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西東京市・北海道富良野の森林を舞台にした遺伝,育種,生態などに関する研究ノートの一部を紹介します

既存研究の有難さ

2008-11-11 | 研究ノート
・演習林の100年史が書いてあるという「演習林32号」を探すが、31号と33号は山のようにあるのに、その号だけはない。書庫を家捜しするも見つからず、個人持ちが1冊あったのみであった。詳細な記録をコピーをしつつ、その歴史に思いを馳せる。

・今年はどういうわけか、11月終わりから12月初めにかけて2つの講義とゼミ発表があり、どれから手をつけるべきかという状態。大学院向け講義は2年前の資料を改訂しようとするものの、意外と修正するのが難しい。うんうん、うなっているうちに午前中が終了。

・標高別試験地の解析について、Kさんに少し話を聞いてもらう。密度効果を考えるべきではという意見をどう取り入れるかが難しいが、説明しているうちに明らかに欠けている表現なども見えてきた。やはり、一人でもんもんと解析を続けてはいけないねえ・・・。

・少ないとはいえ、標高別試験地については、5年、10年、20年時の生存率が公表されている。これらの論文に記載されたデータを拾って、生存率の変化を図示してみる。



・久しぶりにRを使ったんだが、すっかり錆びついている感が・・・。K氏の講義ノートなども参考にしつつ再び勉強せねば・・・。グイマツ×カラマツでは、生存率が10年よりも20年の方が上っている。データの入力ミスかと思ったら、20年時の表にただし書きがあり、過去のデータを訂正するとしているので、どうやら当方のミスではなかったらしい。

・50年間(正確には47年)の生存率推移を見ることができるのも、既存研究あればこそである。今回は、植栽標高、経過年、植栽標高と経過年の交互作用が生存率に及ぼす効果を見てみる予定である。

標高別試験地データ解析

2008-11-10 | 研究ノート
・昨日はI公園で開催された西東京市民祭に行ってみた。子どものイベントに参加するために行ったのだが、規模の大きさにびっくり。色んなブースがあって、実に盛大であった。なぜか、半裸状態でブラジルのサンバを踊っている団体がおり、盛り上がっていたのはよかったが、見ているこっちが寒くなった。

・最近めっきりと寒くなった。それにしても、月曜日の朝は晴れていないと気分が乗らないといっている場合ではなく、午前中は連絡調整に追われる。何をやっているのかよく分からないままに午後になり・・・。前回に引き続き、開かずのスペースを確認する作業。変なものは出てこなかったので一安心。

・標高別試験地のデータ解析とスライド作成を進める。DBHと樹高の挙動が違うのが面白いのだが、何か別のファクターを拾っているのだろうか・・・。この試験地の正式名称は3020-3023の寒冷適応試験地。当初の目的は完全に達成されており、930m以上ではトウヒ2種とグイマツF1しかまともに育たないと結論できる。

・自生種について、種子産地標高と植栽地標高の差を横軸にとった解析を試みるが、結局のところ、5種のうち4種の種子産地標高が530m以下なので、あまり意味が感じられない。単に、植栽地標高によってDBHや樹高がどのように変化するかということになるのだろうか・・・。ふーむ、もう少しよく考える必要がありそうだ。

駒場-黒板消し

2008-11-04 | 研究ノート
・午前中、とある小学校1年生の見学案内。色んな樹木のタネを拾いながら、樹木に関する解説などを少々。ドングリは子ども達に大人気だ。試験地には、クヌギ、コナラだけでなく、スダジイ、アラカシ、シリブカガシなどの様々なドングリがある。しかし常緑のドングリについては、まだまだ不勉強で人に何かを伝えるものを実は持っていないことが発覚。小学生にも分かるお話ができるようにしたいところだ。



・小学生が林地で拾ってくれた風散布種子の中で気になるものが。これは、埋土種子調査でやたらと出現していたものではなかろうか・・・。Iさんによるとシンジュかもしれないとのこと。確かに、シンジュ(ニワウルシ)の種子にそっくりである。今度、実物と見比べてみよう。



・夕方、駒場講義の2回目。前回はパワーポイントのスライドを長時間やっていたら、学生達が眠そうだったので、室内を明るくするために今回は板書を多くしたわけだが大成功というわけでもなく・・・(内容に問題があるのか!?)。相変わらず、一貫したスタイルというものを見出せずにいる。でも板書自体はやはり悪くない(というか、不可欠である)ように思える。



・最後に短時間ながら、アイデアを引き出す会議の方法としてブレーンストーミング(BS)法を紹介し、BS的(?)に意見を出してもらった。ぼんやりと聞いているように見える学生達も色々なことを発想していることが分かり、当方にとっても興味深かった。この作業には、もう少し時間を使ってもよかったかもしれない。ところで、駒場では黒板消しもさすがのサイズた。今回の講義では、これが一番の驚きであった。

講義準備、続く

2008-10-27 | 研究ノート
・全学自由研究ゼミの講義準備。机の上には10冊ほどの本が山積みされており、開いては閉じるということの繰り返し。明日に迫っているので、そろそろスライドを固めたいのだが、なかなか・・・。しかし、いくつかの本を読み解くうちに、縄文から現代にかけての森林文化の移り変わりが何となく分かってきた。


(ドングリと文明/ウィリアム・ブライアント・ローガンより)

・ウィリアム・ブライアント・ローガンの「ドングリと文明」という本には、かつてはナラ(ドングリ)に依存した文明が各地で発展したという説が述べられている(ちなみに、この本の”ドングリ食”に関する記述は実にイイ)。面白いのは日本の雑木林に近いシステムであるCoppice(萌芽)林というのがヨーロッパでもあった(現在も細々と残っている)ことだ。

・縄文文化に着目しつつ、なぜ日本にこれほどまでに森林が残ったかという安田喜憲の「森の日本文化」と読み比べる。安田が指摘しているのは大きく分けて2つで、1つは西洋と日本の自然観の違い(日本:自然・森との共生、循環型社会)、もう1つは西洋において森林再生を妨げた家畜の存在ということになりそうだ。しかし、このような森林史は奥深く、勉強すればするほど知らないことが多いことに気づかされる(うー、間に合うのか・・・)。

全学自由研究ゼミ準備

2008-10-24 | 研究ノート
・28日に迫った全学自由研究ゼミの準備。新たに購入した3冊の本を読みつつ、必要な図や写真をスキャナーで取り込む。ふと思いついて、各本の表面を取り込んでスライドに並べてみると、これがなかなかいい。紆余曲折、ようやく次回のスライドはまとまりつつあるような気がする。

・アオキ交雑論文の修正原稿のチェック。結果までは細部の修正だが、考察の部分が問題。パラグラフの移動、新しいパラグラフの作成、パラグラフの削除などの改造を試みる。明日から秩父でキノコゼミ。週末は、当試験地でも、休日公開や子ども向けイベントがあったりと慌しい秋である。

会議室事件

2008-10-17 | 研究ノート
・前日に引き続き、自由研究ゼミのスライド作成。第4回のスライドは33枚。15分はビデオとしても150分にはまだ足りない気がする。このスライドを作成するために注文した本がまだ届かん。ううむ。人と森のかかわりを示す例として、クヌギ・コナラの薪炭林とアカマツ林にターゲットを絞ることにした。前者は萌芽更新、後者は実生更新の代表例だ。

・午後から投稿論文執筆講座パート2の読本作成。オンライン投稿時のプロセスをパソコン画面の画像を使って説明。そのほか、審査者から見た視点、修正原稿作成のポイントなど、思いつくままに作成してみる。やはりTexを使うと仕上がりがきれい。

・2時半ごろからYさんとアオキ交雑論文の修正方針を検討。審査者の指摘に答えるため、母樹個体別に父親ハプロタイプが受粉成功率に及ぼす影響を検討してみる。1個体だけ、明らかにハプロタイプによって受粉成功率が異なる。ふーむ、個体別に詳しくみるとまた違った側面が見えてくる。

・この個体について、受粉成功率を花序ごとに検討した結果、2つの花序の値が非常に低く、もう2つの花序はハプロタイプ間で違いがないことが分かった。その理由を調べるために現場に戻ってみると、受粉成功率が低い2つの枝が個体の樹冠上部に突出して位置していることが判明。

・この事実から、これらの枝は強風時に袋と雌花がこすれて受粉成功率が低くなった可能性が見えてきた(もちろん個体によって、ハプロタイプ間の受粉成功率が異なる可能性は捨てきれないわけだけど・・・)。指摘の鋭さに感嘆しつつ、疑問に思ったときには、現場に返る必要があるものだと改めて実感。”事件は会議室で起こっているんじゃない”、訳だもんねえ。

講義準備

2008-09-22 | 研究ノート
・10月に開催される予定の講義準備。初めての内容だけに、未だにイメージがつかめないままに手探り状態である。とりあえず、参考図書の図や写真で使えそうなものをスキャナーで取り込む。今回の講義では、昨日のNHKスペシャル、琵琶湖周辺の里山における人と森の話が大変参考になった。相当な時間をかけて撮影されたと思われる映像の一つ一つが実に美しかった。

・10月初めの研修に向けた準備。つぎ木、とり木、さし木の実習を行うことになったのだが、Iさんがさし木用の密閉ざしセットを作成してくれた。増殖の対象となる個体の穂の状態などをチェック。何となく、イメージが固まりつつあるが、後は実習前の講義準備が必要。こちらも写真などをスキャナーで取り込み、少しずつ進みつつある。



・先日、みんなで採取した土壌サンプルをバットに蒔いてみたところ、さっそく、わんさかと芽が出ている。採取した林分によって全然異なるが、想像以上に発芽が早い。草本らしきものが多いが、中には明らかな樹木種もあるようだ。さすがに同定はできないが、これから成長するのが楽しみである。トトロからもらったドングリを蒔いて、芽が出るのを楽しみに待つメイのような気持ちである。



シメノウチの種子形態

2008-09-11 | 研究ノート
・以前にも触れたことがあるが、試験地の第1苗畑前にある”シメノウチ”という看板がかかっているカエデの園芸品種は、細葉と普通葉が混生している。ずっと前から気になっていたのだが、技術スタッフの協力を得て、細葉枝と普通葉枝のそれぞれ3枝から種子60粒を採取。



・得られた種子を苗畑に播種。それぞれの枝ごとにどんな葉の子どもが得られるか・・・楽しみである。今回は、細葉と普通葉の枝についた種子の形態が違うのかどうか、各枝10粒をスキャナーで取り込んで、例によってSHAPEで解析。



・対称成分としては5つが選ばれたが、その違いは微妙だ。どうやら、第1主成分は種子の幅、第2主成分は種子と翼の大きさのバランス、のようだ。しかし、全体的に変異の幅は大きくない。第1主成分と第2主成分について、枝ごとに平均値と標準誤差のグラフを描いてみる。



・細葉を赤、普通葉を水色に塗り分けてみると、明瞭な違いがあるようにも見える(符号が違う)が、必ずのように例外があるので本当に違いがあるのかどうかは難しいところである。もし細葉と普通葉の枝が完全に異なる遺伝子型ならば、もしかすると種子の形が全然違ったりするのではないかと思ったのだが、そう簡単ではないようだ。

・今更ながら、シメノウチというのは何者かをネットで調べてみる。シメノウチはカエデの園芸品種の一つで、葉が細いのが特徴のようだ。しかし、普通葉が混じるとは書いていない、と思ったら、別の場所でも細葉と普通葉が混生するものがあるようだ。なんでも、”植物学上珍奇なもの”らしい。

・この個体の正体は一体なんだろう。”キメラ”だったりするのだろうか、思いつきで始めた研究だけど、”接ぎ木や枝変わり”を科学するという点では、意外と面白いテーマになるかも・・・。

Final manuscript

2008-09-09 | 研究ノート
・午前中は職場に復帰。ドタバタと連絡調整に追われる。午後からの弥生での会議に向かう電車の中で、町田英夫著の「接ぎ木のすべて」を読む。接ぎ木・挿し木のマニュアル本は数あれど、このように基礎から応用まで体系だって書かれている本は貴重。10月の樹木医学研修でも教科書として使えそうである。

・アカエゾマツのデジタルロガーの整理。日平均気温と湿度をとりまとめたものがようやく作成できた。これをさらに月平均でまとめてみると、当然ながら標高が高い方が寒いことが分かる。

・会議終了後、Yさんとアオキ人工授粉論文の最終(?)打合せ。先日より、原稿の最終(?)ファイルが何度かやりとりされている。最終とか、最終2とか、最終finalとか、投稿版とか、投稿間近になると、色んなファイル名が付いていくのはおなじみの光景である。最後まで粘って、いい論文にしたいところだ。

・Springerからのメール。Uくんのウダイカンバ繁殖成功論文がOnLineで見られるようになったらしい。この論文もアクセプトまではなぜか苦労したわけだが、こうして形になるとやっぱり嬉しいものである。この論文は個体密度が繁殖成功に及ぼす影響を遺伝解析と生態調査の両方で評価したもので、今後の引用はしやすい論文になりそうである。

アカエゾ・プロジェクト

2008-09-08 | 研究ノート
・北海道での打合せで、急に盛り上がった科研のアカエゾ・プロジェクト。忘れないうちに、新しい4集団の針葉形態をSHAPEで解析。nefファイルを前のファイルにくっつけて、前山中央を除く9集団で解析をしてみると、対称成分では厚み成分がやはり85%を超える寄与度を持っている。こちらは前山の上と下の湿地を含めても見事に標高のクラインが検出できそう。SLAの方は下湿地が足を引っ張っていて、あまりきれいな関係がない。やはり、SHAPEの形態検出は強力である。

・後は、毎木データの入力と温湿度ロガーのデータ整理。ようやく一つのゴールが見えてきた感じがする。全データが揃うのが楽しみである。アカエゾ用のWEBページにデータをアップして共同研究者であるIくん、Kさんに連絡。Wikiページは便利である。