民進党は最大支持母体を連合ではなく、一般国民とすることを宣言せよ そしてその理由

2016-12-01 11:31:57 | Weblog

 日本最大の労働組合である略称連合(正式名・日本労働組合総連合会)の組合員数は約680万人。内、原子力発電所を抱える電力会社の労働組合電力総連の組合員数は「Wikipedia」によると約22万人弱。

 2016年10月16日投開票の新潟県知事選では東京電力柏崎原子力発電所の再稼働反対を掲げた医師米山隆一候補者(49)を共産党、自由党、社民連が推薦し、再稼働容認の前長岡市長森民夫(67)候補を自公が推薦、柏崎原発所属の東電労組を抱えている関係からだろう、連合新潟は与党候補の支援にまわった。

 民進党が再稼働反対の米山候補の支援に回らずに自主投票を決めたのは電力総連を抱えた連合が民進党の最大の支持母体であることからなのはマスコミの解説を待たずとも察しはつく。

 ところが終盤情勢で米山氏の優勢が伝えられると、蓮舫は投開票前々日に新潟入りし、米山候補応援の街頭演説を行った。その理由は民進党新代表就任後の初の国政選挙、11月23日投開票衆院東京10区補選と衆院福岡6区補選で民進党候補の劣勢を伝えられていたからに他ならない。

 いわば国政選挙ではなく、地方選挙と言えども、何の功績もないままに終わるよりも、どんな形であっても勝利にツバをつけておいて、少しでも功績を残したい焦りからの後からの参戦といったところなのだろう。

 蓮舫としては新代表として華々しいデビューを飾りたかっただろうが、事実国政両補選とも民進党候補は惨敗したために新代表としての功績を何ら記すことができなかった。遅ればせながらにでも新潟知事選に駆けつけなかったなら、全敗という惨憺たる結果に終わっただろう。

 だとしても、蓮舫は、あるいは民進党は原発再稼働反対の新潟県民のみならず、新潟を超えた全国の稼働反対の一般生活者の声よりも、連合が民進党最大の支持母体という関係から、全国規模で見て、連合組合員数約680万人の内の電力総連組合員数約22万人弱に過ぎない稼働容認の声を優先させることを自らの利害とした。

 連合は民進党と共産党の選挙協力は勿論、野党連合政権にさえ反対している。2016年11月30日付の「NHK NEWS WEB」記事は連合が衆院選方針の素案を纏めた中で民進党と共産党との協力を強く牽制していることを伝えている。  
 
 具体的には、〈与野党の勢力が拮抗し、政策で切磋琢磨する政治体制を確立することが重要だとして、引き続き、民進党への支援を強化していく〉とする一方で、〈野党連携について、「政権選択選挙である衆議院選挙では、基本政策の一致が不可欠で、目の前の勝利のみを目的とした共闘は、国民の理解が得られない」と指摘〉、〈「共産党は、民進党などの民主主義政党とは根本的に異なり、選挙戦で連携することはありえない」と強く牽制〉する素案の内容となっていると解説している。

 問題は連合組合員数は約680万人という数字である。連合傘下外の労働組合員数を加えた「厚労省」調査の全労働組合員数は約982万5000人。     

 また企業の規模が大きくなる程に、いわば大企業になる程、労働組合の組織率は高くなるという。

 と言うことは、企業の規模が小さくなる程に、いわば中小企業に向かう程、組織率は低くなる。

 このことを2014年6月4日付の「東京新聞」が伝えている。 

 従業員1000人以上の大企業の組織率  1980代後半65%→2013年45%
 従業員100人から1000人未満の中堅企業の組織率 1983年31%→2013年13%
 従業員100人未満中小企業組織率 1983年2・6%→2013年1%

 組織率=労働組合参加者は年々減っているものの、大企業は従業員の約半数近くを確保しているのに対して中堅企業で約1割強、中小企業では殆ど消えかかっている。

 いわば連合の組合員数約680万人は経営規模のより大きい大企業に所属していることになる。

 従業員の利害に余程反しない限り、連合はそういった大企業の利害を代弁することになるのは当然の成り行きであろう。

 連合が旧民主党の最大支持母体となったのは小沢一郎が旧民主党代表時代に連合と会合を積み重ねて政権交代の土台を築いたからだと言われているが、連合にしても民主党に勢いを感じ取ったことと、労働者の代表という顔を持っている都合上、民主党が政権党となった場合の支持母体となることによって自らの利害を最大限に実現したい思惑があったからだろう。

 ところが、政権を離れた民主党、その後の民進党は連合の利害を実現させる力を失った。こういうことを考えると、2016年11月30日に連合が5年振りに自民党と政策協議を行ったことを同日付「NHK NEWS WEB」が伝えているが、ある種当然の成り行きであろう。   

 自民党本部での5年振りの政策協議には自民党から政調会長の茂木敏充らが、連合からは逢見事務局長らが出席したという。

 逢見事務局長「大きな影響力を持つ自民党との意見交換は大変ありがたい」

 そして労働者の雇用の安定やすべての世代が安心できる社会保障制度の確立等を要請したと解説している。

 茂木敏充「連合の政策に最も近いのは自民党ではないかと自負している。労働界を代表する連合との意見交換を通じて、働き方改革などの実現につなげていきたい」

 政策協議後の記者団への発言。

 逢見事務局長「相撲でいえば、お互いの感覚が一致して、立ち会いができた。自民党とは政策面での距離感は無く、特に雇用や労働、社会保障の面での問題意識は、自民党も同じであり、来年は、もう少し早く行いたい」

 逢見のすべての発言は民進党の最大の支持母体とは言えない、自民党ベッタリの内容となっている。

 要するに連合の利害を最大限に実現するには民進党では頼りなく、かつてのように自民党と引っついた方が得策ではないのかと計算したことからの政策協議なのかもしれない。

 あるいは共産党と選挙協力するなら、自民党に引っつくぞという警告ということもあるかもしれない。

 だが、連合という労働組合が大企業寄りであり、その利害を代弁する立場にあることは茂木敏充の「連合の政策に最も近いのは自民党ではないかと自負している」と言っている言葉と、連合逢見の「自民党とは政策面での距離感は無い」と言っている言葉に如実に現れている。

 因みに日本の経営規模別の企業数とそれぞれの企業規模別の従業員数の割合を「日本の中小企業」のサイトから見てみる。       

 企業数(421.0万社)

 中小企業 約432.6万社 99.7%
 大企業 約1.2万社 0.3%
 従業者数(4013万人)

 大企業 約1229万 約31%
 中小企業 約2,784万人 約69%

 全従業者数4013万人から先に挙げた全労働組合員数約990万人を差し引くと、3023万人が労働組合に所属していないことになる。

 いわば連合は労働組合に所属していない3023万人の利害を直接的には代弁していないと同時に日本の全企業数の0.3%、全従業者数4013万人の約31%の、しかも大企業寄りの利害しか代弁していないことになる。

 また、参院選公示前日の2016年6月21日現在の選挙人名簿登録者数は18、19歳の約240万人が新たに有権者として加わって約1億660万人だという。

 この約1億660万人から連合組合員数約680万人のみならず、全労働組合員数約990万人を差引いたとしても、9670万人の有権者が労働組合に参加していない一般国民とすることができて、間接的には兎も角、やはり直接的には連合の利害対象から外れていることになる。

 勿論、この中には自民党の大企業寄りの政策と利害を一致させる高所得者も数多く存在するが、そういった高所得者よりも自民党の政策から落ちこぼれている中小企業や小規模自営業に所属する中低所得者の方が遥かに人数は多い。平成26年度の平均所得541万9千円以下の世帯が全世帯の約50%、半分も存在する。

 民進党は連合の組合員数を遥かに上回るこういった一般国民をこそ、最大の支持母体とすると宣言すべきではないだろうか。

 そうすることによって、自身の利害の状況に応じては自民党に擦り寄ろうとする連合の影響から自由になることができる。自由党代表の小沢一郎が定例記者会見で言っている民主党の主体性ある姿を取ることができる。

 小沢一郎代表「(民進党と支持母体の連合との関係について)僕が民主党の代表をしていたころも連合の支援を要請したが、あくまでも組合は応援団であって、政党ではない。政治的な決定は政党が行うという姿勢をずっと貫いた。組合が政治的なアレをしたいなら政党になればいい。おかしいでしょ。色んな意見を言ったり要請したりするのはいいが、支援者だ。判断するのはあくまでも政党だ。その主体性がなくなった時、もう政党じゃなくなっちゃう。組合の一部になっちゃう。そこはちゃんと蓮舫代表も考えてんじゃないすか」(asahi.com/2016年10月25日21時24分)

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