北方四島の先住民はアイヌ民族だから、彼らの返還要求が「第2次大戦の結果ロシア領」の論理を破る

2016-12-19 07:07:13 | Weblog
 
 2009年9月20日、《北方四島返還の新しいアプローチ/先住アイヌ民族と現住ロシア人との共同独立国家とする案 - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》を書いた。 

 内容は、日本政府は「北方四島は日本固有の領土」としているが、北方四島の先住民はアイヌ民族だから、現在ロシアが不法占拠しているからとして日本に返還を求めるのは整合性を欠く、「北方四島はアイヌ民族固有の領土」だから、アイヌ民族に返還すべきだとするなら、歴史的にも整合性を得るし、アイヌ民族に返還した上で現住ロシア人との共同独立国家としたらどうかといったものである。

 上記ブログではアイヌ民族への北方四島返還がロシアが主張している「北方四島は第2次大戦の結果ロシア領となった」とする論理を破る方法とは書かなかったが、このことをよく知られている事実を基にこのブログで書こうと思う。

 2008年6月6日、国会の衆参両議院は「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」を全員一致で採択た。

 決議の内容は以下のとおりである。

  アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議案(第169回国会、決議第1号)

 昨年9月、国連において「先住民族の権利に関する国際連合宣言」が、我が国も賛成する中で採択された。これはアイヌ民族の長年の悲願を映したものであり、同時に、その趣旨を体して具体的な行動をとることが、国連人権条約監視機関から我が国に求められている。

 我が国が近代化する過程において、多数のアイヌの人々が、法的には等しく国民でありながらも差別され、貧窮を余儀なくされたという歴史的事実を、私たちは厳粛に受け止めなければならない。

 全ての先住民族が、名誉と尊厳を保持し、その文化と誇りを次世代に継承していくことは、国際社会の潮流であり、また、こうした国際的な価値観を共有することは、我が国が21世紀の国際社会をリードしていくためにも不可欠である。

 特に、本年7月に、環境サミットとも言われるG8サミットが、自然との共生を根幹とするアイヌ民族先住の地、北海道で開催されることは、誠に意義深い。

 政府は、これを機に次の施策を早急に講じるべきである。

 一 政府は、「先住民族の権利に関する国際連合宣言」を踏まえ、アイヌの人々を日本列島北部周辺、とりわけ北海道に先住し、独自の言語、宗教や文化の独自性を有する先住民族として認めること。

二 政府は、「先住民族の権利に関する国際連合宣言」が採択されたことを機に、同宣言における関連条項を参照しつつ、高いレベルで有識者の意見を聞きながら、これまでのアイヌ政策をさらに推進し、総合的な施策の確立に取り組むこと。

 右決議する。

 要するに2007年9月13日、ニューヨークの国連本部開催の国際連合総会に置いて採択された「先住民族の権利に関する国際連合宣言」に促されて、多分仕方なく、アイヌ民族を東北以北の先住民と認めると決議したのだろう。

 動機はどうあれ、日本の国会はアイヌ民族を先住民とするに至った。

 では、国連宣言はどのような内容の採択を行っているか見てみる。 


 「先住民族の権利に関する国際連合宣言」         

 第28 条 【土地や領域、資源の回復と補償を受ける権利】

1. 先住民族は、自らが伝統的に所有し、または占有もしくは使用してきた土地、領域および資源であって、その自由で事前の情報に基づいた合意なくして没収、収奪、占有、使用され、または損害を与えられたものに対して、原状回復を含む手段により、またはそれが可能でなければ正当、公正かつ衡平な補償の手段により救済を受ける権利を有する。

 先住民が後発住民によって武力等の手段で収奪された土地・領域・資源は原状回復の救済を受ける権利を有すると謳っている。

 北方四島の択捉島・国後島・色丹島・歯舞群島は、元々は共にアイヌ民族が先住していた。それをロシア人や日本人が駆逐し、現在ではロシア人の土地となっている。

 当然、アイヌ民族は北方四島に対する原状回復を要求する権利を有する。「我々こそが返還を求める権利を有する」と。

 勿論、アイヌ民族の血を引く人間はロシア極東にも今以て生き続けているだろうから、彼らと糾合して北方四島原状回復(=その土地でのアイヌ民族としてのありとあらゆる権利回復)の声を挙げるべきだろう。

 声を挙げ、運動を起こすことによって、「第2次世界大戦の結果」遥か以前の状態に戻すことの要求となるためにプーチン・ロシアが主張している「北方四島は第2次大戦の結果ロシア領となった」とする論理は無効となる。

 いわば返還を拒否する正当な理由はなくなる。

 プーチンが直ちに応ずるとは考えられないが、「北方四島は第2次大戦の結果ロシア領となった」とする論理を無効化させることができる以上、アイヌ民族は勿論、日本政府もロシアに対して「ロシアは北方四島を不法占拠している」と、その烙印を正々堂々と押すことができる。

 「平和条約締結後にソ連は日本に歯舞群島と色丹島を引き渡す」と決めた1956年日ソ共同宣言についてプーチンが「どのような条件の下で引き渡されるのか、どちらの主権下に置かれるのかは書かれていない」と言おうが言うまいが、すべて無関係事項とすることができる。

 北方四島の先住民は日本に住むアイヌ民族だけではなく、その血を引く生活者はロシア極東にも今以て生き続けているだろうから、彼らと糾合し、国連宣言に基づき、北方四島原状回復(=アイヌ民族としての権利回復)の声を挙げて、北方四島をアイヌ民族と現住ロシア人、そして元島民等の日本人を含めた共生国家樹立の構想を打ち立てたなら、国際的な世論を喚起できるように思えるが、どうだろうか。

  少なくとも安倍晋三がそうさせているようにプーチンを北方四島返還問題に絡ませてこうまでものさばらせることはなかったろう。


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