安倍晋三が考える北方四島「共同経済活動」とは、日露共同治外法権もどきの形式なのか

2016-12-26 09:40:49 | Weblog

 安倍晋三は2016年12月15日に第1回日露首脳会談、翌日12月16日に第2回日露首脳会談を行い、その第2回会談の夜、「NHKニュース9」に出演して、プーチンと首脳会談で合意した北方領土での「共同経済活動」は、「ロシア法でもなく日本法でもない特別な制度で、これから専門家が協議を行っていく。国際的には例がないかもしれないが、両国でしっかり交渉する」と述べたとマスコミが伝えていた。

 安倍晋三は日露首脳会談を終えた16日夜のこのNHKの番組の出演を含めて、18日にかけて在京キー4局の番組に出演したという。

 この立て続けのテレビ出演は国政選挙の投開票日を除けば異例だそうだ。

 なぜそんなに続けて出演する必要があったのだろうか。安倍晋三が国会答弁で見せる安倍晋三自身の性格が影響しているはずだ。

 自身に不都合・不利な質問をされると、都合よく解釈した統計や関係ない事柄まで持ち出して、ムキになって反論し、自身を正当化する。

 マスコミは日露首脳会談に於ける平和条約締結交渉と領土問題について「進展なし」、「成果なし」と報じた。そこで安倍晋三は対露経済協力の進展を主役に引き立てて、本来は主役であるべき平和条約締結と領土問題を目立たなくさせることで自身の外交術を正当化すべく、立て続けにテレビ番組に出演する必要性に迫れたのだろう。

 テレビ局を何局ハシゴしようと、国会答弁が政策毎に似たり寄ったりであるのと同様、番組発言にしてもほぼ同じであるはずだ。12月16日のNHK出演の2日後の12月18日出演のフジテレビ番組「Mr.サンデー」出演でのキャスターと安倍晋三の発言を「産経ニュース」が伝えている。  

 安倍晋三とキャスターの平和条約と領土交渉についての遣り取り。 

 キャスター「日本のメディアは希望と落胆、両方報じている。経済協力の話題が多く、ロシアに食い逃げされるのではないかとのという報道もある」
 安倍晋三「全体の会談は6時間半行われたのですが、一番大切な、私とプーチン大統領2人だけの膝詰めの会談は95分。その殆どは、平和条約、領土交渉、問題についてじっくり話をしました。しかし、そこは解決をしたときにしか出せない。中身については。残念ながら、表に出すことはできませんから」

 そして「本格的な領土交渉には入ったと私は思っています」と言い、プーチンは「経済の協力だけを進めて(平和条約の締結を)後回しにすることはない、とおっしゃった」とも言っている。

 膝詰めの会談の95分間は殆ど平和条約と領土交渉の問題についてじっくり話をした。つまり日露の経済協力の話題に費やした時間は少なかった。

 平和条約と領土交渉の問題は例え「解決をしたときにしか出せない」としても、2人だけの膝詰めの会談の95分の殆どを平和条約、領土交渉の問題に費やし、「じっくり話をし」、「本格的な領土交渉には入った」と言うことなら、解決に向けて、ああします、こうしますといった方向性への議論を抜きに「95分」を費やしたということはできない。

 だが、「共同経済活動に関するプレス向け声明」だけが発表され、平和条約と領土交渉の問題についての共同声明は発表されていない。

 と言うことは、平和条約と領土交渉の問題については方向性を打ち出すところにまで議論が進んでいなかったということになる。

 いわば経済協力問題だけが進み、平和条約と領土交渉の問題は置き去りにされたと見るべきだろう。

 安倍晋三にしたら、常々自身の外交能力を誇示している手前、その誇示が何カ国を訪問した、外国首脳と何回会談を開いたといった回数を基盤としているに過ぎないが、置き去りを公表することができないから、経済問題で平和条約と領土交渉の問題をカモフラージュしようということなのだろう。

 この番組で安倍晋三は「共同経済活動」について次のように発言している。

 キャスター「経済共同活動での特別な制度とは。将来的に日本人とロシア人が共存する、一緒に住むという世界初めてのような特区、経済特区、居住特区みたいなものを考えているのか」

 安倍晋三「イメージとしては、大体言われたイメージなんですね。これは世界でもあまり例がないと思います。それを私たちはやっていこう。

 今までお互いが、4島について口角泡を飛ばしていた。その4島において、一緒に協力をしていく。

 例えば、かつてはそこにはシャケの加工工場があった。今はもう無くてさびれています。そこにもう1回、じゃあ日本の会社や人々が行って工場を作るよ。そこで島民も一緒に働く。雇用も生まれる。でこれはじゃあ、今まであまり北海道には売れなかったけども、北海道や極東に売っていく。

 それはまさに、共存共栄の姿が見えます。そこから4島解決の、様々な姿が見えてくるんだろう。解決策が私は見えてくると思います」

 キャスター「領土問題というのがどのように絡むのか分からないが、一緒に住みながら発展させていくイメージなのか」

 安倍晋三「ポイントが3つあるんですね。1つは『4島』です。これ、書き込みましたから。歯舞群島、色丹、国後、択捉、全部4島でやりますよと。一部ではないんですから。特区と言って一部ではない。歯舞、色丹だけではありません。4島で。それが一つです。

 もう一つは、ロシア法にも、日本の法律にも寄らない、新しいものを作っていく、ということ」

 キャスター「4島で何か日本人がトラブルに巻き込まれたときにロシアの法律で裁かれるということはないということか」

 安倍晋三「例えばそこで会社を設立して、利益も出ますね。経済活動において、さまざまな向こうの経済にかかる法律、税制がありますね。どうするんだと。上がった利益を一体どうするんだという問題もありますし、そこで働いている人々のですね、所得税とか、ありますね。さまざまな面において、これからしっかりと、専門的な協議が必要だと思います。そして、これを両国の了解のもとに作る。

 もう一つは、この中にも書き込んだのですが、国際約束の締結を含むものを、新しく作っていこうと。

 この3つのポイントが重要なんですが、今までにないことをやることによってですね、これが新しいアプローチで、これが領土問題の解決に私は必ず結びついていくと思います」――

 北方四島に於ける共同経済活動での特別な制度とは、「ロシア法にも、日本の法律にも寄らない」新しい法律を基盤とした、尚且つ「国際約束」として成り立たせ得る法律と言うことであろう。

 これらの発言から浮かんでくるイメージは北方四島共に一定の地域内にロシアの法律を外し、外したからと言って日本の法律を適用するのではなく、日露の従来の法律・統治権の支配を受けない「国際約束」となり得る新法を制定して共同の経済活動を行う「特区」の設定と言うことであって、日露の従来の法律・統治権の支配を受けないという点で一定地域に限った治外法権もどきの「特区」を意味することになるはずだ。

 もしこの一定地域の「特区」が北方四島全体に亘るとしたら、ロシアは領有権と主権を、それが日本側に移譲されるわけではないが、放棄しなければならない。放棄したなら、ロシアは2016年11月に国後島と択捉島に最新鋭の地対艦ミサイルを配備しているが、配備の理由を失い、それらを撤去しなければならなくなる。

 また、首脳会談後の共同記者会見でのプーチンの発言を見ると、「第2次世界対戦の結果ロシア領となった」という趣旨で北方四島に於けるロシアの領有権と主権に固執している点も、共同経済活動が北方四島全体に亘って「特区」とする種類のものではないことの証明となり得る。

 もしこ手の治外法権もどきの「特区」であるなら、日本人がその「特区」に自由に出入りでき、そこでの生活が許され、自由に経済活動を行うことができたとしても、少なくとも元島民は故郷に帰れば実家が存在するにも関わらず、実家で生活することは許されず、ホテルに泊まって生活するような焦燥感を常に味わわされるに違いない。

 また、そこに出入りする日本人が元島民でなくても、ロシアの領有権と主権を骨組とした鉄製の頑丈且つ巨大な檻の支配を受けた日露共同の治外法権もどきとなるはずだ。

 そういった共同経済活動がいくら進んでも、日本側にとっての領土問題の真の解決にはならないと言うことになるし、安倍晋三がいくら否定しようとも、マスコミ報道通りに首脳会談での平和条約締結と領土問題は何の進展も成果もなかったが事実そのとおりだと言うことになるはずだ。

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