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西東京市・北海道富良野の森林を舞台にした遺伝,育種,生態などに関する研究ノートの一部を紹介します

蛇紋岩地帯への適応

2007-04-09 | 研究ノート
・山火事後二次林のウダイカンバの樹冠調査の予定を組んでいたのだが、いきなり小雨が降っているので、とりあえず予定を金曜日に移す。と同時に、測量予定は木曜日へと調整。結局雨は朝だけだったのだが、ぽっかりと時間が空いた。ということで、しばらくメール連絡をあちこちへと・・・。何となく落ち着いたので、アカエゾマツ原稿のイントロを改訂。考察には、蛇紋岩に対する適応についての考察パラグラフを一つ追加。



・針葉樹のマツでも蛇紋岩地帯には適応している例が、遺伝分析と産地試験の両方から指摘されている。が、今回の結果では、集団内の遺伝的多様性や集団間分化度に蛇紋岩地帯とその他での違いは全く検出されていない。これは蛇紋岩帯の集団が2つしかないという計算上の問題だけでなく、どのくらい蛇紋岩の影響を受けているか?ということが関わっているのではないかと思われる。

・他のマツの産地試験では、蛇紋岩産と非蛇紋岩産では成長率に有意な違いがあるとされている。ところが、本試験のサンプリング個体のdbhに着目すると、両者には全く違いがない。サンプリングの方法が完全にランダムともいえないので、個体サイズデータの扱いは難しいが、成長阻害が生じるほどの厳しい環境ではないだろうというのが、サンプリングしながらの実感でもあった。つまり、本当に蛇紋岩むき出しみたいなところにはアカエゾマツは定着しておらず、ある程度土壌があり、他の樹種は嫌うがアカエゾマツは大丈夫・・・という程度のニッチを見つけているように思えるのである。



・一方、標高とdbhの関係も一応見てみる。高山帯のdbhが急に小さくなるのは見た目のとおりであるが、低標高域でもサイズが少し小さくなっているのが面白い。個体群サイズも小さいために、小さなサイズの個体からもやむを得ずサンプリングしたというのが正解、というところだろうが、多少は環境の影響で成長率に差が生じているのかもしれない。やはりデータは眺めてみるものだ。

・アカエゾマツについて、個体群構造や花粉や植物遺体の化石関連の文献を2,3ダウンロード。”当たり”という文献はなく、引用するかどうかも微妙・・・。だが、トドマツ論文では使えそうな知見もあった。もうしばらく文献探しが必要だ。

・気分を変えて、トロピカルなマツ(Pinus merkusii)について下調べ。Wilkipediaによれば、保全地位(Conservation status)はVulnerableとあるので、希少種らしい。どうやら巨大なヤツらしく、普通の樹高は25-45m程度とのことだが、最大で70mの記録を持っているとか・・・。なぜかマイナーな雑誌に関連論文が出ているのだが、ダウンロード不能。1995年のForest Geneticsの論文によると、高い自殖率が観察されたようだ。が、この雑誌ってまだ存在するのか!?

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