本家ヤースケ伝

年取ってから困ること、考えること、興味を惹かれること・・の総集編だろうか。

飛田東映でフラトラを聴いた♪

2008-12-17 16:45:46 | 



1.男はつらいよ第15作『寅次郎相合い傘』(1975年8月)

 マドンナはリリーこと浅丘ルリ子であるが、導入部の主役は船越英二演じる某家出中年である。寿司屋の旦那と別離したリリーが寅と逢いたくなって二年ぶりにとらやを訪れるが寅は不在で、北へ向かった彼女は夜の函館港『北海ラーメン』の屋台で偶然寅と再会を果たす。
 東京の裕福な家庭を「蒸発」し寅と旅先で知合った「パパさん」こと兵藤(船越英二)は、途中屋台で合流したリリーともども三人で貧乏旅行を続け、小樽では30年前に別れた初恋の人・信子(岩崎加根子)の経営する喫茶店に一人で会いに行くが、不意に「今の自分には彼女に何もしてあげられない」という強烈な無力感に襲われてすぐ引き返してしまう。ここが前半の山場である。
 寅とパパさんとのこの「反省会」がリリーには気に食わない。「女に何かしてあげられるなどと思うのは『男の甘え』『男の思い上がり』で、自分は『女の幸せは男次第』だなんて考えたことは一度もない」と俄然断然ウーマンリヴみたいなことを言い出して挙句は「そんな甘っちょろいことばかり言っているからあんたは(つまり寅は)いつも女に振られるんだ」と寅に噛付く。これに寅が「可愛げのない女だ。てめえこそ寿司屋の旦那と別れたなんてかっこいいこと言ってるが本当は捨てられたんだろう!」とやり返したものだからリリーは激怒し三人旅はここで空中分解してしまう。この辺の件は山田監督にしてはよく出来ていて感心させられた。(笑)
 この「三人旅」を通して、車中の移動の様子や駅舎での野宿が明けた朝の様子、更には寅とリリーがサクラになって繰り広げた「倒産バイ」の様子など、いずれも実に楽しげで雰囲気が良く出ていて見応えがあった。『三人旅』という他愛もない落語が江戸にも上方にもあるが、「三人いれば社会」である以上、旅は確かに三人連れがいいのかも知れないと私も思った。w

 テキヤの『倒産バイ』だが、映画を見ていない人のためにどういうものか説明しておくと、まず粗悪品の万年筆を『火事に焼け出された』からと偽ってわざと真っ黒の重油で油塗れにして置いて路傍に並べ、これを「汚れてはいるが会社が倒産して退職金代わりに貰った高級品だ。生活が成り立たないからどうか買ってやって下さい」とやるわけで、私は幼少の頃実際町で何回かこれを見掛けたことがある。バイ人が油をウェスで拭取ると、あれあれ本当にピッカピカになるところが凄かったのである。
 いつも言うように寅は現実には存在し得ない「架空のテキヤ」だからいつどこへ行っても好きなバイ(商売)が出来るわけで、今回もどうしていきなりそんな商売が可能になったのか、そういう面倒な説明は一切省略されている。

*この第15作が名作と言われる理由の一つに1.『メロン騒動』と2.『雨の柴又駅』のエピソードがあるが、前者の挿話はちまちま惨めったらしくて私はあんまり好きじゃない。確かに昔はメロンは高級品だったんだけど、騒動の果て最後につねのおばちゃんが「メロンなんて貰わなければ良かった」と泣くところなど話が出来過ぎていていささか鼻に付くのである。
 2.のシリーズのタイトルにもなっている寅とリリーの『相合い傘』のシーンは努めて軽く描写されていてこちらは好感が持てた。

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2。実録・安藤昇アウトロー侠道伝『烈火』(2002年東映)

 私はこの手の映画は好きじゃないのであんまり見ないで帰ってしまうことも多いのだがヤクザ映画一般が嫌いというわけではなく、これは監督や役者さんにもよるのである。今回の監督は三池崇史でこの人のギャングものは私は嫌いではない。出演は:竹内力、遠藤憲一、美木良介、千葉真一、内田裕也、丹波哲郎、山口祥行、石橋蓮司・・となっていてヤクザ映画常連の男優ばかりが紹介されていたが、韓国人役の若い女優二人も可愛かった。

 それより私が入場した際上映されていたこの映画のクライマックス・シーンで今は懐かしい『フラ・トラ』の『SATORI』が(再結成後の演奏なので現代風にアレンジされていたが)使われていたのが嬉しかった。あとでわかったが「あーあーあー♪」と歌うだけの曲(←こっちの曲名は知らない。最後に「カ・ミ・カ・ゼ吹いたぁ~っ」と歌うんだったかな。だったら『カミカゼ』かも?)も冒頭で使われていた。
 昔ジョー山中や内田裕也らの『フラ・トラ』即ち『フラワー・トラベリング・バンド』という個性的な音を出すロックバンドが一部ファンの間でブイブイ言わしていたのである。彼らは日本国内でよりもまず欧米公演で先行して人気を博していた。私はこのバンドの詳しいことは何も知らなかったが、私が二十代の頃は某喫茶店のジュークボックスに彼らのレコードが1枚入っていてしばしば鳴らされていたからよく聞いていたのである。昔の音源は今ツタヤに置いてあるのだろうか、今度訊いてみよう。w

実録・安藤昇侠道<アウトロー>伝 烈火 - goo 映画実録・安藤昇侠道<アウトロー>伝 烈火 - goo 映画




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3.『風の武士』(1964年)

司馬遼太郎の同名小説の映画化で、主演大川橋蔵、監督加藤泰という豪華キャストの忍者もの映画である。
 熊野に『安羅井の里(やすらいのさと)』と呼ばれる秘境があって、そこでは平家落ち武者の子孫が代々砂金を掘り続けていたが、そこへ入るには「にぶつ姫縁起」という絵巻物の道中地図がなければ何人も到達出来ない。
 この秘境の存在をかぎつけた紀州藩が狙うのが絵図と疫病を避けて里から江戸へ密かに避難させられていた里長の姫君であるが、これに老中水野和泉守の密命を受け姫と恋愛関係に陥る忍者・名張(大川橋蔵)や里から派遣されながら裏切って私欲に走る高力、大坂の豪商などが絡んで死闘を繰り広げるわけである。

キャスト:大川橋蔵 オオカワハシゾウ(名張信蔵)・・最初は『若様侍』風に遊び人の次男坊として登場するが実はご公儀お庭番である。
久保菜穂子 クボナオコ(お勢以)・・名張の恋人というか二股をかけている飲み屋のねえちゃん。よく面倒を見てくれる。
桜町弘子 サクラマチヒロコ(ちの)・・表向き町の剣術道場の娘ということになっているが、実はいずれは『安羅井の里』の里長(さとおさ)の地位を引き継ぐ宿命の姫君で、序盤は名張と『一の酉』へ出掛ける町娘、中盤からは里の危機を知ってお姫様の装束で紀州藩と共に西へ向かうのである。ぁそ。
中原早苗 ナカハラサナエ(お弓)・・『猫』の情婦というか手下の者で名張の見張り役として張り付けられるがすぐ名張に惚れてしまう。あちゃ。
大木実 オオキミノル(高力伝次郎)・・こいつが悪い奴で、道場主を殺し、姫を手籠にしようとしたりで、モー大変。最後まで名張と対峙する仇役である。
南原宏治 ナンバラコウジ(猫)・・よくわからないんだけど、彼もご公儀お庭番かな。名張を支えるんだか顎で使うんだがよくわからない。大坂奉行にもあれこれ指図出来る影の実力者なんだけど、それにしてはいつも単独行動で部下はお弓しかいない。最後はそのお弓に致命傷を負わされる。
北村和夫 キタムラカズオ(名張与六)・・名張のお兄さん。ちょい役。
野際陽子 ノギワヨウコ(律)・・この人が兄嫁で居候の弟の面倒を見ている。
宮口精二 ミヤグチセイジ(平間退耕斉)・・町道場の師範で姫の守護役だったが紀州藩の闇討ちを受け、最後まで信頼していた高力に殺される。あちゃ。この裏切りの真相は最後の最後まで明らかにされない。
進藤英太郎 シンドウエイタロウ(紀州屋徳兵衛)・・紀州藩の大坂窓口の豪商である。お馴染みの悪役ぶりだったが戦略の違いで高力と不和になって殺されてしまうので出番は短かった。ぁそ。
西村晃 ニシムラコウ(水野和泉守)・・ここも最初名張に密命を与えるだけ。

 というわけで、脚本が悪いのか原作が悪いのか知らないが、話が散漫でやたらごちゃごちゃバタバタするだけという印象で、ストーリー展開が恋愛もの仕立てだったりしてそれなりに楽しかったが、作品としての完成度は低い。
 goo映画では珍しく95点という高い評価が付いていたがこれは見解の相違というもので私だったらせいぜい65~70点くらいしか上げられない。ただ監督が加藤泰だから、時折ギョッとするような映像美のカット割が差し挟まれる。やあ、映画って本当にいいですねってか?w

風の武士(1964) - goo 映画風の武士(1964) - goo 映画

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