ごとりん・るーむ映画ぶろぐ

 現在584本の映画のあくまで個人的な感想をアップさせていただいています。ラブコメ、ホラー、歴史映画が好きです【^_^】

フィクサー(トニー・ギルロイ監督)

2009-01-27 | Weblog
キャスト:ジョージ・クルーニー、トム・ウィルキンソン、ティルダ・スウィントン、シドニー・ポラック、マイケル・オキーフ

評価:☆

コメント:原題は「マイケル・クレイトン」。フィクサーというよりも法廷弁護士ではなく、法廷に出る前に事前調整するという役回りの弁護士を主人公にしたものだ。ティルダ・スウィントンは大企業の法務本部長を勤めているが、自分個人の良心とは直接向かい合おうとはしていない役回り。登場人物のだれしもが病んでいる中で、一人、良心にめざめた弁護士の役をトム・ウィルキンソンが熱演している。
 映画としては正直あまり面白くはなく、環境問題の深刻さが浮き彫りになるほか、訴訟になった際の解決までの時間の長さを画面を通して実感する。
 日本でも築地の移転先の「土壌汚染問題」について、データの発表が東京都からではなく、内部告発と思しきリークから新聞が報道するという事態が持ち上がった。「けっしてデータの秘匿ではない」というのが東京都の言い分だが、こうした土壌汚染の問題もいずれ時間が解決してくれる。つまり発がん性物質を多量に含んだ土壌の上で食べ物を売買するというそうした環境事件はまだ日本では大規模な形では発生していない。今回の東京都のコメントも含めて100年後、200年後に当事者たちのコメントが映像入りで公開され検証されるまでのことだ。  
 映画では「死の農薬カルシテート」が題材。30億ドルの訴訟がようやく和解に向けて動き出したその夜から映画は始まる…。  「チェンジング・レーン」に引き続きシドニー・ポラックが冷酷な法律事務所所長を演じている。これがはまり役なんだなあ…。

ストーリー:農薬問題カルシテートを巡る集団訴訟が続く中、クライアントを裏切って内部調査書類をマスコミ関係者にリークしようとする弁護士アーサーの説得を請け負うマイケル。しかし、人生の12パーセントを「死の農薬」に費やし、400回を超える証録採取にアーサーはすでに疲れ果てていた…。

キャプティビティ(ローランド・ジョフィ監督)

2009-01-27 | Weblog
キャスト;エリシャ・カスバート、ダニエル・ギリス、プルイット・テイラー・ビン、マイケル・ハーネイ、ラズ・アロンソ

評価:

コメント:昔は予算削減のためにイタリアやオーストラリアでロケをしていたが、この映画ではロシアで撮影。しかもロシアの美術担当者がニュージャージーの「家屋セット」を作成したという。
 アメリカの家のようでいてしかし微妙にどこか違う…といった違和感が逆に効果的な美術セットとなっている。
 最初の「犯人」の世界は「緑色」がトーンになっているが、だんだん灰色の「うちっぱなし」のコンクリートの壁が場面の基本舞台となる。設定はどこか韓国映画「オールド・ボーイ」にも似ているが、低予算映画とはいえやはり固定費用は相当にかかっていると見た。砂がさらさらと「ハコ」の中に落ちていくシーンと砂時計をかぶらせる演出はさすがローランド・ジョフィ監督。
 主演のエリシャ・カスパートはメリル・ストリープを模範にしているというが、こうしたB級スリラーの難しい役どころもしっかり演じて、しかも日本公開時にもちゃんとファン・サービスで来日しているのは嬉しい。実は冒頭のシーンは黄色がトーンになっているのが画面のトーンをあえて異ならせることでラストが「なるほど」と思わせることにもなっている。
  もともとはもっと手のこんだストーリーだったらしいが、伏線は実はタロット・カード「吊るされた男」のカードが映画でもちらっとうつるが、このタロット・カードは「ダヴィンチ・コード」でも有名になったグノーシス派の流れを汲む一つのシンボルでもある。「占い」とも実は関係はない。輪廻、再生、霊的復活といったモチーフが描かれているが、「吊るされた男」の霊的復活は別のところで映画ではしっかり描かれている。
 また、主役のモデルがバーで飲むのは「アップル・マティーニ」。つまり「リンゴ」なのだが、アダムとイブのエピソードを彷彿とさせる。オシャレなカクテルバーから追い出されて地獄へといざなわれる「イブ」。そしてさらにT.Sエリオットの「荒地」もこのドラマのモチーフに。もう少し上映時間が長ければそうした伏線についても映像化できたのかもしれないが、どこか中途半端になってしまったのはホラー映画は1時間半が限界という原理原則に従った結果だろう。異常犯罪ではあるが、しかしそこにある種の論理性と手がかりを残していくという「羊たちの沈黙」からの伝統はこの映画でもしっかり遵守されている。

ストーリー
:トップモデルのジェニファーはバーの帰り道になにかしらの薬物をかがされて地下室に閉じ込められる。そこで食べ物や飲み物を一方的に与えられる生活が続いたが、ある日隣室にもだれか別人が監禁されていることを知る…。二人で脱出を試みようとするが…。

アメリカ版世にも奇妙な物語(J.D.ホーキンス、フランク・コーリー・シールズ監督)

2009-01-27 | Weblog
キャスト:ティモシー・エリック、スティシー・ハリス、ジャレーン・マック

評価:なし

コメント:タイトルのつけ方からしてB級ムービーだが、実際にはZ級ムービーともいうべき世界が展開する。キャストは看護婦役の一人を除いては全員アフリカ系アメリカ人。原題は「Street tales of terror」。
 ショートストーリーを3つ挟んで全体の映画が終了するという展開なのだが、美術も衣装も予算が少なかったらしく、あからさまなメイクでの「血糊」がけっこうアナログで新鮮かもしれない。またアメリカの郊外の雰囲気も伝わってくる。  
 都会のスラムではなく、郊外の庭で(おそらく)クラックの売人をしている二人。都心部での土地が高騰してスラム街がだんだん郊外へ移動してきたというニュースがこの映画でも反映されている。
 コカインはあまりに高価だったため所得階層が低い人間には入手が不可能だったのだが、クラックという形で安値で売りさばけるようになったのが1970年代のアメリカ、そして現在に至る。
 物語はなぜか1970年代、80年代にさかのぼるのだが、最初の一話は1983年5月14日の「ジェシカの物語」。これもストーリーは別としてアメリカの統計では、家庭のプールが約11,000あり、そのうち一年間に一人の割合で子供が溺死すると言う事故が起きている。銃で撃たれて死ぬ子供よりもプールでおぼれてしまう子供のほうが確率が高い。さらに1975年のセントラル大学の「幽霊話」。70年代の雰囲気があまり出てこないのだがあえて70年代に場面を設定して話はまた2008年に逆戻りしてくるという構図をとる。アナログ過ぎて逆に笑える場面も多いが、このDVDを買った人の中には怒っている人もいるかもしれないなあ…

ストーリー:ショバ代を請求された街角のチンピラ、ジョイ・ドッグとキース、そしてジョイの彼女のピーチズ。元締めとのトラブルになった後、現場を目撃していたホームレスを発見。ホームレスは「面白い話があるからそれを聞いてくれ」と嘆願し、3人はそのホームレスの話に次第に引き込まれていく…。

ハイスクール・ミュージカル(テレビ・バージョン)(ケニー・オルテガ監督)

2009-01-27 | Weblog
キャスト:ザック・エフロン、ヴァネッサ・アン・ハジェンス、アシュレイ・ティスデイ、ルーカス・グラビール、コービン・ブルー、モニーク・コールマン、アリソン・リード、バート・ジョンソン

評価:☆

コメントなにやら見ていて気恥ずかしい…。高校のお話ではあるのだが…いや…学園祭そのほかも含めておそらく個人的に卒業した高校も自由な校風ではあったが、さしてこういうイベント中心の世界は実は「人によりけり」かな…というのがあり…。
 いやいやもちろん幼稚園などではだれかれ構わず話もできただろうけれど、高校になるとそれぞれがそれぞれの世界を持ち始めるので、むしろ個人の生活や趣味についてあれこれ言わない…という礼儀を学び始める年代かもしれず…。
 「一人一人がスター」というイデオロギーにはなんとなくディズニーってさすがだなあと思うものの、「自分は自分」と割り切るスタイルも大事なことではなかろうかと。
 
ただこのテレビ・ムービーはその後続編も作成されたほか、映画バージョンも作成されたということなのでやはりそれなりの人気を得る土壌はあったようだ。う=ん、こういう世界も悪くはないが、でもだれかが「悪い」と一言切り捨ててもいいのかもしれん。ま、どうでもいいのだけれど。
  「オペラ座の怪人」の主役をつとめたマイケル・クロフォードについてチャドがえんえんと語るシーンが個人的に面白かったが…。

ストーリー:大晦日に偶然知り合ったバスケットボールチームのキャプテン、トロイ・ボルトンと天才少女ガブリエラ・モンテス。その後二人はニューメキシコ州のアルバカーキにあるイースト高校で再び出会う。最初は大学進学のための「単位取得」が目的でオーディションを受けようとするトロイだったが、そのうちガブリエラと一緒に歌を歌うことが楽しくなり…。

クローズZERO(三池崇史監督)

2009-01-27 | Weblog
キャスト:小栗旬、やべきょうすけ、黒木メイサ、山田考之、高岡蒼甫、岸谷吾朗、高橋努、鈴之介、桐谷健太、遠藤要、伊崎右典、伊崎央登、上地勇輔、小柳友、渡辺大、清水元基、松重豊、遠藤憲一

評価:☆☆☆☆☆

コメント:久方ぶりに映画らしい映画を見た
。粗筋は一応あるのだが、とはいえ三池崇史監督の狙いはラストで、芹沢と滝谷が一騎打ちになる瞬間に突如雨がやみ、夕暮れとなるその一瞬ではなかったか。 
 クライマックスに向けての「仕掛け」には手練の技を見せてくれる。雨の中、黒い傘の一群がいっせいに傘をグラウンドに投げ捨てる瞬間。そしてビニール傘を静かにそっと置く芹沢。
 「頂点」に何の意味もあるわけでもないことを知り尽くしている男二人が過剰なまでに戦い、ラストに残る教訓もメッセージも何もない。ただ画面を見て「美しい」としかいいようがない映像の展開だ。
 空も決して青空ばかりではなく、むしろ緑と灰色の独特の青空と鉄工所が殺伐とした雰囲気の中に奥行きを感じさせる。
 「中途半端」から「徹底」して抗争を描くとこういう映画になるのだと実感。勝者はいるのかいないのかもよくわからないが、ただただ水とドロが羽散る瞬間の美しさにため息が出る。
 これは三池崇史監督と出演者の「美学」が結集した映画なのだ。

ストーリー:史上最強の不良高校「鈴蘭男子高等学校」。一匹狼もいれば各派閥を率いる領袖もいてまだだれもトップを取ったものがいない。その中で芹沢が率いる「芹沢軍団」がもっとも天下に近いと推定されていたが、父親がヤクザの滝谷が転校してきて情勢が変わる。鈴蘭のOB片桐のアドバイスを受けつつ、鈴蘭制覇に乗り出す滝谷だが、喧嘩だけでは天下が取れないことに気付き始める…。

ナポレオンの愛人(パオロ・ヴィルツィ監督)

2009-01-26 | Weblog
キャスト:モニカ・ベルッチ、ダニエル・オートゥイユ、エリオ・ジェルマーノ

評価:☆

 コメント:DVDでのみ日本で配給された作品でしかもトレーラーでは不必要なほどモニカ・ベルッチが宣伝されているが、実際にはモニカ・ベルッチは脇役程度の役回りとなる。
  エルバ島で公共事業や道路の整備などに積極的に取り組むナポレオンの姿と「独裁者」としてのナポレオンのイメージは今でもフランス国民の間では共有されている矛盾したイメージかもしれない。映画の途中でコルシカ島を見るナポレオンや、パリの砲兵学校の思い出を語るナポレオンはもちろん歴史上の事実である1815年の「出来事」に終結していく。
 側近のマルシャンの「目」がすべてを物語っており、老獪な政治家でもあるナポレオンとエルバ島の元教員21歳との駆け引きに花をそえる。日本で公開されなかった理由はひとえにフランスの歴史の中で、またイタリアとナポレオンの微妙な関係の中でエルバ島のナポレオンの心中の変化は興味深いものではあるが、日本にとってはあまり関係ない事柄にすぎない…ということだけだろう。
 DVDをレンタルで借りてみるのにはちょうど手ごろで面白い作品だ。また1815年のフランス、イタリアの雰囲気と1830年を描写した「ヴィドック」との対比も面白い。この国の15年の歴史は本当にめまぐるしく変化したのを実感する。 「妻と3歳の息子がいるが息子だけはここにつれてきて欲しい」という台詞はナポレオンの本当の声だったのかもしれないし、それもマルティーノをだますための一つの嘘だったのかもしれない…。

 ストーリー:1814年3月14日、エルバ島にナポレオンが流刑となってやってくるという情報がもたらされる。そして1814年5月18日に英国軍隊の監視とともにナポレオンがエルバ島へ。ジャコバン主義にかぶれていた街の教師マルティーノ・パブッチはエルバ島の島民がナポレオンに影響されていくのを心配すると同時に、独裁者への制裁が必要だとの覚悟を決める。しかしナポレオンの司書として雇用され、ナポレオンの心中を書きとめていくうちに二人の間には微妙な関係が生じてくる。しかしマレンゴの戦いで息子を失ったマルティーノの恩師が意外な行動に…。そして不倫の関係にあったナポリの男爵夫人とナポレオンとの関係も微妙なものに変化していく…。

ヴィドック(ピトフ監督)

2009-01-26 | Weblog
キャスト:ジェラール・ドパルデュー、ギヨーム・カネ、イヨス・サストレ、アンドレ・デュソリエ、エディット・スコブ

評価:☆☆

コメント:前から見たいみたいと思っていたが、近くのレンタルビデオ店には置いておらず、ブックオフでDVDを発見して購入。一気に見終わる。この映画を見る前から「ヴィドック」という私立探偵の先駆けの存在は知っていたが、ここまで神格化されるほどの知名度がフランスにはあったのだと認識。
 内容はミステリーというよりもSFやホラーに近い内容だが、時代設定が1830年の荒れた雰囲気のパリというだけで、なにか胸騒ぎのするような展開だ。
 映画音楽にさまざまなクラシック音楽が用いられているのにも好感がもてる。ただアクション・シーンはまだ「マトリクス」が公開される前ということもあっていまひとつの迫力だ。もし香港映画からアクションシーンを輸入できていたら、もっと面白い作品になったことだろう。
 1830年パリといえば、ルイ18世、シャルル10世の王政復古政策でフランス一般市民の不満が抑圧されていた時代。ドラクロアの「民衆を導く自由の女神」もこの時期がモデルとなっている。ルイ18世は子供がいなかったのでシャルル10世が即位したわけだが、とにかくやることがむちゃくちゃで、亡命貴族への援助資金を法制度化(つまり一般市民の税金は海外の貴族に報酬として与えられる)や議会解散などの勅令を出そうとする。
 映画の中では警察庁長官とその取り巻きがシャルル10世のその意向を聞いて「あと数時間でパリは武装地帯になる…」と絶句する場面がでてくるが、超王党派のシャルル10世の独断専行ぶりがうかがわれる1シーンになっている。映画の中には「カタコンベ」らしき地下道も現れ、さらにガラス工場、プロシア軍の脅威などもさりげなく描写。サービス満点の「客観的描写」の中でうかびあがる「貧困」があるゆえに成立した謎の「失踪事件」と「連続殺人事件」、そして王政復古で腐敗した貴族の「活動」ぶりが描写されていく…。

ストーリー:武器商人ベルモン、科学者の軍に親しい2人が相次いで「雷」にうたれて事故死。警察庁長官は事件性を感じ、かつては警察で働いていた私立探偵ヴィドックに捜査を依頼。しかしヴィドックもまた謎の「仮面の男」によってガラス工場で命を落としてしまう。ヴィドックから伝記の執筆を依頼された作家はヴィドックの足取りをおい、独自の捜査を始めるが…。

トゥームレイダー(サイモン・ウエスト監督)

2009-01-12 | Weblog
キャスト:アンジョリーナ・ジョリー、イアン・グレン、ノア・テイラー、ダニエル・クレイグ、ジョン・ボイト、リチャード・ジョンソン

評価:☆

コメント:とにかくアンジョリーナ・ジョリーは素晴らしい。映画は非常にしょうもないのだが、スタントマンを酷使しつつもアンジョリーナ・ジョリーの運動神経の良さを映画はまた引き出してくれている。
 映画はいわゆる「インディ・ジョーンズ女性版」といったところで、考古学をやりつつお宝もいただくという微妙なお仕事。しかし、どうやら貴族の階級らしく執事もいれば83も部屋のある大邸宅にも住んでいる。

 ただし常につきまとうのは「死」の影で、「月のピラミッド」の写真がでてくれば「死者の道の奥」と連想が働くようにいたるところに死者の国への「入り口」が画面にでてくる。  
 ストーリーも荒唐無稽で、光の民と自称する秘密結社イルミナティの評議会の様子がイタリア・ベニスで出てくるのだが、もともとこの秘密結社には途中で政治的活動をあまりやらないフリーメーソンに不満を抱いた分子が途中参加したという事情がある。そのせいかピラミッドや「全智の眼」があちこちにまた映像として繰り返し画面に映し出される。

 最後はロシアのシベリアの様子が映し出されるが、ツンドラってこういうことなのか…と思うほど独特の「ぬかるみ」状態になっており、ロケーション撮影だったらしくアンジョリーナ・ジョリーも船の上からツンドラを見下ろしているシーンがある。「トライアングルのパワー」などイルミナティやフリーメーソンといった秘密結社独特のキーワードが出てくるとともに、「死者に会うのはとても危険なこと」というテーマと「洞窟」というテーマも反復される。  

 この映画で一つのキーとなるのが時計だ。 「時計…それは見るものに時刻を示すだけでなく離れた場所や家の中にも鐘で時刻を告げてくれる」(ジョバンニ・トルテッリ)という言葉のごとく、ララ・クロフトは「鐘」の音で5,000年ぶりの「時刻」を知る。
 しかし後にララ・クロフトはその時計を壊してしまうのだが、それはおそらく機械時計が発明されたのは13世紀末の数十年間、おそらくは西欧では1270年代でヨーロッパ北部という説があることをララは知っていたからではないか(中国では10世紀に機械仕掛けの時計はあったが)。
 デジタルな時計は「時間」を連続体としてではなく、細かな「時間」が集積した不連続体と考える。ララはデジタルな時計を壊して、時間が連続体としてうごめく5,000年前以上の世界観に立ち戻る。適役が「アリステレス以前の資料も…」と発言するシーンがあるが、ギリシア哲学は理性による判断を重視したので、それよりももっと昔の切れ目なく時間が流れる時代に映画は回帰していく。切れ目のない流れは時に交じり合ったり曲がったりするので、アンジョリーナ・ジョリーとジョン・ボイドの共演シーンはそうした世界観からすれば当然発生しうるシーンだ。

 時計を発明したのは占星術師か僧侶ではないかという説が有力なので「惑星直列」状態が引き金になるというのもそれなりの根拠はある。  

 スポーツも武道も、そして博学な知識をもつララはいわば「浮遊するインテリゲンチャ」(マンハイム)を現代によみがえらせたキャラクターだ。18世紀や19世紀には想像もしない形で、しかも主人公が女性というあたりに「今」を感じる。

ストーリー:秘密結社イルミナティは惑星直列を前にして、失われたマヤ文明のさらに前の文明でパワーをもっていたピラミッドの破片とキーストーンを探索する。悪魔を信仰し独特の独裁世界をめざす彼らにとってピラミッドパワーはかなり魅力的なアイテムだったが、ララの父親もまたそのピラミッドの破片を追い、1985年から行方不明になっていた。そんな中、英国のララの大邸宅に夜中に時計が鐘を鳴らしだす…。

ダークナイト(クリストファー・ノーラン監督)

2009-01-03 | Weblog
キャスト:クリスチャン・ベール,ヒース・レジャー,アーロン・エッカート,マギー・ギレンホール,ゲーリー・オールドマン,マイケル・ケイン,モーガン・フリーマン,ロン・ダーン,チン・ハン,メリンダ・マクグロー

評価:☆☆☆

コメント:マゾタイプのヒーローが2人登場するという珍しい映画だ。「スパイダーマン」も自分自身のヒーロー像に苦しむのだが,そのスタンスはどちらかといえばサド的。しかしこの映画ではバットマンは自ら敵地に乗り込んで生身の身体がいたぶられ,傷だらけとなる。
 他のスーパーヒーローと異なる点は,現実の世界でも他人から揶揄されるような生活をおくり,ヒーローの世界でも一般市民から糾弾されるという継続的にいたぶられる生活が続くということだ。
 一方,ヒース・レジャーが演じるジョーカーも「痛み」を好む。ひたすらいたぶられ嫌われるのだが,この二人は最終的にはどちらが欠けても生存意義がなくなるという点ではサドとマゾの関係というよりも相互依存の関係になる。そしてマゾであるがゆえ,ジョーカーはラスト間際で歓喜の声を上げつつ落下し,その後落胆するわけだ。  

  役者の中ではいつも映画ごとに身体ごと改造してしまうクリスチャン・ベールがさらにスリムになって端正な演技をみせる。またゲーリー・オールドマンがかつての「大げさ演技」から脱皮して落ち着いた物腰のジム・ゴードン刑事(市警本部長)を演じているのも興味深い。  
 アクション・シーンは他のハリウッド映画に比べると明らかに意図的にスピードを落として重厚な雰囲気を醸し出す。
 タイトルが「ダークナイト」だけに「光のナイト」役のゴッサム・シティの地方検事ハービーは,伝説の鳥「ハービー」と同じような両面を見せていく展開だ。
 また映画の中では香港マフィア,ロシアのボリショイバレーのプリマドンナなどが脇役で登場。国際色がさらに豊かとなり,ゴッサム・シティという限定の世界よりも「州兵」などアメリカの一部としてのゴッサム・シティというように世界観が拡大しているのも興味深い。

ストーリー:刑務所に服役中のマフィアのボス,ファルコーニの跡目を継いだサルヴァトーレ・マローニ。病院に入院していた元泥棒で傷害罪でも前科のあるジョーカーを開放し,バットマンの殺害を狙う。同時に香港マフィアのラウはゴッサムシティのマフィアの資金を警察が差し押さえる前に投資ファンドに移動。そのままマフィアから逃亡を図ろうとする。そしてバットマンは,ジョーカーと対決をすることになるが…。