MATTのひとりごと

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巨大工業団地ビルで作られるウクレレ(2015年1月15日、20日)

2015年01月20日 | ウクレレ製作者

こ数年で数十棟のコンドミニアム・ビルの建設が予定され、カポレイからの高速鉄道も乗り入れることで話題となっているカカアコ地区にはウクレレをはじめとした楽器メーカーも根を下ろし始めました。

その中心地のひとつ、カピオラニ通りとウォード通りの交差点のGoogle航空写真です。

もっとも目を引くのは大規模興行施設「ニール・ブレイズデール・センター(NBC)」です。

これに対して交差点の対角線方向の反対側にあるのが「カカアコ・コマース・センター」です。

近くに寄ってみると長さ130メーター、幅32メーターの6階建ての巨大なビルであることが分かります。

よくホノルル港に豪華客船の「プライド・オブ・アメリカ」が停泊していますが、これに匹敵する(すこしこちらのほうが小さいですが・・・)巨大なビルなのです。
ホノルルではあちこちのビルの壁面に壁画が描かれていますが、このビルの壁面にもこんな壁画が描かれていました。

一見すると米合衆国の地図のような水槽中を鯨か鯱のような生物が泳いでいる風景でしょう。
Googleによる空中写真ではこのように全貌が明らかになっています。

建物後ろ側にある円形のものはクルマで各階および屋上に行くためのランプ(斜めの通路)です。
それぞれの階にはランプ経由でクルマのまま入れます。

この建物には100を超える中小メーカーが稼動していて、それぞれの部屋の前までクルマでアクセスできるので材料の搬入から製品の出荷までが容易に行えるようです。

ビル後ろ側の駐車場入り口には

このようなサインが出ています。

すなわち「カカアコ通商センター」というのがこの建物の名前なのですが、住所がちょっと変わっています。
この建物に入居している各業者の住居表示は「875 Waimanu St.」なのですがこのサインでは「850 Kawaiahao St.」となっています。
こちらでは同じビルでも入り口が違うと住居表示も異なるので、上記のサインはあくまでも駐車場入り口のあるKawaiahao Street側の住居表示となっているわけです。

ところでこのKawaiahaoという名称に心当たりがあるかたも居られるでしょう。そうですハワイでもっとも古いKawaiahao Churchの裏手からスタートしているという由緒のある道路なのです。このKawaiahao Churchのすぐ上に示されているホノルル・ハレ(ホノルル市庁舎)のことを「ホノルル・ヘイル」と訳しているのはご愛嬌、と言ったところでしょう。ハワイ語は地図翻訳者泣かせかも・・・・


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このビルの一階に「Imua Ukulele」が入っています。

この会社は2012年に誕生した、まだ新しいウクレレ・メーカーです。
親会社のウィンクラー・ウッド社の中に工房があり、一階が製材、二階がウクレレ製造に充てられています。
したがって実際の入り口はウィンラー・ウッド社と共通になっています。

社長のジョーマ・ウィンクラー氏の名刺です。なんとまぁたくさんの会社を持っていることでしょう。彼は

家業であったコア木材の販売から手を広げ、一時「ビッグ・アイランド・ウクレレ」

という「ハワイ製」を連想させるウクレレを東南アジアで製造していましたが、T's(セイレン)の高橋さんの設計になる「本当のハワイ製」のウクレレを作るべく2012年に高橋さんとの共同経営になる「イムア・ウクレレ社」を創設し、現在に至っています。
常駐のルーシアー(専門職人)として当時カニレアに在籍していたmacさんを招聘し、普段はmacさんの指導のもとでの製造を進めています。
左がmacさん、右が社長のウィンクラー氏です。

今回訪問した1月15日はちょうど翌週に控えたNAMM(National Association of Music Merchants:全米楽器商協会)のショーに出品すべくスペシャル・モデルの最終仕上げ中でした。

左はそのときの写真、右は翌日macさんがFBにアップしたもので、高級モデルがいろいろと準備されていました。
そしてこれらのウクレレには新しいロゴも埋め込まれていました。今後はこれかこれの改良デザインで行くようですね。

工房には数名が作業していて



脇には仕掛りのトップボードが集められていました。

一階の木材加工部門の写真です。



ウィンクラー氏が不思議なものを手にしていました。なんでもソリッド・ウクレレのボディーとのこと。
次の製品なのでしょうね。

最近はOEM(他社ブランド製品)の注文もあるようですので、これだけの広さでその要求に答えられるかが不明です。でももちろん経営者はそのあたりも十分考えているでしょうから余計なお世話ですが・・・・

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このあと、同じビルの3階にある「Iseman Guitars」を訪問する予定だったのですが、連絡不徹底で実現できず、翌週に訪問することとなりました。

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Iseman Guitarsはナショナル・レゾ・フォニック社とカニレアで経験を積んだMark Isemanがバンド仲間のMatthew Nigroに声を掛けてこれまた2012年に共同経営で発足した通称「ワイゼンボーン形ハワイアン・ギター」とをコア材で作り上げることを目的とした会社ですが、半年ほど前からテナー・ウクレレも手がけるようになり、ぷあぷあでもイムア同様その製品を扱っています。

ここで、オウナーのひとりMarkが修行したNational Reso-Phonic社について触れてみたいと思います。

現在のような電気楽器が当たり前に使われている時代と異なり、1920年代はギターの音量がほかの管楽器に比べて圧倒的に低かったため、ギターの音量増大を目指した研究が盛んに行われました。
そして1925年にドピエラ兄弟によって「レゾネーター・ギター」が開発され、「ナショナル弦楽器社」から世に出たのですが、三つ(または一つ)の振動版を内蔵し、ブリッジからの弦の振動を拡大することで管楽器にも対抗できる音量のギターが実現しました。
ドピエラ兄弟は1928年に自分たちの会社Dobroすなわちドピエラ兄弟社を設立し、彼らの製品もドブロと名づけたため、実際にはナショナル社のリゾネーター・ギターでも「ドブロ」と呼ばれるようになったのです。

ナショナル社はその後1942年に倒産し、しばらくはドブロ社の製品だけが世の中に出回っていたのですが、1988年にドブロ社の技術者がNational Reso-Phonic社を創立、ナショナル・ブランドを再興し現在に至っています。
一方ドブロ社はギブソンが商標権を保有していますが実際の製品は作っていないようです。
写真左がドブロ製品のひとつ、右がナショナル製品のひとつです。

そしてMarkはこのNational Reso-Phonic社で腕を磨いたわけです。
なお、相棒のMatthewはそれまで未経験だったのでMarkからすべてを教わったとのことでした。

彼らのサイトの写真で左がMark、右がMatthewです。

彼らの名刺には住所が記載されていませんね。

工房内部の写真です。左上に掛かっているウクレレはMarkがカニレア時代につくったウクレレのようです。



ワイゼンボーンの製作中です。

Style-1ワイゼンボーンを手にするMathew

こちらは完成間近のStyle-3ワイゼンボーンです。


ところで肝心のウクレレですが、着手したきっかけはカスタマーから「ウクレレもできるだろう」という問い合わせがいくつかあったので半年前に着手したとのこと。
これがStyle-3のテナー

そして未完成のStyle-2(右)とStyle-1(左)のテナーです。


イムアとアイスマンいずれも創立が2012年、中心人物がいずれもカニレア出身、そして同じ工業団地ビルで製作しているというのは面白いですね。

ちなみにここでのコア材は一階のウィンクラー社から買っているの?と訊いたところ「トンデモナイ」という顔で否定しました。何かがあったのかも。

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実はここカカアコにはもう一社ウクレレやパーカッション楽器を製造している「Ho`okani Music社」がありましたが、訪問してみたところ「今年からカリヒに移転したよ!」とのことでした。

ここは木製のボンゴやコンガ、そして上の写真のような折りたたみ式ウクレレ「Pahulele」などを出していたので是非ショールームを訪問したかったのですがダメでした。

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その代わり?でもないでしょうが「Aloha Street誌15年1月/2月号」によるとカカアコに大手の「KoAloha」が移転して来るそうです。

この記事では移転済のように読み取れますが


コアロハのフェイスブックではは移転準備が遅れていて3月から4月になると紹介されています。

カカアコ地区に広がるウクレレ工房の位置関係です。

いずれにしてもこの地図の中にウクレレ工房が増えるのを楽しみにしています。ただ、従来はB級品(一部に傷や塗装ムラ等があるもの)だけしか工房では販売していなかったのですが今後はA級品すなわちしっかりとした製品まで販売するようなので、ぷあぷあだけでなくすべてのウクレレ販売店に対して脅威となりそうです。そして、もしこの流れがカマカやカニレア、コオラウ等の地元大手メーカーまで波及するとハワイのウクレレ販売店はすべて存立不可能となるでしょう。そうならないとしてもせいぜい輸入のウクレレを販売する小規模な店に転落するのではないでしょうか。

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この地域をブラブラと歩いてみたところ、こんなカラオケ屋さんや

「FUTONS」と表示のある店もありました。「フュートンズ」ではなく「フトン」だということが分かるのにちょっと時間が掛かりました、

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6 コメント

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KoAloha (mac)
2015-01-23 14:22:22
最新号のアロハストリートに新しいコアロハ移転先が載ってました。アラモアナのスグ近くで、居酒屋「大漁」の裏手のようです。補足までに。
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ウクレレ工房 (Tommy)
2015-01-23 18:44:00
こんにちはTILのTommyです。昨年コアロハさんに見学に寄せてもらったときパパが内緒話で移転云々とおっしゃってましたが、いよいよですね。地図で見る限り都心寄りでアラモアナショッピングセンターにほど近い場所のようですかね。RGHからも5、6kmですか。同じビルに同業者が入っているってことは。さしずめ日本では工業団地ってとこですかね。ワーカーの移動も激しいアメリカ、各社のノウハウ保持は大丈夫なんでしょうか?いずれにしろ場所が集中し短時間に取材できればこの上ないことですね。個人では可能なのでしょうか?
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macさん (MATT)
2015-01-24 09:26:49
アロハストリート1月/2月号を読みました。

たしかに新しい住所と地図の上にマークまでされていますね。

もともと1月に移転する予定だったので原稿を出したのでしょうけど、この記事を読んだ人が出かけていってもまだ準備ができていないので戸惑ってしまうでしょう。

まごまごすると次の3月/4月号でも間に合わないことが十分に考えられます。

いずれにしてもすでに住所まで公開されているのでしたら私も遠慮せずに公開することに致します。

情報感謝です!
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Tommyさん (MATT)
2015-01-24 13:12:05
コアロハ・パパの「内緒話」は皆さんが知っています(笑)
当初の予定では2015年初頭からの移転だったのですがちょっと遅れていて(なにしろハワイですから・・・笑)3月か4月の移転だそうです。(今のところ・・・・)
今度はアラモアナ・センターに行ったついでに立ち寄れるので大変便利な場所ですね。
イムアも事前連絡しておけば見学ができると思いますがアイスマンは常に動いているわけではないので見学はムリかもしれません。
それよりもイムアのmacさんの個人工房「ホヌア」の見学を予約されてはいかがでしょう。クロさんも行かれると思いますよ!
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ナント劇的な動きが・・ (ウクレレオヂサン)
2015-01-28 22:17:25
今正に・・・っと言うのか・・?
何だかウクレレ工房を初めとしてハワイのコア的な部分での改革が始まっているように感じます。
しかし・・そこに・・ハワイ時間が影響しているって・・嬉しいやら戸惑うやら・・・って感じですね。
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ウクレレオヂサン (MATT)
2015-01-29 02:00:48
ここカカアコ地区で大規模の開発がおこなわれているのもニュースですが、高速鉄道の建設が進んでいることも大きな話題です。
しかも建設費がどんどん高騰しているので果たして無事に開通するかの見通しも立っていないようで・・・・
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