民間企業と官僚の意見交換に酒食が伴い、その支払いを企業が負う官僚のたかりは人間の習性の一つの現れであり、「再発防止」は掛け声で終わる

2021-03-22 10:38:32 | Weblog
 官僚の意見交換を口実とした民間企業に対する酒食のたかりは、民間企業側から言うと、相手が許認可権等を握る優越的立場にある以上、接待という名で誤魔化し、将来、何かで返ってくるかもしれないと我慢の気持ちで応じざるを得なくなる。官僚側は思うに法律を作り、政治家を動かし、企業まで動かしているとの思い込みから持つに至っている自分たちの絶大な力の証明の見返りを政治家に求めるわけには行かず、民間企業に許認可権等を楯に求めることになって、それが酒食のたかりとなって現れている現象ということもあり得る。

 但し民間企業側が官僚側のこの酒食のたかり、民間企業がそういった形にせざるを得ない接待という形に便乗して官僚側の許認可に何らかの手心を求め、官僚側が許認可に関わる何らかの便宜を企業側に図った場合、酒食のたかりと接待の間に生じた金品の遣り取りは贈収賄という形を取ることになる。

 2021年2月3日付「文春オンライン」が〈総務省の幹部らが、同省が許認可に関わる衛星放送関連会社東北新社に勤める菅義偉首相の長男から、国家公務員倫理法に抵触する違法な接待を繰り返し受けていた疑いがあることが「週刊文春」の取材で分かった。〉と報じた。このことについて野党から国会で追及を受け、総務省幹部が曖昧な答弁に終止したことから、総務省内で調査を開始、2021年2月24 日に総務大臣武田良太から国家公務員倫理審査会会長秋吉淳一郎に報告書が提出された。報告書は37件の供応接待を受けた等の疑いが判明したとし、11人もの処分者を出した。

 これで1件落着となったわけではなかった。調査の適格性とその適格性に応じた処分の適格性について野党からなお国会で追及を受けることになった。特に総務省総務審議官であった谷脇康彦は東北新社以外から違法な接待は受けていないと国会で答弁していたにも関わらず、その答弁の信憑性は2021年3月3日付文春オンラインが総務省の谷脇康彦総務審議官ら複数の幹部がNTTグループ側から高額な複数回の接待を受けていたと報道し、NTT側が接待を認めるに及んで、一気に崩れることになった。

 さらに2021年3月11日発売の週刊文春がNTTが総務省幹部だけではなく、高市早苗や野田聖子の総務相経験者をも接待していたことを報道。勿論、両者共に会食はしたものの、接待であることを否定している。これで終わりではなく、3月17日付文春オンラインが昨年11月に現役総務大臣武田良太とNTT社長澤田純が会食で同席していた報じることになった。

 2021年3月15日参議院予算委員会の質問一番手は自民党大家敏志(おおいえ・さとし)。 

 2021年3月15日参議院予算委員会

 大家敏志「私から先ずNTTの社長澤田(純)さんにお尋ねしたいと思います。NTTによる総務省幹部への接待が問題になり、かつ歴代総務大臣ら政治家への接待に関しても同じくであります。『危機管理の要諦は情報公開だ』と、これは私の尊敬する元北九州市長末吉興一さんから何度も聞いた言葉であります。

 NTTが国会議員と会食を行ってきたのは事実でしょうか。お尋ね致します」

 澤田純「お答の前に大家委員の貴重なお時間を頂いてしまうんですが、お詫びをさせて頂きたいと思います。この度の件でご関係の皆様に大きな迷惑とご心配をかけた、そのことに関してですね、心よりお詫びを申し上げさせて頂きます。その上でお答えさせて頂きます。

 私共日頃より、例えばマスコミ、あるいは与野党の国会議員の方々、を始めと致します、いわゆる各界の有識者と懇談を行ない、将来の社会や国際情勢全般について意見交換をさせて頂く、そのような場を設けております。お答えとしてはそういう場を設けているということでございます」

 大家敏志「与野党を超えて国会議員と意見交換を行ってきたと。目的は何だったんでしょうか。もう一度と言うか、具体的にあればお答えください」

 澤田純「基本的には国会議員のセンセイ、どなたもそうなんですが、非常に見識や知識が幅広い方々です。私共に取りましては非常に刺激になる、よい勉強になる場を提供して頂いているということでございまして、業務上の要請であるとか、あるいは逆に便宜を受けるとか、そのようなお話はしておりません。以上、お答えを致しました」

 大家敏志「まあ、国会議員の見識にも個人差はあると思いますが、次にお伺い致しますが、NTTと総務省幹部との会食、について事実関係、それからこれもまた併せて目的についてお答えください」

 澤田純「私が社長に就任いたしましたのは2018年の6月でございます。3月8日の総務省の調査では私が総務省の幹部の方と会食を持ったのは2回ということになっていたんですが、これは私のことですので調査を致しまして、もう1回のお辞めになっている方とですね、会食がございましたんで、この3年間で3回ということになります。
 
 2018年の秋に2回、2020年の6月に1回。こういう構図であります。話の中身は基本的には将来の社会、特にAIが入ってきた折りの社会のプラスの面、マイナスの面、こういうことについてですね、広く一般的なお話を意見交換させて頂いております。以上、お答え申し上げました」

 大家敏志「様々な方から疑念を持たれた以上は全てをつまびらかにしてその上でルールに則って判断・行動されることが求められると思っております。公務員倫理規定、大臣規範等に照らして、きちっとした対応を求めたいと思います」

 大家敏志の質問には意図的な情報操作が仕組まれている。大家敏志は自民党に席を置くゆえに週刊誌等で報道された接待を受けた元総務大臣の野田聖子と前総務大臣の高市早苗と現総務大臣の武田良太と総務省幹部等に対してそこに行政を歪める何らかの不正な取引きはなかったかと疑われている、言ってみれば被告の側に立つ弁護士の役割を担っている。罪を追及する検事の思いで質問に立っていたわけではない。

 さらにNTT社長澤田純が「NTTの業務に関する便宜を図るようにお願いした」から始まって、「手心を加えるように要請した」、あるいは「一定の配慮を要望した」といったことを、事実そうしていたとしても、自ら告白するはずはないと分かっていて、こういった状況を前提にしていたから、大家敏志は最初は贈収賄罪の匂いを漂わせかねない「接待」という言葉を一旦は使っておきながら、その匂いを断ち切った「国会議員と会食」のレベルに持っていく誘導を行ない、その誘導に応えて、NTT社長澤田純が政治家との会食も総務省幹部との会食も一般的な意見交換の機会に過ぎなかったと明らかにしたことで野田聖子や高市早苗、武田良太全員を贈収賄罪から無罪放免する意図的な情報操作に成功している。

 尤も政治家も官僚も過去から現在まで「意見交換」を免罪符に接待の場に臨み、接待する側の政治や行政と利害関係にある企業にしても、「意見交換」の名のもとに接待の場を設ける構図を慣習とさせている。結局のところ、大家敏志は与党側弁護士の役割上、従来からのこの構図に意図的に誘導したに過ぎない。

 NTT社長澤田純にしても、「例えばマスコミ、あるいは与野党の国会議員の方々、を始めと致します、いわゆる各界の有識者と懇談を行ない、将来の社会や国際情勢全般について意見交換をさせて頂く、そのような場を設けております」と懇談や意見交換は元総務大臣の野田聖子と前総務大臣の高市早苗と現総務大臣の武田良太や総務省幹部だけではなく、マスコミ関係者、一般的な与党国会議員、さらに野党の国会議員、さらに各界の有識者とも行っていることだと一般化することで、そこにさも利害関係など存在しないかのような誘導、意図的な情報操作を行っている。

 この日の参議院予算委員会の4番手は立憲民主党の斎藤嘉隆である。

 2021年3月15日参議院予算委員会斎藤嘉隆

 斎藤嘉隆「企業が目的なく接待をすることは私はあり得ないと思います。当然、NTT本来の進展のためにですね、接待を行ったものと考えていますけども、この親睦会や懇親会を深めることによってNTTの事業にですね、どのような影響があったか、どのように認識をされているかお伺いします」

 澤田純(NTT代表取締役社長)「意見交換しないかっていうの、実は投げかけられまして、それに対して私は認識が甘いものですから、では会食だというふうにお話をさせて頂いた流れがございます。意見交換をしたい、私もしたい。その一番の内容は将来のAIが入った折りのマイナス面ですとか、あるいは私共が考えて、デジタルツインという世界がこれから参りますが、その折りに社会学的にどうかと、こういうようなところをお話させて頂きました。

 非常に色んな意見を頂きましたので、有用であったというふうに考えております。以上でございます」

 NTT社長澤田純のこの答弁は大家敏志に対する答弁と大分趣を異にしている。斎藤嘉隆が被告の側に立つ弁護士の役割からではなく、罪を追及する検事の役割を担っているとみていることからの趣の違いということなのだろう。

 「意見交換しないかっていうの、実は投げかけられまして、それに対して私は認識が甘いものですから、では会食だというふうにお話をさせて頂いた流れがございます」云々の意味するところは政治家や官僚の側から意見交換を求めてきて、その求めに対して会食で応じている構図となっていることを明らかにしたことになる。この手の構図は繰り返し行われていることによって完成する。つまり常態化していることを証明していることになる。

 企業側は許認可に関係した事務手続きで何か厭がらせでも受けたら困るからと、意見交換が口実であっても、飲み食いの会食で応じる。政治家や官僚側も許認可権を握る優越的立場から相手が簡単に断ることができないことを知っていて、実態は飲み食いが目的の意見交換を求める。まさに政治家や官僚による意見交換の名を借りた飲み食いへのたかりであり、元々が人間はタダで飲み食いしたいという欲求を人間の習性の一つとしているが、このようなたかりを彼らは自分たちの生態の一つとしているということである。

 この常態化した生態となっているたかりの過程で企業側が自らの企業経営に関わる役所側の特別な手続きを必要とした場合、たかりに応じていることの見返りに、要するにタダで飲み食いさせていることの見返りにその手続きに何らかの便宜を求めることがあったとしても、このような場面は決してないと否定しきれない。政治家や役人側から言うと、飲み食いをたかっている手前、あるいはタダで飲み食いさせて貰っている恩義から企業側が求めた便宜に応じない保証はないとは言い切れない。

 前総務大臣高市早苗や現総務大臣武田良太が自身が飲み食いした代金は支払っていると主張しているのは、それが事実だとすると、タダで飲み食いさせて貰っている恩義から何らかの便宜を要求された場合、応じてしまうことを恐れているからだろう。あるいは何らかの便宜を図ったと疑われることを恐れて、支払ったことにしていると装っている可能性もあり得る。

 要するにタダで飲み食いしていても、飲み食いの代金はタダで済んだとしても、タダで済まない何かでタダで済んだ代金の埋め合わせをするということが往々にして存在する。

 いずれにしても、企業と役所間の贈収賄はこのようなタダで飲み食いの常態化したたかりの構図から発生する。そして常態化は既に触れたように繰り返されることによって完成する構図であり、生態だから、似たような事例を過去の世界から引き出すことができることになる。既にマスコミが似た事例としてノーパンシャブシャブ事件を盛んに取り上げている。「Wikipedia」「大蔵省接待汚職事件」として紹介している。一部を取り上げてみる。文飾当方。

 〈1998年(平成10年)に発覚した大蔵省を舞台とした汚職事件である。大蔵省の職員らが銀行から接待を受けた際に、中国人女性が経営する東京都新宿区歌舞伎町のノーパンしゃぶしゃぶ店「楼蘭」を頻繁に使っていた事が発覚(店名の楼蘭は、新疆ウイグル自治区の地名)したことからノーパンしゃぶしゃぶ事件とも言われている。

 官僚7人(大蔵省4人、大蔵省出身の証券取引等監視委員会の委員1人、日本銀行1人、大蔵省OBの公団理事)の逮捕・起訴に発展。起訴された官僚7人は、執行猶予付きの有罪判決が確定した。この責任を取り三塚博大蔵大臣と松下康雄日本銀行総裁が引責辞任し、財金分離と大蔵省解体の一つの要因となったと言われているが、実際は改革は族議員に骨抜きにされ、名称が財務省に代わった程度で、抜本的に変化した訳ではない。

 罪状は銀行や証券会社側の官僚に対する飲み食いの贈賄、官僚側の銀行や証券会社側に対する便宜供与と飲み食い収賄等となっている。

 この事件は1998年の発生である。この事件の再発防止策として翌1999年8月に国家公務員倫理法が成立、さらに翌2000年4月に施行の運びとなった。だが、官僚が意見交換という口実でタダで飲み食いを受ける接待はなくなることはなかった。NTT社長澤田純が「意見交換しないかっていうの、実は投げかけられまして」と言っている官僚側からの働きかけによるたかりは一つの構図としてノーパンシャブシャブ事件でも現れていた。文飾は当方。

 《風俗店は宮川室長から誘う MOF担当ら1200人が会員 ノーパンシャブシャブ》(朝日新聞/1998年1月27日)
 
「ぜひ一度行ってみたい。来週どうしても行こう」 風俗店、宮川室長から誘う

 収賄容疑で逮捕された大蔵省の金融証券検査官室長・宮川宏一容疑者(53)が第一勧業銀行の大蔵省担当職員(通称・MOF担)に対し女性従業員の過激な接待を売り物にする東京・新宿の会員制しゃぶしゃぶ料理店に連れて行くよう要求し、接待を受けていたことが東京地検特捜部の調べで明らかになった。店の会員には1200人を超す金融機関の社員が登録しており、接待額は一人1回辺り3万円を上回ることが多い。宮川室長以外にも多くの大蔵省幹部が接待を受けたと複数の金融業界関係者が指摘している。特捜部は27日にも同店を家宅捜索し、常識離れした大蔵官僚の接待漬けの実態を解明する方針と見られる。

 東京新宿の会員制しゃぶしゃぶ店 MOF担ら1200人会員

 この店は、下着をつけない女性が付き添って接客することで知られ、「ノーパンすあぶしゃぶ」の通称で呼ばれることもある。

 特捜部の調べによると、宮川室長は第一勧銀のMOF担に対し、「ぜひ一度行ってみたい。来週どうしても行こう」と要求したとされる。宮川室長は同行から11回の飲食接待を受けたなどとして逮捕されたが、この容疑事実の中には同店での接待も含まれている。

 この店での接待費用は現在、コース料理で一人当たり1万9千180円。これに加え、コンパニオンの女性に1万円のチップを渡すと、女性が下着を脱いで接客する。消費税や女性の飲み物代を含めると、費用は客一人当たり3万円を大きく超えることになる。

 この店で検査対象の金融機関から接待を受けた大蔵官僚は宮川室長だけではない。宮川室中の部下に当たる別の検査官も数年前、ある元MOFに対し、「おもしろいところだから行こうよ」と持ちかけ、銀行局の係長と共に同店で接待を受けたという。 

 この元MOF担は「当時はそんな店があるとは知られていなかった。はっきり言って、びっくりした。目が点になりました。もっとびっくりしたのは向こう(大蔵省職員)が慣れていたこと。何度も来たことがあるという感じだった」と明かした。

 ある銀行幹部は「MOF担になったばかりのころ、ある証券会社から会員カードを借りて大蔵省の人と行きましたけど、もう二度と行くまいと思いましたね。店の女の子はあっけからんとしているけど、私としてはいたたまれない感じでした」と振り返った。

 別の金融機関の広報部は「うちのMOF担は、大蔵省接待といっても、せいぜいこの店程度だと言っています」と話し、MOF担の間で、こうした接待が半ば常態化している実情を明かした。

 店の説明によると、会員は約1万3千人で、このうち銀行や証券会社の社員が1200人余にのぼる。ほとんどの都市銀行や大手証券会社、外資系金融機関で、社員が会員になっており、大蔵省を担当する総合企画部の幹部行員の名前もある。

 店の経営者は「金融関係のお客さんは多いけど、どういう人をお連れになっているかはわからない。店では、接待する側も、される側も、楽しく笑い声を上げている。普通の料亭にいくより、接待の効果は高いはず」と話している。

 【MOF担】《MOFは大蔵省・財務省を表すMinistry of Financeの頭文字から》大蔵省(現財務省)との折衝を主な任務とした銀行・証券会社などの担当者の通称。かつて金融監督官庁であった同省の動きを事前につかむために、担当官僚と密接な関係を持った。》(「goo国語辞書」

 官僚側から飲み食いと女性サービスをたかっていた。宮川宏一は各銀行から400万円以上の飲み食いの接待供与を受けていただけではなく、マンションの一室を購入した際、代金の一部の440万円を銀行に負担させる利益供与まで受けていた。

 大体が役所にとって利害関係者に当たる企業との意見交換に飲食を伴わせ、その代金を企業側に支払わせること自体が、その意見交換がどのようにまともな話題に基づいていても、企業側にとってどのように有用なものであったとしても、役人側のたかりを構図としていることに変わりはない。たかりをペイするために役所側の権限で応えない保証はない。企業側も持ち出し一方となっている支払いをペイして貰うために何らかの便宜を求める誘惑に駆られない保証はない。

 人間がタダで飲み食いしたいという欲求を自らの習性の一つとしている以上、そのことが飲み食いを通した贈収賄のキッカケとなることを防ぐためにも意見交換という名目でその機会を手に入れることを国家公務員倫理規定を改めて禁止しければ、過剰接待の再発も、タダでの飲み食いを通した贈収賄の再発も危うい。意見交換と言うなら、一部の企業幹部や一部の役所幹部だけで行うのではなく、企業の若手や役所の若手官僚を交えて、企業か役所の会議室でペットボトルのお茶のみの提供で行った方が健全な、幅広い意見交換となり、若手の勉強にもなり得るはずである。NTT社長澤田純が言っているように「非常に刺激になる、よい勉強になる場の提供」を幹部のみならず、若手にも与えることになる有意義な機会とすることができるはずだ。

 たかりという役人たちの卑しい行為をなくすこともできる。

 少なくとも意見交換という名で役人側がタダで飲み食いする不健全なたかりを繰返して行ない、いつ贈収賄に発展するかも分からない危うい状況にあることを無視して、「再発防止」だけを言い、それが掛け声倒れとしてしまうのは政治側の不作為に当たる。

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