MATTのひとりごと

ご覧いただいた際に何か一言でもコメントを残していただけると励みになりますのでよろしくお願い致します!!

スチール弦

2011年04月23日 | 

大学では通信専攻でしたので、よく対数を利用した計算を行いました。
このときの道具は「計算尺」でして有効数3桁の計算は(ほとんど)瞬時にできるようになっていました。
それ以上の精度を要する計算は「5桁の対数表」もしくは「7桁の対数表」と呼ばれる数字ばかりが羅列されている小冊子を首っ引きで計算したものです。
当時、私の知ってる工業高校では計算尺3級以上を卒業までに取得するように指導されていたようですが、私の通っていた大学ではそのような要求はありませんでした。ただ、スラスラと計算尺を駆使できるようになったので検定試験を受けてみることにし、まず3級に挑戦したのです。
試験会場では高校生に囲まれて受験し、無事合格したので続いて2級、1級と受験したところ2級は合格したのですが何度挑戦しても1級はだめだったため1級はあきらめたという経緯があります。

趣味の分野では、当時人気があったアマチュア無線技師の資格にも挑戦いたしました。電話級、電信級とすすみ、2級アマチュア無線技師、いわゆる2アマは無事合格、和文、英文のモールスもスイスイとうてるようになりました・・・・・が、やはり1アマは2度挑戦して不合格でした。

会社に入ってから、自分の書いた文字が自分でも読めないほどの悪筆だったため、周囲が関心を示していなかった「和文ワープロ専用機」を購入してキレイな文字の文章を書くだけでなく「外字登録」機能を最大限いかして五線譜やハワイ語フォントまで作り上げました。
そしてまたまた悪いクセが出て和文ワープロの検定試験に挑戦、これまた2級どまりとなりました。

会社では「希望者のみ」ではありましたが「実用英語検定」を受検することを推奨されていたので何度か挑戦しましたが、これもおなじく2級どまりでした。その後会社内で実施される試験は「TOEIC」に切り替わりそれの最高得点が830点でしたが、「ヒアリングが1級、ライティングが3級で総合2級」という判定でここでもしっかりと!2級を維持?いたしました。

まもなく(たぶん)私の人生も終幕となるいま、自分の人生はつくづく「2級ばかりのB級人生」だったなぁ、と振り返っております。しかも、アマチュア無線はともかく、現代の人たちがまったくご存じない「計算尺」や「ワープロ専用機」という無用の存在の資格を持っていても何の役にも立ちません。無線の世界でも電話はともかく電信すなわちモールス信号による通信はいまやプロの世界からは消え去り細々とアマの世界だけに生きている「遺物」です。

エレクトーン教師の資格にも「40の手習い」で挑戦したのですが、2級はおろか遥かに下で、やっとヤマハ公認の教師として活動できる「指導5級」どまりというありさまなので、これだけをとると「C級人生」かも。あ、ちなみにウクレレに至っては「無資格」で6年間も音楽学校の講師を続けていました。言ってみれば「無免許運転」状態といったところ。でもエレクトーンと違い公的検定機関が存在しないのでやむをえないかも。

一時期NUAでは渡辺直則さんを中心に「公認指導員制度」を検討したことがありました。
ところが当時の有力な理事さんが「ウクレレが一応弾ければ誰でも公認指導員になれるんですよ!」と言って歩いたこともあって折角のシステムが霧散してしまいました。当時渡辺さんが考えておられたような検定試験が実行されていれば日本で最初の指導員制度が確立したと考えると大変残念です。

・・・・などと過去を振り返ってばかりでは進歩がないのでスチール・ギター弦のゲージについてのメモを残しておきます。

会社に入った頃は本社には大型の電子計算機が導入されていて「フォートラン」という電子計算機用語の勉強が義務付けられましたが、職場ではあいかわらず「計算尺」とタイガー計算機という機械式計算機(これまた誰も知らないでしょう)が中心でした。その後数字表示放電管がまぶしく光っている「可搬形」(台車にしっかりと載っていました)の計算機が職場全体に1台だけ導入され「予約台帳」に記入して使ったものです。
一方わずか12,800円という当時としては画期的な低価格の「答え一発」カシオミニが発売されて以来「電卓」の世界も急激にコストが下がってきましたが、科学計算用電卓はHPのモデル45がたしか15万円だったかというとんでもない価格で、その後のモデルでも数万円はしていました。

・・・・また現代に戻ってスチールギターのゲージ計算にあたって最新型の科学計算用電卓を用意しました。・・・・というとモノモノしいのですが何のことはないケータイ電話のiPhoneに内蔵されている「電卓機能」をつかうだけなのです。でもこの機能は大変スグレモノで16桁にも及ぶ計算ができ、音楽の「十二平均率」計算に必要な「2の12乗根」が少数以下15桁も得られ

しかもそれを12乗すると(当然のことですが)2になります。(最後の桁はかならず存在する計算誤差ですので問題ありません)

ご存じのように現代の楽器はそのほとんどが「十二平均率」に基づいて構成されています。とりわけフレットの付いた弦楽器はそれでないと成り立たない楽器といえましょう。
スチールギターには物理的に弦の振動を決定するフレットは存在しませんが、「目印」としてのフレットがあり、トーンバーをその上空に置くことで弦の振動をとめる働きをする立派な「フレット付きの楽器」です。

じつはこちらにもよくコメントをいただくBoo!さんの主宰するスチールギターのブログに「メーカー指定の弦を張ったが弦ごとにテンションが違うので弾きにくい」というコメントがあったのがきっかけでそのメーカーの弦のゲージを確認したところ明らかにテンションがばらつくようなゲージ選定になっていましたので、だれでも簡単に判断できるような「ゲージの比率表」をそのコメント欄に書き込んでご紹介いたしました。

一般に弦の振動数は同一材質の弦で弦長が等しく、しかも張力が等しい場合は弦の直径に反比例いたします。すなわち弦のゲージが2倍になると振動数が半分すなわちちょうど1オクターブ低くなるのです。
1オクターブは12の半音で構成されたいますので相隣る2つの半音の振動数の比率は上記の「2の12乗根」すなわち1.0594639...となりこれを12回繰り返すことで1オクターブ上すなわち2.000...(2倍)という比率になります。
一方、弦の振動数と弦長が等しく同一材質の場合、テンションは弦の直径の2乗に比例します。すなわち弦のゲージがわずか20%増しただけでテンションは44%も増大するのですが、今回の問題点はメーカー指定のゲージが不適当だったためでしょう。
ちなみにこの指定ゲージの弦を張った場合のテンションはE弦に正規の弦を張った場合を基準にすると
E: 100%
C:  81%
A:  84%
E: 100%
C: 132%
A: 127%
と、本来ですといずれも100%に近くなる必要があるにもかかわらずこの指定の構成では高音側のC弦とA弦が20%近く低く、逆に低音側のC弦とA弦は30%程度高いという結果になりました。
どういう根拠でこの構成を指定したのかは不明ですが、面白いことに同じメーカーの8弦C6調弦(高音側のC弦とA弦は相変わらずですが・・・)や10弦ペダル用C6そしてE13用の弦はいずれもほぼ適正な構成になっているのでなおさら不可解な指定といえます。

もともと楽音は調和(ハーモナイズ)する音が基準になっていました。アカペラによるコーラスは12平均率を離れてこの「調和」を前提に歌われているため大変美しいハーモニーを味わうことができます。簡単に言うとお互いに完全5度の関係にある2音の振動数の比は2:3です。この簡単な整数比のおかげで美しいハーモニーが生まれるのですが、問題はこの2:3すなわち1.5倍の音を次々に繰り返すことで12回後にはふたたびもとの音名(の7オクターブ上ですが)に戻るはずなのですが戻らないのです。たとえばCを出発点にすると1.5倍がG、それの1.5倍が1オクターブ上のD、その1.5倍がA・・・・という具合にさらに1オクターブ高いE、B、そしてもう1オクターブ上のF#(G♭)、もう1オクターブ上のC#(D♭)、G#(A♭)、さらに1オクターブ上のD#(E♭)、A#(B♭)、F、そして最後に最初のCから7オクターブ上のCへと一回りするわけです。
7オクターブ上ということはもとの音の振動数の128倍になっていなければいけないのですが、実際にはそれをオーバーして129.7倍にもなりC音からはズレてしまいます。ちなみに1.5の12乗を計算した結果がこのようになります。

1.5倍を12回繰り返すことで段々とピッチ(音高)が上がっていく状態を螺旋でたとえることにして、それを上から眺めると12の音名が刻まれた円周をぐるぐる回転しているように見える(とおもってください!)のですが、その円周上を12回まわればもとの音名のところに到達するはずのところ上記のように128倍になるべき数字が129.7倍にもなってしまいます。
螺旋状の動きからのズレはひらがなの「の」の字のようにも見えますが、西洋では「,カンマ記号)」の形状に似ているので「カンマ」と呼びます。このズレをセントすなわち隣り合う半音の振動数の比を100分比であらわすと22セントになりますので、もとの音名に無事に(!)戻れるようにこの22セントを約-2セントずつ12音に割り振ってやることにより、先ほどの1.5倍は1.498倍となります。

念のためこれを12乗するとめでたく128倍となります。(最後の桁は計算誤差ですので無視できます)

これが十二平均率の登場した背景で、その結果2の12乗根である1.059が重要な数字となったわけです。そして1.059...を7乗すれば上記の1.4983...が得られる計算になります。

それではスチール弦のゲージの比を簡単な数字でご紹介いたします。楽器の弦長やお好みのテンションもそれぞれ異なるでしょうから、あくまでも高音のE弦を基準値すなわち「1.00」とした場合の比で表します。
もちろんこの結果得られたゲージに合う弦が入手できないこともあるでしょうがそのゲージ前後5%程度の範囲で入手できれば十分ではないでしょうか。
G#: 0.79
G  : 0.84
F#: 0.89
F  : 0.94
E  : 1.00
D#: 1.06
D  : 1.12
C#: 1.18
C  : 1.26
B  : 1.33
A#: 1.41
A  : 1.50
G#: 1.59
G  : 1.68
F#: 1.78
F  : 1.89
E  : 2.00
D#: 2.12
D  : 2.24
C#: 2.38
C  : 2.52
B  : 2.67
A#: 2.83
A  : 3.00
G#: 3.17
G  : 3.36
F  : 3.77
C  : 5.04

トップ写真の二つの弦セットはいずれも販売店がGHSに特注した製品ですが、左のエルダリーがE:015, C:017, A:022, G:026, E:030, C:036で、右のアキオ楽器の特注品はE:015, C:018, A:022, G:026, E:032, C:038といずれもほぼ計算値に近い値を選定しています。
両者の間にある測定器はゲージを測るためのデジタル・マイクロメーターでインチ系とメートル系の切り替えもできるすばらしい器械です。

なお、弦のゲージの表示として上記のように015とか022という数字が示されています。これをBoo!さんのように「15番」とか22番」と呼ぶかたもおられますが、これは「番号」ではなくゲージそのものをインチ系の単位で表示したもので、015は1000分の15インチ、022は1000分の22インチを示しています。
場合によってはインチ単位でそれぞれ .015とか .022と表示する場合もあります。
またゲージの最後にPとかWという文字が付く場合があります。Wというのは「巻き弦(Wound String)」をあらわし、Pは「ムク弦(Plain String)」を示すのですが、普通ムク弦ではPとは表示せず、わずかに巻き弦との境目にある弦だけにたとえば026Pのように表示しています。
世界中がメートル法を採用するように決められているのに米国(と英国)だけはインチを含むヤードポンド系が跋扈していて、弦のゲージにも堂々と使われています。さすがに最近はメートル法にもとづく数値も小さく併記されるようにはなりましたが・・・

1000分の1インチのことを「Mil(ミル)」と表すこともあります。たとえばプラスチック・シートの厚さなどはいまだにこの単位で表示されています。

コメント (8)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« おさらい会の記事(ハワイア... | トップ | ハレクラニ »

8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
HEMMI・・・ (shu-san)
2011-04-27 18:06:57
MATTさん
しばし忘れていました計算尺という言葉。
まっこと懐かしいです。
自分は測量の関係から計算尺を知りました。
自分で長さ30センチくらいの「Hemmi社製」の計算尺を買いましたが、MATTさんのように資格を取る資格はなかったようです。

返信する
ヘンミ計算尺の (MATT)
2011-04-28 10:07:40
膨大な製品の歴史が下記のサイトに載っていますが
http://hemmicat.srtco.us/
最終時期は今から40年前の1971年ごろのようですね。
お互いに、もとい!、私も歳をとったものです!
返信する
今では・・・・ (こあ)
2011-05-04 11:28:28
計算尺、高校生時代に使ったものが多分実家にあると思います。でも、もう使い方すら忘れました。

大学ではフォートラン、やりましたね。役に立ったのは卒論の計算だけ。会社に入って間もなくパーソナルコンピュータなるものが出現して、ベーシックとかいうものに言うものに御世話になりました。

でも、今ではそんなものも使わずに四則演算だけでエンジニアしています。

・・・・・それじゃダメじゃん。。。。
返信する
こあさん (MATT)
2011-05-04 17:01:18
タイガー計算機というのもよくできた「機械」でした。・・・ってこあさんの世代では見たこともないでしょうけど・・・
クルマのラリーではどのクルマにもこの「機械」を載せ、ナビゲーターが必死にガチャガチャとハンドルを回転させていましたっけ。
返信する
タイガー (こあ)
2011-05-05 15:06:11
なんと、それ知っています。
大学で見た気がしますが、、、、

大きな真空管の計算機も・・・・・
返信する
当時友人は (MATT)
2011-05-05 16:12:46
大変高価な「電卓」をクルマに持ち込んだのですが、キー操作に慣れずデータが消えてしまうので苦労していましたっけ。
返信する
タイガー計算機とフライデン (魔球)
2011-06-04 23:17:40
MATTさん、ご無沙汰しております。

タイガー計算機、知っていますよ~。
計算が終わると、チンチン♪鳴るヤツでしょう?

私の母がOLだった頃、タイガーは職場で奪い合い
だったそうです。(まだ算盤が全盛でした)

私の父は銀行員でしたが、決算期には
「フライデン」という電動式の計算機を
使っていたそうです。
返信する
魔球さん (MATT)
2011-06-06 01:25:10
そうなんです、グルグルと回転させてはチン!という機械です。
あれは各桁ごとの加算操作を繰り返すことで乗算ができるという計算の原理を忠実に実現したものですね。
ソロバンも同じ原理で、もっと身近な道具ですがある程度の習熟が必要です。これに対しタイガーは全くの初心者でも操作方法さえ教わればすぐに複雑な四則計算ができるという特徴がありました。
でも電卓の出現でソロバンのほうは「伝統技能?」としてかろうじて生き延びていますがタイガーは完全に消滅しましたね。
返信する

コメントを投稿