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健康を科学する!

豊橋創造大学大学院健康科学研究科生体機能学のつぶやき

人工心臓の臨床試験

2015-05-11 08:30:19 | 研究
いつもいつもよいニュースばかりではないですね。体内埋め込み型の人工心臓の移植患者が、手術から8か月後に死亡したことが明らかになったそうです(AFPBB NEWS)。死亡したのは、同国で手術を受けた2人目の患者だったそうです。匿名を希望したこの69歳の男性患者は昨年、仏バイオメディカル企業カルマの臨床試験で人工心臓の移植を受けたそうです。当時、男性は既に末期症状を発症していたそうです。カルマによると、男性患者は「循環虚脱」のために病院へと搬送。男性患者の人工心臓は正しく動作していなかったため、新たな人工心臓が移植されたが、男性は翌日、術後の合併症により死亡したというもの。人工心臓は、慢性心疾患の患者に対する一時的な処置として長年利用されてきましたが、カルマが目標として掲げているのは、移植待機中の何万人もの患者に長期的な解決策を提供することだそうです。カルマが開発した、患者の胸部に埋め込まれる内蔵型の人工心臓ユニットは、合成物質と動物性組織を併せて作られているそうで、本物の人間の心臓の形状と機能を再現することを目指しているそうです。血液凝固や患者の免疫システムによる拒絶反応が起きるリスクを減らすため、人工心臓の素材には柔らかい生体適合物質が使われているとも。電源はベルトで体に装着するリチウム電池を使用するそうです。人工心臓の最初の臨床試験では、術後2か月半で患者が死亡し、昨年3月2日に終了。このたび死亡が明らかになった臨床試験2例目の患者は、約1か月前に仏メディアとのインタビューで、サイクリングに出かけられるようになり「回復」したと話していたそうです。カルマによると、欧米では10万人近くが心臓移植を必要としているそうですが、移植に使用可能な心臓の提供数は約4000と少ないそうです。ちなみに、心臓病は世界の死因の第1位。現在の臨床試験では、患者4人を対象に実施される予定。3人目の患者は先週、同社の人工心臓を移植されたばかりだそうです。第1相臨床試験は、患者が術後1か月生存すれば成功とみなされるそうです。カルマはその後、患者20人を対象とする第2相臨床試験を実施する見通とのこと。

摘出した臓器を長期保存・蘇生する技術

2015-05-10 08:30:29 | 研究
ラットから摘出した臓器を長期保存し機能を蘇生する技術が開発されたそうです(財経新聞)。生体内の立体的な臓器が血液の循環によって恒常性が維持されていることに着目し、それを再現するような臓器の血管を介して培養液を灌流させる臓器灌流培養システムを開発。そして、ラットから摘出した肝臓を培養し、生体へ移植することによって、同システムが臓器移植治療に応用可能であるかどうかを検証。その結果、保存温度を22℃以下に設定することで、臓器障害を顕著に抑制し、細胞をあたかも「休眠」させたような状態にすることが明らかに。実際に、培養液に赤血球を添加したラット肝臓を22℃の培養温度で24時間保存し、その肝臓を他のラットへ移植したところ、生存率は100%だったそうです。

歯周病と関節リウマチ

2015-05-09 08:30:03 | 研究
約1万人の健常人を対象とした疫学調査、および京大病院リウマチセンターを未治療・未診断で受診した72名の関節痛患者の追跡調査によって、歯周病の罹患が関節リウマチの発症に影響を与える可能性があることが明らかになったそうです(財経新聞)。歯周病は、30歳以上の成人の約80%が罹患している慢性疾患で、口腔内のみならず、虚血性心疾患や脳卒中など全身の様々な疾患に影響を与えていることが知られているそうです。今回、滋賀県長浜市在住の約1万人の健常人を対象とした疫学調査のデータを分析。その結果、健常人の約1.7%は関節リウマチを発症していないにもかかわらず、関節リウマチ患者の約8割に見られる抗CCP抗体の産生があり、この抗体の有無や力価と歯周病の臨床評価の指数とが有意に相関していることが明らかに。さらに、京大病院リウマチセンターを未治療、未診断で受診した72名の関節痛患者の歯周病状態を評価したところ、初診時に歯周病をもつ関節痛患者は、歯周病を持たない患者と比較して、その後関節リウマチと診断されて抗リウマチ治療を開始するリスクが約2.7倍高くなることも明らかになったというものです。

記憶を思い出す

2015-05-08 08:30:51 | 研究
サルが記憶を思い出している際に、認知機能や記憶の中枢として知られる大脳の側頭葉で、高次領域から送られる信号によって低次領域の皮質層間にまたがる神経回路が活性化されることを明らかになったそうです(財経新聞)。大脳の側頭葉は、物体に関する記憶を司る領域で、側頭葉の皮質は層構造を持つ複数の領域から構成されていることが分かっているそうです。ですが、側頭葉の複数領域が記憶の記銘・想起時にどのようにして協調的に働いているのかは明らかになっていなかったそうです。今回、対となる言葉や図形を記憶し片方を見た際にもう片方を思い出す「対連合記憶課題」をサルに課し、物体の視覚性情報の記憶を想起する際のニューロンの活動を計測。その結果、手掛かり図形をヒントにサルが対となる図形を想起している際には、個々の36野のニューロンはTE野の深層もしくは浅層のいずれかと協調的に活動をしていること、そしてTE野深層の協調的な活動は浅層に皮質層間信号を伝播していることが分かったそうです。さらにA36‐TE野深層‐TE野浅層の順番で信号が伝わる経路は、サルが正しく視覚性情報の記憶を思い出した時のみに作動し、思い出しに失敗した時は作動しないことも明らかに。これらの結果から、霊長類の側頭葉で、記憶の想起を司る領域間、領域内の脳内信号の伝播原理が初めて明らかに。

放射線による損傷を感知して修復する仕組み

2015-05-07 08:30:54 | 研究
放射線の最も深刻な影響であるDNAの二本鎖切断が生じた近傍の転写(DNAの情報をRNAに読み取る過程)が止まる仕組みが解明されたそうです(財経新聞)。放射線が人間に与える影響として、DNAの二重鎖切断が最も深刻で、細胞死や発癌の原因になると考えられています。ほとんどの場合、DNA上の傷はそれを修復する蛋白質の働きによって細胞死や癌化から守られているそうですが、その詳しい機構の多くは分っていませんでした。今回の研究では、RNAポリメラーゼに結合して転写を活性化するENL蛋白質に、細胞内で転写を抑えるポリコームと呼ばれる蛋白質が結合していることを発見。そして、二重鎖切断が出来るとATMと呼ばれる蛋白質がまず現場にやって来て活性化され、ENLにリン酸化という修飾を施すこと、そしてENLにポリコームがくっつき、そのポリコームが近傍のDNAに結合するヒストンにユビキチン化という修飾を施すことにより、その場の転写を止めてしまうことが分かったそうです。この機構は、線路上の障害の存在を電車に知らせて運行を止め、修理屋を呼んで修理させ、又運行を開始する電車の運行システムに似ているそうです。共通点は、障害の現場で電車を止めるのではなく、それぞれの進行中の電車に障害の存在が伝えられ、その場所で停止するということで、このシステムによって高速道路の様な車同士の追突事故は生じず、修理が効率的に進められ、修理の終わった後での再開がスムーズになるそうです。今回発見したDNA修復の仕組みが、ヒト細胞が持つ細胞死を免れる高度な機構であり、細胞分化や細胞老化一般に重要な意義を持っていると考えられるそうです。

ヒト受精卵の遺伝子

2015-05-06 08:30:43 | 研究
ヒトの受精卵の遺伝子を編集したとする研究論文が、中国のチームによりProtein and Cellに発表されたそうです(AFPBB NEWS)。この未開拓の科学分野における突破口となる研究ですが、世界各国の科学者からは、物議を醸しているこうした研究の中止を求める声が、改めて上がっているそうです。論文では、不妊治療院から入手した受精卵のゲノムを改変する実験の詳細を記述しているそうです。使用された受精卵は、2つの精子を受精したことから染色体の数が通常の受精卵より1組多く、生児出産が不可能なものだったそうです。研究チームが行ったのは、死に至る可能性もある血液疾患「βサラセミア」の原因となる遺伝子を「CRISPR/Cas9」と呼ばれる遺伝子編集技術を使用して修正する実験とのこと。欠損しているDNAを置き換える分子を86個の受精卵に注入し、効果が表れるまで48時間待ったところ、生存したのは71個だったそうです。うち54個を検査した結果、28個で遺伝子の接合に成功し、そのうちのごく一部で代替遺伝子が含まれていたことが確認されたというもの。大きな懸念材料は、実験の過程で「驚くべき数の」意図していない遺伝子変異が生じたことにあるそうです。

リチウムイオン電池の異常過熱

2015-05-05 08:30:46 | 研究
異常過熱したリチウムイオン電池の内部を、高性能のX線画像化技術を用いて調査することに世界で初めて成功したとの研究報告がNature Communicationsに発表されたそうです(AFPBB NEWS)。研究の目的は、生活環境に広く浸透しているリチウムイオン電池の安全性向上だそうです。異常過熱は、電池の電気的または機械的な誤用や、大型電池パック内の隣接するセルに不具合が生じた場合などの外部熱源の存在に起因して発生する可能性があるそうです。

農薬依存症のハチ

2015-05-04 08:30:16 | 研究
人間がニコチン依存症になるように、ある種の殺虫剤にはハチに対する中毒作用があるとする研究が、英科学誌Natureに発表されたそうです(AFPBB NEWS)。ハチは殺虫剤を含む餌を敬遠するどころか、むしろ好む傾向があるそうです。ハナバチに対して中毒性の誘引作用を持つと指摘されたのは、ニコチンの化学構造を基に合成されたネオニコチノイド系殺虫剤だそうで、農薬として広く使われ、作物が成長する際に吸収されて害虫の神経系を攻撃するよう作られているそうです。この化合物には、ハチの脳に対して薬物と同じように作用する効果があるのではと考えられるそうです。

抗生物質耐性持つ遺伝子

2015-05-03 08:30:21 | 研究
南米ベネズエラのアマゾンで暮らす先住民ヤノマミは、これまで外界との接触がほとんどなかったにもかかわらず、抗生物質耐性を持つ遺伝子約30種を保持するとの研究結果が、米科学誌Science電子版に発表されたそうです(AFPBB NEWS)。ヤノマミの人々の存在は、2008年に初めて上空から確認され、2009年にベネズエラの医療チームが集落を訪れ、34人から肌や口内の粘膜、便などのサンプルを採取。そして体内や体表上に生息するバクテリアや菌類、ウイルスなどの細菌叢について調べたところ、ベネズエラやアフリカ・マラウイの先住民と比べ、ヤノマミの人々の細菌叢は、はるかに多様性に富んでいることが分かったそうです。また、米国人の対照群と比べると多様性は2倍だったとも。ヤノマミの人々の健康状態はおおむね良好だそうですが、これは体内の細菌叢が、これまで人間の集団で確認された中で最高水準の多様性を持つ微生物で構成されていることが影響していると考えられるそうです。ヤノマミの人々はTシャツや山刀、金属の缶を持っていることから、限定的に現代社会との接触があったとみられているそうですが、加工食品の摂取や抗生物質の服用、手の消毒、帝王切開による出産など、微生物を減少させてしまう現代生活の要素の多くに曝されていないそうです。ヤノマミの人々からは科学史上、発見されたことのない抗生物質耐性を持つ遺伝子30種近くが確認されたそうです。さらに、これらの遺伝子は最近開発されたばかりの合成抗菌剤の一部に対しても耐性を示したとも。なぜ?詳細は論文をお読みください。

世界の子どもの5人に1人が予防接種受けていない

2015-05-02 08:30:33 | 研究
先日、世界保健機関(World Health Organization、WHO)は、世界の子どもの5人に1人が、命を守るための定期的な予防接種を受けておらず、世界での予防接種を徹底する努力が「目標達成にはほど遠い」状況であると発表したそうです(AFPBB NEWS)。WHOによると、2013年にジフテリア、百日咳、破傷風の定期的な予防接種を受けられなかった幼児は2200万人近く。その多くは貧困国に住んでおり、うちほぼ半分がインド、パキスタン、ナイジェリアの3か国の子どもたちだったそうです。ワクチンで予防可能な疾患で死亡する人はいまだに毎年150万人に上るそうです。世界の予防接種率はここ数十年間に大幅に向上しており、1970年代半ばに一部の国でわずか5%だったのが、2013年には世界平均で84%に上昇。さらに129か国での予防接種率は90%を超えており、ワクチンによって毎年300万人の命が救われていると推定されているそうです。