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西東京市・北海道富良野の森林を舞台にした遺伝,育種,生態などに関する研究ノートの一部を紹介します

交雑論文、投稿

2008-09-01 | 研究ノート
・明日からの富良野行きを前に、各種打ち合わせ、準備など。午前中で一区切りしたところで、トドマツ交雑論文の投稿にかかる。Reviewerを4名も指定しないといけない上に、推薦理由が必要!、ということで思いのほか時間がかかる。毎度のことだが、雑誌によって微妙に投稿プロセスが違うのがややこしい。2時過ぎ、どうにかこうにか投稿完了。自分としてはかなりポジティブな印象に変わったと信じているのだが・・・。今度こそ、いい知らせが届いてほしいものである。

・午後から業者との打ち合わせ。最近、何だか妙にバタバタしている。アオキ第二弾の原稿チェック。引用文献として新たに加えられたJohnson and Galloway(2008)Plant Ecolをダウンロードしてみる。これは園芸植物ベニバナサワギキョウの植栽が野生集団に及ぼす影響を、花粉による遺伝子交流を通じて評価するという論文。

・試験設計が複雑で意外と理解しにくい論文である。面白いのは、自生個体の花粉と非自生個体の花粉の混合花粉を割合を75%、50%、25%という3段階に分けて設定し、遺伝マーカーを用いて、自生花粉と非自生花粉のどちらが強いか(選択受精の有無)を調べているところだ。

・1000km以上離れた2つの集団の非自生花粉はほぼ混合割合程度の結実率を示し、自生花粉と非自生花粉のパワーに差がないという結果だった(これはこれで驚きだが・・・)。一方、32km離れた集団の花粉は混合割合よりもむしろ高い結実率を示した(雑種強勢?)。しかし、園芸品種の花粉はいずれの混合割合でもほとんど結実させることができず、自生集団の花粉に負けるという結果となった。

・全体としては、非自生花粉と自生花粉の間で受精パワーに大きな違いはなく、非自生遺伝子が自生集団に交雑を通じて入っていく可能性は十分にあるが、個体によって影響は異なるだろうというのが結論。参考にはなったが、引用の仕方が難しそうだ。

トカゲのdispersal

2008-08-25 | 研究ノート
・アサインメントテストの解説スライドを作るために、改めてManel et al. 2005 TREEをチェック。関連してDispersal推定でよく引用されるBerry et al. 2004 Mol Ecolの原著も読んでみる。これはニュージーランド南部の地上性のトカゲをについて、標識放逐法で由来集団が明らかな131個体について、13のSSR遺伝子座を用いてアサインメントテスト(AT)で由来集団を正しく推定できるかを調べたもの。4サイト(P1, P2, T1, T2)について、それぞれ2-4の候補集団を対象にした解析を行っている。



・統計手法やマーカー数と推定精度の関係も調べてあるため、引用するには便利な論文。候補集団間のFstが0.04から0.05と低いサイト(T1、T2)では推定精度はやや低かったが(Partial BayesianのMost-likely法の最低値で約80%)、その他では95%以上の推定精度が得られた。標識放逐には7年にもわたる歳月を要したのに対し、アサインメント法では3ヶ月で結果が得られたことから、使いようによっては効率的な手法になりうるというのが結論。



・総説や本などでも紹介されていたので、何となく内容は知っていたものの、やはり原著を読むと新たな発見がある。ちみみにこのトカゲは絶滅危惧種(VU)らしい。このトカゲはOtago地方では露出した岩に生息するらしく、"集団”の特定が非常にやりやすいというのが研究材料として適しているのであろう。



・秋の長雨なのか今週はずっと天気が悪いようだ。懸案だった2つの論文がそれぞれ投稿され、審査待ち状態になった。ほっとする間もなく、170ページを超える審査原稿(D論)のチェック。だんだん頭がぼーとしてきたので、とりあえず明日に迫ったプレゼン作り。無理やり完成したことにして、次の原稿をチェック。あまり進まないまま時間切れに・・・。

アクセプト

2008-08-20 | 研究ノート
・本日より大学院入試が始まり、大学内もバタバタとしている。ちょっとしたお願いがあって8時ちょうどにUくんと待合せたのだが、そこでウダイカンバ繁殖成功論文がアクセプトされたという知らせ。修正も問題なかったようで、一発OK。こういうこともあるんですなあ・・・。秩父の山奥でカリカリとRevision letterを検討したかいがあったというものである。

・Iくんから頂いた指摘を元に、北方林業原稿を修正。一通り修正したところで、研究部にいたAさんにチェックをお願いする。あまり事情を知らないAさんならではの新鮮な指摘があったりして、とても参考になった。おかげさまで、言いたいことがだいぶ固まってきたようだ。

・トドマツ交雑論文の考察は、遠交弱勢関連の論文をしっかりと読まないとこれ以上は書けないようである。とりあえず、Stacy 2001の論文を帰りの電車で読み返す。改めて読むと、参考になる表現がたくさんある。例によって、ノートに書きだしていかないと、やはり言いたいポイントがまとまらない。もうしばらく忍耐にもにた作業が必要である。

遠交弱勢!

2008-08-19 | 研究ノート
・あえなくリジェクトとなったトドマツ交雑論文を修正するということで、Iくんとやりとり。レフリーの指摘のとおり、オープン交配を含めると解釈が難しくなるのは確かにその通りだということで、人工交配家系だけで勝負する、ということで意見が一致。オープンを除いた解析をやってもらったところ、なんと樹高やDBHについてほとんどの場合に遠交弱勢が検出!という結果になった。

・改めて前回の結果と並べて確認してみると、もともとDBHでは95%信頼区間のぎりぎりの値で、惜しくも(?)遠交弱勢検出されずという形になっている。さらによく見ると、NL×オープンの値が妙に低く、これがNL×NLの平均値を押し下げてしまったと見ることができるようだ。このため、親の平均値があたかもF1と有意に違わないという結果になっていたようだ。考えてみると、高標高では個体密度も低く、花粉自体が不足しているために、自然受粉の中に自家受粉や血縁度の高い個体との交配が多くなり、子どものパフォーマンスが低かった、ということなのかもしれない。

・保全に関する全体の論旨は実はあまり変わらないのだが、遠交弱勢が検出されたということになると、論文の流れにも少なからず影響を与えることになる。改めて、Montalvo and Ellstrand 2001の論文を読み返しつつ、考察の展開を考える。木本植物のF1で遠交弱勢が認められているのは、この論文とStacy 2001くらいしかない。また、これほどまでに後期のステージで遠交弱勢が検出されたのは高木種では初めてということで、そういう意味では本研究の結果は”驚き”である。しっかし、どうして今までオープンを除いて解析することを思いつかなかったのか・・・。やっぱり、固定観念に捉われてしまっていたことを痛感。

・といいつつ、北方林業原稿も放置しているとまずい。ということで、カリカリとノートに書き、それを修正する形でパソコンに打ち込む。パラグラフごと書き換えたり、順序を変更しつつ、ようやく落ち着いてきた。プリントアウトして眺めつつ、さらにチョコチョコと修正。

・午後から26日のプレゼン準備。こちらも全面改訂することに。ヒノキ論文のネタを中心にスライドを作成。やはり論文になっていると、流れは頭に入っているので後は図表を貼り付けたり、ポイントを整理するだけで何とかなりそう。後は、Manel et al. 2005の総説を読み返して、アサインメントテストを人に説明できるようにならないと・・・。

末締め原稿

2008-08-18 | 研究ノート
・昨日は、東京とは思えないほど涼しかった。それはいいのだが、寝ている最中に蚊にさされて起きてしまって、しばらく寝付けなかった。寝ているときに蚊に食われるほど頭にくることはない、と思うのは当方だけだろうか。

・8月末〆切り原稿がいくつか・・・。その一つがマングローブ論文の修正。午後からLさんと久しぶりに打ち合わせつつ、修正方針を固める。Revision letterも入念にチェック。他人が書いたRevision letterをチェックするのも勉強になる。とりあえず、それぞれに担当を決めて作業を進めることに。

・〆切り原稿の中で”重い”のが、北方林業60周年記念誌の原稿である。ある程度書き進めてはいたのだが、改めて読み返してみると、まるでオリジナリティがない。我ながらこれには嫌気がさして、”ジーンフローの研究成果をいかにして森林の保全管理に利用するか?”という応用的な内容にして、全面書き直すことに・・・。自分で自分の首を絞めているような気もするが、少なくとも、このテーマなら自分なりの意見も述べることができそう。

・日が暮れるのが急に早くなったような気がする。6時を過ぎると真っ暗である。そういえば、26日に内部ゼミで発表することになったんだった。うっ、こちらも早く準備しないと・・・。

英作文

2008-08-07 | 研究ノート
・東京は朝からぎらぎらと太陽が照り付けている。昨日まで富良野にいたせいもあって、起きた瞬間から蒸暑いというのは辛い。のどが渇くわけだよ、実際。事務所に出勤し、しばらく溜まっていた仕事を片付ける。しっかし、一向にはかどらない。こういうのをサクサクと処理できるようになる日は来るのだろうか・・・。

・地がき論文の英文校閲が戻ってきたので、これをTexに反映させる作業。”≧”をどのようにして出すのか分からず時間を食ってしまった(”$\ge$”とすればよかったのか・・・)。相変わらず,英作文は一向に上達していない。特に、自分で大幅に修正したところは見事なくらいに直されている。

・それでも、Textcheckの直しを反映させていると、自分の悪い癖がよく分かってくる。基本的に、短い文章にするのは悪くないのだが、必要に応じて”, and”や”;”でつないだ方がすっきりすることもある。後は、カンマの使い方とか、余計な修飾を省くことができるようになれば違ってきそうな予感はあるのだが・・・。

・とにもかくにも修正完了。全体として、文章が引き締まった気がする。Major revisonで再び校閲しなくちゃいけないのは大変だが、やっぱり英語がつたないと読む気にならないもんねえ・・・。

原稿修正

2008-08-02 | 研究ノート
・久しぶりの更新。いやはや原稿修正が立て込んで、大変なことになっていた。とりあえず、ヒノキ論文の修正原稿を予告どおり、31日に送付。YさんとUくんのファイナル原稿チェックと地がき論文の修正作業。明日からの富良野行きを前に何とかそれぞれに次のステップへ進むことができた。こんなにタイミングが重なることも珍しいわけだけど・・・。

・Rさんからマングローブ論文の審査結果が送られてきた。信じられないことに、Minor revision!Mol Ecolでもリジェクトしないことがあるのか・・・。やっぱりマングローブ初ということと、特に種子散布実態と定着過程の面白さが評価されたらしい。いやあ、ついにリジェクト街道を抜けたような感じかも・・・。ほめられるとやっぱりやる気になりますなあ・・・。

Over the rainbow

2008-07-28 | 研究ノート
・昨日の夕方は、妙な天気でお天気雨となった。雷鳴もとどろく中、ふと見ると虹が出ているではないか。



・この虹の向こうに輝ける未来が待っている!・・・と期待したいところだ。変な天気のせいか、すごい夕焼けだった。ちなみに、東京の方が北海道よりも夕焼けがきれいな気がする。空気が澄んでいないからってのがオチなんだろうけど。



・どういうわけか、ここに来て、論文の修正〆切りが集中している。とりあえず、アオキ論文原稿は校閲前の最終チェック。細かい修正を加えて送信。ヒノキの英文校閲が戻ってきたので、修正原稿を調整。特急でお願いしたら、やはり早かった。Revision letterも対応させて、共著者に送信。これで何とか、7月末という期限は守れそうである。

・ウダイカンバ繁殖成功論文もそれなりに大修正となっている。昨日の夕方から、虹を見ながら修正してきたわけだが、今日はイントロと考察を再び改訂。Sork and Smouse 2006 Landscape Ecologyをじっくり読むと、それなりにヒントがある。Kramer et al. 2008 Conservation Biologyも加えることにして、論旨を立て直す。

アンパンマン音頭

2008-07-22 | 研究ノート
・職場復帰。8月初旬の富良野行きに向け、電話連絡を取るうちに、Iくんのシャクナゲのことを思い出した。思い出したときにやらないと最近はすぐに忘れてしまう。ということで、信州に行かれたHさんに連絡。相変わらず控えめなトーンながら、シャクナゲについては既にまとめられつつあるそうだ。全くもってさすがである。早速、貴重な情報を送っていただいた。

・”やらなければならないことリスト”を作る。何だか多すぎて、かえって”何から手をつけてよいか分からん状態”になってしまった。とりあえず、10月に新しい講義やゼミが入っている。このまま時の流れに身を任せていると、本当にやばいことになりそうである。新たに講義用の書籍もいくつか入手したことだし、ボチボチと準備をしていく必要がある。

・アル・ゴア著の”不都合な真実”を購入。この本は2800円という価格の割にカラー写真が多く、見ごたえがある。年々後退していく氷河など、ショッキングな写真が並んでおり、やはり一度は見ておいた方がよい本だ。

・夕方から幼稚園のイベント、夕涼み会。子ども達は、色とりどりの浴衣や甚平姿で大張り切りである。強風のために、楽しみにしていた花火がなくなったのは残念だったが、アンパンマン音頭を一緒に踊って楽しかった。

自生標高への適応

2008-07-19 | 研究ノート
・3時過ぎ、秩父のSさん主催(?)の有志ゼミに参加&講演するために出動。後楽園、本郷三丁目と乗り継いで、赤門から理学部2号館に入る。かなりレトロな雰囲気の建物の中で、例によって迷いつつ、どうにか会場へと到着。3連休初日ということもあって、聴衆が集まってくれるのか心配だったのだが、15名くらいは来て頂いた。今回は理学部の皆さんも多く、初めてお会いする人が多い中での講演となった。

・頂いたコメントの中で重要なものは、一つは3年生まで低標高で育てる中で、実はセレクションがかかってしまうだろうというものである。そう考えると、過去の文献をもう一度詳細にチェックする必要があるだろう(が、知りたいことのデータがまとめられていて再解析とかは難しかったりするんだよねえ・・・)。一番の理想としては、標高別の種子をもう一度採取して、現地に直播して生残状況を詳細に調べるといいよね、というのが一つの結論である。

・トドマツ種子散布論文のベイズモデルでお世話になったKさんのお友達(?)でもあられる著名なTさんから頂いたコメントも重要である。低標高と高標高では確かに開花フェノロジーがずれるので、なかなか交流しないのは分かるが、すぐ隣の標高域とはフェノロジーもオーバーラップするはずで、それにもかかわらず、どうして遺伝的分化が起こるのかというものである。これについては、農学部のセミナーでも、H先生から同様の質問を頂いていたものだ。

・この件について、関連するのかどうか、まだよく分からないけれど、面白い話をTさんはしてくれた。例えば、とある樹種はある場所以上には北方向にはいかずに止まっている(ブナを思い出していただければ、イメージはできるだろう)。この樹種の北限の小さな集団の少し南には、この集団に比べればやや大きな集団があることになる。そうすると、北限集団で北の厳しい環境下に適応的な遺伝子が生まれても、南の集団からの遺伝子流動が大きいと、交雑によって引き戻されてしまい、何らかの条件が加わると、理論的にはある一定の場所で分布が止まることが予測できるらしい。

・ちょっと正確ではないかもしれないが、今回の標高別の適応は、こうした分布の端っこの問題と少し似ているような気がするということであった。種の分布の限界の問題は既にOIKOSの2005年1月号で特集が組まれるくらいに既存研究があるようなので、一度、じっくりと調べてみたいところだ。そのほか、高標高に植栽した個体のシュート特性とか、着花特性など、これから取り組まなければならない研究に関する色んなヒントを頂いた気がする。やっぱり、鋭い人たちに聞いてもらうと、それだけで勉強になる。時折、こうした刺激を受けないと・・・、日々に追われていてはいけませんなあ。