ダッカ邦人等殺害テロ事件:安倍晋三のエジプト演説がターニングポイントとなった日本人の攻撃対象入り

2016-07-05 08:38:51 | Weblog

 今回の7人の武装集団によるダッカ邦人等殺害テロ事件は20人の犠牲者を出した。国籍別内訳はイタリア人9人、日本人7人、バングラデシュ人3人(1人は米国との二重国籍)、インド人1人となっている。 

 バングラデシュは長らく日本人に親近感を持つ親日国だと言われていた。だが、日本人を攻撃対象から除外する意思はなかったようだ。逆に日本人を7人纏めて殺害したということは明確な意志を持って敵視対象に含めていたということなのだろう。

 「イスラム国」7月3日、「イタリア人を含む十字軍(対IS有志国連合)22人を殺害した」と犯行声明を出したのに対してバングラデシュのカーン内相は襲撃犯は国内の過激派グループで過激派組織「イスラム国」とは無関係としている。その情報分析に妥当性があったとしても、日本人が7人も殺害されたということはイスラム過激派から攻撃対象としての烙印を押されたも同然であろう。

 バングラデシュでは昨年2015年10月3日に60代の在留邦人が何者かによって射殺され、「イスラム国」が犯行声明を出したが、バングラデシュ政府はそのときも関連性を否定している。

 しかし今回の邦人殺害で、少なくともバングラデシュ国内のイスラム過激派からは日本人は親日国の国民という評価から外されて、自分たちの主義・主張を誇示するための攻撃対象に格上げしたことは確かだ。

 例え「イスラム国」と直接関係なくても、精神的に傾倒すれば、テロの規模に憧れて大きなことをしてやろうという野心が湧き、見習うことになって、その挑戦を以て自らの正義とすることは否定できない。

 バングラデシュ国内のイスラム過激派が「イスラム国」と最低でも精神的な繋がりを持っているとすると、日本人を攻撃対象に加えることになたターニングポイントはやはり安倍晋三が2015年1月17日に行った中東政策スピーであろう。

 このことは前出のバングラデシュでの国内イスラム過激派による60代の在留邦人殺害(2015年10月3日)を扱った当ブログ――《バングラデシュ邦人殺害は安倍晋三の中東政策スピーチが遠因の「イスラム国」指令の忠実な実行と援護射撃 - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》でも扱ったが、改めて安倍晋三の中東政策スピーチを見てみる。  

 「スピーチ」そのものは首相官邸サイトに載っている。 

 安倍晋三「中東の安定を、私たちがどんな気持ちで大切に思い、そのため力を尽くしたいと念じているか、意欲をお汲み取りください。

 2年前、私の政府はこの考えに立って、中東全体に向けた22億ドルの支援を約束し、これまでにすべて、実行に移しました。本日この場で皆様にご報告できることは、私にとって大きな喜びです。

 ・・・・・・・・・・・

 イラク、シリアの難民・避難民支援、トルコ、レバノンへの支援をするのは、ISILがもたらす脅威を少しでも食い止めるためです。地道な人材開発、インフラ整備を含め、ISILと戦う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します」――

 このとき既に湯川遥菜さんと後藤健二さんの二人の邦人がイスラム国に拘束されていて、「イスラム国」は後藤健二さんの妻に身代金を要求、日本の外務省が対応していた。

 「ISILと戦う周辺各国に支援を行う」、「ISILがもたらす脅威を少しでも食い止めるためです」

 この発言を以って「イスラム国」が自らに対する挑戦、もしくは宣戦布告と取ったとしても不思議はない。

 中東スピーチから3日後の2015年1月20日、インターネット上に人質2邦人の姿を写した動画を掲載、日本政府に対して身代金要求の声明を掲載した。要求対象を後藤健二さんの妻から日本政府に変えたのである。

 「日本の総理大臣へ。日本はイスラム国から8500キロ以上も離れたところにあるが、イスラム国に対する十字軍に進んで参加した。我々の女性と子どもを殺害し、イスラム教徒の家を破壊するために1億ドルを支援した。だから、この日本人の男の解放には1億ドルかかる。それから、日本は、イスラム国の拡大を防ごうと、さらに1億ドルを支援した。よって、この別の男の解放にはさらに1億ドルかかる。

 日本国民へ。日本政府はイスラム国に対抗するために愚かな決断をした。2人の命を救うため、政府に2億ドルを払う賢い決断をさせるために圧力をかける時間はあと72時間だ。さもなければ、このナイフが悪夢になる」

 この時点で日本政府は「十字軍」の一員に加えられた。

 そして2015年1月24日午後11時、後藤さんの写真が映った静止動画がインターネットに流れ、湯川を殺害したというメッセージが表示されて、「イスラム国」は日本政府が身代金を払わないと見たのか、2005年にヨルダンの首都アンマンで発生した爆弾テロ事件の実行犯としてヨルダンに収監中の死刑囚サジダ・リシャウィと後藤健二さんの1対1の交換釈放と、ヨルダン政府が要求に応じなければ、ヨルダンが解放を求めているヨルダン空軍F16戦闘機パイロットのムアズ・カサースベ中尉]を後藤さんより先に殺害すると警告した。

 ヨルダン政府は中尉の生存証明を求めたが、「イスラム国」は応じず、結局のところ日本時間の2015年2月1日午前5時過ぎ、「イスラム国」は後藤健二さんを殺害したとする動画を声明文と共にインターネット上に投稿した。

 「日本政府はおろかな同盟国や、邪悪な有志連合と同じように『イスラム国』の力と権威を理解できなかった。我々の軍はお前たちの血に飢えている。安倍総理大臣よ、勝てない戦争に参加した向こう見ずな決断によってこのナイフは後藤健二を殺すだけでなく、今後もあなたの国民はどこにいても殺されることになる。日本の悪夢が始まる」――

 日本政府に対してだけではなく、日本人に対しても宣戦布告を行った。

 安倍晋三のエジプトスピーチが「イスラム国」によって脅迫の口実されたとしても、そういう指摘があるが、この声明文が「イスラム国」のテロに心酔する同類の中東内外のイスラム過激派にとっては、あるいは「イスラム国」に精神的な繋がりを見ている中東内外のイスラム過激派にとっては日本人を攻撃対象に加える学習を行い、それを自らの正義としたとして、妥当性はないとは言えないはずだ。

 中東でもアジアでも親日国となっていて評判が良かった日本人を攻撃対象に加えることになったターニングポイントを求めるとしたら、安倍晋三が2015年1月17日に行った中東政策スピーを措いて他にはないはずだ。

 そしてそのことが2015年10月3日にバングラデシュでイスラム過激派によって60代の在留邦人が射殺されたときに既に始まっていたということではないだろうか。

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