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西東京市・北海道富良野の森林を舞台にした遺伝,育種,生態などに関する研究ノートの一部を紹介します

ヒノキ論文改訂

2008-07-15 | 研究ノート
・ヒノキ論文の修正作業、続く。関連文献Williams & Savolainen(1996)Forest Scienceをチェック。本論文は針葉樹の育種戦略の中での、自殖や近親交配の意義に言及した比較的珍しい分野の論文である。イントロでは、とうもろこしの育種との対比で、自殖や近親交配のメリットとデメリットが書かれてあり、引用するのには意外と便利。

・F1育種で新しい品種を作ろうとしたとき、どのくらいの血縁度までが許容範囲なのか、という指摘にどう答えるかということなのだが、スギでは全兄弟同士、半兄弟同士の交配によって得られるF2苗のパフォーマンスに関する論文が既に出ている、とTさんから教えてもらう(Kurinobu et al. 1991)。

・この論文では、スギのF2で近交度が0、0.125、0.25になるように交配を行い、近交度とF2苗の樹高の関係を調べている!雌花当たりの実生数は家系間のバラツキが大きく、中には全兄弟交配でも任意交配と変わらないケースもあるようだ。一方、樹高成長は近交度が高くなると樹高が低くなる傾向があり、近交度が0.1上ると約7%の減退が推定されている。

・育種世代が進むにつれて、遺伝的獲得量と近交弱勢のトレードオフが問題になるわけだが、選抜効果を考慮しても、スギの場合には血縁関係の交配は避けるべきという結論となっている。今回のヒノキ論文でも、考察を深める上で重要なものになりそうである。しっかし、人工交配はやっぱりパワフルなツールである。論文を投稿して批判をされると、色々と考えるきっかけになるねえ。

・いつの間にか、19日に迫ったゼミを前に、プレゼン準備。一通り、できたところで練習してみると、どうにも流れが悪い。そもそも最初の結果までの相互移植のイントロが長すぎて、自分でも疲れてしまう。これはいかんということで、思い切って、大幅に流れを修正。いきなり”標高への適応”から入ることにする。ここへ来ての大改造だが、果たしてどうなることか・・・。

確率計算

2008-07-09 | 研究ノート
・ヒノキ論文をすぐにも改訂したいと思いつつ、指摘にどう答えるべきかというところで悩む。やたらと遺伝子型が一致するクローン同士があり、親子関係とはいえ、普通、こんなに遺伝子型が一致することはないだろう、というのを言いたかったわけだ。確かに、前回のバージョンでは片手落ちの計算となっていたようである。

・Tさんとメール、電話でやりとり。あーでもない、こーでもないと議論しつつ、レビューアーの指摘に従って、近交度を用いた計算を行うことで、ようやく一筋の光が見えたような気が・・。しかし、この計算はそれなりに複雑で、”気合”だけでは限界があることが発覚。結局、Tさんにプログラム作成をお願いすることになってしまう。

・こちらも一部についてはエクセルで手計算。IF式などを使い、多少なりともスムーズにできるように改良。とりあえず、1座違いの場合でようやくプログラムと手計算の値が合うようになった。なるほど、近交度が高い場合には、このように遺伝子型が一致してしまうことがありうるのか・・・。ほほう、なるほど。

・しかし、グラフを描いてみると、なにやら形がおかしい気が。手計算の値と比較しつつ、再び、Tさんに質問したところ、プログラムを修正していただいた。今度は非常にきれいな値となり、納得の図が描けるようになった。いやはや、結局、Tさんにお願いしっぱなしで全く申し訳ない。このぐらいはRでプログラミングできるようにならないといかんのだが、自分では手も足も出ずといった感じであった(少しだけ、トライはしてみたのだが・・・)。

・得られた結果を元に論文用の作図。改訂した図やデータに基づいて、修正原稿を作成。まずは、新しい計算の部分を日本語で記載。計算パートを日本語で論文調に記述してみると、少しずつ整理されてくる(ような気になる)。同時に、他の修正部分も並行して修正作業。ずっと眺めていると、不思議なもので、納得の解釈ができるようになりつつある・・・。

カラス来襲

2008-07-07 | 研究ノート
・ヒノキ論文の審査結果が、5月末には送られていたにもかかわらず、それに気がつかないままに放置していたことが発覚(しかも、催促メールにも気がつかなかった・・・)。この論文については、審査結果が送られてくるのを心待ちにしていたので、当方にとっては晴天の霹靂であった。朝からドタバタと連絡とお願いをし、編集委員の方のご高配で、修正原稿の送付はしばらく待っていただけることになった。

・今となっては推測の域を出ないのだが、G-mailの自動振り分け機能を過信していたのが原因らしい。一応、迷惑メールもチェックしてから捨てていたつもりだったのだが、その中に埋もれたままに捨てられたということなのであろう。Tさんいわく、「重要なメールを実はいくつも見逃していて、みんな怒っているんじゃない?」。これは半分冗談だったけど、本当に気をつけないといけない。メールソフトも再検討した方がいいようだ。

・苗畑にてマツの剪定。七夕に剪定するというのが福岡時代にベテランのYさんから習ったことである。これで来春には多数の萌芽シュートが出てくれるはずなのだが・・・。ぱつんぱつんと切っていると、なんだか散髪をしているような気になった。

・帰りがけに自転車で走っていると、上のほうから妙にギャーギャーとカラスの声がすると思ったら、二回も襲われてしまった。低空飛行をして頭にぶつかる寸前(というか多少衝突している)であった。巣でもあるんだろうか・・・。ここまでカラスに襲われるのが怖いとは思わなかった。

利用者交流会

2008-07-03 | 研究ノート
・最近肩こりがひどい。頭が痛くなるほどなので、温感湿布を貼ってみたら、多少は良くなったような気もする・・・。適度な運動が必要なのであろう、ということで、意味もなくぐるぐると肩を回す。アカエゾ論文も大幅修正し、いったん、Tくんに返却。とりあえず、手元を一瞬はなれた状態となっている。

・8月末締め切りの原稿依頼を”つい”引き受けてしまった。大丈夫か・・・。36文字×36行を2枚、もしくは4枚とのこと。”花粉流動と森林管理について”ということだが、ジーンフロー研究は森林管理に本当に役立つのか?というアンチテーゼで講演をしたこともあったのを思い出した。適任、なんだろうか・・・。

・ゼミ準備、再び。新しく取った(というか、Tさんにお願いして取ってもらった)トドマツ標高別のフェノロジーデータと球果数のデータを作図する。交雑試験の方も論文に投稿した内容に差し替えて、だいぶ新しい内容も含めることができた(ような気になっている)。

・7月末に秩父方面のキノコ生産者の方々を訪ねることになり、アポイントを取る。一瞬、Y社時代の営業を思い出す。な、なつかしい・・・。あちこち電話しては行ったもんだ。皆さん快く引き受けてくださり、これも埼玉県のHさんのご紹介のお陰である。有難い!

・午後から試験地を利用していただいたいる皆様による利用者交流会。当試験地を利用して行っていただいている研究についての紹介。11課題で各20分という設定だったが、皆さん、きちんと時間通りに終わっていただいて、実にスムーズに進行。分野も多岐に渡り、色んな話題があって実に興味深かった。聴衆の集中力を考えると、午後からの開催でちょうどよさそうである。

クロマツ挿し木

2008-07-02 | 研究ノート
・午前中、アカエゾ論文の修正など。19日にゼミがあるのを忘れていたので、そちらの準備も少々。聴衆のレベルが高いなどと聞くと、焦ってしまう。焦ったところで急にすごい話ができるわけではないので、今更焦っても仕方ないわけなんだが・・・。それにしても、タイトルがなかなか決まらない。したがって、要旨もやはり決まらない。

・午後、1時過ぎにIくんと電話連絡。ようやく地がき論文の修正方針が全て固まった。ということで、一気に修正作業。久しぶりにTexを使う。削るところ、改訂するところなど、かなりの大幅改訂である。しかし、レフリー2のコメントは非常に有効で、おかげで論文のポイントはかなり明確になった模様。レフリーへのコメントも同時に作成していったものの、さすがに6時半過ぎで力尽きた。

・こうした修正作業は一気に最後まで行かないとイメージが湧かない。しかし、その分、粗さは否めない。ここからちまちまと直していく中で、完成度を上げないといけないのだが、最近この部分が弱くなっているような気がする。今回は気合を入れていかねば・・・。



・4月早々にドタバタと行ったクロマツの挿し木の様子。葉が既に茶色になっているのは論外だが、葉が緑でも用土の保水性がよくて生きているという可能性もあるので要注意である。しかし、福岡での経験では、新しい葉が展開しているものは発根している”はず”である。母樹についても、来週には剪定し、萌芽枝を出させる処理をすることにしよう。

同時進行

2008-07-01 | 研究ノート
・重なるときには重なるもので・・・。なぜかアカエゾ論文と地がき論文の修正作業を同時並行的に進めることになった。どちらもしばらく冷却期間だったわけだが・・・。地がき論文については、レビューアーの指摘を一つ一つ検討。英文校閲出したはずなんだけど、案外、細かいミスが残っている。いくつか重要な指摘に対してどうするかをIくんとやりとりしつつ検討。

・プロットの設計からして修正しようがないところは何とか反論するとして、問題はレビューアー2からのモデルの枠組みに関する指摘である。いくつか検討したが、うまくいかないのでそのままで再投稿することも考えたが、そのままで認められるとは思えない。ということで、もう一度、再検討すると、プロット自体をランダム効果に加えることで(結局、レビューアー2の指摘に従うことと同じ)、うまく解析できることに気がついた。

・なんだかんだといって、”標高”という実体の見えない影に最初っから最後まで振り回されているというところか・・・。開き直ってしまえば、案外とロジックを立て直すのは難しくなさそうだ。サイトのマップも整備して作図。こちらは、確実に分かりやすくなったと実感できた。この2点は確実に改善できたといえそうで、後の細部を詰めていけばいいのではないかと思われる(甘い見込み?)。

・アカエゾ論文の方も、イントロのロジックを立て直しつつ、結構な大改訂となった。何が新しいのか、ということをはっきりさせることが大事、と皆さんにえらそーなことを言ってみたりするのだが、自分のことになると案外と見えなくなってしまうものである。冷静に、冷静に。これが一番難しいんだよねえ、当方にとっては・・・。

New白い恋人

2008-06-23 | 研究ノート
・久しぶりの職場復帰。今回のお土産は、以前話題となった(?)”白い恋人”。なぜか、事件後に人気が高まるという不思議な現象が見られているのだが、富良野で事件以降に美味しくなったという不思議な噂を聞いた。とたしかに、フレッシュになったような気もするが・・・。ま、気のせいであろう。

・色々と溜まった処理やメール書きだけで、時間が経過してしまった。落ち着いた後、富良野で取得したデータを入力。やはり、トドマツ標高別の球果数がなんとも面白い。これはもう少しひねってみると面白そう。そういえば、トドマツ交雑論文はとりあえずEdlitor Rejectを免れて、審査段階へと進んだらしい。それだけでもホッとしてしまうのは被害者意識が強すぎるのか。

・富良野滞在中に、Hくんから日本森林学会誌に投稿していたトドマツ更新動態論文が受理されたとの連絡を受ける。一年がかりのプロセスだが、就職していながら、よくぞ、途中で投げ出さなかったものである。えらい!。2回目に審査結果が戻ってきたときには、これは無理かと思ったほどだったが、ここまで来ると感無量である。どんな論文でも受理されるまでの苦労は同じである。

ハチの話

2008-06-13 | 研究ノート
・今朝、樹液の出ているクヌギにオオスズメバチが来ていたので気をつけてね、という話をTさんにしていたところ、お昼には「やっつけた」と淡々と語ってくれた。樹液に集中して背を向けているところを狙ったとのことだが、すごい早業である。ハチといえば、狩バチが尺取虫を捕らえたところを発見。こうしたシーンを間近でみるの初めてである。



・本日は、午後から当試験地で実習がある。この実習もここで見るのは初めてなので、様子を見に行く。生物の分布について、ランダム分布か集中分布かを調べるための題材として、ノイバラに着く虫こぶ”バラハタマフシ”の分布を調べるとのこと。



・学生達にくっついていくと、なるほどノイバラには金平糖のような虫こぶがついている。これはバラハタマバチというハチが産卵したあとにできるものらしい。この事実自体はよく知られているようである。が、この虫にさらに別の虫(ヒメバチ?)が寄生する(といっても、これまた単純ではないらしい・・・)とこぶの形が変わるらしい!ちょっと調べていると、ノイバラと虫たちなどという本まで出ていることが発覚。いやはや、すごい世界である。

マニュファクチャー

2008-06-12 | 研究ノート
・朝から激しい雨。蛍光色の合羽を着こんでの出勤。雨が降るとこの時期でも部屋の中は結構寒く、未だに電気ストーブが手放せない。全体的にじめっとしているこの部屋が多少なりとも乾燥する気もするので、なかなか有用である。

・10時からIくんとの論文打合せ。会う直前の30分ほど前まで、せっかく構築したイントロを、ほぼ完全に書き変える必要があるのではないか、と思っていたのだが、実は、大幅修正する必要はないことが判明。それでも、議論する中で、少しずつ、主題がはっきりと見えてきた気もする。日本語の時には何気なく通過していた解析も、英語にしようとした途端、引っ掛かったりする。英語のフレーズが論理的思考に向いているのか、言語の不自由さが論理的思考を促すのか、少し面白い感覚である。

・茨城のTさんに富良野のブナ産地別試験地の晩霜害の話をしたところ、来週の北海道行きでTさんも合流することが急遽決定。今回の出張では、関東にいる人ともなぜか富良野で再会、という感じになりそう。たしかに、今年度のブナの晩霜害はK林長が既にデータを取っていてくれているそうなのだが、そうそう経験できるものではないので、一度自分でもチェックしておいた方がいいことは間違いない。

・富良野での調査を前に、調査シートの印刷など。こうした野帳を準備しておかないと、後で痛い目に合うのは自分である。今度は、忘れたからちょっと取りに戻るってわけにはいかないもんねえ・・・。エゾマツ、アカエゾ、ブナ、トドマツ、と次々とデータシートが印刷されていく、うん?こんなに調査できるのか・・・。

・気がつけば既に4時を過ぎている。ほとんど何もしていない気がするのだが、あっという間に、今日という一日が終わりかけている。あまりの脱力感に、となりの建物にふらりと舞い込む。彼の地では、とある実験用具を製作するために、みんなで家内制手工業のようなことをやっている。お菓子をつまみながら傍で見ている分には、実に楽しそうである。



・朝からの雨がウソのように晴れ上がった(天気予報はすごい!)。試験地内には、4倍体のスギなど育種材料を集めたエリアがあるのだが、そこには針葉樹(スギ)の葉緑体ゲノムが父性遺伝であることを示した材料”黄金スギ”も植栽されている。西陽に輝く黄金スギは、これまたなかなか美しい。

忘却の彼方

2008-06-11 | 研究ノート
・梅雨に入った東京では、多くの花の時期は終わり、今咲いているのは梅雨を代表するアジサイくらいのものである。その色はうすいブルーから白、ピンクと鮮やかである。







・試験地内には十数種類のカエデがあるのだが、多くが種子をつけており、そのサイズや色は様々。まずは種ごとに比較をすると面白そうである。

・パソコンがついていると、ついメール連絡などをしてしまうので、しばらく消して文献読みに集中。ブナ関連の更新初期課程の論文を数本読む。Shibata & Nakashizuka(1995)Ecologyなど。やはり、主題がはっきりしている論文は読みやすい。こうした文献をテーマごとにまとめて読むと、足りない部分が見えてきたり、論点が整理できそうな予感がある。

・来週から再び富良野出張の予定。いくつか連絡を取ってたり、GPSデータをアップロードしたりするうちに、ようやく頭がアカエゾ・モードになってきた。ロガーを直射日光や雪から守るためのカバーなど、多少の工作もしないといけないのだが、これがまたあまり器用じゃなかったりするんだよねえ・・・。

・忙しさにかまけて後回しにされ続けていたアカエゾマツの針葉の形態解析(SHAPE)を復活。SHAPEを動かす上での細かい設定だけでなく、そもそも、どこまでが終わっていたのかなど、根本的な部分が恐ろしいくらい忘れさられており、思い出すのに30分くらいかかってしまった。やっぱり、早めにデータにしておかないと、ヒトの(いやもとい、当方の・・・)記憶なんて、あてになるもんじゃない。

・校閲から戻ってきた原稿の担当部分をチェックする。ちなみに、同じモデルをトドマツの種子散布データに適用すると、なるほどマングローブの種子散布の特徴が際立つような気もしてくる。一度コードを書いてしまえば、少しデータセットを直せば、簡単に動かせるのがいいところである。