くろがねの 秋の風鈴 鳴りにけり(飯田蛇笏の句)(半紙大)
「星の林に月の船」(声で楽しむ和歌・俳句)(大岡 信編)
という本を読んでいましたら、この句に出会いました。
今年の夏我が家では、風鈴を下げていませんでしたが、
この句を見てあわてて風鈴を取り出し掲げたことでした。
9月の下旬のことです。
すでに10月も中旬になり、涼しい秋風となっていますが、
リン・リン・リン・♪・と南部鉄独特の澄んだ音色が爽やかで心地よく、
この書も正にこの音を楽しみながら書きました。
俳句を半紙や色紙に書にするときは、3行書き4行書きなどが多いようですが、
この句では今回のような構図も又ありかな、と。
右1行はどっしりと、左上はリンリン、ヒラヒラ・・・の積りであります。
“かいかぶり”とのご批判を覚悟でいえば、
字形や濃淡、太細など書道的なものもさることながら、
全体としてその句らしい雰囲気をとの思いからです。
「星の林に月の船」なるタイトルは、
万葉集の「天の海に 雲の波立ち月の船 星の林に 漕ぎ隠る見ゆ」(柿本人麻呂)
からとのことです。
サブにありますように、声を出して心地よい歌や句は
リズムや抑揚や間(ま)などで書道と共通するところがあるようです。
これからもチャレンジしてみようと思っています。
成程左上から澄んだ風鈴の音が流れている感じがします。
真ん中の少し色がついた余白はそれぞれの想像に任せると言ったところでしょうか。
この歳になって未だ食い気に走る私は、軽いつまみでビールを飲んでいる状態を思い浮かべました。作品の品位を汚して済みません。
秋の色合い、南部鉄の風鈴、字のバランス、漢字ひらがなの配置などなど、
作品を目にしてふと思ったのですが、感性の部分は別にして、今どきのAIで作品の字や絵などの重心を計ってみることができれば真ん中に来る、と信じます。
絵と書の心と技を駆使した作品、これからも楽しみです。