9月3日の安倍改造内閣発足に際して、自民党三役人事が総入れ替えとなった。石破茂が続投を望んでいた幹事長は谷垣禎一前法相が就くことになった。石破茂は安倍晋三から当初は安全保障法制担当相への就任を打診されたが、安倍晋三の集団的自衛権行使限定的容認に対して国家安全保障基本法の策定を先に行い、その法律を担保に現行憲法下でも全面的な行使を可能とさせることを主張する立場の違いを理由に固辞、地方創生担当相に就くことになった。
石破のこの閣内入りを来年の総裁選の準備を閣外で力を注ぐことがができないよう、安倍晋三が閣内に取り込んだと見る向きが大方だが、幹事長外しは集団的自衛権隠しの意味もあるはずだ。
その第一の理由は、憲法解釈変更による集団的自衛権行使容認の閣議決定に対する国民世論の厳しさにある。
安倍晋三の内閣支持率は第2次安倍内閣発足時は60%を超える世論調査もあったが、50%を下回る調査はなかった。しかし特定秘密保護法成立直後の昨2013年12月調査では50%を割ったものの、それ以後回復して50%を上回る形で推移していたが、7月1日の憲法解釈変更による集団的自衛権行使容認の閣議決定直後、再び50%を割っている。
集団的自衛権導入に関わる殆どの世論調査では反対が50%を上回り、集団的自衛権をめぐる議論や説明に関しては十分ではないとする割合が70%を超えている。
世論の集団的自衛権に対する厳しい態度は6月26日告示、7月1日閣議決定から12日後の7月13日投開票の滋賀県知事選に如実に表れた。2012年衆院選では県内全小選挙区自民党候補勝利の有利な状況を背景に与党候補の優勢が伝えられていたが、17日間の選挙戦の中盤で野党候補がやや優勢の状況をつくって、結果はそのまま逆転する形で当選している。
世論調査に現れた国民の集団的自衛権に対する風当たりを滋賀県知事選中に具体的に感じっ取ったからだろう、滋賀県知事選6月26日告示から17日間選挙戦終盤の7月7日、菅官房長官の記者会見発言。
菅官房長官「グレーゾーンから集団自衛権に関わるものまで、幅広い法整備を一括して行いたい。向こう約1年かけて国民の皆さんの前でしっかり議論を進めていきたい。(法案作成の)準備に最低でも3~4カ月かかる」(Bloomberg)
「向こう約1年かけて」ということは集団的自衛権行使容認に伴う一連の関連法案の提出を来年1月下旬開会の通常国会に先送りすることの決定だと記事は解説している。
あれ程閣議決定を急ぎ、閣議決定から2週間も経って、わずか2日間の閉会中審議で議論を打ち上げておきながら、これらの性急さに反して法案提出は来年1月下旬開会の通常国会に先送りする。
マスコミは裏の意図を秋の福島知事選と沖縄知事選や来春の統一地方選等への悪影響の回避だと伝えた。いわば集団的自衛権隠しである。
但し法案提出の来年通常国会先送りで集団的自衛権隠しに成功したとしても、石破幹事長を続投させた場合、安倍晋三と見解は違えても、安倍晋三と同様に集団的自衛権の行使容認の強硬派で、その色を色濃く纏っていることに変わりはなく、地方選の先頭に立たせたなら、法案提出先送りの集団的自衛権隠しがどこでどのように破綻するか、保証の限りではなくなる。
安倍晋三にしたら、集団的自衛権隠しを徹底させるためには、いくら本人が続投を希望しようが、石破茂を幹事長から外すに越したことはないはずである。
そして表向きは集団的自衛権色の薄い谷垣禎一を幹事長に据えた。元自民党総裁、前法相という肩書も集団的自衛権隠しには好都合な要素となるはずである。
石破茂が就任した地方創生担当相は地方の活性化を担う。だが、日本の政治は何ら有効な手を打てずに地方が衰退するに任せてきた。有効な政策を見い出すことができずにいたということであり、当然、即効薬もない。有村治子が就任した行政改革兼少子化担当相の職務である少子化問題も地方活性化に深く関わり、両者の連携が必要だが、有効な政策をなかなか見い出すことができないことと即効薬がない点については同じ状況にある。
いわば、新設であることと「地方創生」という名前自体は新鮮で聞こえはいいが、成果を上げにくい分、活躍して脚光を浴びる機会も期待も失われることになる。マスコミへの露出が少なくなるということである。
安倍晋三にとっては集団的自衛権隠しのためには好都合な幹事長外しであり、来春の統一地方選が終わるまで、「地方創生、地方創生」と言い続けてくれて、選挙でそれなりの結果を出さえすれば、本体の地方活性化に成果がなくても、その責任は石破が負うことになる都合のいい地方創生担当相人事ということではないだろうか。
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