ごとりん・るーむ映画ぶろぐ

 現在584本の映画のあくまで個人的な感想をアップさせていただいています。ラブコメ、ホラー、歴史映画が好きです【^_^】

ワイルド・スピード(ロブ・コーエン監督)

2008-01-06 | Weblog
ストーリー;DVDプレイヤーを積載したトラックを走行中に襲撃する事件が発生。FBI捜査官はトラック運転手組合をおさえつけるためにもストリート・レースをしているメンバーが怪しいとみて警官に覆面捜査をさせる。しかし、そのレース参加者はいずれも魅力的な人物ばかりだった…。
出演;ヴァン・ディーゼル、ポール・ウォーカー、ミッシェル・ロドリゲス
コメント;「全米大ヒット」となった作品だがこれはかの有名な「A.I」を抜いての一位だったという。「宇宙戦争」とかと同じ構図かもしれない。映画そのものは非常に退屈だったが、ヴァン・ディーゼルが得たいのしれない魅力で、それにひきずられて最後まで見てしまう。
 なんとなく車好きの街のお兄ちゃんといった感じで、しかも相当に悪人なのだが確かに魅力のある役どころ。「なぜか人が集まってくる」というセリフもわかるような気がする。車の運転以上にはさして特技もないようだが、やや情緒不安定なメカニックや小学校時代の友人など傷をもつ人間たちが集まり、車のカーレースなどでさらに賞金を稼ぐという構図だ。敵役はアジア系アメリカ人というのも面白い設定。なぜにこんなに魅力があるのかというとさりげないフォローアップかな、とも思う。バーベキューなどを仲間でひらくときのさりげない気遣いとか、集団の切り回しとかがやはり非凡でしかも妹思いというのも伝わってくる。不可思議なリーダーシップということで…。主役はポール・ウォーカーで映画の中で「使えない、覆面警官だ」とかののしられているのだが、確かに警官としても覆面捜査としてもかなり問題がある行動。「フェイク」の実在した捜査官よりも相手への感情移入はまずい形態だし、「インファナル・アフェア」のアンディ・ラウほど確信犯的に犯罪者にコミットできているわけでもない。でもPART2もできてしまうというあたりがさらに不可解だ…。

クライモリ(ロブ・シュミット監督)

2008-01-06 | Weblog
ストーリー; 国道で就職面接のために急いでいた医学生(おそらくはウェスト・ヴァージニア州立大学医学部の学生)は、化学薬品が路面にこぼれるという事故から、田舎道を経由して国道33号を通ろうとする。しかし、ガソリンスタンドから先に有刺鉄線を利用したいたずらや動物の死骸が散乱しはじめて…。現代は「wrong turn」。道を引き返したのが間違いだったということかな…。
出演 ;エリザ・デュシュク、エマヌエル・シェーキー 、リンディ・ブース
コメント;特殊メイクのプロとして有名なスタン・ウィンストンが参加。ゴシックな怪物は3人いるのだが、どうやらそのうちの一人は女性という設定のようだ。タイトルでその化け物の素性は既に明らかにするあたりも確信犯的ともいえる「王道」。「13日の金曜日」シリーズのように有名な化け物ではないだけにやむをえない。「2」はおそらくできないだろう。「森林」については英米では魔女だの怪物だのといった話が割りと残っているが、これは一種の自然保護思想の表れかもしれないとも思った。怖いものがいる森には近づかない。人間が近づかなければそれなりに森林はよい状態となる。キノコや焚き火などで資源が浪費されるのを本能的に防止しようとしたのかもしれないし。
 舞台となったウェスト・ヴァージニア州はアメリカ南部の中でも一番「北のはずれ」といった感じの州だが、人口は約180万人程度。ということは東京都の5分の1の人口ということになる。国道はやはりトラックなどは走っているようだが、過疎地という雰囲気が映画全体に漂う。しかも面積の7割以上が森林という状態なのでホラーの場所としては適切。しかも都会との距離もまた「ホドホド」なので、ロケーションは結構いいのではなかろうか。この州の歴史は相当に古く、アメリカ合衆国が建国された1788年当時には、ジョージ・ワシントンの指揮のもとに独立の指導的立場となる。「ヴァージニア州」という州があったのだが、この州は南北戦争当時に南部に帰属。ただし山岳部では当然奴隷所有率が低いため「ウェスト・ヴァージニア州」としてアメリカ合衆国に残るがそれが始まりとされる。ワシントンDCまで車でいける距離だ。
 映画の中で「南部は…」という台詞が結構出てくるが実際に地図で見る限り地理的に「イージーライダー」のような南部ということではなくて、おそらくはアメリカの南北戦争の歴史をふまえて「南部は…」といっているのではなかろうか。で、内容は典型的なアメリカン・ゴシック・ホラーで、ストーリーもこれまでのハリウッドホラーの王道を突っ走る。「恐怖の岬」を意識した車の下にはりつくシーンやエド・ゲインを意識した「冷蔵庫」や人間を加工した生活用品など伝統的な作法をしっかりふまえた映画構成。若手俳優もまた役どころをふまえた律儀な演技で、メイクはやや手抜きのようだがこれもまた「予算の制約」ということか。森林というとどうしても「ブレアウィッチ・プロジェクト」を思い出すが、森林の中にある廃屋というのは「ブレア…」のラスト・シーンを想起させる。スティーブン・キングがなぜかこの映画を絶賛しているというのだが、チンパンジーにも似たこのバケモノは森の「賢者」のような存在ともいえる。木を伝い、とてつもない力を発揮するのだが、必ずしも憎める存在ではないところにスティーブン・キングは評価を下したのか。あるいは他のホラー映画がこの映画にも劣る出来栄えだったということかもしれないが「ジュオン」はいくらなんでもこの映画よりは良かったとは思うぞ。

オールド・ボーイ(パク・チャヌク監督)

2008-01-06 | Weblog
ストーリー;酔いどれで柄の悪いオ・デス。酒に酔うとだれかれかまわず悪態をつき暴れる彼も、娘だけは愛していた。酔っ払っていたその日も娘のためのプレゼントを用意していたが、突然拉致され、得体の知れないマンションに監禁される。そして解放されたのはその15年後の2003年だった…。
出演;チェ・ミンシク、ユ・ジテ、カン・ヘジョン
コメント;原作は日本の土屋ガロン(漫画アクション連載)。それを韓国の監督が映画化し、さらにハリウッドでリメイクされるという作品だ。韓国特有の急な斜面をバイクがゆったり登る。そしてまた鬱蒼としたビルの片隅や草むらが生い茂るビルの屋上とハイテクビルの対比。この国の急激な近代化の影が日本のかつてのそれをオーバーラップする。
 理由もなく15年間監禁された男が突如解放された瞬間から「物語」はスタートする。原作も脚本もすばらしいから、物語自体は一転二転三転する。ラストは予測不可能な形で終わるが、また厳しい韓国の冬とか秋、そして7月1日から5日までの初夏との対比がすばらしい。暴力シーンなどがやはり相当に過激なうえ、これまでの韓国映画ではわりと自粛されてきたであろう性描写も過激なのだが、ダムのふもとにたたずむ美少女の笑顔と監禁された男の笑顔といった「笑い」でさえもがすべて対比と陰影にいろどられており、退屈することがない。餃子を食べるシーンだけでも相当に思い入れがある造りの映画でカンヌ映画祭でスタンディングオベイションというのも当然だろう。音楽がまた美しく切ないがまるでニーノ・ロータを思わせる。

僕の彼女を紹介します(クァン・ジョエン監督)

2008-01-06 | Weblog
ストーリー;気が強くて大胆不敵な婦人警官ギョンジン(チョン・ジヒョン)は、あるアクシデントで物理の教師をしているミョンウ(チャン・ヒョク)と交際を始める。生まれ変わったら風になりたいと誓うミョンウは、携帯電話で総査中のギョンジンを守ろうとして行動する。おりしも凶悪犯罪者が逃亡しているところにギョンジンは踏み込む。
出演;チョン・ジヒョン 、キム・スロ、チャ・テヒョン
コメント ;「サンセット大通り」という昔のハリウッド映画をみた方には、さらに面白い映画と思えるのかもしれない。
 古典的なラブストーリーに猟奇殺人もからめて見事なラブストーリー。風とともに風車が無数に回るシーンなども印象的だし、ソウルのハイテクビルと田舎の木造の家で一緒に二人で焚き火をするシーンの対照もいい。ゆっくりのどかにドラマを楽しみつつ刑事ドラマも織り込まれて2時間楽しみながら映画をみてそして最後にはちゃんと「希望」も用意されている。韓国の恋愛映画もまたかなり進化していて、キスシーンなどはでてこない純愛映画だが、それこそがまた恋愛感情の美しさみたいなものが逆に鮮明にでてくるような気がする。制服姿のチョン・ジヒョンがまたとてつもなく美しい。

ダ・ヴィンチ・コード・デコーデッド(リチャード・メッツガー監督)

2008-01-06 | Weblog
ストーリー;フジテレビで作成されたソニエール神父の話やダビンチの絵画の暗号についての特集は見ていたが、この「映画」(というかドキュメンタリー)ではキリスト教がいかにして政治的に変容されていったか、フランスメロビング王朝とキリストとの関係などをかなり科学的にインタビュー形式で立証していく。シオン修道会などについてもふれ、いわば小説の「ダビンチコード」の客観的立証版のDVDといったところ。全編がすべてインタビュー形式なので、退屈な人には退屈かもしれないが歴史あるいはキリスト教といったものの性格を理解したい人には非常に面白いDVDだと思われる。特典映像も充実しており、個人的にはかなり楽しめる。英会話の練習としてもいいのではなかろうか。
出演;ダン・ブラウン、ヘンリー・リンカーン、マーガレット・スターバード
コメント;「ダヴィンチ・コード」は世界で2000万部を売り上げたというが、そのミステリーには学説の裏づけがちゃんとあり、主にアメリカの歴史学者を中心にインタビューで、そのミスとリーを科学的に解明する。レオナルド・ダヴィンチ自体がカソリック教会制度を嘲笑していたことをその人物像などから明らかにしてさらに洗礼者ヨハネへの「偏愛」も浮き彫りにされる。おそらく正統派カソリックではない異端の、しかしその源流は地中海沿岸で信じられていた初期キリスト教に近しいものが中世にもいきていたことを示唆する。さらに画面は、初期キリスト教はカルト教団であると同時に男性偏重、さらに使徒ペテロとマグダラのマリアとの確執などが古代文書から明らかにされた経緯とナグ・ハマディ文書(コプト語)や死海文書、あるいは新約聖書にはない福音書から初期キリスト教がオシリスとイシス、あるいはミトラ教や太陽神信仰など主にエジプトから影響を受けていたことも明らかにする。さらにキリストの血流がフランスのメロヴィング王朝に継続されている点やコンスタンティヌス帝が政治統治のためにキリスト教を改変し、神の子という概念を皇帝による統治に置き換えていったプロセスもいくつかの画像と共に明らかにする。正統派キリスト教からはおそらく容認はされない内容ではあろうが、歴史的事実としてみた場合に「死と再生」という「物語」をたくみに聖書に織り込んで信者を獲得していった経緯は非常に興味深い。さらに映像特典としてウエストミンスター寺院やルーブル美術館の紹介などもあり。


感染(落合正幸監督)

2008-01-06 | Weblog
ストーリー;看護師が経営困難により一週間で9人も退職し、さらに医師の給料も支払遅滞が続いている。そんな中、外来患者や急患患者、さらに入院中の患者も症状を悪化させるとともに人間関係も悪化の度合いを増していく。とある外科医はそんな中、重要な医療過誤を引き起こし、入院患者を死亡させてしまう。証拠の隠滅を図る中、閑散とした病院の廊下に急患がポツンとのざらしにされていた…
出演;佐藤浩市、南果歩、佐野史郎
コメント ;佐藤浩市がりりしい医者を演じる。経営困難な病院の中で従業員の代表として労働交渉の指導者であり、さらに臨床医としてもおそらく相当なもの。さらに理想と現実のバランス感覚も優れているような印象を画面にまきちらす。だからこそラストの印象がより深くなるのだろうけれど。南果歩の疲れ気味の厳しい婦長というのもいいなあ。
 で、何が悪いのか、というとおそらくこの低予算の中でこれだけのキャストをそろえてしまうと、俳優のギャラだけで相当の予算が消費されたはず。原始的なCG効果だけでここまで奮闘したのはむしろたいしたことかもしれない。一歩間違えればどうしようもない映画になった可能性もあるが、ギリギリのところで商業映画として成功しているように思う。ホラー映画とはいっても、実は個人的にはあまり怖くない上に、途中で「ファイト・クラブ」とかそうしたラストはやめてくれ、といいたくなるシーンが頻出するが、やむをえないのかもしれない。「意識」を媒介して感染する病気というのも、面白い発想だが、その媒介をもっと映像的に扱えるかどうか。その点、黒澤清監督の「キュア」の「水」というのがあったわけだが、この映画ではそれが緑色の液体となる。でもその液体がいまひとつなんだなあ、残念。
 星野真理も悪くはないと思うが、南果歩がとにかくすべての女優を圧倒する存在感で、こんな大女優になったのかとあらためて認識。別に脱がないでも、芸術映画でなくても、こういうセリフが少ない映画で存在感出せる女優はやはりすごいと思う。


イン・ザ・カット(ジェーン・カンピオン監督)

2008-01-06 | Weblog
ストーリー;中年独身かつ一人住まいのフラニーは、英語教員をしながら、スラングや表現方式などについても研究を続けている。ある日家の付近で異常な殺人事件が起き、学生と入った喫茶店で目撃した娼婦と性交渉をしていた男にフラニーは疑惑をもつ。そこに捜査にきた刑事マロイには、殺人事件の犯人と同じ刺青が施してあった。刑事マロイに疑惑をもちつつもただれた関係に入り込み…。メグ・ライアンは脱ぎまくりなのだが果たして脱ぐことにどれだけの必然性があるのかも不可解な展開。「恋におぼれて」でやればよかったのに。
出演;メグ・ライアン、ケヴィン・ベーコン、マーク・ラファロ
コメント;主役がメグ・ライアンというだけで大きな「勘違い」だと思うが、粗筋や撮影も勘違いをしまくっており、さらにメグ・ライアンが役どころに勘違いした入れ込みを見せてしまう。「いつもと違うメグ・ライアン」を印象づけたかったのかもしれないが、おおきく失敗したようだ。勘違いで構成されている映画なので、画面もフラフラ揺れたりボカシが入ったりで途中でおおきく疲れる。さらにフラニーという女性の行動もきわめて不可解で、刑事だの分かれた彼氏だの男子学生だのがなぜにそこまで入れ込むのかはまったく不明。ひたすら、自分の世界の妄想に入り込んでしまうために、見ているほうはさらに疲れてくる。
「エンジェル・アット・マイ・テーブル」もひたすら退屈な映画だったが多少はまあ面白いシーンもあったし、アカデミー賞を受賞した「ピアノ・レッスン」もおそらくは壮大な勘違いではあったけれどもアンナ・パキンという女優を生み出した功績と砂浜のイメージが良かったとは思う。ただこの映画では雨がいきなり人工的に降り出すあたりでまた白ける上に、光と影のバランスがまったく調子はずれのため。役者のセリフがほとんど棒読み。一番演技がうまいと思ったのは、映画に出てくる子犬だったりする。
もしキャスティングが違えば多少は見れる映画だったのかもしれない。たとえばメグ・ライアンではなく、アンジェリカ・ヒューストンとか。相手の刑事役にはクリント・イーストウッドがよかろう。あるいは100歩ゆずっってホリー・ハンターでも多少は良かったのかもしれない。顔が画面に大写しになると荒れた肌と化粧のバサバサが展開して非常に疲れる。もっと綺麗に撮影してあげればいいのに。ただ脇役で登場するケヴィン・ベーコンはどうやらそうした勘違いを承知で切れた役を演じており、「ミスティック・リバー」でおそらく最高の演技をみせた役者として才能の違いを見せ付ける。注目は子犬とケヴィン・ベーコンだけか。ニコール・キッドマンは主役を断り製作にまわったが賢明だ。なんといってもアカデミー賞受賞監督作品ではあるわけですげなく断るわけにもいかないという世知も見え隠れする…というのはうがちすぎか。

ロスト・イン・トランスレーション(ソフィア・コッポラ監督)

2008-01-06 | Weblog
ストーリー;1970年代のスターがコマーシャルの撮影で日本にやってくるが、アメリカと同様に日本でも孤独に過ごす。そして同じ頃カメラマンの夫と一緒にパーク・ハイアット・トーキョーに泊まっていたシャーロットも、結婚に未来を見出せず苦しんでいる。哲学を専攻した彼女はカメラマンの夫が仕事ばかりなのにある意味疲れていた。そして生け花や夫の知人とのレジャーも楽しめないでいる。不眠になやまされる二人はバーで眼と目が合い、何か共通するものを感じる。その瞬間から、世界が違ってみえてくるようになる…伝説のはっぴいえんどの「風を集めて」など泣ける名曲をバックに淡々とした粗筋で見事な映像が展開する。
出演;ビル・マーレー、スカーレット・ヨハンソン、ジョバンニ・リビシ
コメント;「翻訳の壁の中で」とでもいうのだろうか。英語と日本語の翻訳の微妙なすれ違いがビル・マーレーの孤独感をあおる。東京原宿の路上を歩くスカーレット・ヨハンソンがむちゃくちゃ美人だ。どちらかといえば、それほど光があたらない路上でしかも普段着で歩行者に混じって歩く姿だけで様になる。大女優とはこういう人のことをいうのだろう。「真珠の首飾りの少女」ではオランダ北欧のやはり薄暗い空の下で輝く美貌を誇っていたが、この映画でも日本語の壁の中で一人輝く。冒頭のシーンは東京のホテルにねそべるスカーレット・ヨハンソンのピンクの下着をつけたお尻がアップで映され、それがまた闇にフェイド・アウトしていくという奇抜なもの。このフェイド・アウトに溶け込めれば、映画の美の世界に酔うことができると思う。
 ソフィア・コッポラの何気ない撮影がまた美しい。東京の夜のイルミネーション、ただの昼間の風景、そして新宿の雑踏といったまったく特別でもなんでもない映像が美しい。これが才能なのかと再認識する。「ゴッド・ファーザーⅢ」でオペラハウスの階段で射殺された女優は日本を舞台に傑作ともいうべき映画の監督として映画を支配する。ビル・マーレーもまた特別のメイクもないようにみえる粗い髪型で、東京の高級ホテルで孤独感を無言で演技する。土曜日に帰国するのかあるいはもっと早く帰国したいのか。ただ200万ドルのギャラで日本に来て、さらに映画に出るべきなのにと自覚しながらエージェントに怒られているその姿はおそらくアメリカでは言語の壁以外の壁に直面している様子が伺える。アメリカの自宅に電話して「電話しなければ良かった」と独白する姿。アメリカ人が撮影した日本の中では、やはり飛びぬけて日本の日常を「作品」に昇華させた映画ではなかろうか。特別にエキゾチックでもなく、特別にポスト・モダンでもない。毎日見慣れているはずの風景がこれほどまでにまがまがしく眼に映り、また美しくも見えるというのがひたすらにすごい。そしてまた白人がもつ一種の「エリート意識」のようなものも皮肉っぽく見えてしまう。トランスレーションの壁ではあるのだが、それはさらにアメリカ人の「壁」を画面に映し出しているようにもみえる。日本のテレビ番組が映写されるたびにおそらくはアメリカ人もまた自らのテレビ番組を反芻することにもなる。そしてまた日本人自身も。新幹線から見える富士山、熱海の風景、自動車からみる東京タワー、有楽町…日常の風景が限りないほどの美しさで迫る。そしてビル・マーレーの唄う「more than this」をはじめとして音楽のセンスも抜群。天才の所業のなせる業としか表現しうようがない。
第76回アカデミー脚本賞受賞・英国アカデミー賞主演男優賞・英国アカデミー賞主演女優賞・英国アカデミー賞脚本賞・第61回ゴールデングローブ作品賞・主演男優賞・脚本賞受賞・全米映画批評家賞主演男優賞など多数の賞を受賞。

パニッシャー(ジョナサン・ヘンズリー監督)

2008-01-06 | Weblog
ストーリー;FBI捜査官が武器密輸の取引でマフィアの息子を射殺。その復讐としてFBI捜査官の家族も殺害され、再びその復讐に躍り出るが…。
出演;トーマス・ジェーン、ジョン・トラボルタ、ロイ・シャイダー
コメント ;粗筋は「モンテクリスト伯爵」に非常に良く似ている。ただこの映画は他のアクション映画と異なり、潜入しているアパートメントの隣人たちもよく描かれている。太ったイタリア系アメリカ人、元アルコール中毒だったダイナーの女、ビデオマニアのやせぎすの男。この3人がかもし出す得たいのしれない共同体の感覚が漫画の「めぞん一刻」に似ていていいのだなあ。「めぞん一刻」でもアパートの壁がぶち破られるがこの映画でもぶちやぶられたりする。で、ラストのアクションシーンでも弓矢を使って音を消したり、地雷のオリジナルな使用方法で敵を殲滅したりと工夫がいろいろ凝らされている。画面構成というよりもアクション独特の仕掛けが見事。さらに車両にもいろいろな改造を加えるのだがこれがまたクリント・イーストウッドの映画からさらに発展させたような見事な改造車。この「防御」のための工夫というのが、人間味があるアクションスターをかもし出しててて面白い。監督のジョナサン・ヘンズリーはかなりの「アクション奇作品」である「60セカンズ」「コンエアー」などの製作でも有名。これもまたハリウッドらしくない奇作といえるのではなかろうか。

WASABI(ジェラール・クラウジック監督)

2008-01-06 | Weblog
ストーリー ;過激な捜査で知られるフランス警察の刑事は、その方法が問題となり2ヶ月の休暇をとらされる。そのおり、19年前に交際していた日本人女性が死亡したとの連絡が入り、急遽日本に向かう。そこには忘れ形見の娘が存在していた。
出演;ジャン・レノ、広末涼子、ミッシェル・ミューラー
コメント;フランス人からみた日本人というのはこれほどまでにも単純なものだったのかと映画をみていて思ったりもする。悪い奴は全部「ヤクザ」という表現だが、街並みの描き方もえらく乱暴。ホオ・シャオシェンが電車や街並みをうまく撮影しているのに対して、いかに日本ロケを敢行したところでフランスの延長でしかない。殺伐とした街並みをわざわざ映画で見せられてもなあ。とはいっても広末涼子の演技はそれほど悪いとも思えず。
 冒頭の過激な刑事の役どころはクリント・イーストウッドを思わせる。アクションシーンではジョン・ウーへのオマージュもこめた、とのことだが、足元にも及ばない粗雑なアクションシーン。タイトルのワサビというのもピンと来ない上に、ぜんぜん辛味がきいていない。妙な理想と思い込みで変形した画面を延々と見せ付けられたというのが印象。

スカイ・キャプテン(ケリー・コンラン監督)

2008-01-06 | Weblog
ストーリー;1939 年の第二次世界大戦中のニューヨークシティ。ヒンデンブルグ号に乗る科学者が失踪し、これで科学者の行方不明者は10人。そしてなぞのロボット軍団にニューヨークは襲撃され、スカイ・キャプテンは新聞記者のポリーとともに謎の究明に向かう。背後にはドイツかの謎の科学者の名前がみえかくれし、そして11人目の科学者が息絶える間際にポリーにガラス瓶を2つ手渡す。
出演;ジュード・ロウ、グウィネス・パルトロウ、アンジョリーナ・ジョリー
コメント;アンジョリーナ・ジョリーは大好きだが一瞬出演してまたいなくなってしまった。なんだかムルナウとかを意識した古典的な造りだが、残念なことに登場するメカとか設定とかが宮崎駿そっくり。日本人には、あまり目新しくもないのではなかろうか。ヒンデンブルグ3世などの飛行船とか飛行機とかもあまりにもCGが技巧的過ぎて、「飛翔感」が欠けている。でもしかしグウィネス・パルトロウの表情やファッションはなかなかのもの。金髪の美人が、クラシカルなスタイルで飛行機に乗っているだけでサマになる。またジュード・ロウも演技を投げ出すこともなく正義感に燃えるパイロットを好演。役者が揃っているので楽しめるという部分はある。最後はネパールに飛ぶのだが、ここもまたえらく「スタンダード」なCGの世界。あまりCGを使いすぎるとこうまで画面が安く見えるのかとあらためて再認識した次第。映画の中ではジュード・ロウが中国に赴任していたという設定だったり、日本軍部をひにくるジョークもあるのだが、ぜんぜん笑えない。これは何を意識したジョークなのか。むしろ安易な笑いを排除したほうが良かったのかもしれない。
 途中でジュディ・ガーランドの「オズの魔法使い」が映写されるのだが、断然そっちのほうが近未来的で良い映画だと思う。前にみたときに当時の映写水準でよくもここまで近未来を描写できたものだと関心した。ジュディ・ガーランドの顔とグウィネス・パルトロウの顔が一つの画面にかぶさるあたりがちょっと面白い。ヒンデンブルグ3号が登場するが映画の設定の2年前1937年にこのドイツ製の飛行船はニュージャージーで大事故となっている。ああ、こうした時代設定ももう少しうまくつけなかったものだろうか。ヒンデンブルグ自体はもともとプロシアの陸軍昇降で後に政治家に転身。独仏戦争や第一次世界大戦でも功績をあげるとともに、1925年ワイマール共和国の大統領にも就任。ナチスドイツの出現を阻止しようとするが、1933年にヒトラーの任命者となるという皮肉なめぐり合わせ。さらにその4年後に飛行船が大事故を起こすわけで、もう少し、あと少しなのだがなあ。

ラスト・キャッスル(ロッド・ルーリー監督)

2008-01-06 | Weblog
ストーリー;大統領命令を無視してまでも部下の救出作戦に赴き、8人の部下が処刑されたことを理由に元軍人専用の刑務所に収監される。しかしそこでは人権や軍規を無視した独特の規律体制がひかれていた。
出演;ロバート・レッドフォード、ジェームズ・ガンドルフィーニ、 マーク・ラファロ
コメント;ロバート・レッドフォードは嫌いな役者だが、この低予算映画では孫もいる歴戦の勇者という役どころでむしろ「味わい」のある顔をみせてくれる。裸体もさらすのだが、やっぱり老けたよなあ。でもその皺のより具合とかがまたスターならではなのかもしれない。敷地の中で繰り広げられるいわば「陣取り合戦」の様子を描写したものだが、生き生きして各役者が演技している。監督の力ではなく明らかに主役のロバート・レッドフォードの力で、画面にはでてこない共感性の和みたいなものが伝わってくる。キャスティングがやはりこのロバート・レッドフォードでなければ出せない役どころで、歴戦の勇者でありかつ犯罪者であり、そして犯罪者から慕われてリーダーシップを「心ならずも」発揮するという難しい役。やや出来すぎのセリフばかりなのだが、だがしかし、ここまで部下の面倒をみてくれる人物であれば多少前科があろうがなかろうが、人はついていくだろうと思う。軍人あるいは下士官というのは相当に辛い職業だと思う。恨みをかえば、銃弾は背中からも飛んでくるというが、エゴイスティックな階級制度をたてにとればいつしか報復される運命にあるわけだし、恐怖政治もまたしかり。
 シーンとしては食堂で一人寂しく食事をとるロバート・レッドフォードの周囲に人が集まるところかな。でもそうした孤独な状況でも淡々としているあたりが確かに歴戦のつわものたるゆえんでしかも無言でそのシチュエーションを観客にみせつける。これロバート・レッドフォードが低予算映画の中でむちゃくちゃいい味だしている映画として記憶すべきなのかも。


危険な情事(エイドリアン・ライン監督)

2008-01-06 | Weblog
ストーリー;ニューヨークのエリート弁護士は出版社の主宰するパーティで、辣腕女性編集者と知り合う。「大人のルール」とやらで一晩の浮気をするが…
出演;マイケル・ダグラス、グレン・クロース、アン・アーチャー
コメント;舞台の中心となるアパートメントはエイドリアン・ラインがその前に撮影した「ナイン・ハーフ」と同じアパートだとか。1980年代に公開され、フェミニストからは無茶苦茶に攻撃されたという映画だが、2000年ごろにも「あの映画で…」などと引用されたりする。だがしかしフェミニズムがどうとかこうとか言う前に、映画として成立していないような気もしてならない。そもそもエイドリアン・ラインがなぜ映画監督などとして紹介されるのかわからないし。最初から最後まで退屈な映像構成でマイケル・ダグラスとグレン・クロースが主役でなければ思い切りこけていたのではなかろうか。どうしてこんな退屈な映画が話題になるのかも疑問だが、アレックスという女性編集者が住むアパートメントの周囲はダウンタウンの騒々しい雰囲気。そうしたニュアンスみたいなものが「バニラ・スカイ」などでも引き継がれており、あんまりそうした退屈な雰囲気などを21世紀に残すのもいかがなものかと思う。
 グレン・クロースはやはり何かを確信している様子でラストはあの有名なお風呂場での格闘になるわけだが、倒れ方が実にスムースで、お風呂の液体にとけていくような滑らかな倒れ方。こういう倒れ方ができる女優って今でもそうはいないのではなかろうか。髪型がヘンなのは演出の悪さとして許容するとしても。
 「蝶々夫人」がたまに流れたりするのだがこれもなんだかなあ。粗筋はだいたい知られている通りなのだが、「だからどうした」といいたくなるような音楽の流れ方で、これが許されるのであれば、映画音楽はなんでもありではないかなどとも思いたくもなる。ラストは安いシンセサイザーが流れるのだがこれもまた苦痛だ。マイケル・ダグラスは癖のある顔ではあるが、青いシャツとかとがった髪型とかはやはり端整。昔はお父さんのカーク・ダグラスのほうが好きだったが、このバタバタした喜劇のようなホラー映画の中でなぜか一人落ち着いているようにも見える。
 あまりこの手の映画でフェミニズムとかルナティックがどうしたとかこだわらないほうがいいのだろう。エイドリアン・ラインの「ナイン・ハーフ」も無茶苦茶しょうもない作品だったが、この映画も最低。


ボイス(アン・ビョンギ監督)

2008-01-06 | Weblog
ストーリー;韓国で援助交際を報道した女性ジャーナリストは、ストーカー的な嫌がらせを受け、親友の別宅に一時避難する。パソコンをつなぐと画面にはある携帯電話の番号が。そしてその携帯電話にかかってきた声を聞いた子供が次第に異常な行動をとりはじめる
出演 ;ハ・ジウォン、キム・ユミ、チェ・ジョン
コメント;韓国の女優の中でもかなり美人が揃った映画ではなかろうか。「狐階段」「箪笥」「4人の食卓」とみたが、この映画の女優が一番綺麗。しかもそれぞれ子持ちの母親役、社会人のジャーナリスト、女子高校生役と振り分けられているが全員1979年生まれか1980年生まれ。つまりほとんど同年齢のはずなのにメイクや演技で年齢を振り分けるというすごさ。細面の顔が3つ揃うとホラー映画の雰囲気も盛り上がる。また証券会社の会長の自宅のセットが白を基調とした見事な邸宅ぶり。階段が忌まわしいイメージで捉えられたり、白が恐怖を増加させるあたりはややヒチコック的かもしれない。
 そしてテーマはおそらく「愛」ってことになりそうだが、テーマ曲はベートーベンのピアノソナタ「月光」とマーラーの第5交響曲第4楽章。特にマーラーの曲がかかるとどうしてもヴィスコンティの「ベニスに死す」を思い出すのだが、そのあたりも計算されているのかもしれない。あ、だがしかし、ホラー映画ではあるけれども少しも怖いとは思えず、携帯電話をテーマにしたホラー映画ということでは日本の「着信アリ」のほうが数段上。ただし女優の見事さは「ボイス」のほうが数段上。男優ももちろん多数出演しているのだが、ま、それはどうでもよかろう。
 純愛テーマのメロドラマの要素とホラー映画の要素とミステリーの要素。で、さらに人工妊娠なども現代的に取り扱ったりして、今もおそらく残っているであろう韓国の家父長的な社会制度もチラチラ見え隠れする。また経済成長著しい社会現象なども画面の端々でみえたりして。どうしてもなんといっても10年前と比較すると韓国映画の水準は相当に高くなってきており、日本映画ではどうしようもないはずれもままあるが、それなりに楽しめる映画ということでは韓国ホラーはたいしたものではなかろうか。場合によっては大味なハリウッド製作のホラー映画よりも、楽しめるのかもしれない。

キス・オブ・ザ・ドラゴン(クリス・ナオン監督)

2008-01-06 | Weblog
ストーリー;中国の麻薬王がフランスで取引をしているという情報が入り、北京で一番の切れ者警官がフランス警察と協力して捜査にあたる。だが、一番最初の捜査で思いもかけないハプニングが起こる…
出演 ;ジェット・リー 、ブリジッド・フォンダ、チョッキー・カリョ
コメント ;「ダニー・ザ・ドッグ」よりも前の2001年に製作の映画。ワイヤー・アクションがほとんどなく、リアリティのあるアクション・シーン。もともとこの手の映画が持っていたアイデアもふんだんに発揮されている。今年で40歳になるブリジッド・フォンダもまた娘を思う娼婦という複雑な役どころを上品に演出。パリのロケが中心だが、凱旋門やエッフェル塔の影など観光地を中心としたアクションも楽しい。特にセーヌ川をゆっくり流れる舟の上での乱闘シーンやパリ地下の下水道を逃げ惑うジェット・リーに、かつての「レ・ミゼラブル」とか「第三の男」とかの場面とてらしあわせ、いまや異邦人というのはフランスにおける中国の警官役になるのだなあなどとも思ったり。セットもロケもとにかくこっていて、ラスト間際に警察にただ一人なぐりこみをかけるジェット・リーが出かけ間際に路上に携帯電話を投げ捨てる様子はこれこそ「クール」といった感じ。ジェット・リーの温厚さなども画面からしのばれ、スターとはいっても温かみのあるスターなのだと改めて認識。