッチ
コメント ;トム・ハンクスはやっぱりええなあ。脚本はさほどではないが、お腹がでた中年男になってもジャズを聴きながら壁にペンキを塗るところやキャサリン・セタ・ジョーンズと本屋で出会うところなどはやっぱりいいなあ。一昔前だったら相手役はメグ・ライアンだったのかもしれないが、メグ・ライアン、ちょっと最近ヘンだからキャサリン・セタ・ジョーンズとのコンビネーションは最高にいいかも。空港に足止めをくらってその中で生活するというアイデアはいいのだけれどもう少しフィルムを短くして、その分余計なエピソードをカットしたほうが良かったのかもしれない。ラスト近くになるとさすがのラブコメファンの私としても半年も空港にいるなんて…と少々場面設定についていけなくなる。
 この映画の冒頭で副局長が「私には彼を拘束することはできないし、かといって入国させることもできない」と断言するのは行政のあり方としては間違っていないだろう。ただそこで彼はまずさらに上の政府レベルに報告すればよかったのだが、なぜかそれはしない。映画ではそれを「男と男の意地の張り合い」と描写しているのだが、ちょっと苦しい。かたくなに法律を守ろうとして半年間も海外からの旅行者でしかも犯罪者でもない人間をビザがおりないという理由でターミナルの中に閉じ込めるのはあきらかな法律違反。しかも行政行為には迅速性がもとめられるので、トム・ハンクスがその気になれば、行政不服審査や行政事件訴訟を起こすことも映画の終了後できるだろう。証人も多数いることであるし。で、あともう少しでホノボノ感覚にひたれそうなのだが、コメディとしてはあまり笑えずスティーブン・スピルバーグがお得意の「大掛かりな仕掛け」で「些細なことに取り組む」という設定にもちこまれるときつい。「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」は実話が基になっているということで、「宇宙戦争」よりもずっと映画の中にのめりこめたのだが。39歳の不倫中のスチュワーデスという設定のキャサリン・セタ・ジョーンズがまた上品な演技で可愛い。いろいろ文句の付けようはあるけれど、それでもたっぷり2時間以上楽しめるあたりがさすがに巨匠。あれだけのエキストラをそろえての展開は、なかなか見れるものではないし。

グッド・ガール(ミゲル・アルテタ監督)

2008-01-08 | Weblog
ストーリー;23 歳のときに大学に行かず結婚を選んだジャスティン。アメリカ南部のスーパー・マーケットで働く日々にうんざりしていたある日、「ライ麦畑でつかまえて」をひろげている22歳の青年と話をする。そして二人は日常生活から逃れるように逢引を繰り返していくが…。
出演;ジェニファー・アニストン、ジェイク・ギレンホール、ジョン・キャロル・リンチ
コメント ;非常にみていて胸がむかむかする映画というのは実はそれほどないのだが、この映画が実はもう最低に近い映画で、「なんでこんなウスラバカと?」といいたくなるような22歳の青年と30歳の主婦のわけのわからない恋愛模様。gooの「いくらまで出せる」のラジオボタンに「金返せ」がないのが残念だ。さらには、ブルーベリー食べていきなり死んじゃうオバハンやら、「不倫をばらされたくなかったら…」とまるで往年の日活ロマンポルノのような展開のベッドシーン。で、最後は無残な画面で映画が終了するのだが、これハリウッド以外の資本も入って映画化されたのだが、こんな脚本をなぜ映像で展開しなくてはならんのか。しかもジェニファー・アニストン主演で…と絶句する。日常生活の方が映画よりも複雑なのさ、ありのままを露悪的であっても自然に描くのが芸術なのさ… とか明治時代の日本の自然主義文学かなにか製作者は読んできたのじゃなかろうか。日常生活の方が映画よりも厳しくて陰湿で、しかも意外な展開に満ち溢れているからこそ映画を見ようとするのであって、どこにでも転がっているような男女のいちゃいちゃを見るために映画に時間をさいている観客はそうはいない。むしろ作成者の「おれたちギョーカイはさぁ」というような一種のスノビズムすら感じたりもして。
 あ~、こういう展開の映画でしかもラストは赤ちゃんがでてきてやっぱりハッピー・エンド。「明日に向かって撃て!」はそれほどいい映画ともこれまで思っていなかったが、やっぱり今思うとさすがだなあ。クリント・イーストウッドの「マディソン郡の橋」もたいしたことないと思ったけれど、同じ題材を描いてもここまで気品の差がでてくるのだなあ、などとふと昔を懐かしむ。露悪主義と下品なのは違うのではないの。としばし思う。
 で、ジェニファー・アニストンやジェイク・ギレンホールはなかなかいいのだけれど(特にジェイク・ギレンホールはたしかにうまいのだが)ジェニファー・アニストンという女優のキャスティングがわからない。シリアスドラマ向きではないうえに前後のシナリオの流れをどこまで理解しているのかわからない機械的な演技なのだが…これっていわゆる俳優養成学校などではやっぱり優秀な演技っていうことになるんだろうなあ。英語は俺でも聞きやすい発音だし、そこそこ綺麗だし。だがミスキャストだったと思う。映画にとっても俳優にとっても。

 ときにこの映画で気味の悪い自意識過剰の22歳を演じたジェイク・ギレンホールが2005年度のアカデミー助演男優賞にノミネート。主演男優賞にはフィリップ・シーモア・ホフマンがノミネートされ、さらにアニメ部門では「ハウルの動く城」がノミネートされている。なかなかこれはこれで見ごたえのあるオスカー授賞式になりそう。宇宙戦争のトム・クルーズは、ある程度予想どおりラジー賞に3部門ノミネート…。やはり…。

グリード(エーリッヒ・フォン・シュトロハイム監督)

2008-01-08 | Weblog
ストーリー ;炭鉱で働いていたマクティーグは巡回歯医者についていってサンフランシスコで無免許で歯科医を開業する。そしてそこで知り合った友人の恋人と結婚するが…
出演;ギブソン・ゴウランド 、ザス・ピッツ、ジーン・ハーショルト
コメント;1924 年の作品。グリフィスと並ぶハリウッド映画創世期の名作品だが、あらためてみると最初はやはり退屈なものの1時間を超えるあたりから、白黒画面独特の演出によって恐怖感がただよう。そしてラストで圧倒的な手わざで終わる。映画史に残る…というだけでは、多分21世紀以降、この映画をあえてみようとしたり、あるいはDVDを買おうという人も少なくなるはずだが、現在のハリウッドが抱えるほかの作品「逃亡者」「死の谷」といった作品をもおそらくしのぐ出来栄えとそして面白さがあるがゆえに廉価版として書店やCDショップでも販売され、そしてまたそれを見る観客がいるのだろう。
 1910年代後半からいわゆる脚本を基本とした映画化がなされ、脚本を元に工程別の映画作り(産業化された映画化づくり)が始まったとされる。その中で「愚かなる妻」などでとんでもない予算で映画化をしたエーリッヒ・フォン・シュトロハイムはユニバーサルを追い出され、また映画化するチャンスにめぐまれて作成されたのがこの作品。「死の谷」で迎える予想もしない(あるいは予想される?)ラストは本当に衝撃的だし、馬がもがき苦しむ様子や鳥や炭鉱の風景。また坂道にある新婚夫婦の住まいがどんどん「黒い家」になっていく様子などがすばらしい。ストーリーももしかするとより現代的だが、撮影方法も1920年代の限られた手段の中で最高を追求したものなのだろう。汽車が走っている様子や人々が結婚式で手づかみで鶏肉にむしゃぶりつく様子。さらに肉屋で肉を購入する様子など見ていて飽きない。おそらく今のハリウッド映画で描写される1920年代と実際に1920年代に作成された映画の中のアメリカとは全然違うものだということにも気がつく。廉価版には「音楽」が入っていないものと入っているものとが著作権の関係上あると思うが多少値段は高くても音楽や解説が入っていたほうがよりシュトロハイムの映画を楽しめると思う。まずは映画史の名作品と構えてみえるのではなく、音楽入りで楽しくみることからはじめるべきではなかろうか。で、おそらく途中で現在の映画がいかにこの名作品に多くを負っているかに徐々にきづくようになる…。
 1つの作品が無数の映画にイメージを与える。この影響力が名作の名作たるゆえんで、さらには何度みてもやっぱりそれぞれに面白い…。すごい…。

TAXI NY(ティム・ストーリー監督)

2008-01-08 | Weblog
ストーリー;自転車で配送サービスをしていたベルにはニューヨークのイエローキャブの営業許可を取得するという夢があった。めでたくその夢がかない、5年越しの準備をしていた特別仕様のタクシーで街にでる。しかしその一方、キューバマフィアの潜入捜査に失敗したウォッシュバーン刑事はパトロール警官とされ、おりしも銀行強盗事件発生の知らせを受けて現場に急行しようとしていた。だがしかし、彼は自動車の運転が…。
出演;クイーン・ラティファ、ジミー・ファロン、ジェニファー・エスポジート
コメント;流れるような画面で始まるがこれは全部自転車の疾走という設定。だがしかし、かなりの工夫を凝らした趣向も何かが足りず、あまり映画にのめりこめないままに事件は次々と発生していくという寸法。どこかでみたはずの定番ギャグの連続である程度オチが読めつつストーリーが次々進行していくのだが、いわば「定番」だからこそラブコメファンとしては、成り行きにまかせて楽しめる。ジャッキー・チェンがやりそうなギャグ・スタントもあったが香港カンフー映画のファンには自転車や自動車などを活用したアクションの数々の中にはハリウッドに与えた香港映画の影響を「マトリックス」とは違う形、「キル・ビル」や「パルプ・フィクション」とは違うストーリーで楽しめるかもしれない。
とはいえ途中過激なギャグや「ジャングル・フィーバー」といった往年の「深刻映画」をちゃかす余裕も。母親はアルコール中毒気味で息子はなかなかトラウマから回復できないという設定なのだが、プアホワイトとよばれる階級層をかなり皮肉った内容でもある。またひ弱な男性の「社会権」をしっかり主張してくれているあたりは、結構個人的には支持できる。マッチョなヒーロー像というのは案外みていて疲れるもので、多少なりとも欠点を抱えつつもオリジナルなアイデアで困難を克服していくプロセスこそがおそらく人間には皆等しく与えられた機会の平等を生かすチャンスでもある。
 ラストにはさらに定番のNG集も。スピード感がなかなかうまくかみ合わずにギクシャクはしているが、2時間をそれなりに楽しく見れる映画なので、多分劇場公開で見ていてもそれなりに楽しめただろう。またギャグのネタ探しにもことかかない点で「笑い」にうるさい人や香港映画ファンにもお勧めかも。

ウィンブルドン(リチャード・ロンクレイン監督)

2008-01-08 | Weblog
ストーリー ;緑の芝生の美しい英国ロンドン。ワイルドカードで世界113位、20年間毎日1000本以上のサーブの練習をしていた彼にとっては事実上最後の戦いになるテニス大会。ピーター・コルトはすでにコーチとしての契約も締結しており、いつ負けるのかを覚悟してのウィンブルドン大会だった。しかし部屋を間違えたことから女性テニス選手の優勝候補とめぐりあう…
出演 ;ポール・ベタニー、キルスティン・ダンスト、サム・ニール
コメント;前半の画面展開は非常にきれい。ポール・ベタニーは「ビューティフル・マインド」をみたときから気になる役者だったがその後も「マスターアンドコマンダー」「ドッグヴィル」と異色の作品で独特の存在感。さらにはアカデミー女優賞を受賞したジュニファー・コネリーと結婚ともともと大道芸人出身だった彼が大ばけした感のある映画。キルスティン・ダンストも「スパイダーマン」などの映画評で「キルスティンが可愛く見え出したらやばい」だのなんだのといわれていたが「アパートの鍵貨します」の時代から恋愛映画は美男美女よりもどちらかというと二条生活に親しみのあるような顔の方が効果が増す。ポール・ベタニーがジャック・レモン、キルスティン・ダンストがシャーリー・マックレーンの現代版とすればこの映画がラブコメとして成功するのはいうまでもなく、ラストはもちろんハリウッド級のアンビリーバブルな結果となるが、それがちょっとやり過ぎだったのかもしれない。
 テニス選手にとって32歳というのは本当に辛い年になるようだが、ベテランの意地で最後に華を咲かして、さらにはもちろん恋愛映画ではこれまで追求してこなかった最後もしっかり見せてくれるサービス付で個人的には非常に満足。
 で、前半はやはりテニスボールの撮影がすごいし、男性と女性が二人並んで英国の街を歩いたり走ったりするだけでも映画が成立するという構成がすばらしい。「浮雲」の評論でだれかが指摘していたがこうしたイメージが前半は随所にみられ、みているだけでうっとりする。後半はやはり物語を終わらせるためにやや急ぎ足になっていたのが残念。一回戦などが割りと上品に映像化されていたのに実況中継のようになったのが本当にもったいないが、それはそれ、これはこれでDVDではなく劇場で見ればよかったと思う作品。粗筋からしてもデートの際にはもってこいの作品だし、年齢に負けない強さとか勝負哲学なんかも披露されたりする上にウィンブルドンが実際の映画の撮影場所に使用されたのも非常に珍しいことらしいのでテニスファンもラブコメファンにもお勧めできるハッピーな気持ちになれる映画だろう。

ブルース・オールマイティ(トム・シャドヤック監督 )

2008-01-08 | Weblog
ストーリー ;アンカーマンを目指して地方ローカル局のレポーター、ブルース・ノーランは恋人の思い等歯牙にもかけず報道に命をかけるが、その夢もむなしく消えた。結局リストラされて放送局を追い出され、神の無為を責めるが…。
出演;ジム・キャリー、モーガン・フリーマン、ジュニファー・アニストン
コメント;「マジェスティック」も1950年代を描いてよかったけれどやっぱりジム・キャリーは「お笑い」あるいは「ラブコメ」の中の方が素敵。「ライアー・ライアー」によく似ている展開だ思ったら、同じ監督だ。モーガン・フリーマンと二人で並んで黙々とビルの床を掃除するシーンも結構素敵。モーガン・フリーマンの演技がうまいといわれるのは、こうして無口でありながらも存在感が示せるというところかもしれない。歩く様子もさまになるし、衣装もどんなシチュエーションでも相当に研究していることがわかる。「お笑い」のモーガン・フリーマンというと「ベティ・サイズモア」の演技もなかなかだったが、神様役で出演したこの映画でもモーガン・フリーマンの演技がさえる。で、恋人役のジュニファー・アニストンも非常にきれいでいいなあ。ブラッド・ピットの元奥さんだというが、ラストに特集されているNG集でもきれいな笑顔ですばらしい。
 「月をひきよせて…」「クリント・イーストウッド」「十戒」など過去の映画へのパロディや「タイタニック」への皮肉など過去の映画への批判も相変わらず。この監督、権威をちゃかして笑いをとるという古典的な技を見事に活用しきっている。テーブルのスープの場面では笑ったし、最後に自分のことを知る…あるいは他人のために何かをする…といったあたりまえのことにきづかされている自分を発見する。
「若者がドラッグに頼らずに学校に行く…それも奇跡だ。日常は奇跡にあふれている。軌跡というのは日常から起こるんだ…」としみじみ語るモーガン・フリーマンの長い台詞回しに心が熱くなる思い。タイトルとは裏腹にやっぱり中身は充実したラブコメ路線で、非常に面白いし大人のウィットも満載の展開。

ブラック・ダイヤモンド(アンジェイ・バートコウィアク監督)

2008-01-08 | Weblog
ストーリー ;ロスアンゼルスの地下鉄、そして宝石取引所をめぐっての泥棒と泥棒と警官の三つ巴のスピード勝負。そしてまた炸裂するクールなジェット・リーの思いもかけないアクション技。マンションの屋上から目的地にたどり着くにはもちろん、ジェット・リーならではの「技」で飛び込んでいく…
出演;ジェット・リー、DMX、マーク・ダカスコス
コメント;中国全国武道大会優勝はだてではない。カンフーの切れというのが画面ではもう明らかにジェット・リーが他を圧倒している。とはいえ敵役のマーク・ダカスコスもなかなか鋭い技を見せるが考えてみればこの人、「ジュボーダンの獣」というフランス映画ではアジア系統の武人として出演して凄いシーンを連発していたわけで、マーク・ダカスコスのセリフが聞けるだけでもこの映画貴重(「ジュボーダンの獣」ではほとんどセリフがない)。
 で、「恋のトリセツ」で切ない美女ぶりを見せたガブリエル・ユニオンもセクシー技とつたないカンフーでそれなりに画面を展開。バギーでロスアンゼルスの街をかけぬけるシーンも凄いアイデアで、見せてくれる。そしてラストもまた突っ込みどころ満載の展開で、ヘリコプターは墜落するは、戦車はでてくるは、機関銃が二台も炸裂してしかもカンフー技。でさらには計測不可能なほどのプルトニウムまででてきて世界滅亡がかかったカンフーシーンが同時進行で展開。もちろんクリント・イーストウッドも勤務しているロスアンゼルス市警はカンフーシーンの最中にでてくるほどヤボではないから、火事も鎮火してそこそこ騒ぎがおさまったところにポーランド的な家庭風味でしっかり終わる。いや、これ褒め言葉で。
 それにしても「リーサル・ウェポン4」の撮影をしていたというこの監督。おそらく「リーサル・ウェポン4」では悪役でセリフもすくなかったジェット・リーにほれこんだんだろう。とにかくサングラスをかけてロスアンゼルスの街をひっそり歩くジェット・リーがかっこいい。これだけ西海岸が似合うアジア系統の役者は少ないのではないか。役者の力と武道の力を画面にたたきつけた「ブラック・ダイヤモンド」。アクション映画にはやはりその名をとどめることだろう。

アメリカン・スプレンダー(シャリ・スプリンガー・バーマン/ロバート・プルチーニ)

2008-01-08 | Weblog
ストーリー; 日本で言えば「ガロ」あたりに連載されるような私生活コミックの原作を書いているハーヴィー・ピーカー。二度目の離婚に破綻し経済的にも苦しい中、病院のカルテ管理をしながら漫画の原作とジャズの評論を続ける。そしてある日、デラウェアのファンの女性から電話がかかってきて…。
出演;ポール・ジアマッティ,ホープ・デイヴィス,ハーヴィー・ピーカー
コメント;あんまり好きなタイプの映画ではないが、哀愁がある頭の毛が薄い中年男性はやはりこのポール・ジアマッティは確かにはまり役。ちょっといかれたタイプの奥さんをホープ・デイヴィスが演じているが、このホープ・デイヴィスは「アトランティスの心」では、気の強いキャリアウーマン、「プルーフ・オブ・マイ・ライフ」でも通貨トレーダーとわりとテキパキした役が多かっただけに、最初映画で見た時には「どこかで見た女優だけれど、どの映画だっけ…」と考え込むほどだった。結局、人生にはいろいろ困難やうまくいかないことが多いが、なんとかうまくやっていこうというタイプの映画だがセリフはやはりインテレクチャルだし、アメリカの「オタク」を扱っているということである程度見ても損はないと思う。「nerd」(オタク)という英単語が連発されるが、それほどいかれているとも思えないわけで。
 ちなみに映画の中でデラウェアを支配する巨大企業というのはおそらくデュポンのこと。さらに「アメリカで2番目に小さな州」と紹介するのは多分ジョークでワシントンDCの次がデラウェアだといいたいのだろう。もう少し自分に英語がわかればもっと楽しめる映画作品だったのかもしれない。