ごとりん・るーむ映画ぶろぐ

 現在584本の映画のあくまで個人的な感想をアップさせていただいています。ラブコメ、ホラー、歴史映画が好きです【^_^】

二十四の瞳(木下恵介監督)

2013-11-06 | Weblog
ストーリー:瀬戸内海で淡路島の次に広い小豆島。昭和3年の春,女学校を卒業したばかりの大石先生は岬の端にある分教場に赴任し,12人の一年生を受け持つこととなる。一年生とすぐさま仲良くなり,打ち解けあった大石先生だが,生徒のいたずらにひっかかって落とし穴に落ち,足を怪我してしまう。その後,通勤に支障が生じたため,大石先生は本校に転勤することになる。そしてその5年後、六年生になった12人が本校に通学するようになり,大石先生は再び12人と再会。だが楽しい日々は続かず,生徒の家庭は貧困を増し,学校は軍国主義によって特高に逮捕される教員もでてきた…

キャスト:高峰秀子,月丘夢路,井川邦子,小林トシ子,田村高広,笠智衆,夏川静江,浦辺粂子,清川虹子,浪花千栄子,明石潮,天本英世,高原駿雄,小林十九二

コメント:あまりにも明るすぎる前半と暗すぎる後半の対比に見るもの誰もが涙する。登場人物も終始泣いているが、映画の中で経過する約20年間の重さに時代を超えて観客もまた泣くしかない。1929(昭和3)年には張作霖爆破事件が発生。すでにその後の世相を占う軍国主義の足音が聞こえる一方で,第1回普通選挙が実施され(1928年12月20日),アムステルダム・オリンピックで日本人が金メダルを獲得。特別高等警察が設置されたのもこの年で,物語の始点としては絶妙のタイミングといえる。その5年後の昭和9年には東北地方が冷害で大凶作となり,いわゆる女性の身売りや自殺が増加した時期にあたる。
映画のストーリーも昭和の雰囲気を知る日本人であるならば面白いことこの上ない。さらにこの映画を見つめてしまう要因は,役者たちの「顔」ではなかろうか。幼少期と成人期のタレントについては当時全国的にオーディションおこなって選出されたという。個性的な子役の顔に加えて高峰秀子のつややかな丸い顔が次第に翳りを帯びてくるその様相が、まさに昭和が暗い時代に突入し,戦後も生活が楽ではないことを物語る。
 昭和の時代や大正の時代が妙にセピア色の想い出として語られるのはあまりに脳の記憶を美化しすぎだろう。戦地でなくても暗い生活と陰湿な時期は常に身の周りに潜んでいる。そうした陰湿さが画面から時に滲み出してきつつもあからさまに画面に映し出されることは一度もないというのがやはり名画の名画たるゆえんか。「楽な時代はない」がゆえに,山の姿や海の色が変わらないがごとく、観客もまた時代が変わってもこの映画をみて高峰秀子とともに泣く。


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