安倍晋三がウクライナを訪問、 「力による現状変更許さず」の発言はプーチン訪日の免罪符とするため

2015-06-08 09:15:55 | 政治


 安倍晋三が6月6日(2015年)ウクライナを訪問、ポロシェンコ大統領と首脳会談。これで20何回目だとか、30何回目の首脳会談だとか数に入れたに違いない。

 安倍晋三「わが国は力による現状変更を決して認めず、一貫してウクライナの領土の一体性を尊重するかたちで情勢の改善に取り組んでいる。停戦合意違反が見られることは遺憾であり、すべての当事者による停戦合意の完全な履行が重要だ」(NHK NEWS WEB

  「力による現状変更の不容認」を改めて振り撒いたようだ。

 ロシアは昨2014年3月18日にウクライナのクリミア自治共和国を自国に併合した。ロシアがクリミアを併合する動きに出るのか出ないのか緊迫化した情勢下で安倍晋三は2014年3月7日、バルト三国の一つエストニアを訪問、イルベス大統領と会談している。

 安倍晋三「(ウクライナ情勢に関して)「力による現状変更は認められず、事態が早期に正常化するよう期待している」(NHK NEWS WEB

 クリミアではロシア編入の賛否を問う住民投票が2014年3月16日に予定されていた。

 その8日前の3月8日、外相の岸田文雄がラブロフ・ロシア外相と電話会談。

 岸田文雄「ウクライナの主権と領土の一体性を損 なうべきではなく、力を背景と した現状変更は受け入れられな い。住民投票の実施などを懸念 しており、事態の平和的収拾を目指すべきだ」(NHK NEWS WEB

 安倍政権が「力を背景とする現状変更の試みを決して認めない」としていたプーチン・ロシアのクリミア併合に対して対ロ経済制裁を科したのはロシアのクリミア併合を受けた同日3月18日で、 ビザ緩和協議停止や日露協定の締結交渉開始凍結等を内容としていた。しかし米欧の制裁内容に比べ、「形式的な制裁に過ぎない」とされた。
 
 2014年3月18日の閣議後記者会見。対ロ制裁発動の意気込みを語っている。

 茂木経産相「(ロシアが クリミア自治共和国の独立を承認したことについて)ウクライナの統一性や、主権などを侵害するものであり遺憾だ。日本は力を背景とした現状変更の試みを決して看過できない」 (NHK NEWS WEB

 2014年3月19日参議院予算委員会。

 安倍晋三(プーチンがクリミア編入を表明したことに関して)「力を背景とする現状変更の試みを決して看過できない。ウクライナの統一性、主権と領土の一体性を侵害するものであり、これを非難する。わが国は力を背景とする現状変更の試みを決して看過できない」(NHK NEWS WEB

 2014年3月19日午前の記者会見。

 菅義偉「我が国も初めて『非難』という言葉を使ったが、それはこの編入は認められないし、力を背景とする現状変更は看過できな いという強い思いからだ」(同NHK NEWS WEB

 但しアメリカが対ロ制裁を発動したのはクリミア最高会議とセヴァストポリ市評議会がロシア編入を問う住民投票を3月16日に実施すると決定した2014年3月6日当日であり、ウクライナの主権と領土統一を侵害するロシア政府関係者らへの資産凍結、米国への渡航制限(ビザ発給停止)、その他である。

 安倍政権が第2弾目の追加となる対ロ制裁を科したのは2014年3月18日の併合から1カ月12日後の2014年年4月29日である。ウクライナの主権と領土の一体性の侵害に関与したと判断される計23名に対して日本への入国査証の発給当分の間停止。 

 この入国査証の発給停止はアメリカが10日以上も前に既に通過した措置でである。

 アメリカによる第2弾目の追加となる対ロ制裁はロシアによるクリミアの2014年3月18日併合前日、圧倒的多数で併合に賛成投票を投じたクリミア住民投票2014年3月16日翌日の2014年3月17日で、ロシア政府とウクライナ政府関係者11人の米国への入国禁止、米国内での資産凍結、商取引の禁止措置等発動となっている。

 3月16日の住民投票は即日開票され、ロシア編入賛成が95%を超した。

 日本政府はマレーシア航空機墜落事故(2014年7月17日)を受け、その11日後の7月28日に第3弾目となる対ロ追加制裁を発表。内容はロシアによるクリミア併合やウクライナ東部の不安定化に関与している個人や団体の日本国内の資産凍結、クリミア産品の輸入制限その他。

 発表8日後の2014年8月5日、7月28日に発表していた対ロ追加制裁を閣議了解後に発動(《ロシア:米とEUによる対露経済制裁とその影響》)。   

 但しロシア政府要人は制裁対象から除外しているとマスコミは伝えている。つまり実効性は期待できない、あるいは政府自体が最初から期待していない形式的な制裁を発動したと言うことなのだう。

 アメリカが第3弾の対ロ制裁を発動したのは2014年3月20日。第2弾の入国禁止、米国内での資産凍結、商取引の禁止措置等発動の適用対象の範囲を広げて、政府高官とプーチン政権中枢を支える個人計20人、政府高官の資金を抱えるロシア銀行を追加している。

 かくこのように安倍政権の対ロ制裁は「力による現状変更許さず」の言葉に対して実際にやっていることは実態を伴っていない。

 にも関わらず、ウクライナを訪問、ポロシェンコ大統領と首脳会談して、「我が国は力による現状変更を決して認めない」と、そう厳しく決意しているかのように言う。

 あるいは言葉通りの行動を取っているかのように言う。

 ポロシェンコ大統領は腹の中でせせら笑っていたのではないだろうか。だが、安倍晋三はウクライナに対して約2300億円の経済・人道支援支援を表明している。カネづるになるから、腹の中のせせら笑いは極力抑えて、「現状変更許さず」の言葉に尤もらしげに頷いていたに違いない。

 安倍晋三はプーチンの訪日を年内に実現させようとしている。対してアメリカは慎重な行動を求めている。日本の実効性薄い対ロ経済制裁であっても、プーチン訪日によって日米欧の一応の一体性が崩れる象徴となりかねないからだろう。

 ドイツでのG7でウクライナ問題が議題に上るのは既成事実となっている。安倍晋三の「我が国は力による現状変更を決して認めない」の姿勢に実態が伴っていないことは欧米の首脳は承知しているだろうし、オバマ大統領のためにプーチン訪日でもその姿勢に変わりはないことの証明とし、プーチン訪日の免罪符とするためにG7出席の途中ウクライナに寄って、実態が伴っていないことなど棚に上げて、「我が国は力による現状変更を決して認めない」と断固とした口調で発言したに違いない。

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