ごとりん・るーむ映画ぶろぐ

 現在584本の映画のあくまで個人的な感想をアップさせていただいています。ラブコメ、ホラー、歴史映画が好きです【^_^】

ザ・リング2(中田秀夫監督)

2008-01-12 | Weblog
ストーリー;シアトルの大新聞社を退職して息子エイダンとともに、デイリー・アストリアの記者として活動するようになったレイチェル。ただし地元であのビデオにまつわる事件が発生したことからサマラに再び発見され、エイダンが再びサマラに付けねらわれるようになる。そして「水」を異常に怖がるようになった息子に異質な人格を次第に発見しはじめるが…。
出演 ;ナオミ・ワッツ、シシー・スペイセク、ゲイリー・コール
コメント ;中田秀夫監督といえば「女優霊」がメチャメチャ怖かったが、「ザ・リング2」では「女優霊」的な怖さよりもハリウッド・ホラーの色調にあえて合わせた演出をしている。とにかく「目」にみえる怖さを重視するハリウッドだが、何もここまで見せなくても見せないほうがむしろ怖いのではないか…と思う冒頭の導入シーンでもあえて「見せる」演出。ナオミ・ワッツがまたこの世にありえないくらい綺麗な母親役で、こういう強くてタフな母親役を演じて、なおかつ美しいという女優はそうはいないのではなかろうか。もともと英国生まれではあるがオーストラリア育ちという女優だが「マルホランド・ドライブ」で注目された後、前作の「リング」が世界的大ヒット。ラスト間際の元夫の不審な死に顔をみた瞬間の「絶叫」が特に印象的だ。その後に「21グラム」でショーン・ペンなどと共演してさらに高い評価という経緯もあるためか、この第2作目にもおそらく1作目の高い評価を受けての出演ということではないだろうか。で、その難しい役回りに今回でも無理なく答えてみせるあたりに女優魂を逆に感じる。筋立て自体がそうとう「キワモノ」なためにすごく難しい役回りだったと思うがそれをこなすあたりがむしろさらに高い評価につながるような印象を受ける。36歳時の映画出演ということになるが、泥まみれになっても水をかぶっても美しい…。さらに児童福祉施設の精神科医の役でエリザベス・パーキンソンが出演している。「ビッグ」でトム・ハンクスの相手役を勤めたヒロインが今度は中年の精神科医として出演。落ちついた雰囲気での演技をひさしぶりに見れて非常に嬉しい。そして「キャリー」というホラー映画の王道をいく名作の主演を演じたシシー・スペイセクも思わぬ場面で思わぬ形での「怪演」をみせてくれる。最初はだれだかわからないほどの「第三世界混迷ぶり」でおそらくキャリーのパロディを多少意識していたのではなかろうか。「水」を怖がるという設定などは前作にはない設定だが、日本映画のリング三部作(「リング」「リング2」「らせん」)や原作の「リング」「らせん」「ループ」よりもまだ「落ち」は納得がいく設定なのでかなり許せるホラー映画。とにもかくにもかつて好きだった女優や今輝いている女優が目白押しのホラー映画なので一度見ておく価値は十分あると思う。

ミステリー・トレイン(ジム・ジャームッシュ監督)

2008-01-12 | Weblog
ストーリー;横浜からきた日本の18歳のカップル(far from Yokohama)、イタリア・マフィアと一週間だけ結婚していた奥さん(a ghost)、地元メンフィスでトラブルを起こした床屋さんとその「義弟」、そしてその友人(lost in space)。この3組が偶然メンフィスのホテルで一晩を過ごす…時間は午前2時17分。ラジオが「ブルー・ムーン」が流れる時、それぞれがそれぞれの事件にでくわし、その翌朝ホテルに銃声がコダマする…。
出演 ;工藤夕貴 、スクリーミン・ジェイ・ホーキンス、ニコレッタ・ブラスキ
コメント;テネシー、メンフィスで繰り広げられる人間模様。「音」と「映像」の「技」がさえる。なんともいえないはれぼったい顔をした工藤夕貴がやはりいい。カンヌ映画祭ではこの映画の出演がきっかけで「アイドル状態」になったというが、それも判る気がする。なにげなく綺麗好きでありながら、さして交際して長くもない永瀬正敏と二人で異国アメリカの土地に。それでブロークンな英語で積極的に自分の世界をアメリカ、メンフィスでも繰り広げる様子やスクリーミン・ジェイ・ホーキンスなどとの会話などが楽しい。ニコレッタ・ブラスキのイタリア夫人の様子もあらためて見てみるとすごく落ち着いた演技。そしてスティーブン・ブシェーミの運の悪い床屋役も板にはまった演技。考えてみればこの当時は、まだメジャー映画出演よりも、ミニシアター系統の役者というイメージだったのだが、「アルマゲドン」「コン・エアー」以来ハリウッド映画でも有名になってしまった。
 スクリーミン・ジェイ・ホーキンスの赤い衣装が印象的。またスパイク・リーの弟がスクリーミン・ジェイ・ホーキンスの横に座ってハエのオモチャをハエタタキでいきなり叩いたりもする。DVDで大分前に購入したが、あらためて見直すのは封切りされたころに映画館でみたっきりかもしれない。画面のあざといギャグに当時の映画館では大笑いが連続だった記憶がある。
(テネシー州メンフィス)
 前のクリントン政権で環境政策をおしすすめていたゴア副大統領の地盤がこのテネシー州。東西に横に伸びた長方形の州の形をしており、映画の舞台となったメンフィスは西部地区の首都で人口は約61万人。住民の過半数は黒人でテネシー州の中でもメンフィスの黒人居住率は高い。映画の中にもでてくる「グレースランド」はエルビス・プレスリーが生まれた家のこと。ただし州都はその右上にあるナッシュビル。第7代アンヂリュー・ジャクソン大統領はこのナッシュビルに居住していた。東部のノックスビルにはテネシー川流域開発公社(TVA)があり、1933年のニューディール政策の中心として活動をはじめ、ダム建設による発電と洪水防止、土壌保全など多角的な地域開発を促進した。ハルノートを書いたコーデル・ハルの出身地でもある。こうしてみると日本との類似性が高く、緯度的には日本と同じなので季節感や温度など「横浜」に似ている部分もあったのかもしれない。サンスタジオの内部映像も映画では取り扱われていて興味深い。

リプレイスメント(ハワード・ドイッチ監督)

2008-01-12 | Weblog
ストーリー ;「隣のヒットマン全弾発射」を撮影したハワード・ドイッチの映画。ワシントンのアメリカン・フットボールチームは選手労働組合のストライキに突入。オーナーは、代理としていきなりの監督と粗製チームで優勝を狙おうとする。元オハイオ大学の選手だったファルコはシュガー・ボウルでの失敗の尾をひいて隠居生活をしていたが、声をかけられ復帰するが…。
出演;キアヌ・リーブス 、ジーン・ハックマン、ブルック・ラングトン
コメント;「セカンド・チャンス」をテーマにしたよくありがちだが、しかしなかなかよく出来たスポーツ・ラブコメディ。キアヌ・リーブスが35歳のときに撮影された映画だが、35歳とは思えないほどの爽やかな動きでクウォーター・バックを演技。酒場のママで、週末に50ドルでチアガールを率いるアナベル役のブルック・ラングトンもそれなりに画面にはまる。絶世の美女ではダメで、恋にも仕事にも用心しつづけているちょっとピントがずれた女性という役回り。オーナーの役にジャック・ウォーデンというのも泣かせるキャスティング。撮影も相当にハードだったみたいだが、ギャグのほとんどはツボにはまる出来のよさ。「間」の取り方もジーン・ハックマンがうまいので無茶苦茶笑える。
 もうこの映画も10数回以上見ているのだが何度見ても面白く、スポーツコメディの中では最優良の出来ではなかろうか。「マトリックス」よりもかなり前の映画だと思い込んでいたのだが公開そのものは「マトリックス」の1年後にあたる。エース・ヨナミネという不可思議な日系アメリカ人の「べらぼう」な演技にも笑えるし、オーランド・ジョーンズの奇妙さもよく、特に刑務所の中の男性だらけのダンシングシーンは非常に面白い。
 アメリカン・フットボールのルールなどはいまひとつわからないのだが、パスなどチームを率いるリーダーがおそらくクウォーター・バック。パスを出す肩の強さとそれを受ける人間の足の速さやタックルをかわす体重なども重要な要素のようだ。ルールがわかればもっと面白くなる映画なのだろう。
 監督のハワード・ドイッチの奥さんは、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のリー・トンプソン。なんだか面白い。

フェイス・オフ(ジョン・ウー監督)

2008-01-12 | Weblog
ストーリー ;6年前、息子を殺害されたFBI対テロ特別捜査本部の敏腕刑事アーチャー。憎むべきテロ犯の弟ポラックスが飛行機のチャーター料の支払いをしたことを知り、急遽空港に向かう。しかし相手トロイは、全国の司法関係者が集合する予定のロスアンゼルスのコンベンション・センターにすでに前代未聞の破壊兵器「シンクレア」をセットしていた…
出演 ;ジョン・トラボルタ、ニコラス・ケイジ、ジョーン・アレン,アレッサンドラ・ニボラ,ジーナ・ガーション,ニック・カサヴェテス
コメント ;DVDを購入してからもう何十回も見ているのだが、それでも面白い。見るたびに新たな「美学」に酔いしれるからだが、おそらくそれは善と悪との永遠の対立という古典的テーマの上に、ジョン・トラボルタの屈折した過去をひきずる英雄の光と影、偏執狂的犯罪者を演じるニコラス・ケイジの光と影が複雑に交錯。それでもって、回転木馬の暗殺シーンから、殺人兵器シンクレアの設定までにいたるヘンデル「メサイア」の合唱。そしてラストの海沿いの教会で流れるアレグリの「ミゼレーレ」まで、音楽とアクションシーンの類稀なセットが魅力。スローモーションも「MI2」などとは比較にならないほどの美しさで、心に迫る。おそらくは偶然出来上がったシーンではないかと推測される「オーバー・ザ・レインボウ」をバックに繰り広げられる銃撃戦と子供のあどけない顔、そして下からあざとく光る照明といった「光」のマジックも堪能。すでに粗筋は頭の中に叩き込まれるほどみているのだがそれでも面白いのだから、この時期のジョン・ウーって本当にすごい人だったのだとあらためて思う。

バットマン・ビギンズ(クリストファー・ノーラン監督)

2008-01-12 | Weblog
ストーリー;両親を目の前で強盗に射殺されたブルース。自分自身との恐怖心と戦うために旅に出るが途中でその道を見失ったときに、ヒマラヤ山脈でラーズ・アル・グールの指導を受ける。しかしラーズ・アル・グールの「破壊思想」についていけなくなったところで袂を分かつが…。
出演;クリスチャン・ベール、ゲイリー・オールドマン、マイケル・ケイン
コメント;2時間20分の長編。バットマンの始まりを描く。マイケル・キートンの第1作よりも面白い。「善」と「悪」の二元対立ではもうヒーロー者が難しい…ということで、原点を描くのにまずはヒマラヤ山脈での禅問答のような「自己との対話」が用意される。指導役はリーアム・ニーソンと渡辺謙。「悪」を知るために悪の道に入りつつ道をみつけるという筋タテは「スター・ウォーズ」を思わせる。ただしここで用いられるのは、財力というのがスター・ウォーズシリーズとは異なる。
「人間はなぜ失敗するのだろう」
(Why do we fall?)
「這い上がるためにさ」
(People can leran to pick ourselves up)
という対話がなかなか奥深い。汚職にまみれた街で一人黙々と働く刑事としてゲイリー・オールドマン。会社の左遷部署で研究を続けるモーガン・フリーマン。執事役としてマイケル・ケイン。そして出演時間はかなり短いものの強烈なインパクトを残す精神科医役「スケアクロウ」として、キリアン・マーフィ。マフィアのボスとしてトム・ウィルキンソン、会社経営陣としてのっとりをたくらむルドガー・ハウアーとただならぬキャスティング。唯一弱いのがマドンナ役のケイティ・ホームズ(と思っていたらラジー助演女優賞にこの映画でノミネートされたようだ…)。
 最初の画面ではゆっくりと走っているモノレールがラストではとてつもないスピードで走り出す。ちょっと忌まわしい実際の事故を思わせるような映像もないではないが、残虐さを差し引いても面白い。とてつもない破壊力で走り出すバットマン・カーの原始スタイルもその出自がこの映画で明らかに…。
 
 特別の「計上記憶型繊維」などを使用しているという設定で上下に急降下・急上昇するバットマンが官能的なまでの浮遊感を画面にもたらす。実際のコオモリほどではないが夜行性の「屈折型」ヒーローとしての夜の顔と寂しげな昼の顔のアンバランスさがこのヒーローの魅力かもしれない。クリスチャン・ベールは「リベリオン」でも独特のアクション演技を見せたがこの映画でも非凡な運動神経を披露。「マシニスト」でみせたとてつもない役への入れ込み方がマイケル・ケインやモーガン・フリーマンにも負けない強力な個性を画面に打ち出している。ハリウッド映画なのに英国出身俳優がそれぞれの持ち味を出した面白いアクション映画だ。

サハラ~死の砂漠を脱出せよ~(ブレック・アイズナー監督)

2008-01-12 | Weblog
ストーリー;南北戦争末期。リッチモンド付近の北軍の包囲網を抜け出そうとする南軍の装甲艦があった。霧につつまれ脱出したその後、その装甲艦の行方はしれなかったが、ダーク・ピットは南軍のコインをアフリカのナイジェリアで発見し、驚くべき仮説をたてる…。
出演 ;マシュー・マコノヒー 、ペネロペ・クロス 、スティーブ・ザーン
コメント;クライブ・カッスラー原作の「死の砂漠を脱出せよ」の映画化だ。クライブ・カッスラーは以前「タイタニックを引き揚げろ」の映画化でハリウッドにかなり不信を抱いたというが、この映画は原作にかなり忠実に仕上がっているし、なによりもダーク・ピットを演じるマシュー・マコノヒーが原作のイメージそっくりの活躍ぶり。このダーク・ピットシリーズは原作のほとんどを読破したが、どれをとっても面白い。発想が奇抜ではあるが、ちゃんとした科学的な裏づけもあって2時間の映画化では本当にもったいないほど原作は充実しているのだが、それでもこの映画作品はこれまでのクライブ・カッスラーの中では一番出来がいいのではなかろうか。おそらくCGの発達でこれまで映像化が不可能といわれていたことがわりと低予算でできるようになったことも影響しているのかもしれない。
 リッチモンドをぬけてさらに右へいくとバミューダ海域。大西洋を横断してギニア湾のナイジェリアの首都ラゴスへ。そしてニジェール川をさらに北上してマリに到達する…。けっして不可能ではない。また砂漠がかつて緑の地域だったと考えればわずか150年の間に船だけが取り残されるという事態も当然ありえたかもしれない。150年後、マリのニジェール川沿いで産業廃棄物の処理工場が設置され、そこから毒物が流出。ニジェール川沿いに下流のナイジェリアで毒物による被害者がでる。その調査にあたっているのがWHOの医師を演じるペネロペ・クロスという設定。小柄であるにもかかわらず疫病調査のため井戸の中へ飛び降りたり、患者の治療に専念する姿がすがすがしくて美しい。
 内戦が続くという設定の中、通常では考えられないアクシデントを持ち前の「機転」で乗り切るNUMAの組織の仕事ぶりは明日への活力を与えてくれること間違いなし。クライブ・カッスラーの面白さをこの2時間に凝縮したアナログタイプのヒーローが21世紀に画面に復活してくれた。

愚かなる妻(エーリッヒ・フォン・シュトロハイム監督)

2008-01-12 | Weblog
ストーリー ;モンテカルロの町にやってきた自称ロシア公国竜輝兵大佐のカラムジン。自称伯爵の彼は娼婦二人を従姉妹と偽り、モンテカルロにやってきたアメリカ行使夫妻に狙いをつける。お金は贋金作りに依頼して調達して、詐欺をたくらむが…
出演 ;エーリッヒ・フォン・シュトロハイム、メイ・ブッシュ、モード・ジョージ
コメント;1921年作品。白黒映画の一つの頂点を極めた作品。ユニバーサル映画はこの映画のために一時期倒産しかかり、エーリッヒ・フォン・シュトロハイムを解雇。もともとは30巻あった長編を10巻に縮小して公開する。ストーリーは1921年とは思えないほど「残虐」といっていいかもしれない。自称伯爵の浅ましい人間性が時間軸を追うほどに明らかになっていき、ラストはモンテカルロの下水道に捨てられる。とてつもない予算枠のはみだしは、とてつもない迫力を確かにうむ。偽の涙を流すためにフィンガーボウルの水を使ったりといった小技もあちこちあるが、大セットを組んでモンテカルロの街を再現し、さらにラスト間際で炎に包まれる迫力もCGでは演出できない凄みである。なにせ無声映画なのにホテルの部屋にすべて電話を配置したという完全主義者。女優の着ている衣装が風になびく場面も本当の絹でできているのであろうと思わせる上品なたなびきだ。そしてそれと対照をなすお手伝いさんの機能的で質素な部屋。
 すさまじいまでの人間の浅ましさをこれでもかこれでもかと繰り出す手法は、「純愛」といった言葉もかすむほどの悪辣ぶり。映画史上に残る傑作だがこれがまた現在ではDVDで入手可能(30巻全部を収録したDVDもあるようだ)だから嬉しい。モナコ公国の雰囲気と当時の世相をしっかり画面に焼付け、垂直に女性の部屋をめがけてののりつづけるカラムジン伯爵の姿が鬼気迫る。本当にむごい怪物とは実は人間だったのだと1921年の映画で語りつくされているようだ。

ミニヴァー夫人(ウィリアム・ワイラー監督)

2008-01-12 | Weblog
ストーリー;ロンドン郊外で平和に暮らす一家。しかしドイツ空軍の空襲は日々激しさを増していく。そんな中でもミニヴァー夫人は人間らしさを保ちつつ、村の平和と家族のために頑張る…
出演 ;グリア・ガーソン、ウォルター・ビジョン、テレサ・ライト
コメント ;グリア・ガーソンのほのぼのとした「家庭婦人」ぶりが興味深い。こういう役柄は非常に難しいと思うのだけれど…。1942年のアカデミー賞を総なめにした作品で作品賞、監督賞、主演女優賞、助演女優賞、脚色賞、撮影賞を受賞。ウィリアム・ワイラー監督の作品にしては、戦時下の映画ということもあってか、いまひとつ起伏のない映画だったりするが、それでも英国を舞台にした戦時下の一種の「余裕」が感じられる作品のような気がする。
 ドイツとは目と鼻の先の英国でここまで希望を持たせる映画が戦争中に撮影できたというのも驚くべき「余裕」だが、悲しみがいくつも発生しているのに、カメラは冷徹に壊れた家や教会をじっと映し出すのみ、という凄みのある構成。粗筋は非常に退屈で途中眠りそうになるのだが、それでも最後まで見れるのは役者がいいのとカメラワークが「冷徹」だからだろう。1942年作品。

フィッシャー・キング(テリー・ギリアム監督)

2008-01-12 | Weblog
ストーリー;ラジオのDJで不用意な発言が、銃の乱射事件を引き起こす。ノイローゼになったDJはレンタルビデオの手伝いをしながら無為な日々を過ごしているが…。
出演 ;ロビン・ウィリアムス、マーセデス・ルール、ジェフ・ブリッジス
コメント ;このほかにアマンダ・プラマーも。この映画の路線で「フリージャック」ではちょっとぶちきれた尼さんの役とか、「パルプフィクション」でいきなり銃を取り出す「切れた女」という役どころが続いていたのだが、朝の駅の雑踏の中を歩いているうちにいつのまにかそこは舞踏会となり、全員が踊るといったシーンが印象的。ラヂオのDJとしての自身を失ったジェフ・ブリッジスが自分を取り戻し、さらには自分が本当に必要としていた人間が誰だったのかに気づく場面も秀逸。この映画はロード・ショーでみてそしてDVDをついに購入してしまったのだが、ロマンスと希望があふれていて好きだなあ。
 「聖杯」伝説にも触れられており、これはアーサー王物語では聖杯をもとめて円卓の騎士たちが旅に出るがみつけることはできないもの。イエス・キリストが最後の晩餐で用いた杯という説と十字架にかけられたキリストの血を受けた杯という説とがある。建築家の本棚にその「聖杯」があるという設定は、面白い。実際効果があったわけだし。傷ついて再び立ち上がろうとする男と女の4人の物語は調子はずれのガーシュインの音楽でおしゃれに終了。きれいな映画だ。

ザ・コントロール(ティム・ハンター監督)

2008-01-12 | Weblog
ストーリー;スティーブン・レイがぼーっとした顔で製薬会社の社長をつとめ、SSRI系統の抗欝剤に加えて、人間の理性や共感といった部分の機能を強くする薬を元死刑囚に投与。理論的には前頭葉の部分を活性化させるような薬だと思われるが、副作用が厳しいことはあらかじめ予想されていた。当初は死刑囚だったこともあり、かなり乱暴をふるまうが、次第に静かな生活を送ろうとして、アパートからスーパーに買出しにったり、ガソリンスタンドの仕事でお給料ももらえるようになる…。
出演;ウィレム・デフォー、レイ・リオッタ、ミッシェル・ロドリゲス
コメント;元死刑囚と元薬中の二人が肩を並べて夜の遊園地を歩いているシーンがよかった。二人を取り巻く状況はあまり明るい状況ではないが、それでも二人で前を向いて新しく生まれ変わろうとしている様子が伺える。どっちも相当な「ワル」のはずだが、女性の方は忙しいかたわら夜間大学で地質学を専攻。ヤクの影響を立ち消るため禁酒中という設定だ。自分が銃を発射したため一生不具合が残った被害者に謝りに行くシーンなど夕方に二人が歩いているシーンや図書館で本を借りてバス停で寂しく待っているレイ・リオッタの姿が美しい。最初は醜悪にも思えた顔が最後には白い光につつまれて神々しさもかもし出す。
 予算はそれほどかかっていないが、それでも制限のある中でここまでよく夜の闇や濡れた坂道、といった小道具をたくさん演出してくれてサービス満点の人生やりなおしプログラムの映画。日光がふいに外で輝く場面も秀逸。