小沢公判に関わる田代検事の取調べに必須能力の合理的判断性の欠如という職業的逆説性

2011-12-16 10:34:54 | Weblog

 昨日(2011年12月15日)小沢第9回公判が東京地裁で開催。東京地検特捜部検事として元秘書の衆院議員、石川知裕被告(38)=1審有罪、控訴中=を取り調べた田代政弘検事(44)が証人出廷。

 証人出廷は田代検事の石川議員に対する政治資金規正法違反(虚偽記載)の取調べとその供述調書の信用性と任意性を問うためであった。

 石川議員を含む小沢氏秘書3人の公判で証拠の一部がその信用性と任意性を疑われて証拠不採用となったことと、田代検事が小沢公判前に石川議員を任意再聴取した際、石川議員が隠し録音した内容が取調べとそ供述調書の信用性と任意性を一層疑わせる根拠となったといった経緯下の証人出廷である。

 以下、《【小沢被告第9回公判(3)】「特捜部は恐ろしい組織」発言 石川議員に「うんうん相づち打っただけ」》MSN産経/2011.12.15 12:48)を参考に考えを進めていく。
 
 他の社は田代検事と実名を挙げているが、この記事は、〈○○検事(法廷では実名)〉と匿名を用いている。

 ここでは実名を用い、その合理的判断性の欠如のみを取り上げてみる。公判の詳しい内容を知りたい方はリンクを付けておいたから、記事を参照されたい。

 指定弁護士「このような(威迫的な)発言をする状況でしたか」

 田代検事「いいえ。そもそも石川議員の供述は内容自体が不合理で、有効性が期待できませんでした。それに、政権与党の幹事長に関する捜査で、取り調べは慎重に慎重を期していました。任意の取り調べでは録音される危険もあるし、『足下をすくわれることを言うな』と、上司から口酸っぱく言われていました。

 石川議員には当然弁護士もついているので、不合理な言辞は使えません。弁護士を通じて抗議を受ければ、取り調べしづらくなります」

 指定弁護士「聴取後に本人や弁護士から、威迫があったと抗議を受けましたか」

 証人「私自身受けていませんし、(上司の)主任検事からも抗議があったとは聞いていません」

 《ここで、指定弁護士は石川議員が昨年5月の任意の再聴取で、証人の検事とのやり取りをひそかに録音した「隠し録音」を再生する。》

 録音場面――

 石川議員「(田代検事が)『早く認めないと、ここは恐ろしい組織なんだから、何するか分かんないぞ』と諭してくれたことがあったじゃないですか」

 田代検事「うんうん」(以上録音場面)

 指定弁護士「石川議員の発言を理解して『うんうん』と答えたんですか」

 田代検事「録音を聞くまで、この(石川議員の「恐ろしい組織~」云々という)発言自体を記憶していなかったほどです。理解、承認して『うん』ではなかったと思います」

 指定弁護士「発言に応答したのではないと?」

 田代検事「再生を聞いてもわかる通り、この前後でも私は『うーうー』と相づちを打っている。流れの1つである、というのがお分かりになると思います」

 指定弁護士「威迫を受けて調書に署名した、と石川議員はそういう主張をしています」

 田代検事「全くありませんでした。(石川議員が)承諾した範囲で調書を取っていますが、実際の取り調べでは(石川議員は)もっといろいろなことを言っています。水谷建設の問題については、完全に否認を続けていました。そういう石川さんの態度からしても、威迫はありませんでした」(以上引用)

 要するに田代検事は「任意の取り調べでは録音される危険もあるし、『足下をすくわれることを言うな』と、上司から口酸っぱく言われ」た事実を根拠として、「うんうん」が理解・承認の頷きではないと否定している。 

 取調べ検事が取調べの場で容疑者や参考人の発言を理解・承認しないで「うん、うん」と相槌を打つことが果たして許されるのだろうか。常に理解・承認して、理解・承認できなければ、理解・承認できるまで尋ね直して、理解・承認した上でその発言に対応した証拠確定のための取調べの尋問を瞬時に構築していくことが取調べの役目であるはずである。

 また、取調べを受けている側も取調べ側が「うんうん」と頷けば、相手は理解・承認したサインと受け止めて、話したことを事実と認定することになり、その理解・承認を受けた事実認定を前提として以後の取調べに対応することになる。

 いわば取調べる側は取調べを受ける側が話したことを「うんうん」と頷くことによって、後になってどう否定しようと、その場では事実と認定したのである。

 取調べを受けている側が取調べ側が理解・承認し、事実と認定したと受け止め、取調べが側が実際には理解・承認せず、事実と認定しないまま「うんうん」頷いたとしたら、一方は事実とし、もう一方は事実としない奇妙な食い違いが両者間に生じることになって、以後の取調べ自体が勘違いでは済まされない収束しない内実を迎えるに至って、その矛盾は今回と同様に裁判で噴き出すことになるはずだ。

 石川議員がICレコーダーを密かに持ち込んで隠し録音したということは田代検事の取調べとその取調べを纏めた供述調書の信用性・任意性を最初から崩す意図があったからだろう。
 
 崩すために田代検事が取り調べで用いた「早く認めないと、ここは恐ろしい組織なんだから、何するか分かんないぞ」という威迫的発言を改めて事実認定させるべく謀った。

 もし取調べで用いていなかったなら、石川議員の意図がどこにあろうと、否定しなければならない発言であった。「そんな脅迫めいた発言はしていませんよ。取調べはあくまでも任意でなければならないですから」と。

 しかも田代検事は指定弁護士の尋問に対して、「任意の取り調べでは録音される危険もあるし、『足下をすくわれることを言うな』と、上司から口酸っぱく言われていました」と発言しているのである。録音の危険性も考慮に入れる合理的判断のもと、取調べの際、実際に口にしていたとしても、「うんうん」ではなく、任意性を事実とするためにきっぱりと否定しなければならなかった。

 だが、録音の危険性を注意されていたにも関わらず、きっぱりと否定はせず、「うんうん」と頷いた。

 「流れの1つ」の「うんうん」ではなく、発言の事実に基づき理解・承認した「うんうん」以外の何ものでもないはずだ。

 当然、取調べと供述調書の任意性・信用性は崩れるはずだし、そのことで終わらず、田代検事が取調べ検事として必要とする合理的判断能力を欠いている職業的逆説性は検事としての欠格性をも証明していると言える。



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