7月18日夜に行われた共和党党大会でのトランプ夫人メラニアの演説が8年前のオバマ大統領夫人の演説の一部と似ていた問題。トランプ陣営は当初は馬鹿げていると盗用を否定していたが、スピーチライターの女性が、「メラニアさんが例として読み上げたミシェル夫人の演説の一部を書き留め、草案に盛り込んでしまった。私のミスだった」(NHK NEWS WEB)と謝罪した。
実際はトランプ夫人メラニアが盗用したのだが、大統領候補の妻が盗用というと、そのような女性を妻としている大統領候補者自身の性格が疑われることから、ヒール役を引き受けるスピーチライターを急遽仕立てたのかもしれない。
あるいはよくあるように実際にスピーチライターが用意した演説で、お粗末なことにその中に盗用部分が含まれていたということなのかもしれない。
事実は分からない。
盗用個所はミシェル夫人が両親から教えられた価値観として「自らの言葉は自分との契約で、言ったことは実行し、約束を守る」(同NHK NEWS WEB)と語った言葉だそうだ。
もし著名な政治家の妻までもがスピーチライターが作文した演説を自分の言葉として読み上げる習慣があるとしたら、ミシェル夫人の8年前の演説もスピーチライーターが書いた演説ではないかと疑うこともできる。
たまたまその中に他人の言葉を盗用した個所がなかったから、ミシェル夫人自身が発信した言葉、あるいは思いだと受け止められたと言うことかもしれない。
このような疑いを一切排除するためには政治家自身も、最終的には自身の推敲を経るとしても、スピーチライターそのものを用いるべきではなく、自分の言葉で自らの主義・主張を語るべきではないだろうか。
スピーチライターを用いると、どうしても必要以上に美しい言葉、感動させる言葉を心がけるようになる。それがスピーチライターとしての役目だからだ。
安倍晋三も自らの演説の草稿作成にスピーチライターを用いている。日経BP社『日経ビジネス』記者出身の内閣官房参与谷口智彦(59歳)だという。
東京大学法学部卒業で、「Wikipedia」の「谷口智彦」の項目には次のような記述がある。
〈第2次安倍内閣では、2013年2月より内閣官房にて内閣審議官に就任し、主として広報を担当した。内閣総理大臣である安倍晋三のスピーチライター的な存在として活動する。
同年1月の時点で、第183回国会における安倍の施政方針演説を既に手掛けており、同年2月以降も国際戦略研究所での安倍の英語の演説などを手掛けた。同年9月の国際オリンピック委員会第125次総会においては、安倍が東京オリンピック招致のためのプレゼンテーションを行ったが、福島第一原発の汚染水はブロックされているで知られるこの演説も谷口が手掛けたものである。〉・・・・・
安倍晋三自身がこういった事柄を書き入れるよういくつか注文し、出来上がった原稿に最後に目を通して加筆することがあったとしても、他人の言葉をベースとしていることに変わりはない。
それをさも自分の言葉であるかのようにジェスチャー宜しく国民に伝える。あるいは外国の首脳たちに伝える。政治家同士はお互いにやっていることであったとしても、口にしている政治家自身の言葉だと思って耳にしている国民を結果的に欺くことになる演説となる。
国民を欺かないためにも、政治家の言葉への信用を失わせないためにも、全世界の政治指導者がスピーチライターを用いないことを契約とすべきだろう。
自らの政治思想をよりよく国民に伝わる言葉に紡ぎ上げることができない人物は政治指導者になるべきではない。